2022年01月27日
マクマホン - 新種牡馬辞典'22
新種牡馬辞典、第二十一弾は*マクマホン。個人的に今年一番の変わり種の種牡馬ではないかと思います。自身はイタリア産馬で、イタリアダービーとカタールダービーを制覇。さらに父はイタリア調教馬で、クイーンアンSや香港Cなど5勝をあげた Ramonti であり、父系は日本ではサトノクラウンを出したとはいえ全くトレンドとは言えない Marju の系統と、普通であれば種牡馬として輸入されるような存在ではありませんが、トーセンの島川オーナーの所有馬として走ったこともあり、エスティファーム専属種牡馬として導入されました。それも温情で何頭かだけに種付けというものではなく、むしろ同牧場の主力種牡馬として多くの牝馬を集めており、島川オーナーの同馬に対する本気度がうかがえます。
*マクマホン Mac Mahon
イタリア産 2014年生 鹿毛 父系:トライマイベスト系
<血統構成> トライマイベスト=El Gran Senor 5×3 Northern Dancer 4×5
父 Ramonti はイタリア調教馬で、GIヴィットリオディカプア賞を制した後ゴドルフィンの手に渡り、クイーンアンSなどマイルGI4勝をあげた。その父 Martino Alonso もイタリアで走った馬で、GIローマ賞2着などの実績がある。さらにその父はサトノクラウンの父として知られる Marju だが、父系で2代もズレがある種牡馬が同期デビューするというのも珍しい。
母 Miss Sultin は伊国3勝。2000mのリステッド・バッジオ賞で3着がある。母としてはほかに目立った産駒は出していない。母父 Celtic Swing は仏ダービーなどGI2勝をあげた活躍馬で、さらにその父は日本輸入後にトロットスターなどを出した*ダミスターである。
祖母 Miss Caerleon は伊国2勝。娘と同じバッジオ賞で3着に入っている。母としては特に目立った産駒は出していない。
<競走成績>
イタリアで1800mのデビュー戦を快勝すると、そこからさらに一般戦、リステッドと連勝。ここで島川オーナーの持ち馬となり、重賞初挑戦となったイタリアダービーも5馬身差で快勝し無傷の4連勝でダービー馬となった。一線級との対戦となったパリ大賞は大敗に終わり、地元のGIIも2着3着と惜敗が続いたが、年末に行われたカタールダービーでは鮮やかに抜け出し、ローカルグレードとはいえGIウイナーに上り詰めた。翌年も現役を続け、カタールGIのH.H.エミールズT、地元のGIIと2戦したが、いずれも4着に終わっている。
<供用実績>
いくらGIウイナーとはいえカタールはパートIII国、当時まだパートI国だったイタリアもダービーがGIIに格付けされる国で、決して国際的な評価は高くはなかった。しかし島川オーナーは同馬を種牡馬として導入したばかりか、自牧場の牝馬を惜しみなくつぎ込み、初年度は34頭もの牝馬に種付けを行った。しかも2年目以降はオーナーが南米で買い集めたGI馬たちにも種付けを行っており、2年連続で40頭を超える種付けをこなしている。血統的にトレンドでなく、実績的にもそこまで秀でていない種牡馬にここまで牝馬を当てられるのは、日本中探しても島川オーナーだけであろう。
<産駒一覧>
すがすがしいまでにエスティファーム一色。2020年のエスティファーム産馬のうち、1/3が同馬を父に持つ産駒となっている。トーセンソレイユはノーザンファーム産だが、この母は*ウインドインハーヘアを母に持つ牝馬で、島川氏とノーザンの共同所有となっており、1年おきにそれぞれの産駒を取るようにしているようだ。翌年の2020年にモーリスが種付けされた後、昨年は再び*マクマホンが種付けされている。個人的には母がエスティファーム初の重賞ウイナーとなったトーセンベニザクラに期待したい。母系の*ホワイトマズルもイタリアダービー馬で、以外と相性がいいかも。
<傾向予想>
Northern Dancer が5本入っているが、*トライマイベストに The Minstrel 、El Gran Senor 、Caerleon 、Sadler's Wells と日本でトレンドなスピード系は入っておらず、これに母父がミスプロ系とはいえ仏ダービーの Celtic Swing ということで、かなり重いイメージがある。少なくともダートより断然芝向きで、距離はある程度あったほうがよく、2歳戦よりは3歳戦のほうがいいタイプということになるだろうか。重馬場はうまそう。うまくすれば夏の北海道で勝ち上がり、菊花賞に駒を進めてくる産駒が出てくるかもしれない。
イタリアダービーといえば前述の*ホワイトマズルもそうだが、かつて勝ち馬である*セダンや*ルイスデール、*ゲイルーザックなどが輸入されて日本でGI級レースの勝ち馬を輩出したほか、ここを4着だった*トニービンがのちのリーディングサイアーに輝いている。GIIに降格されてからは初の輸入馬ということになるが、こうした島川オーナーのチャレンジが実を結ぶことを心から願ってやまない。なお、昨年の伊ダービーは吉田照哉氏所有の Tokyo Gold が制しているが、同馬が日本に導入される可能性はあるだろうか。
イタリア産 2014年生 鹿毛 父系:トライマイベスト系
<血統構成> トライマイベスト=El Gran Senor 5×3 Northern Dancer 4×5
Ramonti FR 鹿毛 2002 | Martino Alonso | Marju |
Cheerful Note | ||
Fosca | El Gran Senor | |
La Locandiera | ||
Miss Sultin IRE 鹿毛 2004 | Celtic Swing | *ダミスター |
Celtic Ring | ||
Miss Caerleon | Caerleon | |
Satin Pointe |
父 Ramonti はイタリア調教馬で、GIヴィットリオディカプア賞を制した後ゴドルフィンの手に渡り、クイーンアンSなどマイルGI4勝をあげた。その父 Martino Alonso もイタリアで走った馬で、GIローマ賞2着などの実績がある。さらにその父はサトノクラウンの父として知られる Marju だが、父系で2代もズレがある種牡馬が同期デビューするというのも珍しい。
母 Miss Sultin は伊国3勝。2000mのリステッド・バッジオ賞で3着がある。母としてはほかに目立った産駒は出していない。母父 Celtic Swing は仏ダービーなどGI2勝をあげた活躍馬で、さらにその父は日本輸入後にトロットスターなどを出した*ダミスターである。
祖母 Miss Caerleon は伊国2勝。娘と同じバッジオ賞で3着に入っている。母としては特に目立った産駒は出していない。
<競走成績>
年 (歳) | 戦 | 勝 | 主な実績 |
---|---|---|---|
2016年 (2歳) | 1 | 1 | 1着 未勝利 T1800 |
2017年 (3歳) | 7 | 4 | 1着 カタールダービー(QA-LI) T2000 1着 イタリアダービー(ITY-II) T2200 1着 エマヌエーレ・フィリベルト賞(ITY-L) T2000 1着 サン・ジュゼッペ賞(ITY) T2100 2着 ローマ賞(ITY-II) T2000 3着 フェデリコテシオ賞(ITY-II) T2200 |
2018年 (4歳) | 2 | 0 | |
計 | 10 | 5 |
イタリアで1800mのデビュー戦を快勝すると、そこからさらに一般戦、リステッドと連勝。ここで島川オーナーの持ち馬となり、重賞初挑戦となったイタリアダービーも5馬身差で快勝し無傷の4連勝でダービー馬となった。一線級との対戦となったパリ大賞は大敗に終わり、地元のGIIも2着3着と惜敗が続いたが、年末に行われたカタールダービーでは鮮やかに抜け出し、ローカルグレードとはいえGIウイナーに上り詰めた。翌年も現役を続け、カタールGIのH.H.エミールズT、地元のGIIと2戦したが、いずれも4着に終わっている。
<供用実績>
年度 | 種付料 | 種付数 | 生産数 | 登録数 | 供用場所 |
---|---|---|---|---|---|
2019 | Private | 34 | 26 | 26 | 白馬牧場 |
2020 | Private | 48 | − | 30 | 〃 |
2021 | Private | 44 | − | − | 〃 |
2022 | Private | − | − | − | 〃 |
いくらGIウイナーとはいえカタールはパートIII国、当時まだパートI国だったイタリアもダービーがGIIに格付けされる国で、決して国際的な評価は高くはなかった。しかし島川オーナーは同馬を種牡馬として導入したばかりか、自牧場の牝馬を惜しみなくつぎ込み、初年度は34頭もの牝馬に種付けを行った。しかも2年目以降はオーナーが南米で買い集めたGI馬たちにも種付けを行っており、2年連続で40頭を超える種付けをこなしている。血統的にトレンドでなく、実績的にもそこまで秀でていない種牡馬にここまで牝馬を当てられるのは、日本中探しても島川オーナーだけであろう。
<産駒一覧>
母名 | 性 | 母父 | 生産者 | 馬主 | 価格 |
---|---|---|---|---|---|
ガールズトーク | 牡 | ステイゴールド | エスティファーム | ||
サクセスライン | 牡 | トーセンファントム | エスティファーム | ||
サクラレディ | 牡 | Galileo | エスティファーム | ||
シーブリーズラブ | 牡 | カジノドライヴ | エスティファーム | ||
スタイルアンドクラス | 牡 | Galileo | エスティファーム | ||
セシルブルース | 牡 | エルコンドルパサー | エスティファーム | ||
トーセンヴェール | 牡 | クロフネ | エスティファーム | ||
トーセンウェルカム | 牡 | フジキセキ | エスティファーム | ||
トーセンエポック | 牡 | キングカメハメハ | エスティファーム | ||
トーセンオーキッド | 牡 | ネオユニヴァース | エスティファーム | ||
トーセンオマージュ | 牝 | ダンスインザダーク | エスティファーム | ||
トーセンキャッスル | 牝 | フレンチデピュティ | エスティファーム | ||
トーセンシャイニー | 牡 | ネオユニヴァース | エスティファーム | ||
トーセンソレイユ | 牝 | ネオユニヴァース | ノーザンファーム | ||
トーセンハピネス | 牝 | サンデーサイレンス | エスティファーム | ||
トーセンビレッタ | 牝 | スウェプトオーヴァーボード | エスティファーム | ||
トーセンベニザクラ | 牡 | ダイワメジャー | エスティファーム | ||
トーセンミルキー | 牡 | クロフネ | エスティファーム | ||
トーセンレディ | 牡 | ダイワメジャー | エスティファーム | ||
トーセンロザリオ | 牝 | Galileo | エスティファーム | ||
ファストカラー | 牝 | フジキセキ | エスティファーム | ||
ペナンクライ | 牡 | Barathea | エスティファーム | ||
メモリーリング | 牡 | トーセンホマレボシ | エスティファーム | ||
ユーキャンゴーゴー | 牝 | Galileo | エスティファーム | ||
ライズスクリュー | 牡 | トーセンホマレボシ | エスティファーム | ||
ライブインベガス | 牡 | マンハッタンカフェ | エスティファーム |
すがすがしいまでにエスティファーム一色。2020年のエスティファーム産馬のうち、1/3が同馬を父に持つ産駒となっている。トーセンソレイユはノーザンファーム産だが、この母は*ウインドインハーヘアを母に持つ牝馬で、島川氏とノーザンの共同所有となっており、1年おきにそれぞれの産駒を取るようにしているようだ。翌年の2020年にモーリスが種付けされた後、昨年は再び*マクマホンが種付けされている。個人的には母がエスティファーム初の重賞ウイナーとなったトーセンベニザクラに期待したい。母系の*ホワイトマズルもイタリアダービー馬で、以外と相性がいいかも。
<傾向予想>
芝 | ダート | 重 | 距離 | 2歳 | 3歳 | 古馬 |
---|---|---|---|---|---|---|
◎ | △ | ◎ | マイル〜クラシック | ○ | ◎ | ○ |
Northern Dancer が5本入っているが、*トライマイベストに The Minstrel 、El Gran Senor 、Caerleon 、Sadler's Wells と日本でトレンドなスピード系は入っておらず、これに母父がミスプロ系とはいえ仏ダービーの Celtic Swing ということで、かなり重いイメージがある。少なくともダートより断然芝向きで、距離はある程度あったほうがよく、2歳戦よりは3歳戦のほうがいいタイプということになるだろうか。重馬場はうまそう。うまくすれば夏の北海道で勝ち上がり、菊花賞に駒を進めてくる産駒が出てくるかもしれない。
イタリアダービーといえば前述の*ホワイトマズルもそうだが、かつて勝ち馬である*セダンや*ルイスデール、*ゲイルーザックなどが輸入されて日本でGI級レースの勝ち馬を輩出したほか、ここを4着だった*トニービンがのちのリーディングサイアーに輝いている。GIIに降格されてからは初の輸入馬ということになるが、こうした島川オーナーのチャレンジが実を結ぶことを心から願ってやまない。なお、昨年の伊ダービーは吉田照哉氏所有の Tokyo Gold が制しているが、同馬が日本に導入される可能性はあるだろうか。
この記事へのコメント
1. Posted by あ 2022年01月27日 22:57
セレクトで血統はいいけと競走馬としてはババ掴まされたのが巡り巡ってマクマホンにはプラスに働くんだから、わからないもんですなぁ…
2. Posted by vx 2022年01月28日 00:58
イタリア調教馬で種牡馬と言えばかの偉大なるトニービンが思いつきますが、イタリア産で日本に輸入された種牡馬って全然思い当たらないですね…最近で誰か居ましたっけ?
3. Posted by 倫敦納豆 2022年01月28日 03:08
>vxさん
最近ではないですがドンがいます。
最近ではないですがドンがいます。
4. Posted by あ 2022年01月28日 03:28
60〜70年代はテシオの遺産としてイタリアから種牡馬や繁殖牝馬を導入してたみたいね。
ティエポロはテシオ自身が最後に手掛けた世代の生産馬だし、マロットも父Ribot母父Niccolo Dell'Arcaが見込まれての輸入。
ティエポロはテシオ自身が最後に手掛けた世代の生産馬だし、マロットも父Ribot母父Niccolo Dell'Arcaが見込まれての輸入。
5. Posted by 鹿 2022年01月28日 07:27
島川オーナー好きだから何か起きてほしい
6. Posted by あ 2022年01月28日 07:33
ゆかりがあるまで広げてもファルブラヴくらいしか思いつかないですねぇ
7. Posted by ウマ 2022年01月28日 11:25
島川オーナーは条件馬でも一族の血統で作るのが基本だから応援したくなる
8. Posted by あ 2022年01月28日 12:19
生産馬の3分の1とはだいぶ攻めてますね。
9. Posted by ousho 2022年01月28日 12:49
父RamontiがEl Gran Senorとトライマイベストの兄弟クロスっていうなかなか面白い血統ですね。
母方にもダミスターがいたりして、聞いたことがない名前の馬ばかりな一方で懐かしさも漂います
母方にもダミスターがいたりして、聞いたことがない名前の馬ばかりな一方で懐かしさも漂います
10. Posted by 鈴鹿越え 2022年01月28日 16:25
母父はダミスター産駒で、母母父はカーリアン、父系辿ったらラストタイクーンで、同じ父系のサトノクラウンも日本のG1勝ちと考えると、意外とマッチするかもしれませんね。エスティファームは競走結果はどうあれ良血牝馬が揃っていますし。
11. Posted by vx 2022年01月28日 18:13
>倫敦納豆さん
ドンですか、知りませんでした。やっぱりかなり昔になりますね。
記事中で言及されているゲイルーザックもイタリア産で同じくらいの時期なので、これくらいの時期まではイタリアの生産界にもある程度元気があったのかも知れないと思いました。
ドンですか、知りませんでした。やっぱりかなり昔になりますね。
記事中で言及されているゲイルーザックもイタリア産で同じくらいの時期なので、これくらいの時期まではイタリアの生産界にもある程度元気があったのかも知れないと思いました。
12. Posted by 名無し 2022年01月28日 22:00
>>7
なにせブレイブスマッシュにより、オーストラリアにトウカイテイオーの血を持つ馬が誕生しますからね。
なにせブレイブスマッシュにより、オーストラリアにトウカイテイオーの血を持つ馬が誕生しますからね。
13. Posted by Organa 2022年01月28日 22:47
最近はデインドリームも含め、チェリーコレクト、チャリティーライン、ファイナルスコア、フォレガとイタリアオークス馬の輸入が目立ちますね。
14. Posted by 14 2022年01月29日 21:07
オーナーはセレクトとかで買った血統のいい肌馬がそろってるから
成功してもおかしくは無いかもね
成功してもおかしくは無いかもね
15. Posted by サクサク 2022年01月30日 20:32
島川オーナーの執念が実るのを期待している!!