2022年06月29日
サイアーラインで辿る世界ダービー史 - 1998年
「サイアーラインで辿る世界ダービー史」シリーズ第二十四弾は1998年。この年の英ダービー馬は*ハイライズで、ダービー後はさっぱりで日本で種牡馬入りしましたが、日本でも英ダービー馬というだけで牝馬を集められる時代は終わっており、3年間の供用で20頭ほどの産駒しか残すことができませんでした。さらに愛ダービー・仏ダービーを制したのは*ドリームウェルで、こちらは社台スタリオンステーションにて供用され年間100頭の牝馬を集めたこともありましたが、年々種付け数は減り続け、わずか4年で再輸出されました。日本ダービーを制したのはスペシャルウィークで、ほかに春秋天皇賞やジャパンCを制覇し、当時の賞金王にも輝きましたが、時代のめぐりあわせで年度代表馬どころか世代チャンピオンに選ばれることすらなく、顕彰馬の投票にも惜敗し続け不選出が確定した悲運の名馬でした。
<1998年度 世界ダービー馬一覧>
<1998年度 世界ダービー馬父系図>
ノーザンダンサー系は*ドリームウェルが愛・仏ダービーを制覇し、年度代表馬にも輝いた。しかしGI勝利はこの2つだけで、引退後は社台SSで種牡馬入りしたものの、牝馬が集まらずフランスに再輸出された。Grozny はペルーが誇る名馬で、ペルー三冠を達成。四冠を目指した芝のアウグスト・B.レギーア賞は大敗したが、ダートでは7戦無敗だった。ただ種牡馬入り前に死亡している。オーストラリアの Arena はヴィクトリアダービーなどGI2勝をあげ、種牡馬としても複数のGI馬を送り出した。スイスダービーの Copeland は後に障害重賞を勝っている。
ナスルーラ系は*ハイライズが英ダービーを制覇。しかしその後は鳴かず飛ばずで日本で種牡馬入りしたが、全く牝馬を集められず再輸出された。その父*ハイエステイトも日本で供用されており、当初は全く人気がなかったが*ハイライズのおかげで種付けが殺到、しかしそれも一時的ですぐに再輸出された。アルゼンチンの*ポトリザリスはダービー、オークスを制した活躍馬で、後に輸入されディアデラノビアを出して牝系を繋いでいる。チリの Mash One は後に北米でもGIを2勝した活躍馬で、引退後はチリに戻りダービー馬 Porfido を出した。Evaristo はパナマの三冠馬で、種牡馬としても三冠馬 Oxsai の父となった。
ターントゥ系はスペシャルウィークが日本ダービーを勝利。年度代表馬の座こそ逃したが、後に春秋天皇賞やジャパンCも勝利する大競走馬となった。種牡馬としてもブエナビスタやシーザリオを出し、またシーザリオがエピファネイアやサートゥルナーリアの母となったことで日本競馬に欠かせない血となっている。Robertico は独ダービーの勝ち馬で、後に障害用種牡馬として供用された。
ネイティヴダンサー系のダービー馬は2頭だけだが、そのうちの1頭 Real Quiet はケンタッキーダービーとプリークネスSの二冠を含むGI5勝をあげた活躍馬で、種牡馬複数のGI馬を輩出しており、今でも父系を存続させている。ポーランドの Arctic は名馬 Sea-Bird の末裔で、ポーランド以外にもフランスでも勝ち星をあげたようだ。
ブランドフォード系の Brown Ale はデンマークとノルウェーのダービーを制した馬で、ほかにノルウェーセントレジャーも勝った活躍馬である。ハリーオン系の Terremoto はジャマイカ産2代目競走馬で、ジャマイカとトリニダードのダービーを勝っている。セントサイモン系の Montezuma もヴェネズエラ産2代目で、ヴェネズエラで二冠を達成している。
国名 | 勝ち馬 | 父 | |
---|---|---|---|
アイルランド | Dream Well (FR) | Sadler's Wells | |
アメリカ | Real Quiet (USA) | Quiet American | |
アルゼンチン | Potrizaris (ARG) | Potrillazo | |
イギリス | High-Rise (IRE) | High Estate | |
イタリア | Central Park (IRE) | In the Wings | |
インド | Star Supreme (IND) | Razeen | |
ウルグアイ | Race Not Run | ||
オーストラリア | Arena (AUS) | Danehill | |
オーストリア | Kyelid (IRE) | Darshaan | |
カナダ | Archers Bay (CAN) | Silver Deputy | |
カリブ | Evaristo (PAN) | Tupido | |
韓国 | Useung Yegam (KOR) | Happy Jazz Band | |
ジャマイカ | Terremoto (JAM) | Domino Jack | |
ジンバブエ | Race Not Run | ||
スイス | Copeland (GB) | Generous | |
スウェーデン | Exaltation (USA) | Exbourne | |
スペイン | Race Not Run | ||
スロヴァキア | Temirkanov (GB) | In the Wings | |
チェコ | Temirkanov (GB) | In the Wings | |
チリ | Mash One (CHI) | Mashkour | |
デンマーク | Brown Ale (IRE) | Shernazar | |
ドイツ | Robertico (GB) | Robellino | |
トリニダードトバゴ | Terremoto (JAM) | Domino Jack | |
トルコ | Kavranhan (TUR) | Bachelors Party | |
日本 | Special Week (JPN) | Sunday Silence | |
ニュージーランド | So Casual (NZ) | Casual Lies | |
ノルウェー | Brown Ale (IRE) | Shernazar | |
バルバドス | Chutney (BAR) | Anidal | |
ハンガリー | Menedzser (HUN) | Horatio Luro | |
プエルトリコ | Caribbean Goddess (PR) | Hail Bold King | |
ブラジル | Vernier (BRZ) | Fort de France | |
フランス | Dream Well (FR) | Sadlers Wells | |
ベネズエラ | Montezuma (VEN) | Motatan | |
ペルー | Grozny (PER) | Privato | |
ポーランド | Arctic (FR) | Arctic Tern | |
南アフリカ | Kale (SAF) | Elliodor | |
メキシコ | Race Not Run | ||
ロシア | Masshtab (RUS) | Stimul |
<1998年度 世界ダービー馬父系図>
ノーザンダンサー系は*ドリームウェルが愛・仏ダービーを制覇し、年度代表馬にも輝いた。しかしGI勝利はこの2つだけで、引退後は社台SSで種牡馬入りしたものの、牝馬が集まらずフランスに再輸出された。Grozny はペルーが誇る名馬で、ペルー三冠を達成。四冠を目指した芝のアウグスト・B.レギーア賞は大敗したが、ダートでは7戦無敗だった。ただ種牡馬入り前に死亡している。オーストラリアの Arena はヴィクトリアダービーなどGI2勝をあげ、種牡馬としても複数のGI馬を送り出した。スイスダービーの Copeland は後に障害重賞を勝っている。
ナスルーラ系は*ハイライズが英ダービーを制覇。しかしその後は鳴かず飛ばずで日本で種牡馬入りしたが、全く牝馬を集められず再輸出された。その父*ハイエステイトも日本で供用されており、当初は全く人気がなかったが*ハイライズのおかげで種付けが殺到、しかしそれも一時的ですぐに再輸出された。アルゼンチンの*ポトリザリスはダービー、オークスを制した活躍馬で、後に輸入されディアデラノビアを出して牝系を繋いでいる。チリの Mash One は後に北米でもGIを2勝した活躍馬で、引退後はチリに戻りダービー馬 Porfido を出した。Evaristo はパナマの三冠馬で、種牡馬としても三冠馬 Oxsai の父となった。
ターントゥ系はスペシャルウィークが日本ダービーを勝利。年度代表馬の座こそ逃したが、後に春秋天皇賞やジャパンCも勝利する大競走馬となった。種牡馬としてもブエナビスタやシーザリオを出し、またシーザリオがエピファネイアやサートゥルナーリアの母となったことで日本競馬に欠かせない血となっている。Robertico は独ダービーの勝ち馬で、後に障害用種牡馬として供用された。
ネイティヴダンサー系のダービー馬は2頭だけだが、そのうちの1頭 Real Quiet はケンタッキーダービーとプリークネスSの二冠を含むGI5勝をあげた活躍馬で、種牡馬複数のGI馬を輩出しており、今でも父系を存続させている。ポーランドの Arctic は名馬 Sea-Bird の末裔で、ポーランド以外にもフランスでも勝ち星をあげたようだ。
ブランドフォード系の Brown Ale はデンマークとノルウェーのダービーを制した馬で、ほかにノルウェーセントレジャーも勝った活躍馬である。ハリーオン系の Terremoto はジャマイカ産2代目競走馬で、ジャマイカとトリニダードのダービーを勝っている。セントサイモン系の Montezuma もヴェネズエラ産2代目で、ヴェネズエラで二冠を達成している。
Organa at 22:20|コメント(11)|サイアーラインで辿る世界ダービー史
この記事へのコメント
1. Posted by NUU 2022年06月29日 22:27
ハイライズの英ダービー制覇時の種牡馬事情が、ちょっとしたネタになっていた記憶があります。
ハイエステイト輸入
↓
しかし不人気
↓
輸入後にハイライズが英ダービー制覇
↓
種付け依頼が殺到してちょっとした騒ぎに
↓
冷めた頃にハイライズも輸入されるが、共に人気なく廃用へ
という流れだったかな。
ハイエステイト輸入
↓
しかし不人気
↓
輸入後にハイライズが英ダービー制覇
↓
種付け依頼が殺到してちょっとした騒ぎに
↓
冷めた頃にハイライズも輸入されるが、共に人気なく廃用へ
という流れだったかな。
2. Posted by 7743 2022年06月29日 23:30
廃用ではなくどっちも再輸出です。80年代のミルリーフブームの名残なんでしょうが、この親子の輸入は無駄過ぎる。
3. Posted by Heyden 2022年06月29日 23:47
20世紀末辺りのアメリカの二冠馬(orもしかしたら三冠馬)連打時代、最も惜しかった馬が出た年。
最も強かった馬は人に拠るし、血統価値は低いレベルで団栗の背比べ。
なお、個人的にこの辺で最も贔屓していたのは'95ベルモントS2着馬。
最も強かった馬は人に拠るし、血統価値は低いレベルで団栗の背比べ。
なお、個人的にこの辺で最も贔屓していたのは'95ベルモントS2着馬。
4. Posted by 774 2022年06月30日 07:49
ハイライズはJC3着で日本向きだと判断されたのでしょうかね
5. Posted by 微妙な人 2022年06月30日 07:52
この馬のおかげで日本の競馬から
「ニジンスキー→マルゼンスキー」
が血統表に残り続けるので個人的に敬意を表さずにはいられません。
「ニジンスキー→マルゼンスキー」
が血統表に残り続けるので個人的に敬意を表さずにはいられません。
6. Posted by あ 2022年06月30日 08:09
今にして思えば典型的エプソム適性だけで勝ったダービー馬でエルハーブの同類
尚且つ自分らが邪険にしている馬が父なのになんで引っかかってしまったのか
ドリームウェルなら新しい血統の模索と分かりますが…
尚且つ自分らが邪険にしている馬が父なのになんで引っかかってしまったのか
ドリームウェルなら新しい血統の模索と分かりますが…
7. Posted by poke 2022年06月30日 15:44
ハイライズは確かダーレーが持ってきてレックススタッドで繋養したんでしたか。
同時のダーレーの人はどんな思惑だったのか気になりますね
同時のダーレーの人はどんな思惑だったのか気になりますね
8. Posted by vx 2022年06月30日 18:28
ドイツのターントゥ系珍しくないですか。
父親のRoberticoはドイツダービー勝ってますが、生産国は(GB)みたいです。(JBISによると)
ドリームウェルは未勝利戦で追走すら出来ない馬が多かったですが、夏の小倉の最終週の未勝利戦を滑り込み勝ちしたアドマイヤモナークがその後出世して、ひょっとして気長に育てればもうちょっと走る馬が居たのではと思った思い出があります。
父親のRoberticoはドイツダービー勝ってますが、生産国は(GB)みたいです。(JBISによると)
ドリームウェルは未勝利戦で追走すら出来ない馬が多かったですが、夏の小倉の最終週の未勝利戦を滑り込み勝ちしたアドマイヤモナークがその後出世して、ひょっとして気長に育てればもうちょっと走る馬が居たのではと思った思い出があります。
9. Posted by 7743 2022年06月30日 19:21
Robellinoは他にも英2000ギニーのMister Baileys等を出しているこの頃のロベルトの代表後継種牡馬の一頭です。ドイツはかなり独特な馬産をやっていて大レースが種牡馬選定競争になっておらず、外国産馬がダービー勝つ事自体は珍しくないのですが勝ち馬のほとんどはドイツで種牡馬入りすることがありません。
10. Posted by Organa 2022年06月30日 22:36
記事を訂正しました。ご指摘ありがとうございます。
そもそも英ダービー自体も、暗黒期ともいえる1990年代から、Galileo や Sea the Stars らを出した2000年代によく戻しましたね。最近はまたかなり怪しくなってきていますが。
そもそも英ダービー自体も、暗黒期ともいえる1990年代から、Galileo や Sea the Stars らを出した2000年代によく戻しましたね。最近はまたかなり怪しくなってきていますが。
11. Posted by ゆーな 2022年07月01日 12:15
勝馬よりもその父や父父の偉大さを感じていた時代