2022年07月01日
サイアーラインで辿る世界ダービー史 - 1997年
「サイアーラインで辿る世界ダービー史」シリーズ第二十五弾は1997年。この年の英ダービーは Benny the Dip が勝ちました。同馬は90年代の英ダービー馬としては珍しく日本に輸入されていませんが、父が*グラスワンダーなどを出した Silver Hawk 、近親にはサイレンススズカがいる日本向きの血統で、本国ではあまり人気がなかったらしく、なぜ導入されなかったのか不思議ですね。もっとも2003年に9歳の若さで死亡しているので、もし早世していなければいずれ日本の土を踏んでいたかもしれません。他の主要どころでは愛ダービーを*デザートキングが、仏ダービーを*パントレセレブルが、そしてケンタッキーダービーを*シルバーチャームが制しており、いずれも種牡馬として日本で供用実績がありました。日本ダービーはサニーブライアンが勝利。完全なる人気薄での勝利だった皐月賞がフロック視され、ダービーでもさほど人気になっていませんでしたが、見事逃げ切って実力が本物だったことを示しました。
<1997年度 世界ダービー馬一覧>
<1997年度 世界ダービー馬父系図>
ノーザンダンサー系からは愛ダービー馬*デザートキング、仏ダービーの*パントレセレブルなどが登場。*デザートキングからはGI7勝の名牝 Makybe Diva 、名ステイヤーの Mr Dinos などが出たが、後に日本で供用されるも全く結果を残せなかった。*パントレセレブルは後に凱旋門賞も制し年度代表馬に選ばれた活躍馬で、同馬も日本で単年リース供用されたことがある。Awesome Again はクイーンズプレートのほか、BCクラシックなど米GI2勝をあげた活躍馬で、種牡馬としても年度代表馬 Ghostzapper などを出して父系を繋いでいる。
ターントゥ系からは英ダービーの Benny the Dip 、日本ダービーのサニーブライアンなどが出た。Benny the Dip は1972年に英ダービーを制した祖父 Roberto 以来となるターントゥ系の勝ち馬で、種牡馬としてはアメリカ、イギリス、アイルランドで供用されたが、9歳の若さで死亡した。サニーブライアンは皐月賞、ダービーの二冠馬で、当初はフロック扱いされるも実力が本物であることを証明、秋は堂々と本命馬として三冠を目指す予定であったが、度重なる故障のためダービーが引退レースとなってしまった。
ネイティヴダンサー系からはエルダービーの Mete Bulla 、ペルーダービーの Captain Garfio 、伊ダービーの Single Empire などが出ている。Single Empire は伊ダービーのほか、今では見る影もないがかつてはアメリカの芝長距離GIとして各地から遠征馬が集まったサンフアンカピストラーノHを制している。
ナスルーラ系の Second Coming はヴィクトリアダービーのほか3200mの新GIウェリントンCも制し、ニュージーランドのチャンピオンステイヤーにも選ばれている。
非メジャーのファラリス系はケンタッキーダービー馬*シルバーチャーム、クルゼイロ・ド・スル賞の Fool Around などを輩出。*シルバーチャームはかつて栄光を極めたトムフール系最後の輝きで、非メジャー四大父系としてもこの後ケンタッキーダービーを勝ったのは2005年の Giacomo のみとなっている。独ダービーはハンプトン系の Borgia が牝馬ながらに快勝。Viale は Djebel を経ないトウルビヨン系で、ウルグアイの二冠を達成したあと北米に移籍し、勝ち星をあげている。
国名 | 勝ち馬 | 父 | |
---|---|---|---|
アイルランド | Desert King (IRE) | Danehill | |
アメリカ | Silver Charm (USA) | Silver Buck | |
アルゼンチン | Chullo (ARG) | Equalize | |
イギリス | Benny the Dip (USA) | Silver Hawk | |
イタリア | Single Empire (IRE) | Kris | |
インド | Indictment (IND) | Razeen | |
ウルグアイ | Viale (URU) | Vivaz | |
オーストラリア | Second Coming (NZ) | Oak Ridge | |
オーストリア | Kaldoun Choice (FR) | Kaldoun | |
カナダ | Awesome Again (CAN) | Deputy Minister | |
カリブ | Alighieri (VEN) | Sag Harbor | |
韓国 | Race Not Run | ||
ジャマイカ | Mr Lover Lover (JAM) | Distinctive Bingo | |
ジンバブエ | Race Not Run | ||
スイス | Kaldoun Choice (FR) | Kaldoun | |
スウェーデン | Chirac (GB) | Belmez | |
スペイン | Race Not Run | ||
スロヴァキア | Lonango (GER) | Acatenango | |
チェコ | Nora Jeane (IRE) | Reprimand | |
チリ | Mete Bulla (CHI) | Sayaret | |
デンマーク | Parthe (FR) | Highest Honor | |
ドイツ | Borgia (GER) | Acatenango | |
トリニダードトバゴ | Mr Lover Lover (JAM) | Distinctive Bingo | |
トルコ | Fair Tail (TUR) | Cossack Guard | |
日本 | Sunny Brian (JPN) | Brians Time | |
ニュージーランド | Zonda (NZ) | Zabeel | |
ノルウェー | Parthe (FR) | Highest Honor | |
バルバドス | Swift And Sure (BAR) | Boomerang | |
ハンガリー | Cardinal (HUN) | Scenic | |
プエルトリコ | Tintorera (PR) | Simply Majestic | |
ブラジル | Fool Around (BRZ) | Bright Again | |
フランス | Peintre Celebre (USA) | Nureyev | |
ベネズエラ | Scott Gordon (VEN) | Velcro Fly | |
ペルー | Capitan Garfio (USA) | Turkoman | |
ポーランド | Mustafa (POL) | Winds of Lights | |
南アフリカ | North by Northwest (SAF) | Rakeen | |
メキシコ | Race Not Run | ||
ロシア | Znatok (RUS) | Triple Buck |
<1997年度 世界ダービー馬父系図>
ノーザンダンサー系からは愛ダービー馬*デザートキング、仏ダービーの*パントレセレブルなどが登場。*デザートキングからはGI7勝の名牝 Makybe Diva 、名ステイヤーの Mr Dinos などが出たが、後に日本で供用されるも全く結果を残せなかった。*パントレセレブルは後に凱旋門賞も制し年度代表馬に選ばれた活躍馬で、同馬も日本で単年リース供用されたことがある。Awesome Again はクイーンズプレートのほか、BCクラシックなど米GI2勝をあげた活躍馬で、種牡馬としても年度代表馬 Ghostzapper などを出して父系を繋いでいる。
ターントゥ系からは英ダービーの Benny the Dip 、日本ダービーのサニーブライアンなどが出た。Benny the Dip は1972年に英ダービーを制した祖父 Roberto 以来となるターントゥ系の勝ち馬で、種牡馬としてはアメリカ、イギリス、アイルランドで供用されたが、9歳の若さで死亡した。サニーブライアンは皐月賞、ダービーの二冠馬で、当初はフロック扱いされるも実力が本物であることを証明、秋は堂々と本命馬として三冠を目指す予定であったが、度重なる故障のためダービーが引退レースとなってしまった。
ネイティヴダンサー系からはエルダービーの Mete Bulla 、ペルーダービーの Captain Garfio 、伊ダービーの Single Empire などが出ている。Single Empire は伊ダービーのほか、今では見る影もないがかつてはアメリカの芝長距離GIとして各地から遠征馬が集まったサンフアンカピストラーノHを制している。
ナスルーラ系の Second Coming はヴィクトリアダービーのほか3200mの新GIウェリントンCも制し、ニュージーランドのチャンピオンステイヤーにも選ばれている。
非メジャーのファラリス系はケンタッキーダービー馬*シルバーチャーム、クルゼイロ・ド・スル賞の Fool Around などを輩出。*シルバーチャームはかつて栄光を極めたトムフール系最後の輝きで、非メジャー四大父系としてもこの後ケンタッキーダービーを勝ったのは2005年の Giacomo のみとなっている。独ダービーはハンプトン系の Borgia が牝馬ながらに快勝。Viale は Djebel を経ないトウルビヨン系で、ウルグアイの二冠を達成したあと北米に移籍し、勝ち星をあげている。
Organa at 21:59|コメント(10)|サイアーラインで辿る世界ダービー史
この記事へのコメント
1. Posted by 倫敦納豆 2022年07月02日 01:03
この年の菊花賞にサニーブライアンが出ていたら、という妄想はしたことがあります。二冠馬が逃げたらさすがに追いかけたかもしれませんが、実際の菊花賞は途中でかなり長い間ペースが緩んでいましたから、少なくとも競りかけて潰しに来ることはなかったのではないかと。
2. Posted by 成瀬朋 2022年07月02日 09:13
ボルジアはハイライズやモンジューなどといった豪華メンバーが来日してスペシャルウィークがそれらを捩じ伏せた年のジャパンカップでいかにもドイツ血統で穴っぽい感じだったから覚えてるな。
3. Posted by あ 2022年07月02日 13:05
サニブについてはあの秋のマチカネフクキタルか異様に強かったので
あの剛脚から逃れられたのだろうか?とは思いますね
あの剛脚から逃れられたのだろうか?とは思いますね
4. Posted by ジローサブロー 2022年07月02日 14:46
サニーブライアンは大外枠逃げ宣言で、レースでは先行勢がすべて潰れてますから、完勝としか言いようがありません
同世代のトップクラスで同型はサイレンスズカくらいしかいないので、長く現役を続けたらかなり勝ち星を伸ばしたのではないでしょうか
何より覚醒したサイレンスズカとのレースを観てみたかったものです
同世代のトップクラスで同型はサイレンスズカくらいしかいないので、長く現役を続けたらかなり勝ち星を伸ばしたのではないでしょうか
何より覚醒したサイレンスズカとのレースを観てみたかったものです
5. Posted by よし 2022年07月02日 14:56
シルバーチャームが日本に来たときは楽しみだったけど、難しかったのかなあ。
6. Posted by 774 2022年07月02日 15:13
日本に来るまで重賞馬一頭も出せないほどの失敗だったから。そうでもなかったら本来日本に来るレベルの馬ではなかった。当時の最強馬シルバーチャーム、スキップアウェイの大失敗、更にシガー種なし問題があってアメリカでドーピングが問題視されるきっかけの一つとなった。
7. Posted by 774 2022年07月02日 15:44
ごめん一頭だけ居た。後は残してきた産駒から何頭かの重賞馬が出ただけ。
8. Posted by カエサル 2022年07月02日 18:53
サニーブライアンが菊花賞に出ていたらさすがに何かに差されていたとは思いますが、マチカネフクキタルではなさそうな感じはします。3000mは長すぎる馬がスローペースだから勝てたと言われたので、サニーブライアンがいてはそんなスローはないでしょう。
9. Posted by あ 2022年07月02日 19:24
サニーブライアンはどうしても現役時代の印象が強くて種牡馬実績があまり語られないですね
種牡馬としてあまり重用されてはいませんでしたがブライアンズタイム産駒らしく勝ち上がり率が良く
カゼニフカレテ、グランリーオ、ダービーゾーンなどを出したのは立派だと思います
種牡馬としてあまり重用されてはいませんでしたがブライアンズタイム産駒らしく勝ち上がり率が良く
カゼニフカレテ、グランリーオ、ダービーゾーンなどを出したのは立派だと思います
10. Posted by Organa 2022年07月02日 22:17
シルバーチャームは持込馬として走っていたマルブツシルヴァーがそれなりに走っていたので期待したのですが、さっぱりでしたね。母父として云々以前の話でした。