2023年03月14日
マルターズアポジー - 新種牡馬辞典'23
新種牡馬辞典、第三十弾はマルターズアポジー。ローカルの逃げ馬といったらこの馬で、福島記念、小倉大賞典、関屋記念で逃げ切り勝ちを収め、平成最後の個性派として多くのファンを魅了した馬でした。父は朝日杯フューチュリティの勝ち馬*ゴスホークケン、母もフェアリーSを制した*マルターズヒートという血統で、特に父は藤田オーナーのバックアップもあって高々30頭の産駒から重賞馬を出すことに成功したということで、これで2歳GIを勝った後はさっぱりという早枯れ馬にももう少しスポットが当たるかと思いましたが、残念ながら今のところはそんな動きはなさそうです。マルターズアポジーもそれほど種付け頭数は多くありませんが、自身のような個性派の産駒を出してほしいところです。
マルターズアポジー
山岡牧場産 2012年生 鹿毛 父系:ストームキャット系
<血統構成> Northern Dancer 5×4 Secretariat 5×5 Roberto 5×4
父*ゴスホークケンは朝日杯フューチュリティSの勝ち馬で、種牡馬としては藤田与志男オーナーの跡を継いだ藤田在子オーナーのバックアップを受けて種牡馬入り。残した産駒はわずか30頭だったが、そこからこのマルターズアポジーなど6頭の中央勝ち馬を送り出したのは立派の一言である。2018年に早世しなければもっと産駒を残していたであろうか。
母*マルターズヒートは中央4勝。GIIIフェアリーSやオープンのエルフィンSを制した活躍馬で、5歳時には障害入りも果たし、1勝をあげている。母としてはほかに目立った産駒は出せなかったが、産駒の半数以上が中央で勝ち上がっている。
祖母 Heat Is On は米国産馬で、不出走馬。マル外としてほかに*シベリアンヒートが輸入されており、中央2勝をあげ京成杯でも4着に入っている。
<競走成績>
武士沢Jとのコンビで新馬戦を逃げ切ると、500万下も2戦目でクリア。プリンシパルSは大敗でクラシック路線に乗ることはできなかったが、ラジオNIKKEI賞でも12番人気ながら3着に逃げ粘り、しぶとさをアピールした。その後は条件戦でしばらく足踏みが続いたが、4歳夏に1000万下のいわき特別を逃げ切ると、続く準オープンの秋風Sも完勝、さらに福島記念でも後続に1馬身半の差をつけて逃げ切り、3連勝で重賞初勝利をあげた。続く有馬記念はさすがに大敗に終わったが、翌年の小倉大賞典、関屋記念も逃げ切り、ローカル競馬場との相性の良さを示した。その後は調子を落とし、ダートや短距離を試されるも最後まで勝ち星をあげることはできなかったが、生粋の逃げ馬として8歳まで重賞でレースを引っ張り続けた。
<供用実績>
引退後は白馬牧場にて種牡馬入り。種付け料は受胎条件20万円に設定された。最後のレースが3月の中山記念6着で、そこから約1か月で初めての種付けとなかなか忙しいスケジュールだったようだが、初年度は5頭の牝馬に種付けを行った。しかし受胎率に難があるようで初年度はわずか2頭の産駒しか生まれず、2年目は4頭の種付けで産駒はわずか1頭にとどまっており、昨年はただでさえ少ない種付け数が2頭にまで減ってしまった。白馬牧場供用のプライベート種牡馬といえばクリノドラゴンを出したアスカクリチャンが思い出されるが、チャンスさえ与えられれば活躍馬を出すことはできるはず。
<産駒一覧>
マルターズオリジンはその名の通り藤田氏の預託生産馬で、母は中央で3勝をあげたほか、ジュニアCや菜の花賞で3着に入った活躍馬だった。なおWikipediaによると藤田氏がアメリカで馬主になった時に初めて所有した馬が Affirmed Halo で、これは同馬の祖母にあたる。いわば藤田氏にとっての原点ともいえる馬の血を引いているということで、ぜひ活躍して母としてその血を伝えてもらいたい。メルティーキスは母がダート重賞3勝のワイルドワンダーの全妹であり、Barbs Dancer のクロスや*サンシャインフォーエヴァー・*ブライアンズタイムの同血いとこ同士のクロスが発生するなど、非常に凝った配合となっている。
<傾向予想>
ダートは完全に調子が下降したころに1戦だけ走ってシンガリ負けで、実績的にも芝向きだろうが、ストームキャット系で母父も*シニスターミニスターの父 Old Trieste 、さらに馬格もあるタイプで、ダート向きの産駒が出ても全くおかしくはない。自身はマイルから中距離で結果を残したが、大敗はしたもののスプリンターズSで先手を奪えるスピードは短距離でも十分通用するのではないだろうか。父母ともに2歳重賞を勝っており、仕上がりはかなり早いはず。一方で成長力のあるタイプではなさそうだが、息の長い活躍は期待できそうだ。
マルターズやシベリアンの冠名で知られる藤田オーナーだが、種牡馬入りさせた産駒も多く、ほかに Deputy Minister 産駒の*マルターズライオン、*スピニングワールド産駒の*シベリアンホーク、Red Ransom 産駒の*アポインテッドデイが種牡馬入りしており、いずれもさほど多くない種付け数から重賞に出走するレベルの産駒を送り出すことに成功している。そうした中でマルターズアポジーは初の内国産馬による種牡馬入りであり、しかも父・母ともに自身で所有した馬ということで同馬にかける期待は非常に大きいだろう。亡き藤田与志男オーナーの思いを受け継ぎ、重賞戦線に産駒を送り込んでもらいたいところ。
山岡牧場産 2012年生 鹿毛 父系:ストームキャット系
<血統構成> Northern Dancer 5×4 Secretariat 5×5 Roberto 5×4
*ゴスホークケン 黒鹿毛 2005 USA | Bernstein | Storm Cat |
La Affirmed | ||
*オールザウェイベイビー | Grand Slam | |
Lustily | ||
*マルターズヒート 栗毛 2001 USA | Old Trieste | A.P. Indy |
Lovlier Linda | ||
Heat Is On | *サンシャインフォーエヴァー | |
Barbs Dancer |
父*ゴスホークケンは朝日杯フューチュリティSの勝ち馬で、種牡馬としては藤田与志男オーナーの跡を継いだ藤田在子オーナーのバックアップを受けて種牡馬入り。残した産駒はわずか30頭だったが、そこからこのマルターズアポジーなど6頭の中央勝ち馬を送り出したのは立派の一言である。2018年に早世しなければもっと産駒を残していたであろうか。
母*マルターズヒートは中央4勝。GIIIフェアリーSやオープンのエルフィンSを制した活躍馬で、5歳時には障害入りも果たし、1勝をあげている。母としてはほかに目立った産駒は出せなかったが、産駒の半数以上が中央で勝ち上がっている。
祖母 Heat Is On は米国産馬で、不出走馬。マル外としてほかに*シベリアンヒートが輸入されており、中央2勝をあげ京成杯でも4着に入っている。
<競走成績>
年 (歳) | 戦 | 勝 | 主な実績 |
---|---|---|---|
2015年 (3歳) | 9 | 2 | 1着 ひめさゆり賞(500) T2000 1着 新馬 T2000 3着 ラジオNIKKEI賞(GIII) T1800 |
2016年 (4歳) | 9 | 4 | 1着 福島記念(GIII) T2000 1着 秋風S(1600) T1600 1着 いわき特別(1000) T1800 1着 1000万下 T1800 |
2017年 (5歳) | 6 | 2 | 1着 小倉大賞典(GIII) T1800 1着 関屋記念(GIII) T1600 |
2018年 (6歳) | 7 | 0 | 3着 中山記念(GII) T1800 |
2019年 (7歳) | 7 | 0 | |
2020年 (8歳) | 2 | 0 | |
計 | 40 | 8 |
武士沢Jとのコンビで新馬戦を逃げ切ると、500万下も2戦目でクリア。プリンシパルSは大敗でクラシック路線に乗ることはできなかったが、ラジオNIKKEI賞でも12番人気ながら3着に逃げ粘り、しぶとさをアピールした。その後は条件戦でしばらく足踏みが続いたが、4歳夏に1000万下のいわき特別を逃げ切ると、続く準オープンの秋風Sも完勝、さらに福島記念でも後続に1馬身半の差をつけて逃げ切り、3連勝で重賞初勝利をあげた。続く有馬記念はさすがに大敗に終わったが、翌年の小倉大賞典、関屋記念も逃げ切り、ローカル競馬場との相性の良さを示した。その後は調子を落とし、ダートや短距離を試されるも最後まで勝ち星をあげることはできなかったが、生粋の逃げ馬として8歳まで重賞でレースを引っ張り続けた。
<供用実績>
年度 | 種付料 | 種付数 | 生産数 | 登録数 | 供用場所 |
---|---|---|---|---|---|
2020 | 20万円 | 5 | 2 | 2 | 白馬牧場 |
2021 | 20万円 | 4 | 1 | 1 | 〃 |
2022 | 20万円 | 2 | − | − | 〃 |
2023 | 20万円 | − | − | − | 〃 |
引退後は白馬牧場にて種牡馬入り。種付け料は受胎条件20万円に設定された。最後のレースが3月の中山記念6着で、そこから約1か月で初めての種付けとなかなか忙しいスケジュールだったようだが、初年度は5頭の牝馬に種付けを行った。しかし受胎率に難があるようで初年度はわずか2頭の産駒しか生まれず、2年目は4頭の種付けで産駒はわずか1頭にとどまっており、昨年はただでさえ少ない種付け数が2頭にまで減ってしまった。白馬牧場供用のプライベート種牡馬といえばクリノドラゴンを出したアスカクリチャンが思い出されるが、チャンスさえ与えられれば活躍馬を出すことはできるはず。
<産駒一覧>
マルターズオリジンはその名の通り藤田氏の預託生産馬で、母は中央で3勝をあげたほか、ジュニアCや菜の花賞で3着に入った活躍馬だった。なおWikipediaによると藤田氏がアメリカで馬主になった時に初めて所有した馬が Affirmed Halo で、これは同馬の祖母にあたる。いわば藤田氏にとっての原点ともいえる馬の血を引いているということで、ぜひ活躍して母としてその血を伝えてもらいたい。メルティーキスは母がダート重賞3勝のワイルドワンダーの全妹であり、Barbs Dancer のクロスや*サンシャインフォーエヴァー・*ブライアンズタイムの同血いとこ同士のクロスが発生するなど、非常に凝った配合となっている。
<傾向予想>
芝 | ダート | 重 | 距離 | 2歳 | 3歳 | 古馬 |
---|---|---|---|---|---|---|
◎ | ○ | ○ | 短〜中 | ◎ | ○ | ○ |
ダートは完全に調子が下降したころに1戦だけ走ってシンガリ負けで、実績的にも芝向きだろうが、ストームキャット系で母父も*シニスターミニスターの父 Old Trieste 、さらに馬格もあるタイプで、ダート向きの産駒が出ても全くおかしくはない。自身はマイルから中距離で結果を残したが、大敗はしたもののスプリンターズSで先手を奪えるスピードは短距離でも十分通用するのではないだろうか。父母ともに2歳重賞を勝っており、仕上がりはかなり早いはず。一方で成長力のあるタイプではなさそうだが、息の長い活躍は期待できそうだ。
マルターズやシベリアンの冠名で知られる藤田オーナーだが、種牡馬入りさせた産駒も多く、ほかに Deputy Minister 産駒の*マルターズライオン、*スピニングワールド産駒の*シベリアンホーク、Red Ransom 産駒の*アポインテッドデイが種牡馬入りしており、いずれもさほど多くない種付け数から重賞に出走するレベルの産駒を送り出すことに成功している。そうした中でマルターズアポジーは初の内国産馬による種牡馬入りであり、しかも父・母ともに自身で所有した馬ということで同馬にかける期待は非常に大きいだろう。亡き藤田与志男オーナーの思いを受け継ぎ、重賞戦線に産駒を送り込んでもらいたいところ。
この記事へのコメント
1. Posted by 裸眼 2023年03月14日 23:33
なんとかマルターズディオサにつけられないですかね…
2. Posted by い 2023年03月15日 00:37
藤田血統最初の集大成といった趣がありますね、アポジーは
バーンスタインにしろオールドトリエステにしろ日本だとアウトサイダーなだけに可能性もありますが
いかんせん人気する要素も少ないという…
バーンスタインにしろオールドトリエステにしろ日本だとアウトサイダーなだけに可能性もありますが
いかんせん人気する要素も少ないという…
3. Posted by 成瀬朋 2023年03月15日 07:33
サンシャインフォーエヴァーが母系に居るの、生産者受けはしないだろうけど好き。
メルティーキスみたいなブライアンズタイム&サンシャインフォーエヴァーの同血従兄弟クロスがはやってほしいけど現実はなかなか難しい所はあるのよね…(´・ω・`)
メルティーキスみたいなブライアンズタイム&サンシャインフォーエヴァーの同血従兄弟クロスがはやってほしいけど現実はなかなか難しい所はあるのよね…(´・ω・`)
4. Posted by たしかに 2023年03月15日 07:51
現役時は思ったより息長く活躍した印象でした。
血統も悪くないし、何となく、あっと驚くような産駒を出しそうな気がしますが…。
血統も悪くないし、何となく、あっと驚くような産駒を出しそうな気がしますが…。
5. Posted by vx 2023年03月15日 10:26
オーナーのアメリカ血統へのこだわりを感じますね
6. Posted by Organa 2023年03月15日 22:54
ゴスホークケンは普通なら種牡馬入りは厳しいレベルの競走馬でしたが、こうして種牡馬入りして重賞馬も出したのですからすごいですね。何とかもう一代つながってほしいものです。