2023年11月30日

2024年度新種牡馬リスト

毎年恒例の来年度の新種牡馬リストです。来年の2歳世代が初産駒となる種牡馬は全部で37頭で、これはここ数年では平均的な頭数ということになります。初年度の種付け数が200頭を超えた種牡馬が3頭もおり、これは2017年の新種牡馬であるロードカナロア・オルフェーヴル・エイシンフラッシュ以来7年ぶりですね。この年最多種付けとなったのはルヴァンスレーヴで、ダートを主戦場にしていた内国産馬が新種牡馬として種付け数のトップに輝くのは21世紀以降では初、1980年代には地方出身のホスピタリティが最多だった例がありますが、これも後に中央入りしてからの実績が評価されてのものだと思われますし、純粋な内国産ダート馬としては今年が史上初といってもいいのではないでしょうか。それだけダート馬に対する評価も変わってきているということでしょうね。

種付け数上位にはほかにゴールドドリーム*モズアスコット*ミスターメロディなどダート馬や短距離馬が名を連ねる一方、日本のメインストリームであるクラシック、あるいは芝王道路線での超大物種牡馬は多くなく、ホープフルSや皐月賞を制したサートゥルナーリアが200頭の牝馬を集めたのが目立つ程度で、菊花賞、天皇賞(春)2勝と長距離GI3勝をあげたフィエールマンや香港でGI2勝をあげたウインブライトらは100頭程の牝馬を集めるのが精一杯でした。海外勢でも Frankel の全弟で芝中距離GIを3勝した*ノーブルミッションこそいますが、あとはアーカンソーダービーの*ナダル、BCジュヴェナイルターフスプリントの*フォーウィールドライブ、種付け時にトラブルのあった*シスキンというラインナップで、海外GI馬が6頭もいた昨年と比べると若干見劣りするでしょうか。
<2024年度新種牡馬リスト> * は2021年以前に供用され、この世代が初産駒

StallionCCYoBSireCovFls
ルヴァンスレーヴJPN2015シンボリクリスエス223149
サートゥルナーリアJPN2016ロードカナロア205142
ゴールドドリームJPN2013ゴールドアリュール212129
モズアスコットUSA2014Frankel167105
ナダルUSA2017Blame15098
タワーオブロンドンJPN2015Raven's Pass13496
フォーウィールドライブUSA2017American Pharoah13986
ノーブルミッションGB2009Galileo12885
ミスターメロディUSA2015Scat Daddy17481
フィエールマンJPN2015ディープインパクト10772
ウインブライトJPN2014ステイゴールド9366
アドマイヤマーズJPN2016ダイワメジャー11562
エポカドーロJPN2015オルフェーヴル5236
オーヴァルエースJPN2016ヘニーヒューズ3526
ブルドッグボスJPN2012ダイワメジャー2419
レッドベルジュールJPN2017ディープインパクト2217
サングレーザーJPN2014ディープインパクト3115
ハッピースプリントJPN2011アッミラーレ2111
スマートオーディンJPN2013ダノンシャンティ1611
ミッキースワローJPN2014トーセンホマレボシ108
シスキンUSA2017First Defence207
オールブラッシュJPN2012ウォーエンブレム117
アルバートJPN2011アドマイヤドン86
ウォータービルドJPN2014ディープインパクト86
ストーミーシーJPN2013アドマイヤムーン84
エタリオウJPN2015ステイゴールド43
ロンドンタウンJPN2013カネヒキリ43
サングラスJPN2011スタチューオブリバティ33
ダイシンサンダーJPN2011アドマイヤムーン52
キタノコマンドールJPN2015ディープインパクト42
クワイトファインJPN2010トウカイテイオー32
コパノチャーリーJPN2012アグネスデジタル61
オウケンワールドJPN2012クロフネ21
サイモンラムセスJPN2010ブラックタイド21
ステッペンウルフJPN2016サウスヴィグラス11
ハウライトJPN2012アドマイヤオーラ11
フロリダパンサーJPN2011シンボリクリスエス11
リコーソッピースJPN2014ゴールドアリュール20
ソールインパクトJPN2012ディープインパクト10
ミキノドラマーJPN2013ショウナンカンプ00

Cov:2021年の種付け数 Fls:2022年の血統登録された産駒数

種付け数トップはチャンピオンズCなどダートGI4勝をあげたルヴァンスレーヴで、150万円の種付け料で220頭を超える牝馬を集めることに成功した。しかもデビュー前にも関わらず年々種付け料が増額され、今年は300万円での供用となっており、血統的な裏付けのある本格ダート馬に対する信頼度が年々高くなっていることを実感する。

皐月賞、ホープフルSを制したサートゥルナーリアも200頭超え。当然その実績もさることながら、父ロードカナロアにとって初となる本格的な後継種牡馬という点も評価が高いのだろう。こちらも初年度600万円から始まった種付け料がじわじわと上昇を続けており、今年は800万円での供用だった。半兄エピファネイアに続き種牡馬として名をあげることができるか。

フェブラリーSやチャンピオンCなどダートGI5勝をあげたゴールドドリームも200頭の大台を突破した。こちらも初年度100万円から2年で180万円まで増額されているが、それと反比例するように種付け数が180頭、140頭と減少しており、ライバルの多いゴールドアリュール産駒だけに初年度から結果を残していきたいところ。

*モズアスコットは今や中長距離種牡馬として結果を残す Frankel 産駒としては珍しくマイルで活躍したタイプで、しかも母父*ヘネシーという血統もあって安田記念、フェブラリーSと芝ダートGI制覇を達成した。競走馬としての実績なら短距離馬、父が強く出れば中長距離、母父が強く出ればダートと様々なタイプが出そう。

*ナダルは米GIアーカンソーダービーなど4戦4勝の成績を残した馬で、父は*シンボリクリスエスらと同じクリスエス系の Blame という血統。エピファネイアやルヴァンスレーヴが出たことでこの系統に対する評価が見直され導入されたものと思われるが、こちらは初年度から種付け数が減り続け、来年度は初年度から100万減の300万円での供用となっている。

スプリンターズSなど短距離重賞5勝をあげた*タワーオブロンドンは日本にあまり入ってきていない Raven's Pass 産駒ということもあり、多くの牝馬を集めた。母父が Dalakhani 、母母父が Sadler's Wells で、母系からもディーマジェスティやオセアグレイトらが出ており、種牡馬としては意外と距離をこなす産駒が出てもおかしくはない。

*フォーウィールドライブは American Pharoah の日本で初となる後継種牡馬で、BCジュヴェナイルターフスプリントなど2歳戦で3戦3勝の成績を残した。ただこのレースは当時GIIで、世界的にも American Pharoah 産駒が失速傾向にあり、また*カフェファラオも種牡馬入りを表明したということで早めに結果を残しておきたい1頭。

*ノーブルミッションはあの Frankel の全弟にあたる超良血馬で、英チャンピオンSなどGI3勝と実績も十分、さらに海外でもすでにGI馬を送り出しているが、GI勝利が5歳時と遅咲き傾向があり、近年の欧州中長距離馬離れもあってたった2年で33頭にまで減少してしまった。初年度から早くも生き残りをかけた戦いが始まる。

*ミスターメロディは今を時めく Scat Daddy 産駒、さらに早熟傾向のある父に対して古馬になって高松宮記念を制すなど一定の成長力もあり、170頭もの牝馬を集めることに成功したが、受胎率がかなり悪く産駒数は種付け数の5割未満にとどまる。それでも種付け数はあまり減らず、逆に種付け料が増額されているので、かなり需要は高いのだろう。

フィエールマンは菊花賞および天皇賞(春)を連覇するなどGI3勝をあげ、当時のディープインパクト産駒の牡馬として最高級の実績を残したが、あまりに長距離に偏った実績が敬遠されたか、社台SS入りを逃し種付け数も100頭ほどにとどまった。ただ、ノーザンファームがかなりの牝馬を送り込んでおり、一発逆転は大いにあるとみる。

ウインブライトは国内ではGIIまでの実績にとどまったが、シャティン競馬場とはきわめて相性がよく、クイーンエリザベスIIC、香港Cで3戦2勝2着1回という実績を残して種牡馬入りを勝ち取った。良血には少し遠いが、いかにもコスモヴューファーム産という泥臭さが魅力で、しぶとく活躍馬を送り出してほしい。

アドマイヤマーズは朝日杯FS、NHKマイルC、そして香港マイルとマイルGI3勝をあげた活躍馬で、父ダイワメジャーの正当後継として種牡馬入りしたが、意外に種付け数は伸び悩んだ印象。受胎率も5割強とあまりよろしくはないが、オーストラリアにも3年連続でシャトル供用されており、サトノアラジンのように海外で実績を残す可能性もある。

エポカドーロは皐月賞を制した活躍馬だが、種牡馬としての売却先が見つからず、ヒダカブリーダーズユニオンと同系列のアロースタッドに無償譲渡された。それでも50万円という安価な種付け料もあって年間50頭前後の牝馬を集めることに成功しており、ここから何とか前評判を覆すような活躍を期待したいところ。

*シスキンは Unbridled's Song を父に持つ First Defence 産駒で、愛2000ギニーやフィーニクスSを制した活躍馬だったが、繁殖シーズン中のトラブルにより20頭しか種付けを行うことができなかった。2年目以降も83頭、74頭と実績に比べると多くの牝馬が集まっているとはいえず、3年連続で50万円ずつ種付け料が減額されている。

以下、ダートで3戦無敗の*ヘニーヒューズ産駒オーヴァルエース、JBCスプリントを制したダイワメジャー産駒ブルドッグボス、デイリー杯2歳Sを制したディープインパクト産駒レッドベルジュール、札幌記念などGII3勝をあげたディープインパクト産駒サングレーザー、京都新聞杯など重賞4勝をあげたダノンシャンティ産駒スマートオーディン、日経賞など重賞3勝をあげたトーセンホマレボシ産駒ミッキースワロー、川崎記念を制した*ウォーエンブレム産駒オールブラッシュ、全日本2歳優駿を制したアッミラーレ産駒ハッピースプリント、コリアC2連覇を果たしたカネヒキリ産駒ロンドンタウンといった実績馬がデビューを控えている。

血統的に注目なのは何といってもトウカイテイオー産駒のクワイトファインだろう。2021年に生まれた産駒が血統登録されず、デビューが1年ずれ込んだが、三冠馬シンボリルドルフの系譜を受け継ぐ唯一の存在として奇跡を起こしてほしい。ステイヤーズS3連覇を達成したアルバートも日本におけるアドマイヤドンの唯一の後継種牡馬だ。林正道オーナーがノーザンファームの良血牝馬を当てており、頭数は少なくとも活躍馬が出る可能性は十分ある。ショウナンカンプ初の後継種牡馬となるミキノドラマーは種牡馬入りするも種付けを行うことはなかった。




この記事へのコメント

1. Posted by Longines 2023年11月30日 22:50
ディープエクシードはすでに産駒デビュー済みではないでしょうか
http://blog.livedoor.jp/organa_jpn/archives/52519672.html
2. Posted by Organa 2023年11月30日 22:56
記事を訂正しました。ご指摘ありがとうございます。
3. Posted by vx 2023年11月30日 23:55
先入観かも知れませんが例年よりだいぶダートに人気が偏っているような?国内路線の強化や、ダート(AW)の海外高額賞金レースに手が届くようになったのの影響がひょっとしてあるんですかね。

アドマイヤマーズは競争成績や血統の割に少なく感じますね。ダイワメジャーがまだ居たのとちょっとFeeが割高だったんですかね。セリフォスの評価にも影響しそうで産駒の出来が気になりますね…
4. Posted by さ 2023年12月01日 00:30
ディープとブラックタイド、サドラーとフェアリーキング、遡ればさらに全兄弟の関係で成功しているケースもありますからノーブルミッションそれに続けるでしょうか。
また、イクイノックスも種牡馬入りするとのことやダート路線の整備に伴い、向こう数年はトレンドの入れ替わりが激しくなるかもしれませんね。
5. Posted by 高田隆史 2023年12月01日 00:40
更新お疲れ様です。

来年の種牡馬リーディングは繁殖牝馬の質と量から、
◎サートゥルナーリア
◯ナダル
と予想します。

特にサートゥルナーリアの成績は今後のキングマンボ系全体の人気にも影響しうると思いますので初年度から期待したいと思います。
6. Posted by ひなたりょう 2023年12月01日 00:50
フィエールマンは決して長距離専門という血統ではなく、現役時代にも秋の天皇賞でアーモンドアイとクロノジェネシスの間に入る2着とスピードを証明しており、ディープインパクトの後継としてかなり期待しています。

>>4
グロースタークとヒズマジェスティ、ヴァイスリーガル(加)とヴァイスリージェントなども全兄弟で名種牡馬でしたね。
7. Posted by ジローサブロー 2023年12月01日 01:39
生産の現場ではダート三冠の情報が流れていたかのようなトレンドの変化ですね
モズアスコットとノーブルミッションのフランケル関係は個人的に注目しています
8. Posted by 成瀬朋 2023年12月01日 08:02
案の定というかダート種牡馬が結構人気を集めてる感じはする。
個人的に気になるのはキタノコマンドール、全姉にデニムアンドルビーが居たり全弟はダノンギャラクシーだったりDMMバヌーシーの最初期の目玉商品だったりとそこそこ面白そうな存在ではあるのだが。
9. Posted by 名無 2023年12月01日 08:37
モズアスコットが注目だなあこれが走るなら欧州に山程いるフランケル系種牡馬が導入される
日本の馬場に適正があれば遂にサドラー系の日本征服が始まる
あとはフィエールマンかディープ系種牡馬はパッとしないがこういう極端な戦績を持つ仔が救世主になったりする事もある
最後の切れる足は持ってたからスピードがないわけでもないからね
10. Posted by 火野れい 2023年12月01日 09:16
アドマイヤマーズはグランアレグリアを2回倒しているけど他の馬にも負けて3着と5着グランがだらしなかった印象

香港マイルでよく勝ったとは思うけど
11. Posted by 擲弾兵近衛連隊 2023年12月01日 09:21
>>9
日本だとモズアスコットはマイラーだしグレナディアはもはやスプリンターだから本場のフランネル産駒とだいぶ違いますね
12. Posted by も 2023年12月01日 10:04
キタノコマンドール、年1頭ペースでDMM募集されてますね。
頭数は血統登録2/種付4→3/4→?/2と来ているようで。
2年目は海外セリ2億超えの良血牝馬との仔が居て面白いです、
ちなみにその繁殖牝馬は次年度がコントレイル。
どんな落差だ(笑)
13. Posted by い 2023年12月01日 11:22
ルヴァンはネオユニに似て繋ぎ柔らかすぎて立てない産駒もまあまあいるらしいですが
それでもずっと数が多いんだから、それを補ってあまりあるものがあるんでしょうね
サートゥルは…これが芳しくないとレイデオロに続いて推した種牡馬が派手に転倒という事になるのでキンカメ系が厳しくなってしまいそうですね
14. Posted by 鹿 2023年12月01日 15:33
ルヴァンスレーヴ、サートゥルナーリア、ゴールドドリーム。全部成功の予感しかない。
15. Posted by 素人 2023年12月01日 18:52
フィエールマンはキレはあったけど、同じようなキレのあった菊花賞馬ダンスインザダークを超えるかどうか。あっちはニジンスキー入って重くなってしまいましたがね。
16. Posted by Organa 2023年12月01日 22:28
名前をあげられている方も多いですが、個人的な注目はフィエールマンです。あそこで天皇賞(秋)を勝っていれば社台入りもあったのでしょうが、凱旋門賞を除けば非常に安定していましたし、ノーザンの厚遇も期待の証でしょう。
17. Posted by ようよう 2023年12月02日 00:43
シスキンは来ると思います。

スワーヴリチャードしかり、
Unbridled's Song の血が入っているだけで、
早くから走れます。
今のうちにシスキンのクラブ馬買ってみようと思います。
18. Posted by い 2023年12月02日 01:08
>>15
母の父が遡るとグリーンダンサーでラインゴールドも入ってるので
重たくなる危険はまあまああると思いますね…
19. Posted by パンダコパンダ 2023年12月02日 01:54
ロマンでしかないのは承知しているけど、クワイトファイン産駒走るといいな。血の飽和云々、の話題ももう少し議論盛り上がって欲しいところ。

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