8月23日、「みつばちの里の米公開確認会」に参加しました。場所は茨城県笠間市岩間。笠間市は水戸市の西、首都圏から約100Km。南西に愛宕山、市の中央を涸沼川が流れる、穏やかな中山間地です。緑豊かな環境は水も良く、ホタルの飛び交う美しい田んぼが広がっています。この場所に、これまでにない「ネオニコフリーの生き物認証」という、新しい考え方の認証システムにかかわった方々、自治体が集まり、初めての「公開確認会」を実施しました。主催は「いばらぎ食と農ブランドづくり協議会」。参加者22名は市庁舎での概要説明のあと、確認会第一号となる生産者、生駒敏文さんの田んぼで「認証」と「生き物観察」を行ない、生駒山の田んぼは晴れて「みつばちの里の米」認証第一号として、承認されました。

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●みつばちの里

みつばちの里」は昨年より、みつばちが生きられる畑や田んぼを応援する取り組みとして、「みつばち認証」を進めています。これはミツバチが半径500m以内に生きている(ミツバチが居ない地域はネオニコチノイド系の農薬を使っていない)ことを認証し、そのような農産物にわかりやすいマークをつけ、「ミツバチが生きられる環境で作られた農産物を食べて応援しよう!」というものです。今回の確認会で検討された新しい認証システムは、この発展形という位置づけになります。

●ネオニコフリーの生き物認証

生物多様性に関する国際条約である「カルタヘナ議定書」の締約(2000年)以降、生産環境における生物多様性の保護は、田んぼの生き物観察なども含め、国内でも多く議論され、実践されるようになりました。「生き物認証」とは、生物多様性の指標となる小動物を実際に確認して、その場所(畑や田んぼ)が、多様な生物が生きることのできる豊かな環境であることを認証するというものです。

この多様性を保全し、より豊かな環境に導く方策として、有機農業を含めた化学物質の低減化が求められますが、一般社団法人日本在来種みつばち協会が提案する、今回の認証システムのユニークな点は、「生き物認証」の考え方に有機JAS認証の手法を導入し、化学物質の使用や混入の可能性を有資格者が実地に審査し、その過程には消費者も立ち会い、公開の場で判定するというところです。これらを整備するために、ネオニコネット(ネオニコチノイド系農薬中止を求めるネットワーク)にて策定した「ネオニコフリー基礎基準」を踏襲し、他の認証システムとの同等性、補完性について、FTPS株式会社が助言・協力してきました。

第三者認証に消費者や流通業者が参加することで、認証の公開性・透明性を担保するだけでなく、生産者との交流が図られるなどで認証そのものの信頼性の向上を期待する、IFOAM(国際有機農業運動連盟)が推奨するPGS(参加型保証システム:Perticipatory Guarantee Systems)という考え方を導入して、このような形式としたとのことです。


●ネオニコフリーの5原則

23日の当日は、関東全域がうだる暑さで、道路も田んぼもかげろうが立ち上っておりました。公開確認会はそんな暑い中、まずは笠間市役所岩間支所、座学にて概要の説明と共有です。全体あいさつのあと、国学院大学教授でネオニコネット運営委員の久保田裕子さんによる、ネオニコフリー認証、生き物認証のポイントについてのレクチャー。続いて有機jAS専門検査員の江原浩昭さんから、有機JAS認証の考え方についてのレクチャー。さらにはネオニコフリー認証で認証必須項目とされた、生き物観察の方法、考え方については、生きもの係(こういう肩書の方です!)の林鷹央さんから。

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                             ↑ネオニコネット・久保田裕子さん
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↑有機JAS検査員・江原浩昭さん         ↑生き物係・林鷹央さん

ここでネオニコフリー「生き物認証」の5原則に触れておきましょう……

[1]生きものの豊かな自然環境を次世代へつなぐ
[2]予防原則に則り環境創造型農業を推進する
[3]生産者と消費者の直接参加による交流を推進する
[4]生産の透明性、関係の対等性、情報の公開性の確立
[5]化学合成農薬・薬剤に頼らない生命尊重の"脱農薬社会"をめざす

……となっています。これは兼ねてよりネオニコネットが基礎基準としてきたもので、今回の認証システムが、ネオニコフリーに準拠している、としたゆえんです。基準の特徴としては、すべての基準項目を、「必須」または「推奨」として明示していること。この「必須」「推奨」のレベルにより、必須項目クリアを通常の認証とするほか、「ネオニコフリープラス」という上位概念が想定され、基準全体として階層をなすように設計されています。

運用面での実施可能性など、細かな項目の精査はこれからだそうですが、この「ネオニコフリープラス」は、上記5原則の最高位となるので、必然的に、有機認証またはそれ以上の水準がイメージされているようです。ここらへん、既存の認証システムとの整合性も視野にしているとのことで、生産者から見ても、消費者から見ても、より実効性のあるわかりやすい区分けになるといいと思いました。

●第三者認証を公開の場で進めます

室内での会議を終えると、午後は公開確認会の会場、生駒敏文さんの田んぼに移動です。
お日さまは真上、時間的にも暑さがピークでしたが、確認会の手順の最初は、専門検査員による認証チェックです。これは、認証を受けようとする生産者から、認証主体となる(社)日本在来種みつばち協会あてに提出された認証申請書を元に進められました。

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公開確認会は、専門検査員と生産者との真剣なやりとりで進んでいきます。
写真左は江原さん。右は生産者の生駒敏文さん。

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いつも有機JASで進めている手順をほぼ踏襲して、申請書に沿って必要な質問・確認作業を進めていくのですが、生産者との2人のやりとりを、他の参加者全員が確認しながら進むというのが決定的に違うところ。時に、一般の方にわかりづら項目などは、説明なども加わりますから、検査員の負担は大きいように思いました。

チェックの流れはまずほ場。ほ場と周辺環境のチェックです。流入がないか、隣接ほばとの距離が保たれているかなど。有機JASの場合は生産者が自ら作成することになっている内部規定に沿ったチェックとなりますが、ネオニコフリー認証の場合はまだ決まっていないとのことでした。基準の主旨に照らし、どの程度の厳しさで運用するのかは、とても大切な部分です。厳しくし過ぎて「PGS:参加型保証システム」とのバランスを欠くのも賢明ではありません。

●田んぼ総幸福度?

認証確認に続き、ネオニコフリー認証で必須項目となっている、田んぼの生き物観察です。これは、田んぼや、田んぼ周辺の生きものの種類をカウントしていくもので、その資料として、今回の観察会を指導してくださった、生きもの係の林鷹央さんが、「田んぼ総幸福度シート解説」という資料を提供してくれました。

これは、田植えから中干し時期の田んぼの生態系を想定し、発見されるだろう生き物をA,B,C,外来種の4グループに分類した点数表。これをもとに、実際の田んぼで見つかる生き物で点数を加点して、その総得点を、その田んぼの多様性指標(田んぼ総幸福度:Gross Tambo Happiness)として活用していきましょう、というものです。

どこの田んぼにもいる生き物をCグループとして1点。このCが充実することで増えるのがBグループで3点。Bはひと昔までは豊富だった種だそうです。さらには、Bが充実してはじめて生育するAは5点。希少な種の集まりです。逆に外来種は、放置すると日本の生態系に影響を及ぼす可能性があるとして-2点、となっています。こんな考え方で点数を足していくと、田んぼの生物多様性が、言葉通りにわかるというのがこの仕組みで、水路や魚道など環境配慮のある田んぼで50点前後、近くに森林があったり、山間地などの小規模の田んぼなどで50~80点、戦前の、本来の伝統的な田んぼで80~100、とのことです。


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補虫網片手に田んぼGO!生き物の名前がスラスラ出てくる林さんの解説付きで、大人も楽しい生き物観察。田んぼの傍らで目をつぶって、周辺の音に耳を澄ませ聞こえてくる生き物の声。畦畔のバッタやカエル、用水路には魚や水棲昆虫……。確かに、田んぼは生き物の宝庫でした!

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Aグループに分類されるタイコウチが2匹も! なんと左上のタイコウチはみんなが見ている前で、小魚の捕食場面をご披露!よく見るとつかまえているのがわかります(^<^)

……林さんに促され、小一時間ほども捜しまわったでしょうか。用水路ではなんとAクラスの上位種、タイコウチが2匹もいて、一同大喜び。このほか絶滅危惧種のニホンアカガエルなども発見され、生駒さんの田んぼ、そして田んぼの周辺が、思いのほか多様な小動物でにぎわっていたことがわかりました。

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今回確認された生き物の名前を列挙。44種類いて、55点!とのことでした(^<^)


●ネオニコフリー米第1号が承認

認証確認、田んぼの生き物観察の2つの行程を終了し、会議場に戻った一行で、今回の確認会の最終確認が行われました。

まず、認証確認の立場からは有機JAS検査員の江原さんより、申請者の生駒さんはネオニコフリー認証の理念や考え方を十分に理解しており、確認をした実地においても、特に問題になるようなことはなく、ネオニコフリーの条件を満たしているのではないかとの講評がありました。

次に、生き物調査の立場で、林さんからは、今回の田んぼの生き物観察では44種の生き物が確認されたこと、ざっと計算したところ、総幸福度点数では55点という、まずまずの点数だったことが報告されました。

FTPS代表の徳江倫明からは、認証基準内容、確認会の進み方などを踏まえ、判定員の立場でいくつかの講評がありました。

[1] 生き物観察の意義は大きい。実際に立ち会ってみたが、他の何より状況が分かると感じた。その場所の生物多様性や、安心感など、消費者にとって、これはおもしろい取り組みと言えるだろう。
[2] 認証基準として、ネオニコチノイド系農薬、フィプロニル、有機リン系農薬は絶対に使わない!といった基本部分をもう少ししっかり、はっきりと打ち出すと良いのでは?
[3] 認証基準の最低ランクであるネオニコフリーから有機認証レベルまでに、認証の幅が広いが、公開確認会を開始する前に、あらかじめ、その日確認する圃場をどのレベルで認証しようとするのかを明確する必要があるのではないか?

以上の講評を踏まえ、事務局である、いばらき食と農のブランドづくり協議会、高安和夫さんから、今回の確認会を行なった、生駒敏文さんの田んぼで生産される、平成24年産のお米を、ネオニコフリーのお米として認証された旨が確認され、これが全会一致により承認。このお米は今後、「みつばちの里」のお米として、今回承認されたことを記す認証シールをデザインし、添付のうえ、デビューするとのことでした。

参加された皆さん、よかったですね。ホント暑い中お疲れ様でした!

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