R0005355


その日が近づいてきました。


R0000036

ビルの取り壊しが2月初旬に正式に決まり、
いよいよ別れの時がやってきます。

ベースカフェから足かけ9年。
支えてくださった方々に心から御礼申し上げます。
ほんとうにありがとうございました。


初めてあのビルに出会ったときのことを、最近よく思いだします。

かつてヒトトのあった場所にはfloorという店がありました。
凄いカフェがあるらしいという噂をきいて
妻と二人で足を運んだのはまだ僕が20代半ばの頃。

あのビルに入る時は本当に緊張したなぁ・・・。
元キャバレーだったビル全体には、何か人を寄せ付けない
雰囲気が漂っていました。

不安と好奇心で心をいっぱいにしながら、
ガタガタの狭い階段を登りfloorのドアを開けた時の驚きをといったら。
今でもハッキリとあの情景を覚えています。

 古いコンクリートの床、
 むき出しの梁、
 グレーの美しい壁、
 錆びた窓枠とヒビの入った窓ガラス。

モダンデザインも古いアンティークも
年代も色も素材もバラバラで、
しかし絶妙のバランスで配置されている椅子やソファー。
店に入ってあんなにドキドキしたのは生まれて初めての経験でした。

2階のラウンダバウトのかっこよさにも痺れたなあ。
どちらもオーナーが同年代だと知った時はクラクラしました。
そして心から憧れました。


R0000035

その後、28才で吉祥寺にオーガニックベースを立ち上げたのも、
このビルの近くで成長したかったから。
32才の時、floorのオーナーの森田さんからこの場所を引き継いだのも、
ただただ、あのビルをあの場所を愛していたからです。


だからこそ、自分があの場所に店を作るという段階に入ったときは、
毎日吐きそうなぐらいのプレッシャーでした。
あの場所を大事にしている人たちをガッカリさせるような
店には絶対にしちゃいけないという義務感に押しつぶされそうだった。

たかだか棚の位置を決めるのに、何日も何日も悩んで。
楽しいなんて一ミリも感じなかったな(苦笑)
仕事をしていて「怖い」と思ったのは後にも先にも、あの時だけです。


文章を書きながら、あのときの若々しい思い出が
昨日のことのように思いだされます。


 懐かしいなぁ。

 夢のような時間でした。


取り壊しは勿論寂しいけど、
9年もあの場所で店をやれたことは、本当に幸せでした。




みずからDM-layout-02

いよいよオーラス。

さまざまな想いが心に浮かぶ中、
吉祥寺ヒトトとして最後の展を企画しました。

ーー

 大橋弘 写真展「みずから」

  期間│2016年1月7日[木ー1月31日[日]
  時間│12時─22時
  会場│食堂 ヒトト
  ※会期中 火曜日休み
  ※水曜日は展示のみ 17時まで 

  公式ホームページはコチラ

ーー


大橋さんが30年撮り続けてきた美しい苔の写真と共に、
ヒトトの閉店を迎えたいと思います。

苔むす、という言葉もあります。

戦後の吉祥寺の変化を静かに見守ってきたこのビルの最期。
今まで訪れてくださった全ての方の記憶が、
想いが、その振動が、永く永く残っていきますように。
祈りを込めて。


年明けの営業は1月7日から。
ヒトトの最終営業日は1月31日。

皆様のお越し心からお待ちしております。

みずからDM-layout-04