◯岩崎さんの雲仙・種採り勉強会

  |雲仙・岩崎政利さんの農園にて
  |2016年10月28日

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雨ときどき曇り。

ディスカッション中心の1日。
ちりめん南瓜、冬瓜の種どり。
島大根の間引きも。

参加者はいつもの雲仙・若手農家チームの4人と、
八百屋の金子さん。そして僕。デザイナーの古庄くんはお休み。






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<種どりを始めた頃の岩崎さん>

岩崎さんが種どりを始めたばかりの頃、
30年以上前のことを聞いてみた。


地域の人たちに

「岩崎んとこのバカ息子」

とよく言われていたそう。
「みんなそうよね。あの頃の有機農業者は奇人変人あつかい」
とカラカラ笑う岩崎さん。

最初、7人の仲間とはじめた種どりも、
一人やめ、二人やめ、気がつけば、
岩崎さんたった一人になっていた。
あとから種どりをはじめた人たちも、長くは続かなかったそう。

この研修会にあつまった僕らも7人。
誰に一人欠けることなく進んで行きたい。




<いま、有機農業が難しい>

岩崎さん曰く、
昔は慣行農業をしていると売値が安すぎて
生活が立ち行かなくなることも農家も多く、
「豊作貧乏」になってしまうことが多々あったそう。

しかし、ここ数年は逆の現象。

野菜は作れば売れる。
わざわざ有機野菜や種どり野菜を作る必要もない。

こういう時代に有機・種どり野菜をするのは
時代に逆行しているように感じることもある。
でも、そんな今だからこそ農家は
踏ん張って工夫して前に進まなければならない。



<温暖化で害虫が発生>

この秋は雨が多くて温度が高く、
いつもより害虫の発生が多いと岩崎さん。

今年は秋晴れがなく、冬になっていく。
台風に長雨。不安定な気候の中、
野菜たちの生育が悪い秋になってきている。

「温暖化の中で、オーガニックがますます厳しくなってきた」
という岩崎さんの嘆きは、
世界中の有機農業者の声ではないだろうか。








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<有機農業者の自立について>

▽畑の大きさ

岩崎さんは、畑は3町歩。
毎年50品目以上を出荷している。

野菜中心、有機農業で自立するのだったら
2町5反〜3町5反は作らないと自立は難しいそう。
かなりの広さだ。

「畑の大きさ=収入だけんね」

と岩崎さん。

岩崎さんの野菜はほぼ種どり野菜。
しかも農業だけで自立している。
実際に種どりの現場に立ち会うと、
それが途方もなく大変なことだと実感する。

全ての野菜を種どりするのは難しい。

若手は、とにかく焦らないことが大事。
得意な野菜を一つ一つ増やしていくことが肝要。
そして、ある程度、大きな畑をマネージする実務能力が
必要になって来る。 

精進あるのみ。


▽借地か、自分の土地か

新規就農する場合、畑をどう確保するのかが、大きな課題。

いい場所はなかなか借りられない。
例え借りられたとしても、いつ「返してほしい」と
言われるかわからない。

岩崎さんの場合は、自分で購入した土地と借地をうまく
バランスさせている。借地も10年契約など、長めの契約。

半永久的に借りられる場所を探すことが、
とても大事になる。


▼せめて、昔ながらのF1種の野菜を育てよう!

在来種の野菜だけで生活していくのは難しい。
そうするには人間国宝級のスキルが必要になる。

若手農家へ向けて
「種どり野菜とF1種野菜、半々ぐらいがいいかもしれんね」

と岩崎さん。

F1種野菜をつくるなら、
「昔ながら」のF1種を、と岩崎さんは薦める。

新しく育種された種は、不自然な要素が多々入っている。
でも、昔のF1だと、いい野菜はたくさんある。
そういう種を見極める力も、若手には身につけてほしいと
岩崎さん。



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<加工品の可能性>

岩崎さん曰く

「多品目つくっていると、加工品は難しかね。」
の一言。

岩崎さんも昔はチャレンジしたことがあるが、
いまは全くやるつもりはないそう。

ただ出荷できない野菜を
「びっくりするほ捨てている」のは事実。

畑と加工場と出荷場が、近くにあって、
かつディレクションできる人材を
地域で育てていく必要性を皆が感じている。

できることなら、
そのディレクションする役目を、僕が担いたい。




▼種どり野菜は、間引き菜が大量に・・・。

F1だと発芽率が高いため、点播きが可能。
間引きの必要がないことが多い。

しかし、種どり野菜は、たとえば大根やカブなどは
発芽不良などの不安から基本的に少し厚めの条播きをする。
そうすると、自然と間引きが必要になる。

この間引きが、作業としてほんとうに大変。

この作業をするだけで、
「種を買いましょうよ」と心が折れる若者が
いてもおかしくない。
そして、間引き菜は、足が早く、出荷されずに
その多くは捨てられる。

岩崎さんの畑でも大量の間引き菜が破棄されている。
種どりで、無農薬で、とんでもなく美味しい間引き菜が!

こうしたことを考えても、
破棄するしかない野菜たちの有効利用のためにも
加工の仕組みは、ぜったいに作りたい。




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島大根の大量の間引き菜たち。 なんとか活用したい。



<在来種には料理人が必要>

ちりめんかぼちゃは、生が美味しい。
かぼちゃを生で提供するのは、素人はなかなか考えつかない。
これは、料理人が食べ方を発見した例。

料理人が、その素材の美味しさを発見することで
在来種野菜の価値が輝く。

たとえば、岩崎さんの畑の島大根。
これは鹿児島在来の大根だが、
ここ10年ほど作るのをやめていた。
が、ここ数年、レストランからの需要があり、
再び作りはじめている。

また、熊本在来の平家カブは、今、何年も休ませている。
ただ、美味しい料理法が見いだせれば、また作りたいそう。

調理法さえ見つかれば、また作りたい野菜が
沢山ある。料理人にどんどん試してほしい。

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ちりめん南瓜は生がおいしい。



<伝統と物語をつくろう>

単に、「種どり野菜をつくろう」では
地域で長く続いていかない。

「伝統と物語を」
と岩崎さんも何度も何度も繰り返す。

僕らも「雲仙チームで伝統をつくっていこう」という
合言葉が、いま全員で共有されている。

岩崎さんが守ってきた30年という時間、
そして80種にも及ぶ種を、
一人で継ぐのは不可能に近い。
僕らは、チームでこのバトンを受け継いでいきたい。

幸い、このチームには、適材低所に人材がいる。
このメンバーで、伝統をつくっていきたい。
そのために「新しい流通」を作りたい。



<ブームの怖さ>

岩崎さんは、ブームを嫌う。
おそらく種が、ブームとして消費される姿を
見たくはないのだろう。
心から種を愛する岩崎さんだからこそ、その想いは強い。

たとえば、3.11の時のこと。

放射能を心配して、九州産の野菜が飛ぶように売れた。
しかし、それもすぐに収まっていった。
何も解決していないのに。

たとえ、注目を浴びたとしても
決して浮かれないことが大事だ。

種どり農家は珍しい存在。
ともすれば、取材を受けたり、
脚光を浴びるときもしばしばある。
農家は、そんなことに、一喜一憂してはならない。
たんたんと、流されず、心から待ってくれる人に
野菜を届けていこう。
折に触れて、チーム全員で声をかけあっていきたい。



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雲仙種どりチーム


<流通とともに、みなで成長しよう>

生産者も流通(八百屋)も、
利益がでなかったら、ゲームオーバー。
理想だけでは決して続けていけない。

日本の農地で、オーガニックで農業をする農地は
全体のたったの0.3%。(例えばフランスは全体の3.8%)
しかも、そこには見かけの有機農業もふくまれるため、
本物のオーガニックは0.1%以下だろう。
そしてその0.1%のうち、在来・固定種の野菜の農園は
ほんの、ほんの一握り。


劇的に種どり野菜の消費は増えないだろう。
だからこそ、一人一人の台所に深く
浸透していくことが大事になる。

そこで、「野菜の物語」を伝える必要がある。
それを伝えるのが、流通の役割。

ただ、野菜を流すだけなら、結局は
「わかりやすい味、揃ったカタチ、安い値段」という
価値基準の流通に落ち着いていく。
種どり野菜は滅びていくしかない。

だからこそ、雲仙では、
生産者と流通が一体となって、
ともに成長する道を切り開いていきたい。


このことは、チーム内で何度でも
何度でも共有して進んでいきたいとおもう。





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<壊滅的な被害をうけた鹿児島・垂水の山田くん>

9月20日、台風16号に伴う豪雨で
仲間である、垂水の種どり農家の山田一生くんが、
壊滅的な被害を被りました。

山田くんに提案して、少しでも被害の穴埋めに
なるようにドネーション付きの新米の販売を、
種市として提案しました。

☆山田くんのドネーション付き新米の販売、詳細はこちら☆


どうかご協力のほど、宜しくお願いいたします。



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文字通り、マイナスからの再出発。山田くん、がんばれ。



<もはや異常気象が当たり前に>

台風しかり、長雨しかり、干ばつしかり、大雪しかり、
今年も全国的に異常気象が多発しました。

気候の影響をうけやすい種どり農家や有機農家は
至るところで大きな被害を受けています。
今年、廃業した知人もいます。

このまま異常気象が続くと日本の
種どり・有機農家が激減してしまうかもしれない。
ほんとうに。




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台風と豪雨で大きな被害をうけた鹿児島県・垂水



<新しい枠組みをつくりたい>

災害で被害をうけてからの対応ではもう、
間に合わない。

災害後に対応するのではなく作付けの段階で、
消費者が生産者とともにリスクを分担する仕組みの
必要性を、強烈に感じています。


種を誠実に守っている農家と
その姿勢を支持する消費者が

自然と出会う枠組みを作りたい。


一つ、確かなイメージがあるので、
次の種市までには発表できるよう、
そのイメージを練っていきたい。

焦らずにじっくりと。
種といっしょに。


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