4-4. 施設職員と連携する
避難所はほとんどの場合,地域の公的な施設に設けられます。そこには施設の運営に関わる職員がいます。上でも述べましたが,彼ら彼女らは施設の職員であると同時に,多くの場合,被災者でもあります。このような複合的な立場がいかにつらいものであるかは容易に想像できると思います。被災者として生き延び生活を安定させることを目指しつつ,施設の職員として他の被災者のケアを余儀なくされ,さらには施設の維持管理も怠るわけにはいきません。
例として,学校が避難所となっている場合を考えてみれば分かりやすいでしょう。被災者は避難所(=学校)での少しでも快適な生活を求めるでしょう。しかし,その要求にすべて応えていたら,生徒・児童に対する教育は立ちゆかなくなります。一方で,教育のためだからといって,被災者に上から目線で我慢を強いるわけにもいきません。これら相反する要求の調整を図りつつ,自身も被災によるダメージに立ち向かわなければならないのですから,そのストレスはとても大きなものになります。
ボランティアがそのような職員グループとの関係を大切にすることは2つの点で大きな効果を持ちます。1つは,言うまでもなく,疲れ果てている職員たちの負担を軽減できることです。もちろん,ボランティアが施設の維持管理の仕事を肩代わりすることはほとんどの場合できないでしょう。したがって,施設の職員が担っていた被災者への対応を彼ら彼女らに代わって,あるいは連携しながら行うことになります。それは当然,職員たちの負担を減らすことに役立ちます。
2つ目の効果は,施設職員たちがある意味では被災者にとって「外の人」としての立場も持つことから生まれます。上で述べたように,施設職員は職務上,被災者のニーズのみを優先させることはできません。結果として,職員グループと被災者グループとの間にはある種の緊張関係があります。そのような緊張関係を持ちながらも,困難な状況を一緒に切り抜けてきた仲間としての一体感も持っているわけです。
施設職員の「外の人」としての特徴に目を向ければ,それは「よそ者」としてのボランティアの立場に近くなります。人は自分と近い立場にある者は比較的抵抗なく受け入れます。つまりボランティアは施設職員には比較的受け入れられやすいのです。
そのような施設職員は同時に被災者グループにとって「内の人」でもあるわけですから,職員と手を携えて仕事をするボランティアを,被災者グループとしてもないがしろにするわけにはいきません。つまり,施設職員グループとの関係を良好に保つことで,ボランティアは避難所に溶け込みやすくなるのです。
ただし,避難所によっては職員グループと被災者グループとの間に深刻な対立がある場合もあります。そのような避難所でどちらか一方との連携を重視することはかえって対立を煽ることになりかねません。だからといって下手に仲裁しようとすることは控えた方が賢明です。失敗すればどちらからも嫌われることになるかもしれないからです。そのような場合には,とにかくよそ者としてひたす自分のできることに専念するに限ります。