第一報のメールを受けたとき、最初は何が書かれているのか分からなかった。何度か読み返して、書かれている文章の内容は分かった。でも、それが何を意味するのかを真に理解するためには、送信者に確認する必要があった。電話して確認した。本当だった。彼が死んだ。31歳の若さで。
 明晰夢をよく見る。その際「夢から覚めろ」と願って覚めなかったことはない。2週間が過ぎた今でも、気がつくとこれが夢なら覚めてくれと願っている自分がいる。でもきっと覚めることはない。彼は死んだのだ。多くの優れた研究業績を残して。
 通夜式で繰り返し聞こえてきたのが米津玄師のLemon。ピアノ好きの彼がおそらく最後に弾いていたであろう曲ということで、ご遺族が葬送曲として選ばれた。今、町を歩くと、あるいは朝活で通っているジムでもこの曲が良く流れる。聞こえる度に彼のことを思い出す。彼が愛した、そして彼を愛した多くの人たちもLemonを聞く度に彼を思うだろう。彼はまだ生きている。皆の心の中に。