犬山劇場 『 大崎ポルシェ太郎 ~ 成功者Oのスクラップ&ビルド ~ 』

必要なモノ: ナーフ・ぬいぐるみ・レッドカード

 

   効果音: エンジン音・アイドリング音

 

一番太郎: ボクの名は、大崎ポルシェ太郎

      売れない小説家だったボクは、念願の芥川賞をゲットし、

      一夜にして富と名声を手に入れた。

      まさに人生の勝ち組、今のボクに怖いものはない はずだった

 

   BGM: 羽田圭介作曲 『指先の逸脱』

  https://www.tbsradio.jp/360132

 

中谷: 大崎ポルシェ太郎 ~成功者Oのスクラップ&ビルド~

 

一番太郎: おう、ナカタニくん! こっちこっち!

 

中谷: 大崎先生! オレ、ナカヤです。いい加減、覚えてくださいよ!

 

一番太郎: ゴメン、ゴメン、新潮にナカタニ」って編集がいてさあ、つい

 

中谷: ま、芥川賞作家は引っ張りだこでお忙しいでしょうから、仕方ないですけどね

    それにしても、すごいですね! このスポーツカー

 

一番太郎: いやぁ、芥川賞取ってから、テレビ出まくりでさぁ

      街中歩いてても声かけられるし、

      あんまりダサい車にも乗ってらんないじゃん?

 

中谷: もしかして、買ったんですか?

 

一番太郎: うん、買っちゃった!  ポルシェ911 カレラ カブリオレ!!

 

中谷: わー、すっげー! 「わ」ナンバーじゃない!

 

一番太郎: まあ、ポルシェと言えば、男のロマンじゃん?

      いきおいで買ったはいいけど、ボク免許もってないんだよね~

      それで今日は、中谷くんに運転してもらって、ナンパでもしようと思ってさ

 

中谷: え~、オレ、ペーパーですよ? こんな高そうなクルマ、運転できませんって

 

一番太郎: 大丈夫、大丈夫、たったの1600万だから!

 

中谷: それ、すっげープレッシャーじゃないっすか!

 

一番太郎: お、向こうから、マブいナオンが、来たぜ!!

      お嬢さん! これから夜景でも見に、湾岸ドライブ行きません?

 

りんこ: え?

 

中谷: 先生、いきなり、なにナンパしてんすか!

 

一番太郎: 大丈夫、任せとけって! ボク、芥川賞作家だよ? 

      テレビにも出てる有名人の誘い、ことわる女の子なんて、いるわけないって!

      ね! お嬢さん!!

 

りんこ: いやぁ 知らないです ごめんなさい…

 

一番太郎: え

 

中谷: 世間の芥川賞に対する認識なんて、そんなもんですって

 

一番太郎: そっかぁ だったら、このクルマどうよ?

      ポルシェだよ? 女の子って、カッコイイ車、好きでしょ?

 

りんこ: いや、それもべつに

 

一番太郎: ええッ!?

 

りんこ: だってほら、オープンカーって、せっかくセットした髪、乱れるし、 まだ夜は冷えるし

 

中谷: そんなの、ルーフ閉じればよくね

 

りんこ: そういう問題じゃないんだよね

     車高低くて座りにくいし、テレビも見れないしさ

     おまけにペットボトル・ホルダもついてないし

 

一番太郎: えッ なにそれ

      ポルシェは男のステータスだよ? 金持ちの証だよ?

 

中谷: そうそう、ちょっと不自由なくらいが、男のこだわりって感じで

    カッコいいですよね

 

りんこ: え~、ぶっちゃけそんなの、男の自己満じゃない?

     そんなお金あるんだったら、アルファードの方が良くない?

     着ぐるみだってたくさん積めるし

 

一番太郎: オーマイガー!! なんてこった!

 

   BGM: 悲しい曲

 

一番太郎: せっかく苦労して、この世のすべての富と名声が手に入るといわれた芥川賞をゲットしたのに、

      ぜんぜん、モテないなんて!

 

りんこ: だいたいナンパするのに男二人組ってどういうこと?

     わたし、荷台にでも乗ればいいわけ!?

 

一番太郎: え?

 

中谷: しまったぁ ポルシェは二人乗りだった

 

りんこ: もっと早く気づけよ!

     だいたい女は男にロマンとか求めてないから!

 

一番太郎: ガーン そうなの!?

 

りんこ: そもそもクルマに浪費するような男、どんなに稼ぎよくても貯金とかなさそうだし、

   結婚しても生活力ゼロで、すぐ浮気しそうだもん…

 

一番太郎: そ、そんなぁ…

   ボクはいったい、なんのために芥川賞を取ったんだぁ!

 

中谷: お嬢さん! うちの先生はメンタルが弱いんです!

    どうか、ポルシェをdisるのはそれくらいにしてやってくださいよ

 

   BGM: 悲しい曲フェードアウト

 

りんこ: はん! 金とポルシェをエサにオンナ口説くような芥川賞作家、

     今すぐ豆腐の角に頭でもぶつけて死ねばいいのよ!

 

一番太郎: ハッ! 中谷君、今すぐ駅前のライフで豆腐を一丁、買ってきて来てくれたまえ!

 

中谷: なにをバカなこと言ってるんですか、豆腐くらいじゃ死ねませんから!

 

一番太郎: それじゃあ、木綿で頼むよ! 木綿なら、絹ごしより堅いはずだから!

 

りんこ: フッ… 芥川賞作家とは名ばかりの、とんだ道化だな 大崎ポルシェ太郎

 

一番太郎: え?

 

   BGM: vsグレンデル戦闘曲

  りんこ、カウンターからナーフを取りだす

 

中谷: そ、それは違法ナーフ あんたいったい、何者だ!?

 

りんこ: あたいかい? フッ 誰も知らないだろうねぇ

     貴様のせいで闇に葬り去られた

     第153回 直木賞作家とは、あたいのことさ

 

一番太郎: な、直木賞作家

 

中谷: 直木賞といえば、芥川賞と共に双璧をなす、権威ある文学賞じゃないか

 

りんこ: ああ、それにも関わらず、

     この会場で第153回直木賞の受賞作品とあたいの名前を知ってるヤツは、何人いる?

 

一番太郎: たしかに、会場のみんなが ポカーンとしている

 

りんこ: それもそのはずさ 

     通常、純文学の芥川賞よりも、エンタメ性の高い直木賞の方が注目され、

     何十万も売れる大ベストセラーになる

     なのに… 受賞したのがたまたま第153回だったおかげで

     あたいは誰からも返りみられず、忘れ去られた

 

中谷: 第153回といえば… 大崎先生といっしょに芥川賞をダブル受賞したのが…

 

一番太郎: そう、お笑い芸人の、ピース又吉

      たしかにボクは、彼の人気に便乗して、「じゃない方」作家として注目を浴び、

      テレビやラジオで引っ張りだこになった

 

中谷: つまりあんたは、又吉さんや大崎先生のせいで目立てなかったことに、嫉妬してるのか

 

りんこ: ああ… 気に食わないね!

 

一番太郎: いやー、そいつは悪かったよ

      だけどボクだって、こんなにテレビでちやほやされるなんて思ってなかったんだ

      しかもまさか、蛭子さんの後がまとしてローカルバスの旅に出るなるなんてさ

 

りんこ: うるせー、おもいっきり芸能人ぶったあげく、

    片手間で書いた小説を、ラジオの新番組で宣伝しまくりやがって!  許さん!!

 

  りんこ、一番太郎にナーフを突きつける

 

中谷: 大崎先生! 気をつけてください、どうやらその銃、ホンモノですぜ!!

 

一番太郎: なんでこの法治国家ニッポンに、違法ナーフが

 

りんこ: フッ 歴代の直木賞作家は新宿ゴールデン街を根城にしているからね

      こんなもん、闇ルートでいくらでも手に入るのさ

 

中谷: たしかに、歴代の直木賞作家はコワモテでハードボイルドなおっさんばっかだもんな…

 

りんこ: これまで直木賞と芥川賞両方を手に入れた作家は存在しない

      だから大崎ポルシェ太郎! 貴様の芥川賞を力づくで奪い取り、

      今度こそあたいが、文学界に君臨してやる! 覚悟しな!

 

   BGM: 戦闘曲

 

一番太郎: おもしろい!

      直木賞バーサス芥川賞、世紀の大決戦ってわけか

      受けてたってやろうじゃねえか!

 

中谷: 先生、そんなの… 勝ち目あるんですか!?

 

一番太郎: ああ 太宰治ですら手に入れることのできなかった芥川賞は

        いつの時代も嫉妬のマトとなり、常に命を狙われた

        だから芥川賞作家にのみ継承される、門外不出の必殺技があるのさ

        はぁあああああああッ!!!!!!!!

 

りんこ: フッ なにが必殺技だ

     引きこもりニートの芥川賞作家がどんなにあがこうと、

     我々、アウトローな直木賞作家の前では赤子同然!

     大崎ポルシェ太郎、死ねぇ!

 

   BGM: 戦闘曲フェードアウト

   効果音: 銃声

   一番太郎、倒れる。そのまま動かない

 

中谷: お、大崎先生!

 

りんこ: なんだ、口ほどにもない

 

中谷: あ、あんた… なんてことを…

 

りんこ: ん? なんだい? おまえさん、あたいとやりあおうってのかい?

 

中谷: いえいえ、めっそうもございません!

    誰よりも時代を先取りして波に乗るのが編集の仕事、

   のってるやつにはのっていけ、ついてるやつにはついていけって福山雅治もってますからね

    あっしはどこまでも先生に着いていく所存でやんす えーと

 

りんこ: おまえ、編集者のくせにあたいの名前も知らないのか

 

中谷: すいやせん

 

りんこ: トリプルエーだおぼえとけ

 

中谷: え、あの、今話題の!?

 

りんこ: あたいは女にビンタなんかしないよ…

    ノブレス・オブリージュ… 作家たるもの、つねに高潔さが求められるからね…

    さて、それじゃ、まずは手始めに銀座寿司接待でもしてもらおうか

 

中谷: いやー、ザギンでシースーなんて、編集の安月給じゃ、ちょっとキツいっすねえ

 

りんこ: そんなの経費で落とせよ! 使えねーなー

 

   効果音: 物音

 

りんこ: ん? なんだい? 今の音は

 

   効果音: エンジン音

 

中谷: ポルシェのボンネットから聞こえてきやしたねえ

     エンジンでも故障したのかな?

 

りんこ: いや、そんなワケないだろ

 

中谷: え?

 

りんこ: ポルシェってのは、リアエンジン、リア駆動だから、エンジンは後ろについてんだ

     ボンネットの中はトランクルームで、カラッポなはずだろ?

 

中谷: え、そうなんでやんすか? それじゃあ

 

   BGM: 不気味な曲&きしむ扉の音

 

中谷: ボ、ボンネットが開いて、何か出てきやしたよ

 

りんこ: ま、まさか

 

   効果音: 悲鳴

 

中谷: で、出たー

 

  カウンターの下から、ぬいぐるみの一番太郎登場

 

一番太郎: やれやれ、いくらポルシェのトランクが広いといっても、さすがに半日も入ってると肩が凝るぜ

 

りんこ: き、貴様は大崎ポルシェ太郎 生きていたのか すると、あそこに倒れているのは

 

一番太郎: あれは着ぐるみさ

 

中谷: 着ぐるみだと!?

 

一番太郎: ああ、さっき言ったろ? 芥川賞作家はつねに命を狙われているって

        だからどんな時も用心をおこたらないのさ

 

りんこ: そんなバカな!?

 

一番太郎: 直木賞作家、トリプルエー、今度はボクの番だ! 必殺!!

 

一番太郎、起き上がって、てきとうにカッコ良さげなポーズをとる

 

一番太郎: 羅生門・アギト!!

 

   効果音: 風切り音

 

中谷: こ、これは、文豪ストレイドッグスでもおなじみ、芥川龍之介の異能!!

 

   効果音: 爆発

 

りんこ: うわー、やられたー バタッ

 

   効果音: ホイッスル

 

中谷: 大崎ポルシェ太郎、レッドカード!

  中谷、レッドカードをかかげる

 

一番太郎: ええッ!?

 

中谷: 作家はつねに、ノブレス・オブリージュ… 高潔であらねばならない…

   謝罪会見した方のトリプルエーみたく、女性に手を挙げるなど、もっての他! 芥川賞、没収だ!

    

一番太郎: ちょ… ちょっと待ってよ! だって、あっちから仕掛けてきたんだぜ!?

 

中谷: 大いなる力には、大いなる責任が伴うのだ…

 

りんこ: 伴うのだ!

 

一番太郎: そんなの、ズリーよ!

 

中谷: つべこべ言ってないで、さっさと出せ!

 

一番太郎: ええッ… な、何を?

 

中谷: 芥川賞に決まってんだろ!

 

一番太郎: じゃ、じゃあ、これで…

 

   BGM: 炎上ボンバー

  ジェスチャーのみで、よくわからない謎のやりとりがされる

 

りんこ: おらおら、全部よこせっつーんだよ! ああん?

 

一番太郎: ご、ごめんなさい… もう、これくらいで、かんべんしてください…

 

中谷: 文春砲ぶっぱなすぞ、コラ!

 

一番太郎: こうしてボクは芥川賞を剥奪され、ポルシェのローンだけが残ったのだった…

 

山口勝平: はい、というわけで出演は、ポルシェ太郎こと大崎一番太郎、山口勝平!

 

中谷: 『文藝春秋』編集者、中谷一博!

 

りんこ: 直木賞作家、林りんこでお送りしました! 

    そして、BGMには芥川賞作家の羽田圭介さんが作曲した『指先の逸脱』を使わせていただきました! 

    次回放送は5月22日(水)ヤング放送、29日(水)オトナ放送となります!

<終わり>