2015年11月11日

拝啓 ソニー不動産様 〜おうちダイレクトについて〜

ガイアが俺にもっと輝けと囁いているので、どうしようか悩みましたが書きます。


ソニー不動産さんによるおうちダイレクトサービスが始まりました。
おうちダイレクト

「おうちダイレクト」


おうちダイレクトの内容については、下記をご参照下さい。

新しい不動産売買プラットフォーム『おうちダイレクト』開始のお知らせ / プレスルーム - ヤフー株式会社

マンション売却の選択肢増やす新プラットフォーム開設/ヤフー、ソニー不動産|R.E.port [不動産流通研究所]



まぁ既に一周回っていますので、各ブログさんでも似たような話は挙がっています。

ヤフーとソニー不動産が仕掛けるマンション流通革命「おうちダイレクト」とは? | マンション購入を真剣に考えるブログ

おうちダイレクト(yahoo×ソニー不動産)のメリット・デメリット | 南大阪の住まい相談・リフォーム・新築

ヤフー×ソニー不動産「おうちダイレクト」一般媒介と利用者規約で物件の囲い込み体制か | FDJオンライン

新しくて古い「おうちダイレクト」のソニー不動産とヤフー | 未経験から始める不動産業

新たな合法的囲い込みでしょ?「おうちダイレクト」 | 府中市不動産屋ブログ

まぁなんであれ、新風を巻き起こすかと思われていたソニー不動産の面目躍如の大リリースが出たわけです。

そんなソニー不動産およびおうちダイレクトについての疑問はほぼほぼ同じなのですが、ここで一旦整理しておきたいと思いました。
そしてみなさんとは別の視点で「おうちダイレクト」について語りつつ、どうなの?って疑問を提示したいと思います。

ソニー不動産創業の理念


おうちダイレクトを語る前にまずはソニー不動産の創業について語らざるを得ません。

ソニー不動産は、不動産業界に新風を吹かせると同時に、売主買主双方の仲介をすると利益相反になる可能性のある両手仲介について原則禁止としています。

それぞれの部門に専門エージェントがいます。業務を兼任しないのは、不透明な両手仲介を防ぎ、お客様のために力を注いでもらうためです。エージェントとは、日本語に訳すと代理人です。お客様の立場になって、お客様の代わりに力を注ぐという決意と思いが込められています。

参考:対談:「不動産業界に革新を!」異業種からの参入で新風を吹かせる【後編】 | HOME'S ビジネススタイル

原則というのは、まぁ買いたいというお客様がそのエージェントの担当物件を欲しいと言われたら売るしか無いので、それはそれで販売しますから原則禁止としているのでしょう。これはまぁ仕方ない。

一般消費者にはあまり馴染みがないかもしれませんが、それと同時に両手仲介という目的達成のために大小の不動産会社で行われている「物件の囲い込み」についても、彼らはフルオープンにして各不動産会社に情報を開示を行っています。

つまり、両手仲介という目的を禁止し、両手仲介を達成させる囲い込みという手段も同時に止めているのですね。
両手仲介ができない以上、自力で買主を発掘する手段を持てないので、フルオープンにして、他社から客付けしてもらうほうが効率が良いので囲い込みを選択してない。
という意味です。

彼らは、両手仲介という目的を原則禁止していますが、囲い込みという手段は禁止とはどこにも書いていません。

いろんな言説を見聞きしても、これはメディアでも間違って考えていますが、目的と手段をごっちゃに書いています。※特に非不動産メディア

おそらくもともとこれらがごっちゃになった理由は、週刊ダイヤモンドがすっぱ抜いたこの記事が原因です。

大手不動産が不正行為か 流出する“爆弾データ”の衝撃|『週刊ダイヤモンド』特別レポート|ダイヤモンド・オンライン

これは大手不動産会社が、利益を最大化するために物件を囲い込んで、売主の売却機会損失が起きているということを指摘したレポートなんです。

この記事のおかげで囲い込みはメジャーになったんですが、両手仲介と囲い込みをごっちゃにしているメディアが多すぎるんですよね。

そして話を戻しますが、ソニー不動産は、売主という顧客のため、買主という顧客のため、それぞれに対して、お客様のために力を注ぐために生まれてきた不動産会社なんです。

これを前提に、ではおうちダイレクトの問題点というのはなんなんでしょうか?

おうちダイレクトについて


おうちダイレクトは、ソニー不動産とYahoo!Japanの協業プロジェクトです。
ここでも非常にわかりづらいのですが、ソニー不動産とYahoo!の管轄が違う為、公正取引協議会規約上、宅地建物取引業法上、微妙にYahoo!が問題なのかソニー不動産が問題なのかそれぞれ違うため、サラッと流すと見誤ります。

売主が入力する不動産情報は、Yahooのプラットフォームに載せていてソニー不動産は関与していないため、公正取引協議会規約ならびに宅地建物取引業法には関係ありません。ここまではYahooすら単なる駅前掲示板を置いているとかそのレベルと同義で、場所の提供会社なだけですし、売主は売主で業として行っていない不動産紹介ですので、広告ですらありません。

だからこの時点では何も問題無いです。

ここからが微妙に判断が分かれていくのですが、買いたい人が「内見したーい」と言ったらソニー不動産が出てきて、売主さんと一般媒介契約を結びます。

この一般媒介契約を結んだ時点で売主は、他の不動産会社との取引を禁止されます。
正確に言うと、「おうちダイレクトを使い続けるためには、ソニー不動産と一般媒介契約を結んだ後に、他の不動産会社と取引してはならない」という、おうちダイレクト利用の規約上の制限を掛けます。

一般媒介契約を結んだのに、他の不動産会社との一般媒介契約を制限するとおそらく消費者契約法第10条との兼ね合いで無効特約になるのですが、おうちダイレクトそのものはYahoo!Japanのサービスなので、ソニー不動産に有利に働く不当な特約条項にはなりえません。あくまでYahooのサービスが利用できなくなるだけです。

ここが恐ろしくいやらしいところで、Yahooのサービスが使えないことは、現法上お客様に不当な要求になりえません。これは宅地建物取引業法、消費者契約法共に

「当事者間の契約(媒介契約)において、全く別の企業のプラットフォームを使った商売が成り立つ」と現法上予見も規定もされていない為、制度化されていないため、遵法はしています。

ここで、まずいろんな人の判断が分かれるんですね。
結局法令上、消費者保護の観点からも何も問題ないのですが、道義的にどうなの?となるからです。

実際のところ、おうちダイレクト規約を破ったところで、おうちダイレクトの利用が停止するだけで、ソニー不動産を含めた複数の不動産会社との一般媒介契約は継続可能ですし、ソニー不動産も仮におうちダイレクト規約を破ったからといって、一般媒介契約解除は行わないと思います。

おうちダイレクトを使ったソニー不動産の問題


おうちダイレクトの微妙なラインについてはこれぐらいにして、おうちダイレクトを利用したソニー不動産の問題点について書いてみます。

おうちダイレクトに掲載された不動産情報の売買は、売主はおうちダイレクトプラットフォームだけに制限し、買主はソニー不動産への問い合わせないしはおうちダイレクトへのお問い合わせ以外受けられないようになっています。

ここで少々話を戻しますが、両手仲介と囲い込みです。
両手仲介は原則禁止していますので、おそらく各担当者を変えて、社内両手仲介は成立するけどもエージェントは別だから両手仲介にあたりませんという回答になると思います。というかそうせざるを得ないでしょう。

一方で、囲い込みですが、ここもまた売主の機会損失はその制度上問題がないよね?という非常にうまいところを突いてきます。

以前の大手の囲い込みは、不動産情報を一切他にもらさず、サイトにすら載せず、投げ込みチラシ、来店したお客様だけ、つまり自社プラットフォームだけに公開するということが囲い込みを意味していました。

しかし、ソニー不動産は、Yahooのサービスとソニー不動産のお問い合わせ。少なくとも2つのプラットフォームに公開しています。
確かに弱小不動産会社だと大手ポータルサイトはアットホームだけしか契約してないケースもあるので、情報公開が自社サイトとアットホームの2つだけということが往々にしてあります。
予算の関係もあるので、広くはしているものの、2つのプラットフォームですが、これは別に囲い込みだと叱られるべき事案ではありません。

ソニー不動産もこの考えに則って、Yahooと自社問い合わせの2つ公開しているので、机上では確かに大手不動産会社が行う囲い込みと同じにはなっていません。

しかもこれがすこぶるうまいところが、ソニー不動産はおうちダイレクトの利用を強要していないのですが、Yahoo!Japanのおうちダイレクトはソニー不動産の仲介を要求しているところです。

ソニー不動産が一社独占の媒介契約及び両手仲介を強要したら、創業の理念と反するのですが、Yahoo!がソニー不動産の一社独占媒介契約を要求するのは、なんにも問題がないのです。

これに気づいた時に、もう「すげぇ〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!シビレル!このスキームはヤバイ!!!!」と総毛立ちました。

だーれも、HOMESやSUUMOが、住友不動産販売だけ使用して下さい!なんて言うことをするなんてことは考えていなかったわけで、まさかYahooがそういうことなんて言うと思っていなかったわけです。

プラットフォームがそのサービス提供会社を制限する。これは別によくある話なのでなんら問題ないわけです。※売買の大半がおうちダイレクトで行われることが起きたら独禁法に抵触しそうですが、東京だけなんで問題ない。

ソニー不動産がYahooに「ソニー不動産を使いなさい」と言わせるとか普通思わないですよ。


とはいえ、言ってる主体が違うだけで、「これは新手の囲い込みじゃないか!」と言わせるのに十分でした。

本当の問題は売主仲介手数料無料なんじゃないの?


まぁ正直、両手仲介も囲い込みも机上では行っていないので、周辺があぁだこうだ言ったところで


「それはYahooが言っていることなんで、ソニー不動産は関係ないじゃあ〜りませんか?(関西人しか知らないチャーリー浜風)」


と言えるわけです。

ただ、どうしてもここの言い訳は私も一生懸命考えたんですが全然出てこなかったのです。

「売主仲介手数料無料」

契約とは2者以上の人及び法人の合意を取り決めるものなのですが、不動産においては、売主、買主の利益は相反するため、本来は有利不利の奪い合いになります。
そのため、アメリカでは双方が契約書の専門家であるエージェントを立てて、やり取りをし、この部分は売主有利だけど、この部分は買主有利にしてね。という風に双方のエージェントがバランスを調整します。
この辺は、エージェントと仲介会社と変えただけで日本の契約習慣も基本は変わりません。
双方が自分の有利な条項を突き合わせて調整を取るのとは違って、両手仲介は、仲介人がスムーズに契約できる方法を取る可能性があるから利益相反だと言われるんですね。

んで、おうちダイレクトを使ったソニー不動産の仲介はと言いますと、当然買主、売主それぞれにエージェントが付きますので、机上では両手仲介は発生しません。

ただ、ここで非常に頭をもたげてくるのが「売主仲介手数料無料」です。

本来、エージェントは、洋の東西を問わず、契約者である片方から依頼を受けてその対価を頂いているが上に、依頼者の利益を最大化するように動きます。

これは不動産エージェントも弁護士も一緒です。

ただ、今回のソニー不動産を媒介としたおうちダイレクトの利用では、買主は仲介手数料を支払い、売主は仲介手数料を払いません。

大元であるソニー不動産からすると、買主のみ仲介手数料を支払うお客様になります。
ソニー不動産も営利企業ですので、なんらかの業務に関して報酬を受取る権利を有します。

ソニー不動産は仲介が成立しなければ報酬は発生しません。
だから当然ながら契約を締結しなければいけないわけですが、エージェントシステムは本来顧客の利益の最優先を目指す場合、

ソニー不動産は、報酬を一切支払わない売主に有利な契約書を作成することがあるのでしょうか?ソニー不動産は、報酬を支払う買主の意思に反して、報酬を一切支払わない売主に有利な契約書を作成することがあるのでしょうか?大事なことなので二回言いました。

もっと言えば
「俺は報酬を支払っていて、向こうは報酬を支払わないんだから、この条項は消してくれよ!」
と言われた場合にどうするのでしょうか?

「まぁまぁお客様」と言われたら、お客様はどう思うのでしょうか?(そんなに厳密に考えるクライアントがいるとは思えないけども)
それは、あなた達が否定した両手仲介の姿ではないでしょうか?


この疑問だけはどうも拭えません。
片方の仲介手数料を無料にすると、どこまで言っても無料側に不利な契約書を作成されるのではないか?という疑念は拭えないままになります。
ソニー不動産の売却エージェントはどのように動くつもりなのでしょうか?

まぁもちろん、ソニー不動産はそういう片方に激烈に動くような会社ではなく、一般論に即してつつがなく行う良い会社だと思います。

だけども、片方の仲介手数料が無料ということで契約は双方のものである以上、対立か調整しかありえません。
この時、報酬を払う人間と、報酬を支払わない人間との対立が起きた時に、ソニー不動産はどうするんですか?

対立をどちらか有利にすると、エージェント機能は瓦解しますし、内部調整を行うと、それはソニー不動産が否定した両手仲介の形と一緒です。

これについては明確に回答が欲しいです。
ちゃんと双方納得の形で契約するのは当たり前のごとく分かっています。
ただ、囲い込みと両手仲介に関して、机上であれど、ちゃんとした理論を持っているのに、この部分だけほにゃららというのはおかしいし、もちろん、不動産売却業務の大半を売主にさせるので報酬を無くすというのは考えとして間違っていないのですが、私が言っているのは契約書作成時の問題ですので、売却業務を売主が行うから「安い」は成り立ったとしても、

契約書業務一切についてはソニー不動産が行うことなので「無料」が成り立つとは思えません。

私だったら無料だと言い返しはできないのですが、ソニー不動産はどういうことを考えているのでしょうか?

まとめ


おうちダイレクトは、ソニー不動産創業のもう一つの理念「新しい価値と選択肢」を提供したと思います。
私たちと理念を語り合い、不動産業界に新しい価値を提供するチャレンジに参画していただきたいと思います。

参考:対談:「不動産業界に革新を!」異業種からの参入で新風を吹かせる【後編】 | HOME'S ビジネススタイル

でも、このおうちダイレクトは、かなり創業理念と相反するところも多く、ちょっと判断分かれるよねぇとは思います。

横浜スタイルは、ソニー不動産を応援しています。

osugi828 at 17:51コメント(0)トラックバック(0)不動産情報   このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

トラックバックURL

コメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価:  顔   星