2017年03月01日

リムスキー=コルサコフ:歌劇「皇帝サルタンの物語」

ニコライ・リムスキー=コルサコフの歌劇「皇帝サルタンの物語」は、正式には「皇帝サルタンと雄々しい息子のグヴィドン・サルタノヴィチ、そして美しい白鳥の王女の物語」と言う長い名を持ち、プロローグと4幕、全7場から構成されています。

アレクサンドル・プーシキン(1799-1837)の同名の詩を基に、ウラディーミル・ベルスキー(1866-1946)が、台本を書いています。ベルスキーは、他にもコルサコフの歌劇「サドコ」(1896年)、「見えない町キテージと聖女フェブローニャの物語」(1904年)「金鶏」(1907年)等の台本も手がけています。

オペラは、プーシキン生誕百年祭に合わせ1899年から1900年にかけて作曲され、同年11月3日モスクワのソロドヴニコフ劇場にてミハイル・ヴルーベリ(1856-1910)の美術、ミハイル・イッポリートフ=イワーノフの指揮の下、初演されました。ペテルスブルグ初演は、当地の音楽院にて1902年です。

翌1903年には、作曲者自身が、この歌劇から編んだ、3曲から成る音画「皇帝サルタンの物語」作品57も発表されています。

■プロローグ
冬の夕刻、小屋の中で糸を紡ぐ3人の姉妹。もし自分が皇帝の花嫁になれたならと夢を語ります。豪華な料理を振舞うと言う長女、きれいな亜麻布を織ると言う次女、皇帝のために勇士を産むと言う末娘。偶然通りかかり会話を耳にしたサルタン皇帝は、気に入った末娘に求婚「私の妃になり立派な勇士を産んで欲しい」。残された二人の姉とその母親ババリハは、快く思いません。末娘に嫉妬し復讐を企みます。

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※小屋の外で姉妹の話に耳を傾けるサルタン皇帝。(画イワン・ビリービン:1876-1942)


妃となり、初夜に身篭る末娘。やがて戦争が起こり、サルタン皇帝は出陣。戦地のサルタン皇帝の許へ届く一通の中傷の手紙。「妃が産んだ子は、人間ではなく怪物である」

■第1幕
出陣で留守のサルタン皇帝。妃は宮殿で出産。戦地の夫へ皇太子の誕生を手紙で知らせるも、返事なく元気がありません。二人の姉と母親ババリハが使者を欺いて、その手紙をすり替えたからです。

「妃が産んだのは息子でなければ、娘でもない。ねずみでなければ、蛙でもない。得体の知れないけだもの」

中傷の手紙に驚き「法の裁きを行うので、帰還を待て」と勅令を使者に託すサルタン皇帝。またもや二人の姉と母親ババリハによってすり替えられる勅令。「妃母子を樽に詰め、海へ放り出せ」の命令に戸惑う大臣たち。しぶしぶ、妃と幼い皇太子を追放します。

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※海を漂流する妃母子を詰めた樽(画イワン・ビリービン:1876-1942)



■第2幕
樽は、やがて小さな島に漂着。みるみる青年へと成長した皇太子グヴィドンは、泣くばかりの王妃を勇気付けようと、食糧を探しに出ます。途中、鳶に襲われている白鳥を救い、白鳥が礼を述べて去ると、魔法のように大きな都が目の前に現れ、その住民らは、統治者としてグヴィドンを迎え入れます。

■第3幕
・第1場
もてなしを施した寄港商船を見送るグヴィドン公の姿。海の向こうの父サルタン皇帝を慕い嘆きます。そこへ助けた白鳥が現れ、魔法を使ってグヴィドン公を熊蜂の姿に変えます。サルタン王国へ向かう商船に紛れ、海を渡ることに成功するグヴィドン公。名高い「熊蜂の飛行」の演奏。

・第2場
商船の水夫らから、グヴィドン公が治める奇跡の島の報告を受けるサルタン皇帝。魔法のように現れる都、宝石の胡桃を集める奇跡のリス、海に現れる33人の奇跡の勇士の話を興味深く聞き入るサルタン皇帝は、自ら客人としてグヴィドン公の島を訪れたいと思うようになります。

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※海に現れる33人の奇跡の勇士


阻止を試みる二人の姉とその母親ババリハは、熊蜂にチクリと一刺しされ、宮殿は騒ぎとなります。

■第4幕
・第1場
魔法の島に戻り、花嫁への憧れを呟くグヴィドン公。熊蜂の姿でサルタン王国へ渡ったとき、奇跡の乙女の話を耳にしたからです。現れた白鳥にそのことを伝えると、白鳥は美しい王女の姿に変わります。助けた白鳥が奇跡の乙女だったのです。管弦楽による間奏「3つの奇跡」

・第2場
サルタン皇帝一行を乗せた船がグヴィドン島へ。グヴィドン公はサルタン皇帝を向かえ、「あなたの息子はどこでなにをしているのですか」と挨拶しますが、サルタン皇帝は、グヴィドン公が息子であることにまだ気づきません。3つの奇跡を見たサルタン皇帝は、最後に奇跡の乙女、すなわち白鳥の王女の登場に驚きます。王女のその横に妃の姿があったからです。それを見た瞬間すべて理解するサルタン皇帝。涙を流し、妃と息子を堅く抱き寄せます。一同がグヴィドンと白鳥の王女の結婚の祝いに沸き幕となります。

■ニコライ・リムスキー=コルサコフ(1844-1908)
歌劇「皇帝サルタンの物語」(全4幕)


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イワン・ペトロフ(Bs:サルタン皇帝)
ウラディーミル・イワーノフスキ(Tr:グヴィドン)
エレナ・スモレンスカヤ(S:皇后ミリトリッサ)
ガリナ・オレイニチェンコ(S:白鳥皇女)
エレナ・ヴェルビツカヤ(A:ババリハ)
マルク・レチェティネ(Bs:道化師)

ワシリー・ネボルシン指揮
ボリショイ劇場管弦楽団・合唱団
(1955年録音 仏ChantDuMonde LDC-2781037 CD)


深々とした低音を響かせるバスのペトロフはじめ、ボリショイのソリストらによる声量は圧巻です。良く鳴る管弦楽とバランスを欠きません。あいにく古いモノラルですが、音質には幾分鮮明さがあります。同曲の全曲を収録した尊い音源。
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■ニコライ・リムスキー=コルサコフ(1844-1908)
歌劇「皇帝サルタンの物語」より

・「3つの奇跡」(第3幕第2場前奏曲)

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ワシリー・ネボルシン指揮
ボリショイ劇場管弦楽団
(録音年不詳 ソ連Melodiya CM-0355 LP)


前述の1955年録音の全曲盤から「3つの奇跡」のみを抽出したものか、あまり日を置かない同時期に録音されたものと考えられ、仕上がりが良く似ています。当レコードは、オリジナルはモノラルと思われる擬似ステレオで、強奏で音が潰れ鮮明さに欠けます。
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エフゲニ・スヴェトラーノフ指揮
ソビエト国立交響楽団
(1974年録音 ソ連Melodiya C10-10479 LP)


12月25日モスクワ音楽院大ホールでの実況録音。ライブの為、やや粗い面見受けられますが、スピード感、熱気、アクの強い弦楽器の節回し、管楽器の迫力、演奏者の自信が充満しています。
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■ニコライ・リムスキー=コルサコフ(1844-1908)
音画「皇帝サルタンの物語」作品57

・第1曲「皇帝の出発と別れ」(第1幕前奏曲)
・第2曲「樽に入れられ漂流する妃と王子」(第2幕前奏曲)
・第3曲「3つの奇跡」(第3幕第2場前奏曲)


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コンスタンティン・イワーノフ指揮
国立モスクワ放送交響楽団
(録音年不詳 ソ連Melodiya CM-4211 LP)


恐らく1970年代の録音です。鮮明なステレオ録音で、間接音も豊か。オーケストラの輝かしい音色も手伝って夢幻的なおとぎ話の世界を鮮やかに表出させています。イワーノフは冒険を好まないようで大胆さは影を潜めていますが堅牢で崩しがたい安定があり聴くほどに味わいが増します。彼ほどの大物が、1965年以降常任のポストがなかったのは返す返すも惜しいです。
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エフゲニー・スヴェトラーノフ指揮
ソビエト国立交響楽団
(1978年録音 ソ連Melodiya C10-10583 LP)


望みうる理想的な演奏に感じます。オーケストラの強力な音量と表現力を最大に活かし切り、色彩的な世界を繰り広げています。第3曲「3つの奇跡」は、1974年の熱気溢れるライブもありますが、完成度においてこちらに軍配あがります。金管の鳴りに凄まじいものがあり、心奪われます。最後ピシャーンと伸びるシンバルの音色も好みです。言うこと無しの1枚です。


ot521 at 00:30│TrackBack(0) ▼作曲家名ラ行 |   リムスキー=コルサコフ

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筆者

Takeshi.O

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