2020年06月18日

必死剣 鳥刺し(2010年 映画)

なんとなく題名から、アニメの原作焼き直しかなと思ったのだが、そうではなく、かなり重いテーマの映画だった。なにしろ、次々に殺人鬼のように斬りまくったりはしないわけだ。

東北の小藩海坂藩の藩主は美形の側室に骨を抜かれ、さらに経済破綻しているにもかかわらず側室の言うなりの華美な生活を続けていた。そもそも正妻は江戸にいるわけで、良家の子女ということで殿も堅苦しいし、小藩では江戸での肩身も狭い。本領に戻った時に羽根を伸ばし、側室は品が悪く脳も弱い美形を選ぶというのが、よくあるパターンだ。海坂藩には限らない。幕府もそういう関係で生まれた諸藩の馬鹿息子が跡取りになることで、藩の弱体化がはかれるということになる。

藩内は荒れ果て、ついに藩士兼見三左エ門は側室を殺害することにした。剣の達人である兼見は一突きで絶命させる。

つまりなんとなく陰惨な感じでスタートする。そして、死を免じられた兼見は底流に陰惨さが流れる中で、藩内の陰謀の中に組み込まれていくわけだ。

主演は豊川悦司。どうもこういう運命にもてあそばれるような役に選ばれることが多いような気がする。私生活でも酒を飲んでも乱れないような雰囲気があり、付き合いにくいのだろうか。

結論的言うと、エンディングで観客の気持ちを慰めるようなものがないわけだ。悪が勝ち善が負ける。救いのないシナリオだ。原作は藤沢周平ということだが、原作とあらすじが異なるのだろうか。

なお、将棋にも「鳥刺し戦法」というのがある。将棋愛好家でも知らない人が多いと思われる。「雀刺し戦法」というのは立派な定跡があるが、「鳥刺し」は実戦で見ることはほとんどないレア戦法で、盤の端の方に攻撃勢力を集中させて突破する作戦だが、成功しても盤の端の攻撃なので、勝負に勝てるかどうかは別問題だ。そういう意味で本映画と同じだ。鳥刺しには成功したものの・・