2008年05月03日
レポート:MiAUシンポジウム「青少年ネット規制法について考える」
前述の『MiAUの活動が十分に積極的かつ具体的である』と感じた源泉となったのですが、つい先日の5/1に何とか時間が取れたので表題のシンポジウムに参加してきました。
せっかくですのでざっと感想をレポートいたします。具体的な内容については以下ご参照。
青少年ネット規制法案、大幅修正か 連休明けにも新案
(IT Media)
MIAUが緊急シンポジウム「青少年ネット規制法について考える」開催
MIAUが「インターネットの教科書」作成へ、子供・保護者向けに
情報モラル・情報リテラシー教育が、有害情報対策への解
有害情報対策でまず考えるべきは、罰則ではなく「責任制限」
(Internet Watch)
せっかくですのでざっと感想をレポートいたします。具体的な内容については以下ご参照。
青少年ネット規制法案、大幅修正か 連休明けにも新案
(IT Media)
MIAUが緊急シンポジウム「青少年ネット規制法について考える」開催
MIAUが「インターネットの教科書」作成へ、子供・保護者向けに
情報モラル・情報リテラシー教育が、有害情報対策への解
有害情報対策でまず考えるべきは、罰則ではなく「責任制限」
(Internet Watch)
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1.中川譲氏による概要説明
文字通り“青少年ネット規制法”に関する現状の概要や政治的状況、言葉の定義などについて解説。研究職らしく話術も巧みで判りやすく説明されていました。
特筆すべきは“自主規制”によって過度の規制が発生する可能性についても指摘があったことですが、全体に過不足無くそつ無くまとめられており、むしろせっかくのシンポジウムなのですから、もう少し突っ込んだ内容が欲しかった気はします。
2.楠正憲氏による事業者側からみた状況説明および歴史的経緯の説明
マイクロソフト社の社員である楠氏による、事業者側から見た状況説明及び経緯の歴史的内容について解説。
統計内容などについてもきちんと把握されている楠氏だけに、そもそもネット利用者が多いのだからネットが関与する犯罪をゼロには出来ないこと、それでも犯罪数が大幅増にならないのは事業者側が適切に対応しているからであること、ただし、そういった事業者側の努力について積極的な情報発信を怠っていたこと、といった、これまた知ってる人は知っているけど多くのマスコミは全く報じない情報について説明されていました。
更に、罰則を論議するよりも責任制限を設ける方が先ではないか?といった原則論についても述べられていました。
・・・まぁ、正直、マイクロソフト社と表現規制と言えば少なからず思うところがあるのですが、これは当然MiAU内部でも突っ込まれているでしょうし、質疑応答でも質問するのは憚られました。
とはいえ、せっかく報道の方も来られていたのですし、ネット版青環法の問題点を最も体現している日本ユニセフ協会の例の署名運動の方が表現規制問題としては遥かに危険であることも事実ですので、あえて空気を読まずに突っ込んだ方がよかったかな、と今は多少反省しています(苦笑。
3.崎山伸夫氏による海外の規制状況の解説
知られている様で案外知らない、海外(主に米国)での規制状況について解説。中川氏による説明と同様、この手の問題について詳しい人であれば特に目新しい内容ではないのですが、過不足無く丁寧に解説されていました。
ただ、崎山氏の経歴からすると意外なほどに話術は稚拙で、発表が資料の内容に負けてしまっている感が強かった印象があります。また、せっかく海外の事例を出しているのですから、日本ではどうか、といった比較検討が説明されていなかったことが残念でした。
4.久保田裕氏によるACCS活動報告
JASRACに次いで、とまでは言いませんが、ネット上での評判のすこぶる悪い表現規制側の団体であるACCS専務理事、古くからのネットユーザであればご存知の方も多いであろう久保田氏による・・・ネット版青環法とはほぼ全く関係のないACCSの活動報告が延々と・・・。ぶっちゃけ本シンポジウムに於ける困ったチャン一号認定です(苦笑。
ACCSと言えば警察庁との関連も深く、表現規制を行なう側からの報告や指摘、と言った内容であってもそれはそれで意味があるのですが、直接的にはソフトウェアの著作権絡みの団体でしかないACCSの、それも単なる活動近況報告では、シンポジウムの趣旨としては本当に全くの無意味。
一応、『法で縛るよりも教育で対応すべき』であり、著作権法の罰則強化や青環法設立といった対応よりも、初期のリテラシ教育に力を入れるべきといった点が主張のポイントだった様です。それ自体は全く以って至極ご尤もなんですが・・・。
個人的には(余り表に出てこない)ACCSの活動内容や近況それ自体については興味深かったのですが、貴重なシンポジウムの時間を割いて行なうべき発表ではない、としか判断できませんでした。
ご本人は意外にフランクな印象の方で、仕事関係や個人的に付き合えばそれなりに良好な関係を築けそう雰囲気のある普通に常識的な社会人といった人物でしたが、この的外れな対応っぷりは確かに人によっては蛇蝎の如く嫌うのも判るかなぁ、といった感想を持ちました。
5.小寺信良氏によるフィルタリングソフトの実演と活用
現実に“児童”に該当する子供の親御さんである小寺氏により、実際にご利用されている?iフィルターの機能と活用法の解説。
話術も巧みで内容も判り易く、フィルタリングソフトの実態としては興味深く拝聴できましたし、その複雑さ故に技術者でもある小寺氏をして『親として機能を使いこなす自身はない』とのご意見も貴重であったと思います。
また、MiAUによる“インターネット(で酷い目にあった人たちによるインターネットの)教科書”作成、及び、そのCCライセンスによる配布計画などについても説明がありました。
6.質疑応答
なにやら質疑応答というよりも感想を主張する場になってしまっていた感があり、少々もったいないと感じました。通常のいわゆるシンポジウムよりも訪れた方の層が広がっていたのも一因ではないかと思います。
それでも現役高校生による「ネットで表現規制されると困る」という素朴な意見は(最も規制を受ける当事者の意見だけに)貴重だったと感じます。
その貴重な時間を割いてひたすら“自分の宣伝”を行なって顰蹙を買っていたのが、TBS御用達やらせ芸人ことウェルダンの穂積氏。本シンポジウム二人目の困ったチャン認定です(苦笑。
知名度商売ですからとにかく少しでも露出を増やしたい気持ちは判らないでもないのですが・・・こういった場で他人の邪魔をすることが、どれほどあちこちに迷惑をかけるのかも理解できないのはさすがに問題でしょう。
とはいえ、これは(悪い意味で有名人なのですから)他に質問者が居たにも関わらずマイクを渡してしまった運営側の責任というべきなのでしょうね。その点は、とても残念でした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
以上です。
総じて課題は散見されるものの、バランス良く突っ込みどころも抑えた内容になっており、MiAUが十二分に機能していることを強く感じさせる内容でした。
1.中川譲氏による概要説明
文字通り“青少年ネット規制法”に関する現状の概要や政治的状況、言葉の定義などについて解説。研究職らしく話術も巧みで判りやすく説明されていました。
特筆すべきは“自主規制”によって過度の規制が発生する可能性についても指摘があったことですが、全体に過不足無くそつ無くまとめられており、むしろせっかくのシンポジウムなのですから、もう少し突っ込んだ内容が欲しかった気はします。
2.楠正憲氏による事業者側からみた状況説明および歴史的経緯の説明
マイクロソフト社の社員である楠氏による、事業者側から見た状況説明及び経緯の歴史的内容について解説。
統計内容などについてもきちんと把握されている楠氏だけに、そもそもネット利用者が多いのだからネットが関与する犯罪をゼロには出来ないこと、それでも犯罪数が大幅増にならないのは事業者側が適切に対応しているからであること、ただし、そういった事業者側の努力について積極的な情報発信を怠っていたこと、といった、これまた知ってる人は知っているけど多くのマスコミは全く報じない情報について説明されていました。
更に、罰則を論議するよりも責任制限を設ける方が先ではないか?といった原則論についても述べられていました。
・・・まぁ、正直、マイクロソフト社と表現規制と言えば少なからず思うところがあるのですが、これは当然MiAU内部でも突っ込まれているでしょうし、質疑応答でも質問するのは憚られました。
とはいえ、せっかく報道の方も来られていたのですし、ネット版青環法の問題点を最も体現している日本ユニセフ協会の例の署名運動の方が表現規制問題としては遥かに危険であることも事実ですので、あえて空気を読まずに突っ込んだ方がよかったかな、と今は多少反省しています(苦笑。
3.崎山伸夫氏による海外の規制状況の解説
知られている様で案外知らない、海外(主に米国)での規制状況について解説。中川氏による説明と同様、この手の問題について詳しい人であれば特に目新しい内容ではないのですが、過不足無く丁寧に解説されていました。
ただ、崎山氏の経歴からすると意外なほどに話術は稚拙で、発表が資料の内容に負けてしまっている感が強かった印象があります。また、せっかく海外の事例を出しているのですから、日本ではどうか、といった比較検討が説明されていなかったことが残念でした。
4.久保田裕氏によるACCS活動報告
JASRACに次いで、とまでは言いませんが、ネット上での評判のすこぶる悪い表現規制側の団体であるACCS専務理事、古くからのネットユーザであればご存知の方も多いであろう久保田氏による・・・ネット版青環法とはほぼ全く関係のないACCSの活動報告が延々と・・・。ぶっちゃけ本シンポジウムに於ける困ったチャン一号認定です(苦笑。
ACCSと言えば警察庁との関連も深く、表現規制を行なう側からの報告や指摘、と言った内容であってもそれはそれで意味があるのですが、直接的にはソフトウェアの著作権絡みの団体でしかないACCSの、それも単なる活動近況報告では、シンポジウムの趣旨としては本当に全くの無意味。
一応、『法で縛るよりも教育で対応すべき』であり、著作権法の罰則強化や青環法設立といった対応よりも、初期のリテラシ教育に力を入れるべきといった点が主張のポイントだった様です。それ自体は全く以って至極ご尤もなんですが・・・。
個人的には(余り表に出てこない)ACCSの活動内容や近況それ自体については興味深かったのですが、貴重なシンポジウムの時間を割いて行なうべき発表ではない、としか判断できませんでした。
ご本人は意外にフランクな印象の方で、仕事関係や個人的に付き合えばそれなりに良好な関係を築けそう雰囲気のある普通に常識的な社会人といった人物でしたが、この的外れな対応っぷりは確かに人によっては蛇蝎の如く嫌うのも判るかなぁ、といった感想を持ちました。
5.小寺信良氏によるフィルタリングソフトの実演と活用
現実に“児童”に該当する子供の親御さんである小寺氏により、実際にご利用されている?iフィルターの機能と活用法の解説。
話術も巧みで内容も判り易く、フィルタリングソフトの実態としては興味深く拝聴できましたし、その複雑さ故に技術者でもある小寺氏をして『親として機能を使いこなす自身はない』とのご意見も貴重であったと思います。
また、MiAUによる“インターネット(で酷い目にあった人たちによるインターネットの)教科書”作成、及び、そのCCライセンスによる配布計画などについても説明がありました。
6.質疑応答
なにやら質疑応答というよりも感想を主張する場になってしまっていた感があり、少々もったいないと感じました。通常のいわゆるシンポジウムよりも訪れた方の層が広がっていたのも一因ではないかと思います。
それでも現役高校生による「ネットで表現規制されると困る」という素朴な意見は(最も規制を受ける当事者の意見だけに)貴重だったと感じます。
その貴重な時間を割いてひたすら“自分の宣伝”を行なって顰蹙を買っていたのが、TBS御用達やらせ芸人ことウェルダンの穂積氏。本シンポジウム二人目の困ったチャン認定です(苦笑。
知名度商売ですからとにかく少しでも露出を増やしたい気持ちは判らないでもないのですが・・・こういった場で他人の邪魔をすることが、どれほどあちこちに迷惑をかけるのかも理解できないのはさすがに問題でしょう。
とはいえ、これは(悪い意味で有名人なのですから)他に質問者が居たにも関わらずマイクを渡してしまった運営側の責任というべきなのでしょうね。その点は、とても残念でした。
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以上です。
総じて課題は散見されるものの、バランス良く突っ込みどころも抑えた内容になっており、MiAUが十二分に機能していることを強く感じさせる内容でした。