京都大学の山中伸弥教授が、ノーベル医学生理学賞を受賞されたことで、iPS細胞への関心は世界中で一段と高まりました。iPS細胞については、もう3年以上前の朝礼でも取り上げたことがあります。
この時、受精卵からつくるES細胞と体細胞からつくるiPS細胞の違いを説明しました。紹介した本は、畑中正一・山中伸弥『iPS細胞ができた!』(集英社)と八代嘉美『iPS細胞』(平凡社)でした。皆さんは覚えていますか。ほとんどの人が忘れてしまっているでしょう。もう一度復習のためにスライドを出します。
①人間の体は60兆個の細胞でできています。これらの細胞は、受精卵から始まります。そして、皮膚や神経、肝臓などに専門化していきます。専門化した細胞は他の部位には使えません。受精卵のようにどんな細胞にでもなれる多能性を持つ細胞へと変化させた細胞を「多能性幹細胞」といいます。一般的に万能細胞と呼ばれています。ES細胞とiPS細胞がそうです。ES細胞とiPS細胞を簡単に説明します。
ES細胞とは、分裂初期段階の受精卵の細胞を直接取り出して培養した細胞です。iPS細胞は大人や子どもの皮膚細胞などを取り出して、4つの遺伝子を入れて培養した細胞です。
最近、iPS細胞について多くの解説書が次々と出版されています。先週書店で見つけた2冊の本を紹介します。
②画面左は『iPS細胞とはなにか』(講談社)です。この本は山中教授のiPS細胞の研究を中心に世界の万能細胞研究について書かれています。画面右は、岡野栄之『本当にすごいiPS細胞』(講談社)です。iPS細胞のどこがすごいのか、ES細胞とiPS細胞の違いなどが分かりやすく書かれています。
③画面は『Newton』です。これも図が入っていてわかりやすく、幹細胞研究の最前線を紹介しています。再生医療が臨床利用できるようになるのも時間の問題であると書かれています。
④画面は、山中教授にインタビューした2冊の本です。山中教授の生い立ちやiPS細胞の研究についてわかりやすく書かれています。
山中教授は、大学卒業後、整形外科の臨床医になりましたが、手先が不器用で、手術が上手くなかったこと、重病や難病の患者さんのために何とか治療法を見つけて救いたいという2つの理由で基礎医学の研究に進路を変えました。ノーベル賞受賞の成功の裏には、新しい発想と挫折しても信念をもって継続したことにあると思います。
⑤最後に私が最近読んで、とても興味があった本を紹介します。それは、山中伸弥・益川敏英『「大発見」の思考法』(文春新書)です。2人のノーベル賞受賞者が対談した本で、それぞれの生い立ちや考え方、自身の研究についてなど書かれています。自分の仕事に興味を持ち、日々考え、成長していくことが大切です。また、「本を読んで考える」ことも大切であると強調したいです。私がこのことを朝礼で話して12年も経ってしまいました。
終わります。 (2012/11/5)