春はそこまで来ている感じスチームボーイ

2005年03月12日

チルソクの夏

*1977年7月。陸上の親善試合のために釜山へ来た郁子は下関に住む高校2年生。
*会場で出会った韓国の高校生アン・テイホウに郁子は恋をする。
*ふたりは来年の試合、つまり七夕(チルソク)に再開を約束するが…

下世話ですが、主役の水谷妃里(みずたにゆり)が気に入って借りました。
水谷の公式サイトも見ましたが、わたしは郁子の役柄が好きなんです。
郁子の恋路を応援する同級生の3人娘は劇中はイモっぽいんですが
芸名からそれぞれのサイトを確認すると3人ともきれいで可愛い!
「チルソク」は当然ながらみんなすっぴんだったからなあ…

当時のわたしもきれいな女の子なんか見抜く目はなかったよな…
と要らぬことを考えてしまいました。そんなことを思い出させる映画です。
郁子よりも、ちょっと翔んだ真理役の上野樹里が劇中では光っています。
複雑な環境という役柄もあるんですが水谷の郁子には影があります。

1970年代は日韓に緊張関係があり、相互理解に程遠い時代だったらしいです。
わたしは新潟という日本海側の土地柄があることと、中学や高校時代に
短波ラジオをいじっていたせいか韓国はわりと身近な感覚があります。
ラジオ韓国(KBSの国際放送)はよく聴いていました。
朝鮮半島の人たちへの偏見をわたしが痛感したのは、東京へ出てからです。

この映画のテーマは、「初恋&遠距離恋愛」でしょうか。
ベテランが脇を固め、水谷らの頑張りや純粋さや青臭ささえ取り混ぜて
ドラマを一気に見せてしまうだけの力はありますが、
登場人物それぞれの掘り下げは浅いなあ、という感想を持ちました。

ふたりを取り巻く登場人物、仲良し3人娘は男女交際の対比、とりわけ
純粋すぎて歯がゆいぐらいの郁子と、積極的な上野の真理とが対比されて
描かれます。山本譲二演じる父親はギターの流しをしていますが
(ギター侍の元祖?)カラオケに押される斜陽業界で郁子の生活の苦しさが
描かれます(呉服屋と同じで、とっても身につまされたよお…)

アン・テイホウの父は外交官で日本人との交際には理解を示しますが、
母親は戦争で肉親を失っていて、ふたりとも内心は交際に反対しています。
また、ふたりには大学受験という避けて通れない障害がありますから
この受験を口実にしてふたりの交際を止めさせようとします。

中学生だったわたしは1978年当時の時代背景を知らないのですが、
設定も描かれ方もセリフひとつとっても、いかにもダナという感じの
ステレオタイプが過ぎた感じがします。登場人物がなんとなく紙芝居的に
右から左へ流れるだけになっているのも解せないんですね。
頑固な父との和解も、進路への悩みも「今までの葛藤は何だったの?」
って感じで解決します。

「日韓問題を扱うのにそれが遠距離恋愛のレベルになっている」
と考えれば文句も多い消化不良な作品ですが、
「遠距離恋愛を扱ったら行きがかり上日韓問題も触れざるを得なかった」
という程度の感覚で観れば、なかなか良い映画ではないでしょうか。

これは中学生や高校生が学校で観せられる「教材映画」という印象です。
恋愛に懐メロに可愛いヒロインに豪華キャスト、そして日韓問題も少々。
現に町の上映会のような形式で現在も全国をまわっているとのことですが、
上質な教材映画と考えれば、それは大変適した興行のやり方だと思います。

otaya529 at 17:04│Comments(3)TrackBack(3)

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1. チルソクの夏  [ お気に入りの映画 ]   2005年03月12日 19:41
これは劇場で見たときに書いた感想です。 2003年 日本映画 監  督 佐々部清 出  演 水谷妃里、上野樹里、桂亜沙美、三村恭代、淳評、高樹澪、山本譲ニ、夏木マリ 谷川真理、イルカ、金沢碧 あらすじ 1977年、下関市。姉妹都市釜山と毎年夏に開催
2. 『チルソクの夏』 (2003/日)  [ アントニオの木 ]   2005年03月25日 08:35
『チルソクの夏』 監督・脚本:佐々部清 水谷妃里/上野樹里/桂亜沙美/三村恭代       “チルソク”とは“七夕”の意。  舞台は70年代後半の山口県下関市。 姉妹都市・釜山との親善事業として行われる、年に一度の陸上競技大会。そこで芽生えた
3. チルソクの夏  [ a story ]   2005年05月22日 13:43
主演水谷妃里、淳評、上野樹里、桂亜沙美、三村恭代 監督・脚本佐々部清 製作2003年、日本 あの夏の記憶〜下関釜山1977‐78 1970年代の下関と釜山を舞台に、日本と韓国の高校生の恋愛を描いた作品。毎年夏に開催される関釜陸上競技大会で、日韓の高校生が交流するのだ

この記事へのコメント

1. Posted by にこ   2005年03月12日 19:40
トラックバックをどうもありがとうございました。
私よりもずっと深くご覧になっていて勉強になりました。
こちらからもトラックバックさせていただきます。
2. Posted by gajumaru   2005年03月12日 22:02
TBありがとうございました。
遠距離恋愛映画とはまったく思いもしてませんでした。
3. Posted by 太田屋   2005年03月13日 20:19
おふたりともコメントありがとうございました。

決して悪口なんじゃありません。
実際この作品は決して嫌いではないんですよ。
ただもう少し毒といいますか、なにか事件が起きるのかと思いました。
何もなくて、あまりにも普通に描くなら、
もう少し描き方もあるのではないか?と考えたんです。
もっと美しい映像をもっと入れるとか、
郁子がその後誰と出会い、またひとりになったのか?
(ネタバレだが)離婚する設定って必要だったのかと思いました。
もう少し時代を感じさせるような現実的なものがあったほうが
より印象が深くなったと思うんです。
3人組のその後も郁子と対比させて描くとかあったんじゃないかな?。

でも清清しさがあったのでOKなんだけどね。

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