村上健のオセロ日記

主に趣味のオセロやフランス語に関する記事を投稿しています。私(村上)のメールアドレスは「私の姓のローマ字書き+アットマーク+dx.catv.ne.jp」です。

2010年08月

昨日は王座戦に参加しました。


●Takeshi Murakami – Tomone Akashi○

1回戦は明石朋音四段。前半は互角。30はg8の方が嫌でした。以下黒やや優勢で終盤に入りますが、44と打たれた局面で寄せ方が分からず長考。最初にg2からの手順を読んだのですが、45g2→白h1→黒h2→白g1→黒e1→白g7で負けと読んでしまいました。実際にはこの手順ならば黒e1の時にブラックラインに黒石が載るため白g7が成立せず、それならば白g7の代わりに白b2→黒g7→白h8→黒h7→白a8→黒h5…で黒10石勝ち。49もこの一手と思ったのですが実は2石損。黒g2→白h1→黒h2→白g1と打ってから黒g7なら引き分けらしいのですが、とても読めません。一番悔やまれるのは4個空きになった場面。h2から打つと2石負けと数えてg2に打ったのですが、明らかに石損です(h2なら2石負け、g2なら10石負け)。名人戦や全日本選手権と違って王座戦は石数も最終順位にからんできます。それをうっかりしていたということもありますが、日頃から負けを読み切ったら別の手を打ってみる、という消去法の考え方で打っていたので、その癖が出てしまったという点が一番大きいと思います。しかし2石負けならば自分の計算が少し間違っていれば引き分けになる可能性もあるわけです。それにもう一方の手(g2)は明らかに石損と分かるのですから、とにかくh2に打つべきでした。これは大きな反省点です。


●Misato Tanizawa – Takeshi Murakami○

2回戦は谷澤美里五段。中盤で優勢を感じたのですが、35となった局面が難しく長考しました。第一感はa5ですが、黒a6→白d8→黒b8→白g8→黒a4…というような展開だとb4~e7の黒通しが脅威です。散々考えた挙句白d8→黒b8→白h4を選択。この手順はなかなか良かったようで、以下比較的簡明な白勝ち局面となりました。


●Takeshi Murakami – Ryotota Kameda○

3回戦は亀田陵太五段。この試合はPlayOkでブリッツをしている時に私が何度も経験したことのある展開になりました。37まで辺を取りまくって攻めます。白は種石がなく苦しいのですが、黒にも右下白連打の危険があります。38では白e2→黒h2→白f3→黒h1と右辺を取らせる展開で白+2だそうですが、怖くてなかなか打てませんね。白としてはブラックラインの黒通しのせいでb7に打てない(打つと黒b8!→a8の連打)のが辛いところです。実質的な敗着は42。ここはやはりe2かe1で黒h2→h1の連打を許す展開なら黒僅かに+2という際どい形勢でした。43以降はブラックラインの通しを堅持して黒が勝ちました。


●Tamaki Miyaoka – Takeshi Murakami○

4回戦は宮岡環七段。序盤で19→20となった左辺の形はあまり良くないのですが、上方の黒壁を温存できれば黒もその白の弱点を攻めることができません。なるべく上方の黒に手をつけずに打つように心がけました。35はh3が一番嫌でした。本譜35はg5の白石を返すため、白の好手d8が生じて有利になったと感じました。41~45は流石の好手順。46でも悩みましたが、左辺を取ることにしました。ゼブラによればこれは白が唯一勝てるてだそうです。48で最後の長考。第一感はc1→黒d1→白h1→黒g2→白g7だったのですが、そこで黒b2と打たれると黒h8を防げず負けと判断してしまいました。これはとんでもない読み落としで、最後の黒b2には白b1!で楽勝でした。50は黒がb8に打てないことを活用した好手。以下黒d1→白h1→黒g2は必然と考え、その結果できた左上三個空きは黒からあまり得する手順がなく(黒a1なら白のハイパー偶数、黒b1なら白a1で左辺も白がゲット、黒b2なら白b1→黒a1でb列と斜めのかなりを白が取る)、白に残ると考えました。そして51が敗着。私も宮岡七段もこれしかないだろうと考えていたのですが、実は良い手順がありました。

51の最善はg7! 以下白h8→黒g2!が素晴らしい手順。白は次にb8に打たざるを得ません(打たないと黒b8で下辺も黒に取られる)。以下黒a7→白d1→黒b1→白h1→黒a1→白b2と一本道で終局。黒はまるで手品のような手順で上辺を確保して2石勝ちとなります。ぜひ盤面右下のPutをクリックしてこの手順を進めてみて下さい。残り少ない時間のなかでこんな手順を読める選手がどれだけいるでしょうか?

ちなみに55は白の連打を見落とした失着。黒b2→白h8→黒a7→白b1→黒g7→白パス→黒a1なら黒の2石負けで済みました。


●Tomohiro Ohno – Takeshi Murakami○

5回戦は大野友弘七段。序盤は全日本で小澤巧四段と打った定石です。その時は14でf2と打って苦戦したのですが、その後PlayOkでブリッツをしていた時に私が黒でこの展開を使ったところ、14f5→黒e2→白a3→黒e6→白f3!という手順を打たれました。これは実にうまい手順だと思って使ってみました。しかし大野七段は17でa5。これで未知の展開になりました。19は悪手で、ここはやはりe6と固めるべきでした。20から22とc6に埋められると黒はなかなか厳しい形勢です。以下も逆転を許さずに勝ち切ることができました。


●Takeshi Murakami – Yusuke Takanashi

6回戦は高梨悠介世界チャンピオン・名人。ここまで二人とも1敗なので、勝った方はまだ優勝のチャンスがあります。私は序盤からがんがん辺を取って攻めます。そして41の勝負手! 以下形勢は微妙に揺れ動くのですが、非常に難しい局面の連続でなかなか解説もままなりません。敗着は51。普通はこのような黒白共に打てる一個空きは先打する一手なのですが、この場合は次に白b2→b1で第1行と第2行を両方抜かれてしまうため、黒がg1に打つ価値があまりなく、むしろ白に右上を連打させその間に黒が左上を打つという展開で第2行の黒石を幾つかでも残すほうが得でした。51の正解はb2で引き分けの形勢。実戦51以下黒は方々で手止まりを打ちますが、白の確定石が大きく逆転には至りませんでした。途中まで自分の好きな展開になっていただけに、非常に残念な敗戦でした。


●Shigeru Kaneda – Takeshi Murakami○

7回戦は金田繁七段。十数年ぶりの対戦です。彼のように、途中に長いブランクがあっても復帰してくれる選手がいるととても嬉しいですね。金田七段は以前と変わらす、一手一手に時間をかけてじっくりと読みを入れてきます。19はh2と右辺を取られるほうが嫌でした。25はd1もありそうです。白やや有利ですが33が失着。白がすぐにg1と上辺を取ってくれれば黒a4で黒も打てそうですが、白は当然先にa4と打ってきます。白a4→黒a6の交換を入れてから白g1となると、黒は上辺のウイングを攻撃することができません(黒b2には白b5。次に黒b6なら白b1→a1の連打。黒b6以外なら白a1→b1の連打)。33では黒b5と打ち、以下白a6→黒a4→白a1→黒b2→白h7→黒e1と打つのが正解で、これならまだこれからの勝負でした(白+6の形勢)。36となってはもはや黒には成す術がなく、以下双方最善で終局しました。ところで白38と打ったときにg5の黒石を返し忘れてしまい、金田七段に指摘されました。お恥ずかしい限りです。

結局5勝2敗で10位でした。今回の王座戦は対戦相手の平均段位が六段以上、メジャータイトル経験者が5人という厳しい当たりでしたが、内容的にはかなりしっかりと読んで打てたと思います。努力次第ではまだまだメジャー上位に食い込める、という手応えを感じることができました。そして優勝は私と同年齢で長年のライバルである滝沢雅樹九段。これも実に嬉しいですね。連続三年目の世界大会出場を果たした滝沢九段を見習って、私も頑張りたいと思います。

すりっぱさん、コメントをどうもありがとうございます。

>自分の興味ある分野から入ると、語学にもとっつきやすいですよね。

とあったのですが、その通りだと思います。私が若かった頃も「海外の大会に参加してみたい」とか「英語で書かれたオセロ関係の文章を読んでみたい」という気持ちがあり、英語を学ぶ原動力になりました。アメリカオセロ連盟発行のOthello Quarterlyやイギリスオセロ連盟発行のBritish Othello Federation Newsletterを定期購読していたのですが、大学生の頃の私の英語力ではスラスラとは読めず結構苦労しました。しかし自分が興味のある分野だけに文脈から意味が推測できる場合も多く、夢中になって読んだものです。特にイギリスのGraham Brightwell選手の文章は、オセロの技術的な解説のレベルが非常に高く、またフィクション仕立てで書かれた試合解説もとても面白く、今でも時々読み返します。幾つかは日本語に訳して、滝沢九段制作のオセロ雑誌Royal Roadに掲載してもらったりしました。

今回の合宿中は、FForumの中で主に私が参加した世界選手権の記事を読みました。やはり国が違うと考え方も違うもので、同じ大会に参加していても私とはずいぶん違う感想が書いてあったりして、なかなか興味深いものがあります。若いころに何度も参加したパリオープンや、フランス南部でのオセロ夏合宿の様子を報じる記事もあり、懐かしい気分になりました。

そういえば、ポーランドのミウォシュ・シュピアウ選手が来日した時に「パリオープンは二年に一度、4月に開催されることになった」と聞いて驚いていたのですが、フランスオセロ連盟のホームページを見ると今年も例年通り今週末に開催されるようですね。どうやら「ヨーロッパグランプリのグランプリポイントを獲得できる大会」ではなくなっただけで、「8月末に行われる国際大会」としてのパリオープンは今後も存続するようです。ホッとしました。


オセロ部の夏合宿が終わりました。毎晩9時頃まで対局し、ずいぶんと良い練習になりました。対局後は部屋に戻り、風呂に入った後でフランス語の勉強をしました。せっかくのオセロ合宿なので小説はやめ、フランスオセロ連盟が発行しているFforumというオセロ誌を読みました。内容が自分の良く知っている分野なので、あまり苦労せずに読めたのですが、オセロ特有の難しさがありました。

それはf5とか56手目というような、数字や盤面を表す記号です。例えば33h1とあればそれはtrente-trois h unのことなのですが、なかなかぱっとこれらの単語が出てきません。そもそも恥ずかしいことに、フランス語のアルファベットの読み方をまだほとんど身につけておらず、hを[アシュ]と発音することも知らなかったぐらいです。数字も曲者で、70は「60と10」のような単語のつながり(soixante-dix)になり、80は「4かける20」のような単語のつながり(quatre-vingt)になります。97は「4かける20と10と7」のような単語のつながり(quatre-vingt-dix-sept)になります。これはなかなか慣れるのに時間がかかりそうです。

オセロの記事をだいぶ読んだので、色々とオセロ関連の表現を覚えました。以下にメモ代わりにまとめておきます。オセラーでフランス語を勉強している人は少ないとは思いますが、もしもいたら参考にして下さい。


オセロ用語集(フランス語版)

オセロ盤 un othellier
オセロの石 un pion
黒(番の選手) Noir
白(番の選手) Blanc
黒石 un pion noir
白石 un pion blanc
打つ jouer
試合 une partie
大会 un tournoi
全日本選手権 le championnat du japon
世界選手権 le championnat du monde
定石 une uverture
手 un coup
好手 un bon coup
最善手 le meilleur coup
手順 une suite, une séquence
勝ち手順 la suite gagnante
引っ張り la stratégie de béton
手得する gagner des temps
右辺 le bord est
左辺 le bord ouest
上辺 le bord nord
下辺 le bord sud
白を手詰まりにする étouffer Blanc
難しい局面 une position difficile
壁を破る ouvrir
ある場所に打てること un accès
b4に打てること l’accès en b4
(石を)返す retourner
ウイング bord de cinq
山 bord de six
ウイングを攻める attaquer le bord de cinq
右上方面 le nord-est
右下方面 le sud-est
左上方面 le nord-ouest
左下方面 le sud-ouest
悪手化する pourrir
連打 une arnaque
辺の悪形 un bord faible
h5に打てるようになる prendre l’accès en h5
余裕手 un temps
割り込む s’insérer
隅 un coin
打てる場所が少ない avoir peu de coups
白はもう打てる場所がない。 Blanc n’a plus de coups.
偶数理論 la parité
勝ち un gain
勝ちを逃す rater un gain
対角線 une diagonale
対角線の通し le contrôle de la diagonale
対角線を通す contrôler la diagonale
g2を強制する forcer g2
最後の三手 les trois derniers coups
斜め取り ouverture diagonale
飛び出し ouverture Heath
蛇定石 ouverture Campagnarde
f4に打てなくする empêcher f4
悪手 une erreur
絶対的優位、勝勢 un avantage décisif
外側の石 des pions extérieur
内側の石 des pions intérieurs
勝ち局面 une position gagnante
負け局面 une position perdante
引き分け une nulle
黒がh1に打てないようにする enlever à Noir son accès en h1

フランス語は相変わらず「天使と悪魔」を読んでいます。480ページまできました。暗殺者に誘拐されたVittoriaを救出すべく、Langdon教授がCastel Sant'Angeloに潜入する場面です。原作を読んだ時、ここからの120ページは正に血湧き肉躍る展開の連続でした。8年ほど前にワンダーフォーゲル部の冬合宿にこの本を持っていき、非常に寒い山小屋の中でガタガタと震えながら、ヘッドランプの小さな光を頼りに夜中まで夢中になって読み耽ったのを記憶しています。

読み始めた頃は1行に知らない単語が5個も6個もあったのですが、さすがに480ページも読んでくるとボキャブラリーが増えてきて、今では1行で辞書を引くのは1~3回ほどです。全く辞書を引かずに数行読めることもあります。そんな時はとても嬉しいですね。今のところ少しでも意味や発音や語法に疑問のある単語は全て辞書を引いてチェックしているのですが、内容が面白くなってくると、辞書を引かずにどんどん先を読む誘惑にかられそうです。

それはそれで良いのかもしれません。英語の本を読む時にこれほど綿密に辞書を引いたことはなく、分からない単語はすっとばしてどんどん量を読むことによって随分英語力がつきました。フランス語もその段階に近付いているのかもしれません。


今日は天王洲カップに参加しました。明日以降しばらくブログを書く時間がなさそうなので、ざっと対局を振り返ってみます。


●Takeshi Murakami – Shinpei Matsutani○

1回戦は松谷信平四段。21が悪手で、ここは当然e3に打つべきでした。以下黒大苦戦。25以下なんとか粘りますが、ずっと勝機はなかったようです。


●Atsushi Tanaka – Takeshi Murakami○

2回戦は田中厚志四段。12は悪手で、ここはc1が良かったようです。26もd7に打つべきでした。恐らく30が敗着でしょう。白は辺に悪形を作りすぎました。40まで粘ったのですが、41が最善。以下は粘りようがありませんでした。

3回戦は不戦勝。1番テーブルの中島vs岩田戦と、谷田vs松谷戦を観戦しました。


●Yukiko Tatsumi – Takeshi Murakami○ (Black lost on time at 53)

4回戦は龍見有希子六段。前回の大会と同じ進行ですが、23で黒が手を変えました。24は黒c1の前に打ちたかったのですが、ここはg6に打つ方が良かったようです(以下黒c1→白f7…)。25がf1の手を消す好手。以下白苦しい戦いです。30は大長考。第一感はe7ですが、以下黒a3→白a6→黒a5→白b6→黒b3→白a4→黒a7→白b2がほぼ一本道になりそうです。ここで黒が下辺に手をつけることになるので何とか打てるような気もしましたが、万一下辺方面で黒に手止まりを打たれると、白f1がない(打つと黒a2→a1の連打)だけに敗勢になりそうです。結局e7は諦めてd7。白f1を作る狙いです。32はa6に打ちたいのですが、以下黒d1→白b1→黒a5→白f1→黒g2!とc5~f2ラインの通しをキープされるとまずいと思い、結局32b6へ。ここで黒a6を恐れていたのですが、黒はe7。しかしゼブラによれば33a6は悪手だそうです。以下も苦しい展開ですが、42と取ってg7のX打ちを残し、なんとかなるかもしれないと思いました。43は悪手。正解はどこでしょうか?

43の最善はa7! 以下白g7は黒b7と打たれ、将来的にほぼ確実に黒h8→h7の連打があります。そこで43a7には白a8→黒b8→白b7→黒h8となって白番。ここでa4なら黒a2!→白a1→黒d1…で奇数理論、a5なら黒b1でした。47はd1→白b1→黒g2なら白+4の形勢。実戦47は悪手で、48以下簡明な白勝ち局面になりました。53で時間切れ、以下白の勝手打ちです。


●Kunihiko Tanida – Takeshi Murakami○ (White lost on time at 56)

5回戦は谷田邦彦七段。22で悩みました。黒f6を防ぐために上辺を取らせるのか、それとも黒f6を打たせて上辺の黒の悪形を残すのか。結局私は上辺を取らせたのですが、これはやはり疑問だったようです。32はe7はf6で迷ったのですが、やはりe7→黒d7→白d8と打つべきでした。35は上辺を一色の山にする絶好手。白大苦戦です。40は最後の望みをかけて打った罠。読者の皆さん、黒h2→白g6→黒g2と打ちたくなりませんか? これが私の期待した展開で、次に白b8!と打つと、次に黒がどこに打ってもブラックラインが切れて白打てる、という読みでした。しかし谷田七段はこの罠を見破って41h6! 以下も黒の着手は厳しいことこの上なく、白は成す術なく負けてしまいました。長谷川会長が著書で「一色の山を作れば8割は勝てる」と書いてあったと思いますが、まさにその通りとなりました。なお白は56で時間切れ。以下は黒の勝手打ちです。


●Akira Ishikawa – Takeshi Murakami○

6回戦は石川明四段。序盤からやや劣勢を感じていました。28で長考。黒にはf8→f7の手稼ぎがあります。実戦28~36は、粘るとしたらこの手順しかないと考えました。しかし34はh6との比較で悩みました。結論出ずにh5へ。37には驚きました。これで少し白が良くなったかな、と思いました。38~47はなんと全て最善で白4石勝ちの形勢。読者の皆さん、48をどこに打ちますか?

まず48b6は黒b7!でブラックラインを通されて駄目です。白g2から一応a8は取れますが、黒にh1から上辺を渡すと黒a1→b2の連打が大き過ぎます。次に48g2は、黒b6→白b7→黒h4!でやはりh1を取られて駄目。従って白はh4とh6の二択ですが、どちらが正解でしょうか?

私は間違えてh4。以下実戦の手順を並べてみて下さい。白はブラックラインの通しをキープして上辺と左辺を取ったものの、黒に他の二辺と中を沢山取られて負けてしまいました。正解は48h6! 以下黒h4→白g2ですが、この形はさきほどと違って黒h2に対して白g7!のホワイトライン通しがあります。この通しの有無が勝負を分ける重大な差なのでした。まだ1分とちょっと時間が残っていたのに、充分に深く読まず48を打ってしまったのがなんとも悔やまれます。ちなみに48h6→黒h4→白g2の時に、黒b6は白b7→黒h2→白g7で黒大敗なので、黒はb7!が正解。以下白a8→黒a7→白h8はなんとか打てるとしても、次黒h1の時に白がどう打つべきか分かりますか? ぜひPutをクリックして並べてみて下さい。48で私が正解のh6を打ったとしても、その後の展開で最善を打てずに負けていた可能性が大です。オセロは本当に難しいですねぇ。

結局2勝4敗で21人中19位でした。2勝のうちの1勝は不戦勝ですから、全日本選手権と同じぐらい悪い成績ですね。こんな調子では来週の王座戦が思いやられますが、来週月曜から金曜まで麻布オセロ部の夏合宿なので、生徒たちに揉まれながら少しでも上達すべく頑張るつもりです。


●Takeshi Murakami – Tetsuya Nakajima○

4回戦は中島哲也八段。私は序盤からどんどん辺を取ります。28はf2で種石を作られる方が嫌でした。29で右下方面に全く白の種石がない形になり、黒優勢だと思いました。実際37~42は双方最善で黒8石勝ちの形勢なのですが、41が悪手でした。ここはa3が良く、白a2なら黒c8→白b2→黒a1→白a5→黒f1!!で黒必勝、白a5でも黒b2→白b1→黒a1→白a2→黒d1!で黒勝ちでした。読者の皆さんも、ぜひ盤面右下のPutの左の四角をクリックし、この二つの手順を進めてみて下さい(もう一度この四角をクリックすると、元の局面に戻ります)。どちらの手順も最後の黒の手が実にうまいのですが、白40までの局面でそこまで読むのはなかなか困難です。私も全く見えていませんでした。その後形勢は細かく揺れ動きますが、あまりにも難しくて解説ができません。敗着は51。ここはa8が正解。次に白b1だと黒c8!が好手で、白b8に対して黒a7→a5の連打があり、第7行も確保することで黒勝ちです。従って51a8に対しては白a7と割り込むのが正しく、以下黒b8→白a5→黒b1!→白c8…で黒の2石勝ち。途中b1で縦を抜くのが大きかったようです。実戦51以下は双方最善できれいに2石負け。途中黒が辺を取りまくる得意形を築いたのに、もったいない試合でした。


●Yukiko Tatsumi – Takeshi Murakami○

5回戦は龍見有希子六段。快速船からやや白優勢かと思ったのですが、30で迷いました。白c2→黒d1→白a6も有力です。31ではa4→白a6の交換を入れるかどうか難しいところです。黒がその交換を入れなかったので、32では白a4がほぼ必然だろうと思いました。33は予想外の手。41では黒a1→白a2→黒b8を予想し、結構難しいと思っていました(白+8の形勢)。45もg7の方が粘れそうです。46以下は比較的簡明に勝つことができました。


●Yusuke Takanashi – Takeshi Murakami○

最終戦は高梨悠介世界チャンピオン・名人。黒は17で変化。以下読み合いですが、24までで白優勢だろうと思っていました。26を打ったあとで黒g4が好手であることに気づき(白g5なら黒g2のストーナーです)、それなら26で先にh4だったな、と後悔しました。しかし黒は27a5。ここはやはりg4がベターだったようです。しかし私も悪手のお返しで28h4。ここは白f6→黒g6の交換を入れてから白h4が正しく、これなら右辺方面の黒の手が良くなく、白優勢でした。高梨チャンピオンは29を大長考。黒a3→白f6→黒g6→白f7…の展開では不利と読んで29f1!→白g1→黒g6! これが好手順で、この手順を防ぐために白は28でf6に打つ必要があったのでした。以下の右辺の打ち方が非常に難しく悩みました。38は黒g2を誘った手。黒g2なら白a2→黒a1→白h1→黒h2→白b2…となり、黒がg5の一個空きを維持するのは難しく、偶数理論で勝てると読んでいました。高梨チャンピオンも同じ読みで39g2を切り捨てたのですが、ゼブラによればこの展開は黒+6でした。難しいですねぇ。そして42が大悪手の敗着。ここはc8なら僅か黒+2という細かい局面でした。42以降は急転直下で白の敗勢。途中まで良い勝負をしていただけに、終盤一方的になってしまい残念でした。

結果は4勝2敗で6位でした。大会後はシンガポールから一時帰国していた末國九段を含む多くのオセラーで夕食を食べに行きました。中島八段お薦めの海に面したおしゃれな店で、料理も大変おいしく実に楽しいひと時を過ごすことができました。

明日は天王洲カップに参加予定です。楽しみです。

昨日は品川シーサイドオープンに参加しました。末國九段が参加するかもしれない、ということもあって30人以上の参加者が集まりました。


●Hiroaki Iwakura – Takeshi Murakami○

初戦は岩倉広明三段。18までの序盤は何回か打ったことがあります。19はh3が良さそうです。本譜19が疑問手で白がやや優勢になりました。一番悩んだのは32です。第一感は白a6。以下黒a7なら白b2で良さそうですが、黒a7ではなくb2とX打ちされると自信が持てませんでした。結局白a3→黒a2→白f7。これも黒h6とされるとあまり自信がなかったのですが、黒はh5! 白h6と取って優勢を感じたのですが、ゼブラの分析によればどちらもほとんど互角の形勢のようです。37は悪手。ここはh2と打ち、次に黒g2、更に黒h3→白h1→黒g1を狙っていくのがベター。しかし39となると白も難しく、私は長考しました。b列に白石が入っていれば、白h1→黒g1→白b2の偶数で簡明に勝てるのですが、b列が黒一色であるために寄せが難しくなっています。結局40e7→黒d7→白c8→黒e8→白d8→黒b8→白h1→黒g1→白c7→黒b2→白a1→黒b1→白a7!と13手先まで読み、その時に黒がa6に打てない(第6行が真っ白なため)ために黒は右下の白から打てない5個空きに打たざるを得ず、偶数理論が復活して白勝ち、という結論に至りました。これは我ながら良い読みだと思っていたのですが、49でb2ではなく実戦のようにf8に打たれる手を軽視していました。その時は実戦のように50a6→黒b2→白a1→黒b1→白g7!でホワイトラインが通って白勝てるだろうと軽く考えていたのですが、そこで黒h7→白h8→黒a7→白a8→黒g8と打たれると下辺が黒のものになります。かなり焦りつつこの手順を数え、白4石勝ちであることを知ってホッとしつつ50を打ちました。55はh7では勝てないことを読み切った上での変化ですが、白h7で差が広がってしまいました。ところで44手目では実戦よりも遥かに良い手がありました。読者の皆さんも、黒43と打った場面まで局面を戻してぜひ次の白の手を考えてみて下さい。

正解は44c7! これは実にうまい手ですね。白が打てない5個空きだった右下隅がd8の一個空きとつながって6個空きとなったために、偶数理論が復活して黒から有効な攻めがないことを確認してみて下さい。この手は対局中全く見えていませんでした。



●Hisatoshi Narumi – Takeshi Murakami○

2回戦は鳴海久俊初段。鳴海初段は岩倉三段とともに品川金曜練習会の常連だそうです。二人に共通することですが、どんな手も決してノータイムでは打たず、じっくりと読みを入れるのが素晴らしいと思いました。序盤16ではe1も有力で迷いました。結局b4から白e6を狙う展開を選んだのですが、やはり16ではe1の方が良かったようです。19は疑問。ここではもっと良い手がありました(次の対長崎戦で出てきます)。ずっと互角の戦いが続きますが、33が悪手! ここは白g3と打たれると形が悪い(黒f2でもh3でも一手で黒の手がなくなってしまう)ので、e7に埋めて白g3を消しておくべきでした。すかさず打たれた34が好手で、以下黒が粘れない形になってしまいました。



●Hidekazu Nagasaki – Takeshi Murakami○

3回戦は長崎秀和六段。この試合は18まで2回戦の対鳴海戦と全く同じ進行になりました。そして長崎六段は19b5! これが好手で私は長考に沈みました。白d1→黒f1→白f2…や白b6→黒e1→白a5…の先を色々と読み、悩んだ挙句に20b6。以下黒の手は的確で、白がどんどん苦しくなります。31では黒f7でもf6でも白d8!で種石を切るしかチャンスがないと読んでいました。以下38まで白必死の粘り。読者の皆さんもぜひ白38まで並べ、ここから黒がどう寄せるべきか考えてみて下さい。

39はやや疑問。実はここでは私も長崎六段も見落としていたうまい寄せがありました。正解は黒b1!→白a1→黒e8! 最初の交換でe1の黒石が消えたために、黒はf8とg8に余裕手ができるという寸法です。これは実にうまい筋ですね。以下白b8→黒a8→白a7→黒b7→白a2で左辺も白に与えますが、以下黒h6から確実に黒が勝てるのでした。本譜39g2は、最善の黒b1と比べるとたった2石差損なのですが、後の黒の寄せ方が非常に難しくなってしまいました。44はこれしかありません。45では一瞬g7がうまい手に見えますが、以下白h8→黒a8→白b7!で黒がb8に打てません。長崎六段はもちろんこの罠を見抜いて黒b2。これはうまい手で、白は偶数理論を維持するためにa2に打つしかありません。しかし黒は47で右辺をどう打つか非常に難しい形です。小考の後に黒はh5。白はh4しかありませんが、ここで黒がh6に打てないのが痛いところ。以下は54まで一本道です。55は白h8と打たせて黒a1とb1を連打しようという手。その連打を防いで56も必然。終局後石数を数えて二人とも信じられない気持でした。3辺を黒が取っているのに引き分け。そして引き分け勝ちの権利は私が持っていたのです!

やはり47が敗着でした。ここは黒h6→白g7→黒h4!が最善。このh4の意味は、偶数理論で白がb8→黒a8→白b7とした段階で黒h7と打ち、白h8を強制して黒a1→b1の連打を実現する、ということです。これはかなり高度な考え方で、47の段階でこの展開を構想できる選手は高段者でも少ないのではないでしょうか。とにかく、非常に幸運な逆転勝利でした。

明日は品川シーサイドオープンに参加します。末國九段も参加するかもしれない、ということなので楽しみです。

オセロのルールは単純だと思われていますが、子供達とオセロをするようになってから、決してそうではないと思うようになりました。

まず「挟んで裏返す」という概念を身につけるのが大変です。「既に自分の石が存在し、それと一直線上に相手の石があり、その先に自分の石を置くと、間にある相手の石をひっくり返して自分のものにできる」というかなり複雑な状況を大人は「挟んで裏返す」と非常に単純化して言っている訳ですが、小さな子供にはこのような単純化した説明は通用しません。「ルール上打てる場所に打ち、挟んだ石を裏返す」ということを子供が出来るようになるまでには随分と時間がかかります。

次に難しいのが「複数の方向を返す」ということです。子供は石を沢山取りたがるので、まずは自分が返せる石の中で一番沢山石を返す方向の列だけを返します。その他の方向にも返せる場合でも、忘れてしまう場合が多いです。

更に難しいのが「斜めの石を返す」ということです。縦や横の石をなんとか返せるようになっても、斜めの石は返し忘れるのが当たり前で、そこまできちんとできるようになるにはこれまた随分と長い時間がかかります。

ところで、最近次女(5歳)がオセロを打てるようになり、一日に何度も「オセロ打とう!」と誘われます。もちろん私が適当に悪手を打って負けてあげます。長男(8歳)はまだ斜めをほとんど返し忘れるのですが、なんと次女は5割ぐらいの確率で斜めもちゃんと返します。そして「隅を取ると有利だよ」という私の言葉を覚えて、隅を取ろうとします。先日次女とオセロを打っていたらこんな局面になりました。

c25d1f19.png

ここで次女(黒)はc1! 次に黒a1と隅を取ろうという狙いです。私が白d1と打つと、「隅に打ちたい。隅に打ちたい!」と言って泣き出してしまいました。上二人の子供は今でもまだ「隅を取る」という明確な目標を持って打つことが少ないので、これには驚きました。三人の子供のなかでは、次女が一番オセロに向いているのかもしれません。

5a55dfb6.jpg

今日は長男と次女でオセロを打っていました。今のところ平手で次女の三連勝です。頑張れ長男!


●Yutaka Hagikura – Takeshi Murakami○

6回戦は萩倉譲六段。全日本選手権で準優勝したばかりの強豪です。黒は7から11! 昔なんどかこの進行の棋譜を並べたことがあるのですが、はっきりと思い出せませんでした。とりあえずf1を狙うしかないだろうと12。15となれば白はほとんど16~18のウイング攻めしかありません。黒は長考の末に19。白f4を許しては勝てないと見た勝負手です。白やや優勢だと思ったのですが、ここからの打ち方がよくわからずに迷いました。22や24ではとりあえずf4に埋めるべき。黒から25と打たれて雲行きが怪しくなってきました。28が悪手。ここはe6と打ち、以下黒b5なら白c8→黒f7→白f6→黒g6→白a6…、黒f6なら白b5と打って白優勢でした。30もg6やg5の方が良く、34まで急速に白不利になってしまいました。35~42はほとんど一本道で抵抗のしようがありません。43は好手。この手でa2は白a5!が好手で形勢逆転します。45となった局面で最後の長考。白はとりあえず奇数空きの左下に打つしかありませんが、白a5→黒a6→白b7なら黒a7、白a5→黒a6→白a7なら黒b8!で奇数理論に入りどうしようもありません。残り20秒まで考えて46b7! とりあえずこれでブラックライン等の確定石を稼ぎ、相手のミスに期待するしかないと判断しました。とはいっても黒はa7で左下を白の打てない3個空きにし、後でg8などでブラックラインを切れば簡単に勝てます。私は勝負を諦めていたのですが、小考の後に打たれた黒c7がとんでもない大悪手。恐らく黒は、白b8の時に再び第7行が白一色になり、黒a7→a8の連打ができると勘違いしていたのでしょう。打った直後に萩倉六段も事態の深刻さに気付き、「こりゃ勝てねぇよ。ひどい!」とぼやくことしきりでした。しかし偶数理論が復活したとはいえ形勢は微妙です。5分近くある残り時間を全て投入して黒が長考する間、私も必死で考えました。左辺方面は黒の手に従って手止まりを打つしかないとはいえ、53や55で黒がh8と隅を取った場合に白h7と白h4のどちらが得になるのかは微妙です。55でh8は白h4が好手で黒2石負けになることを数えた萩倉六段は57~59の好手順で斜めを沢山返します。終局した盤面を見てもどっちが勝っているか分からなかったのですが、数えてみると白4石勝ち。二人とも信じられず、何回も数え直して確認します。黒にとってはまさに痛恨の逆転劇でした。



●Takeshi Murakami – Hiroto Nagao○

最終戦は長尾広人六段。私は再び13を選びます。20ではb4に打つ人が多いのですが、このa5もなかなかの好手です。23では黒a6→白a7→黒c6→白f8→黒g8…という進行も有力ですが、g4に変化してみました。しかしこの変化はあまり良くなかったようで、24!という好手を打たれて苦しくなりました。25c6は白b4で苦しそうです。29は実戦30~34を想定し、これならなんとか粘れるかと思って打ったのですが、直後に30b3!という好手があるのに気づいて青くなりました。しかし白はh3。もちろんこれでも白悪くありません。36はf2で厳しいと思っていたので、少し有難く感じました。これで37b3が打ちやすくなります。とはいえ38も好手で、依然として白優勢です。43~45はほぼ一本道です。46と打たれて私は最後の長考。黒a3→白a4黒b7は白b2と打たれて駄目だと思ったのですが、実は次に黒h7!→白h8→黒g8で右辺と下辺を捨てつつ黒a1→b1の連打を狙う進行で引き分けでした。本譜47で白8石勝ちの形勢に。以下52が4石損(正解は白b8)だった以外は双方最善で56まで進みます。途中54が好手で、私は負けを覚悟しました。55は左辺と左上の2個の2個空きをハイパー偶数にする最後の抵抗。57でa4なら白4石勝ちでしたが、残り数秒の長尾六段は57a3! 私は58で横を沢山返したものの、パッと見黒が足りないと思っていました。なので終局後に引き分けを数えた時は信じられませんでした。

結局6勝1引き分けで優勝することができました。全日本で1勝5敗58位だったことを考えると、夢のようですね。そして立派な優勝カップをいただくことができました。

bf8615aa.jpg

このカップは大事に飾っておくつもりです。

昨日は第一回神奈川カップに参加しました。


●Keita Omori-Takeshi Murakami○

初戦は大森敬太五段で蛇定石からのスタート。18~20は好手順。数年前にKurnik(現在のPlayOk)で谷田七段とブリッツを打った時に初めてこの手順を打たれ、びっくりしたのを覚えています。形勢互角ですが、左辺の打ち方が色々あって迷いました。29は白b4を消した手。30はそれを復活させた手です。31ではc8と取られる方が嫌だったのですが、局後そう指摘すると大森五段は「それも考えたのですが、黒c8→白a3→黒e1→白b4→黒c7→白f7で困ると思いました」とのこと。確かにこの展開は黒不利なので、実戦31はこれで良かったようです。32ではつい白a3→黒a2→白b4と打ちたくなりますが、以下黒c8→白c7→黒g6…で結構白危ないと思いました。そこで32g8。これが好手だったようで白有利になりました。黒は上辺と左辺の形が悪く、形勢挽回が困難です。46で一個空きを作るのは気持が悪いのですが、白a2だと黒b2!とホワイトラインを通されてまずいと思いました。黒47のあと白がどう寄せるべきか、読者の皆さんもぜひ考えてみて下さい。



●Takeshi Murakami – Masahiro Goto○

2回戦は後藤雅宏二段。13は私の愛用手です。21ではc7が有力ですが、白h6と打たれると自信がなかったのでh5と引っ張ることにしました。32は後藤二段の勝負手。34でe1と当ててきたら思い切って黒f1と上辺を取るつもりでした。この手はg2の白を黒くしてしまうのですが、f3の空きのせいで白にはうまく咎める手がありません。このf3の空きを最後まで活用して勝ちきることができました。



●Takashi Yamakawa – Takeshi Murakami○

3回戦は山川高志六段。このところメジャーで常に上位に入賞し、全日本レーティングでも何度かトップになった強豪です。麻布オセロ部から東大オセロサークルという超エリートコース(?)を歩み、将来はチャンピオン間違いなしの逸材。最近は私も彼に負けが込んでいたので、なんとか一矢を報いたいという気持ちでした。序盤で上辺にウイングを作りましたが、黒も種石が不足して形勢は互角。白20ではg3→黒c6→白f5→黒d7を予想し、その対策を5分近くかけて長考しました。ところが山川六段はノータイムで21f6! 私の5分は全く無駄になってしまいました。しかしやはり21はc6が良かったようで、以下白優勢。28では第一感白b5ですが、黒a6と応じられた後の展開に自信が持てず、結局28h5から種石をどんどん切っていくことにしました。31は疑問手。ここは白からe7と打たれても黒f8→f7と手を稼げる形なので、放置して黒b2が良かったようです。実戦は逆に白からe8→e7と手を稼がれてしまいました。黒37となった時点で私の持ち時間は既に残り一分を切っていましたが、38~42は比較的簡明な手順なので間違えずに打つことができました。44ではb8やd8でも勝てそうな気がして迷ったのですが、結局ブラックラインを通すc8に。ゼブラの分析によればこれが唯一の勝ち手で、b8やd8では勝てないそうです。47が実質的な敗着。ここは黒g8!と打って黒a8→b8の連打を狙うのが正解でした。以下白f8→黒a8→白h8→黒b8→白h7…と左下を連打させていけば白勝ちですが、白は左下の連打を防いでa4と打つ可能性もあり、それなら引き分け局面になるところでした。51は最後の勝負手。白がうっかりf8に入ると黒a8!があります。次に左下を放置して白h7なら白勝ちですが、うっかり白b8に入ると黒a2→b1の連打で一気に逆転! この危険な展開を防いで52a8とするのが最善で、以下は一本道。久しぶりに山川六段に勝つことができました。



●Takeshi Murakami – Hiroyuki Iwata○

4回戦は岩田浩幸四段。22まではよく見かける展開です。右辺に白がこんな悪形を作っても互角という実に不思議な序盤です。24は少し有難く感じました。どうせ25~26で上辺に白の手がなくなるのなら、その前にc2やe2に打っておき、白f8は後に取っておかれる方が嫌でした。27は長考の所産。黒b4は白e8→黒d8→白g7、黒d8は白g7→黒b4→白d8で不利と考えた末の着手です。29はb6もあり迷ったのですが、本譜29なら白b4と打ってくれそうな予感があり、それなら黒a3→b3→c2と手数を稼いで黒も打てると思いました。30は以下黒b6→白a5→黒a3→白b3の展開を想定したと思われますが、実戦31が好手なので疑問。34はa6が良かったようです。以下微妙な形勢が続きますが、40は悪手。ここはe1と打って白g7を狙われるが嫌でした。これで引き分け形勢。41となるとホワイトラインの黒通しが非常に強力です。実質的な敗着は50。ここは白h1→黒h2→白f1が正解。ぜひ盤面右下にあるPutの左の四角をクリックし、盤面を進めてみて下さい。黒4石勝ちの形勢ですが、黒を持って勝ち切るのは容易ではないはずです。実戦53となっては黒の簡明な勝ち局面です。



●Takeshi Murakami – Koichiro Sato○

5回戦は佐藤紘一郎三段。飛び出しからよくある展開ですが、16あたりから双方未知の局面になりました。19が悪手。20が非常に気持の良い好手なので、この手を防ぐためにc3に先着するか、白c3を打ちにくくするために黒b5と打つべきでした。以下黒大苦戦。31ではc1も良さそうに見えますが、白a3と打たれると粘れない形になると思って黒b6。32は好手。以下白からは常に白d8→黒f8→白g8と引っ張る手順があります。もちろんこの形は黒h8→g7の連打が成立すると白大敗になりますが、種石を上手に切れば黒h8を許さずにきれいに勝ち切ることができます。どの段階で白d8を打つか、あるいはどの段階でそれを防ぐために黒d8を打つか、という点が非常に難しい形です。46ではf8も有力。とにかく白は選択肢が多くて判断が難しい。それに対して黒は即詰みを避けるために比較的手を見つけ易い、という、佐藤三段にとっては嫌な展開になりました。39ですぐにa8に打つのは損です。この形は「白が左辺に手を付けると、黒a8→白b8の時に斜めだけではなく縦も返る」というプレッシャーを白にかけ続けなければなりません。しかし半面ブラックラインが通って黒がa8に打てなくなるリスクもあります。その点を利用して42でg2も有力。42g1(実戦)と42g2は共に引き分けで、後は全て白の負けという形勢。43はa8→白b8→黒b1が最善。50はf8と打ち、黒a8なら白b2、黒g7なら白a7で簡明な偶数勝ちになります。そしてとうとう50が敗着。ここは白f8!→黒g7→白a2!→黒a4→白h2!…、あるいは白f8!→黒g7→白a2!→黒b2!→白h1→黒h2→白a5!→黒a1→白h8…で白勝ちでした。この二つの手順、ぜひPutをクリックして並べてみて下さい。

今日は神奈川カップに参加予定です。オセロの大会は6試合の場合が多いのですが、「もっと打ちたい!」と思うことも多いので7試合の大会というのは嬉しいですね。楽しみです。

↑このページのトップヘ