きのうは品川シーサイドオープンに参加しました。
第1局 白番。どう打つ?
●村上 健 Murakami Takeshi
○田中智佳子 Tanaka Chikako
前半は互角の進行。図で打たれた白a6が疑問手でした。ここは白h3と右辺に滑り、黒f1ならそこで白a6とするのが良い手順だったようです。実戦は黒に29の好手を許しました。30は黒a5→白b3→黒b4→白a3で左辺の手止まりを打つことを狙った好手。これでまだ難しいと思っていましたが、やはり左下方面の壁は相当な白の負担。31以降は黒優勢です。
第2局 白番。どう打つ?
●村上 健 Murakami Takeshi
○長尾広人 Nagao Hiroto
図では白b5と打たれるとやや不利かな、と思っていました。黒h6には白h4、更に黒g6にも白h3があります。ところが白は図でh3! これだと実戦の黒c7→白d8→黒c8が厳しく白苦戦。以下黒が最後まで優勢を維持しました。
第3局 黒番。最善手順は?
●村上 健 Murakami Takeshi
○末國 誠 Suekuni Makoto
24→25の交換は白損でした。ここはc6で白優勢。以下互角の大激戦が続きます。図で私は黒a6→白a4→黒a3→白a2→黒b3。これで左上にハイパー偶数(黒から打てない2個空き)を作り最後に白b2→黒a1でホワイトラインを取るのが唯一の勝ち筋だと思いました。末國九段もこの筋を読んで「困ったなぁ」とつぶやきます。しかし白はブラックラインと左辺を確保して形勢は微妙。結局図以降双方最善。局後石を数えて黒石が32枚あると思った私は「黒の引き分け勝ですね!」と喜んだのですが、よくよく数えると31枚しかありません。残念ながらぬか喜びに終わりました。負けはしたものの、図以降の黒の打ち方(左上に黒から打てない2個空きを作って白b2を強制する)は参考になると思います。他の手だと偶数理論でどれも黒があっさり負けてしまうことをぜひご確認下さい。
第4局 黒番。最善手は?
●駒形真之 Komagata Masayuki
○村上 健 Murakami Takeshi
駒形五段は私と同年齢でオセロ歴も同じぐらい長いです。ベテラン同士の対決は定石も昔の進行になりました。28までは20年以上前に流行った展開です。私が初めて世界選手権で優勝した1996年、大会前にこの展開を研究しまくり風邪をひいてしまったのも今となっては良い思い出。当時はパソコンもなく全てオセロ盤に石を並べながらの手研究でした。29は疑問。打てるうちに黒a4→白a2の交換を入れるべきでした。31で黒はa4に打てず、33で打つと斜めも返ってしまいます。33まで白優勢ですが、ここでどう寄せるべきか分からず私は大長考。局後末國九段に「村上さんは昔の棋譜集の解説で『34は白a4→黒a6→白b6→黒a2→白e8!→黒c8→白f7!→黒f6→白e7…で白必勝』と書いていましたよ」と言われて驚きました。なんでそんなに昔の棋譜集の内容を覚えているのでしょうか。書いた当人も忘れているというのに…。末國九段凄過ぎます! この簡明手順を逃して局面は混とん。46ではf7が第一感ですが黒g7!の通しが強力で自信が持てませんでした。46はb6の黒石を消して黒g1を消し、ホワイトラインの白通しを狙いやすくした手です。このあたり色々と非常に難しく時間を消費。そして図で打たれた黒a1が敗着。以下実戦の手順で簡明な白勝ちです。図で黒a2と打たれると自信がありませんでした(引き分けの形勢)。図から黒a2→白f7となった局面で黒がどう打つべきかも非常に難しいです。ぜひ考えてみて下さい。
第5局 白番。どう打つ?
●村上 健 Murakami Takeshi
○菱山裕一 Hishiyama Yuuichi
30は好手。黒は種石がなくかなり苦しい形です。白の敗着は図で打たれたb7。以降の実戦はほぼ必然の進行。これでブラックラインの白通しをキープできれば白勝ちですが結局黒は49でライン切り。しかしここまでの展開を図の時点で読むのはかなり困難です。図の正解は白a4でした。こう打たれると黒はe2(黒+4形勢)とg7(引き分け形勢)の選択が難しく、黒e2→白e1→黒a5と正しく進めてもそこで白b3と粘られると形勢不明。これなら白にも十分チャンスがあったことでしょう。
第6局 黒番。唯一勝てる手は?
●大森敬太 Ohmori keita
○村上 健 Murakami Takeshi
最終戦は非常に難しい試合になりました。お互い長考の連続。終盤は特に黒の選択が難しい展開になりました。図では白に作らせた1個空きを温存して黒g2も有力に見えます。結局図で打たれた黒a7が敗着となりました。図の正解は黒a3。次に白a2以外なら黒b2があります。それを避けて白a2なら黒a7→白g2→黒a1→白b2→黒g3!で第3行をがっぽり取るのが大きく黒+10。これは少ない残り時間ではとても読めません。さて49も「黒a1から上辺を取る」と「黒g2から右方面と左上の両方で手止まりを打つ」のどちらが得なのか難しい。大森六段はa1を選択。これは正しい選択で私も「手止まりを打っても足りないかも…」と思ったのですが、右下の手止まりがかなり得をする形だったのが幸いして白4石勝ち。幸運でした。
結果は5勝1敗で第3位。好成績がとれて嬉しかったです。前回の大会の反省を生かして終盤に時間を残すようにしたのが良かったのかもしれません。上位3人はみなオセロ歴30年以上のベテランばかりで、下の写真はまるで20年前の関東オープンのような感じです。来週日曜日は全日本選手権・東京ブロック予選。頑張ります。
準優勝の中島八段、優勝の末國九段、第3位の私 (写真提供…龍見六段)
第1局 白番。どう打つ?
●村上 健 Murakami Takeshi
○田中智佳子 Tanaka Chikako
前半は互角の進行。図で打たれた白a6が疑問手でした。ここは白h3と右辺に滑り、黒f1ならそこで白a6とするのが良い手順だったようです。実戦は黒に29の好手を許しました。30は黒a5→白b3→黒b4→白a3で左辺の手止まりを打つことを狙った好手。これでまだ難しいと思っていましたが、やはり左下方面の壁は相当な白の負担。31以降は黒優勢です。
第2局 白番。どう打つ?
●村上 健 Murakami Takeshi
○長尾広人 Nagao Hiroto
図では白b5と打たれるとやや不利かな、と思っていました。黒h6には白h4、更に黒g6にも白h3があります。ところが白は図でh3! これだと実戦の黒c7→白d8→黒c8が厳しく白苦戦。以下黒が最後まで優勢を維持しました。
第3局 黒番。最善手順は?
●村上 健 Murakami Takeshi
○末國 誠 Suekuni Makoto
24→25の交換は白損でした。ここはc6で白優勢。以下互角の大激戦が続きます。図で私は黒a6→白a4→黒a3→白a2→黒b3。これで左上にハイパー偶数(黒から打てない2個空き)を作り最後に白b2→黒a1でホワイトラインを取るのが唯一の勝ち筋だと思いました。末國九段もこの筋を読んで「困ったなぁ」とつぶやきます。しかし白はブラックラインと左辺を確保して形勢は微妙。結局図以降双方最善。局後石を数えて黒石が32枚あると思った私は「黒の引き分け勝ですね!」と喜んだのですが、よくよく数えると31枚しかありません。残念ながらぬか喜びに終わりました。負けはしたものの、図以降の黒の打ち方(左上に黒から打てない2個空きを作って白b2を強制する)は参考になると思います。他の手だと偶数理論でどれも黒があっさり負けてしまうことをぜひご確認下さい。
第4局 黒番。最善手は?
●駒形真之 Komagata Masayuki
○村上 健 Murakami Takeshi
駒形五段は私と同年齢でオセロ歴も同じぐらい長いです。ベテラン同士の対決は定石も昔の進行になりました。28までは20年以上前に流行った展開です。私が初めて世界選手権で優勝した1996年、大会前にこの展開を研究しまくり風邪をひいてしまったのも今となっては良い思い出。当時はパソコンもなく全てオセロ盤に石を並べながらの手研究でした。29は疑問。打てるうちに黒a4→白a2の交換を入れるべきでした。31で黒はa4に打てず、33で打つと斜めも返ってしまいます。33まで白優勢ですが、ここでどう寄せるべきか分からず私は大長考。局後末國九段に「村上さんは昔の棋譜集の解説で『34は白a4→黒a6→白b6→黒a2→白e8!→黒c8→白f7!→黒f6→白e7…で白必勝』と書いていましたよ」と言われて驚きました。なんでそんなに昔の棋譜集の内容を覚えているのでしょうか。書いた当人も忘れているというのに…。末國九段凄過ぎます! この簡明手順を逃して局面は混とん。46ではf7が第一感ですが黒g7!の通しが強力で自信が持てませんでした。46はb6の黒石を消して黒g1を消し、ホワイトラインの白通しを狙いやすくした手です。このあたり色々と非常に難しく時間を消費。そして図で打たれた黒a1が敗着。以下実戦の手順で簡明な白勝ちです。図で黒a2と打たれると自信がありませんでした(引き分けの形勢)。図から黒a2→白f7となった局面で黒がどう打つべきかも非常に難しいです。ぜひ考えてみて下さい。
第5局 白番。どう打つ?
●村上 健 Murakami Takeshi
○菱山裕一 Hishiyama Yuuichi
30は好手。黒は種石がなくかなり苦しい形です。白の敗着は図で打たれたb7。以降の実戦はほぼ必然の進行。これでブラックラインの白通しをキープできれば白勝ちですが結局黒は49でライン切り。しかしここまでの展開を図の時点で読むのはかなり困難です。図の正解は白a4でした。こう打たれると黒はe2(黒+4形勢)とg7(引き分け形勢)の選択が難しく、黒e2→白e1→黒a5と正しく進めてもそこで白b3と粘られると形勢不明。これなら白にも十分チャンスがあったことでしょう。
第6局 黒番。唯一勝てる手は?
●大森敬太 Ohmori keita
○村上 健 Murakami Takeshi
最終戦は非常に難しい試合になりました。お互い長考の連続。終盤は特に黒の選択が難しい展開になりました。図では白に作らせた1個空きを温存して黒g2も有力に見えます。結局図で打たれた黒a7が敗着となりました。図の正解は黒a3。次に白a2以外なら黒b2があります。それを避けて白a2なら黒a7→白g2→黒a1→白b2→黒g3!で第3行をがっぽり取るのが大きく黒+10。これは少ない残り時間ではとても読めません。さて49も「黒a1から上辺を取る」と「黒g2から右方面と左上の両方で手止まりを打つ」のどちらが得なのか難しい。大森六段はa1を選択。これは正しい選択で私も「手止まりを打っても足りないかも…」と思ったのですが、右下の手止まりがかなり得をする形だったのが幸いして白4石勝ち。幸運でした。
結果は5勝1敗で第3位。好成績がとれて嬉しかったです。前回の大会の反省を生かして終盤に時間を残すようにしたのが良かったのかもしれません。上位3人はみなオセロ歴30年以上のベテランばかりで、下の写真はまるで20年前の関東オープンのような感じです。来週日曜日は全日本選手権・東京ブロック予選。頑張ります。
準優勝の中島八段、優勝の末國九段、第3位の私 (写真提供…龍見六段)