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名南経営 人事労務コンサルタント 大津章敬公式ブログ

2013年10月

就業規則の条文にはその背景や目的を記載することが重要 就業規則の整備は私の社労士としての業務の中でもかなり比重の高いものの一つに挙げることができます。今日はその就業規則整備に関して、私が最近特に意識していることをお話ししたいと思います。

 それは各条文に、その背景や目的を記載することです。例えば、ほとんどの企業の就業規則の中には休職制度の記載があるかと思いますが、そこに書かれているのは通常以下のような取扱いでしょう。
休職制度の対象者
休職事由と期間
復職の手続き
休職期間完了までに復職できない場合には退職となる旨の定め

 こうした内容はもちろん必要なのですが、それと同等以上に重要なのが休職制度を設けた背景や目的の記載です。そもそも休職制度は私傷病などにより出勤できない場合の解雇猶予措置ですが、これは法律によって定められているものではなく、企業が任意に導入する仕組みです。であるとすれば、そこには会社として休職制度をわざわざ設けた背景や目的があるはずなのです。それを就業規則に記載しましょう。例えば以下のような感じでしょうか。
ex.私傷病によって長期間欠勤をする場合は、本来、普通解雇の対象となります。しかし、病気やケガで欠勤する度に解雇になるかも知れないと不安になるのでは、安心して仕事に集中することもできません。また会社としてもせっかく縁があって採用させて頂いたみなさんが病気やケガになって苦しんでいるときにすぐに退職となるというのは非常に辛いものです。そこで当社では、私傷病でお休みをしなければならないような場合に、一定期間、解雇を猶予して、安心して治療に専念してもらう期間を設けました。これを休職制度といいます。日常的には健康に留意し、仕事を頑張って欲しいと考えていますが、いざ病気やケガで仕事ができなくなった場合でも、一定期間、安心して治療に専念し、元気な姿で職場復帰してもらいと思っています。詳細のルールは以下に定めますので、内容について理解しておいてください。

 今回はたまたま休職制度を例に挙げましたが、服務規律にしても賃金制度にしても、会社のあらゆる取扱いにはすべてそれが設けられた背景と目的があります。それを伝えることこそが、真の意味でのルールの理解に繋がり、労使の信頼感の醸成に繋がります。また将来、制度の見直しを行う際にもこうした記載があるのとないのでは大違いです。

 就業規則は労使紛争が発生した際に会社を守るものであるということがよく言われます。確かにそのような要素もありますが、それだけではなく、労使が安心して仕事に邁進できる環境を作るための前提でもあります。就業規則整備を進める企業が多くなっていますが、整備をされる際にはそこにしっかりと会社の想いを織り込むようにして頂きたいと願っています。

saleslady  リーマンショック後には雇用危機と言われる状態がしばらく続いていましたが、最近はすっかり状況も変わり、中小企業を中心に「人が採用できない」という相談を受けることが急増しています。

 先日もある工作機械メーカーで「大学新卒の営業職がなかなか採用できず困っている」という話を受けました。この会社では大手製造業を中心に各種工作機械の提案を行うことから、モノづくりに関する知識が求められます。そのためこれまで営業職は男性ばかりを採用してきました。しかし、営業だから、もしくはモノづくりに関する知識が必要だから男性でなければならないという前提は本当に正しいのでしょうか?

 この会社で採用の際にまず重視しているのは、営業職として顧客の懐に入っていくことができるコミュニケーション能力です。この点について学卒の男女を比較すると、一般的には女性の方が社交性が高く、そつなくコミュニケーションをこなす傾向が強いはずです。これは多くの採用面接者が共通して感じている事実でしょう。一方、モノづくりなどの技術に関する知識についても、いまや男性だから機械に強いなどということは少なくなってきており、社内教育の充実や提案資料の工夫で十分に克服することが可能です。


 もちろん現在の日本の社会では女性の出産・育児による職場離脱の可能性は男性より高いのは間違いないでしょう。しかし、育児休業を取得した上で職場復帰する女性がいまや当たり前になっている現状を考えれば、休業中にも業務に関する情報を提供することでブランクをできるだけない状態にし、無理なく復帰してもらえる環境を構築することが前向きな解決になるのではないでしょうか。また上昇志向が強い女性にとっては、売上や利益という結果で評価される営業職というのはむしろ男女の見えない壁を意識することなく力を発揮することができることから、環境さえ整えば、男性を上回るような成績を上げるという例も決して少なくありません。


 若手に営業職を避ける傾向が強まる中、男性営業職の採用は厳しさが増す一方でしょう。安定的な人材確保と事業運営を考えれば、従来の固定的な役割分担意識を見直し、優秀な女性層を活用していくことが強く求められます。
※ちなみに名南コンサルティングネットワークの男女比はほぼ半々であり、担当顧客を持って活躍する総合職女性社員が多数存在します。彼女達の頑張りがなければ、事業は決して回りません。企業経営者を相手にする専門職として活躍している女性陣の働きぶりを見ていると、社会全体として女性労働力をもっと積極的に活用していかなければならないという思いを強く持ちます。

mon クライアントからよく聞かれる質問の一つに「世間ではいくらくらいの退職金が支給されているものなの?」というものがあります。この質問はなかなかの曲者。というのも世間で公表されているモデル退職金が実態を表していないのです。そもそもモデル賃金にしてもモデル賞与にしても全体的に水準が高く、中小企業の比較には使いにくいというのが現実ではないかと思いますが、中でもモデル退職金は実態よりもかなり高い水準のものが多く、取り扱いに困ることになります。

 例えば経団連のモデル退職金調査では大学卒が2,281万円、高校卒1,965万円(経団連「2012年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」)という2,000万前後の水準になっています。また中小企業の調査として比較的信頼度が高い東京都産業労働局の平成24年「中小企業の賃金・退職金事情」では、大学卒が1,224万円。高校卒が1,113万円という結果が出ています。この結果をサラリーマンが見ると「結構もらえるものだな」と期待するのではないかと思いますが、現実的にこうした水準の退職金にはなかなか出会わないというのが実感です。

 確かにいわゆる東証一部などの大企業であれば企業年金も入れて2,500万程度の退職金が支給されることも珍しくはないでしょう。しかし、中小・中堅企業に目を向けると1,000万円を超える退職金に出会うことは少ないというのが現実です。あくまでも現場を見ている実務者としての感覚になりますが、1,000万円の大台に乗ってくるのは通常、従業員数で300名程度の中堅企業くらいからではないでしょうか。従業員数が100名程度の中小企業であれば、600万~800万程度が中心、それよりも小さな企業では水準はまちまちで傾向を見るのも難しくなっているのが実情です。一方、小規模企業の場合は退職金規程などもなく、とりあえず中退共に月額5,000円で加入している例が多く見られます。現在の年1.0%の利回りでいくと、勤続42年の場合、中退共からの基本退職金は3,138,500円になりますので、これが小規模企業の退職金の一つの目安になるのではないかと思います。

 このように水準の検証が難しい退職金ですが、退職金は目に見えない債務とよく言われます。最悪の場合、企業の資金繰りを圧迫する悪者になることもありますので、定期的に現状分析を行い、同時に水準の検証も行っておきたいものです。
関連blog記事
2012年12月25日「都内中小企業のモデル退職金 高卒定年1,113万円 大卒定年 1,224万円」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51970549.html
2011年8月22日「上場企業のモデル退職金は大卒総合職1,805万円、高卒総合職1,733万円」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51868604.html

参考リンク
経団連「2012年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」
http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/038.pdf
東京都産業労働局「平成24年「中小企業の賃金・退職金事情」調査結果について」
http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2012/12/60mck400.htm
中退共「基本退職金額表」
http://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/sisan/sisan03.html

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