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名南経営 人事労務コンサルタント 大津章敬公式ブログ

2014年09月

女性非正規労働者は必ずしも正社員化を望んでいないという現実 いわゆる非正規労働者の増加は、わが国の雇用のあり方を大きく変えています。近時の法改正を見ても、労働契約法の5年無期転換ルールや労働者派遣法の労働契約申込みみなし制度など、そうした非正規労働者の雇用の安定を進めようとするものが数多く見られます。

 非正規労働者については一般的に「本来であれば正社員を希望していたにも関わらず、不幸にしてそれが叶わず、仕方なく非正規労働者として働いている」という論調が多いのですが、実際のところはどうなのでしょうか?そこで今回は厚生労働省が先週発表した「平成25年若年者雇用実態調査の概況」の中から、「正社員以外の在学していない若年労働者の今後の働き方の希望」についての調査結果を見てみることにしましょう。結論から言えば、なかなか驚くべき結果が出ています。

 この調査の対象は、34歳以下の学生アルバイトを除いた非正規労働者ということになりますが、彼らが今後、どのような働き方を希望しているかを見てみると、男性については62.2%が正社員として勤務を希望する一方、非正規労働者としての勤務を希望するのは11.2%に止まっており、非常に正社員志向が強いことが分かります。

 これに対して、女性はどうかといえば、正社員希望が40.0%、非正規労働者希望が37.2%となり、両者の回答割合はほぼ同水準となっているのです。中でも、子育て世代とも言える30代前半の女性においては、非正規希望が39.2%であるのに対して、正社員希望は33.9%となっており、むしろ正社員として働きたいという者が少数派になっています。これは子育て世代であり、現実的に正社員としての勤務の難しさが存在している社会構造上の問題を表しているとも言えますが、最近の「女性活躍推進」「正社員化」という風潮は必ずしも働く女性のニーズには合っていないと考えさせられます。その他、細かい数字を見ていくと、女性若年労働者へのキャリア教育の重要性や男性非正規労働者が年齢の上昇と共に、正社員の夢をあきらめていく姿なども見えてきます。

 今後、若年労働者数の減少により、こうした世代への求人ニーズは大きく高まっていくことが予想されますが、彼ら・彼女たちを効果的に労働市場で活用するためには、安心して育児ができる環境の整備、学校における適切なキャリア教育、就職に至る実践的な人材育成など、クリアすべき様々な課題があることに気付かされます。いまの非正規対策の流れが推し進められ、こうした課題が徐々に解決していくことを期待します。
参考リンク
厚生労働省「平成25年若年者雇用実態調査の概況」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/4-21c-jyakunenkoyou-h25.html

試用期間 無用な労働トラブルを防止するためには、採用時にそのリスクを如何に低減するかが大きなポイントとなります。その一環として多くの企業では、就業規則において以下のように試用期間を設定しています。


第○条(試用期間)
1.新たに採用した者については採用の日から3ケ月間の試用期間を設ける。ただし、特別の技
能または経験を有する者には試用期間を設けないことがある。
2.試用期間中または試用期間満了の際、引き続き社員として勤務させることが不適当であると
認められる者については、本採用は行なわない。
3.試用期間は勤続年数に通算する。
 しかし、多くの企業の実情を見ると、試用期間を設定したものの、その後の管理が行われず。気付けば試用期間が終わっていたということが少なくないようです。これでは試用期間の意味はまったくありません。

 この状況を改善するためには、各部門に配属後、定期的にその社員の業務状況について報告させるルールを設けることが重要です。例えば、入社1週間の時点、1ヶ月の時点で配属した部門の管理者より人事にその勤務状況や執務態度などについて報告させ、問題がある場合には必要な指導・目標設定などを行い、本採用可否の判断を行うことが求められます。

 基本的に配属先の管理者はその責任感から、いったん配属された社員であれば、問題があってもなんとか雇用し続けなければならないと考え、必要以上に抱え込んでしまうことが通常です。しかし、社員の問題行動は現場と人事が連携し、対応することが不可欠です。その意味から、試用期間中の報告ルールを明確にされては如何でしょうか?問題行動について事前に注意指導を行うことで、本採用拒否の際のトラブルを減少させる効果があることもいうまでもありません。

深刻な労働トラブルの原因は会社の不誠実な対応にある 最近は景気回復に伴う人事制度改定ニーズが急速に高まっており、私の仕事も「社員が安心して働ける環境を作りたい」であるとか、「社員の貢献度にしっかり報いる賃金制度を構築したい」といった前向きな相談が多くなっています。しかし、一方では相変わらず、一定確率で労働トラブルの相談にも対応している状況は続いています。私の顧問先は、世間の平均からするとコンプライアンスの意識が高い企業が多いので、幸いなことにこれまで深刻な労働トラブルに巻き込まれるようなことは非常に少ないのですが、社会全体を見るといわゆるブラック企業も多く、労働者が辛い境遇に置かれていることも少なくありません。

 火曜日の「ガイアの夜明け」では、そんなブラック企業に戦いを挑む若者の姿が取り上げられていました。取り上げられていたのは、労働契約法無期転換ルールの煽りを受けて雇い止めされたカフェチェーンの従業員、過重労働で適応障害となり、IT企業を解雇された女性従業員、警備会社で最低賃金未満の賃金しか受け取っていなかった男性従業員といったケースでしたが、その発言をピックアップすると以下のようなものが見られました。
「単に未払い残業代を請求したいのではなく、会社に奪われた自信、自尊心を取り戻したい」
「社員をモノ扱いするのではなく、ヒトとして扱って欲しい」
「ただの被害者で終わらず、社会に働きかけて行きたい」

 このように彼女たちに共通して見られたのは、従業員を使い捨てにするような会社の不誠実な対応に対する不満であり、そこで傷付けられた自らの尊厳の回復を求める想いでした。つまり、深刻な労働トラブルは、企業側の不用意な発言や人材を使い捨てにするような態度が招いていると考えなければなりません。

 今回の番組の内容は、人事労務管理実務の最前線で仕事をしている私からすれば特に目新しいものではありませんでしたが、改めてこうした不幸を使用者側へのアプローチからなくしていくこと、それを通じて労使関係の安定を実現し、企業の発展を促進することが私の仕事であると再認識することができました。

 それにしても最初のカフェチェーンでのアルバイトの雇い止め問題(労働契約法成立により、アルバイトの契約は通算4年間を上限とする取り扱いを導入した結果、通算8年半勤務しているアルバイトが雇い止めされた事案)については、無期転換ルールによる労働者保護の矛盾を感じると同時に、今後同様のトラブルが増加することへの危機感を改めて感じました。当該企業の従業員への説明に問題があったのは明らかであるものの、企業側の理屈も分かるだけに悩ましい問題です。


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