女性非正規労働者は必ずしも正社員化を望んでいないという現実 いわゆる非正規労働者の増加は、わが国の雇用のあり方を大きく変えています。近時の法改正を見ても、労働契約法の5年無期転換ルールや労働者派遣法の労働契約申込みみなし制度など、そうした非正規労働者の雇用の安定を進めようとするものが数多く見られます。

 非正規労働者については一般的に「本来であれば正社員を希望していたにも関わらず、不幸にしてそれが叶わず、仕方なく非正規労働者として働いている」という論調が多いのですが、実際のところはどうなのでしょうか?そこで今回は厚生労働省が先週発表した「平成25年若年者雇用実態調査の概況」の中から、「正社員以外の在学していない若年労働者の今後の働き方の希望」についての調査結果を見てみることにしましょう。結論から言えば、なかなか驚くべき結果が出ています。

 この調査の対象は、34歳以下の学生アルバイトを除いた非正規労働者ということになりますが、彼らが今後、どのような働き方を希望しているかを見てみると、男性については62.2%が正社員として勤務を希望する一方、非正規労働者としての勤務を希望するのは11.2%に止まっており、非常に正社員志向が強いことが分かります。

 これに対して、女性はどうかといえば、正社員希望が40.0%、非正規労働者希望が37.2%となり、両者の回答割合はほぼ同水準となっているのです。中でも、子育て世代とも言える30代前半の女性においては、非正規希望が39.2%であるのに対して、正社員希望は33.9%となっており、むしろ正社員として働きたいという者が少数派になっています。これは子育て世代であり、現実的に正社員としての勤務の難しさが存在している社会構造上の問題を表しているとも言えますが、最近の「女性活躍推進」「正社員化」という風潮は必ずしも働く女性のニーズには合っていないと考えさせられます。その他、細かい数字を見ていくと、女性若年労働者へのキャリア教育の重要性や男性非正規労働者が年齢の上昇と共に、正社員の夢をあきらめていく姿なども見えてきます。

 今後、若年労働者数の減少により、こうした世代への求人ニーズは大きく高まっていくことが予想されますが、彼ら・彼女たちを効果的に労働市場で活用するためには、安心して育児ができる環境の整備、学校における適切なキャリア教育、就職に至る実践的な人材育成など、クリアすべき様々な課題があることに気付かされます。いまの非正規対策の流れが推し進められ、こうした課題が徐々に解決していくことを期待します。
参考リンク
厚生労働省「平成25年若年者雇用実態調査の概況」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/4-21c-jyakunenkoyou-h25.html