1 過重労働と言えば、脳・心臓疾患やメンタルヘルス不調の原因となることから、月80時間を超えるような時間外労働は抑制しなければならないという話をよく耳にします。これは間違いのない事実ですが、現実的にはそれよりも大きなリスクがあると以前よりよくお話してきました。それが交通事故です。

 交通事故はいくら注意していたとしても、一定確率で発生します。そんな事故が発生した際、もし過重労働を行っていたとしたらどうなるでしょうか?交通事故の原因が過重労働による居眠り運転や注意力の低下であるということとなり、その責任が会社に及ぶということになるので注意が必要だと管理者研修などでよくお話していましたが、実際にそんな裁判が起こり、和解が成立しました。

 これは22時間弱の徹夜勤務を行った従業員が、バイクで帰宅中、自損事故を起こして亡くなってしまったというケースで、横浜地裁川崎支部は和解を勧告し、結果的には会社が遺族に謝罪し、約7,590万円を支払うなどの和解が成立したというものです。和解勧告の中で裁判所は、「雇用主は、労働者の通勤に際し、過労で事故を起こさないよう注意する安全配慮義務を負う」と指摘した上で、「事故の危険を認識できたのに、公共交通機関を利用するよう指示しなかった」と義務違反を認めたそうです。

 過重労働の状況から事故の予見可能性があったにも関わらず、それを回避するような義務を怠ったという判断はこれまでの多くの過重労働に関する裁判と同じ構成であり、当然の結果と言えるでしょう。特に地方ではマイカー通勤が多く、事故のリスクも少なからずあるのが実情です。22時間の徹夜勤務は論外ですが、深夜まで残業を行った挙句に居眠り運転で事故を起こすというようなことは十分に考えられることです。脳・心臓疾患よりも発生頻度が高いのは明らかですので、この点からも過重労働対策を捉えなおしたいものです。