功徳

2022年05月02日

「施餓鬼会(施食会・水陸会)と放生会について」

前回の施餓鬼法要における法話の内容から、「放生」について色々とご質問を頂くことになりましたので、そのお答えの一つとして下記のようにまとめさせて頂いておきますので、ご参照下さいませ。

「施餓鬼会(施食会・水陸会)と放生会について」

もともと、施餓鬼会(施食会・水陸会)が中国、日本で盛んとなる前には、僧俗共における仏教行事の中でも特に主な行事となっていたのが、「放生(ほうじょう)会」となります。

「放生」は、仏教における第一の戒律である不殺生戒の実践、慈悲行の実践として、全ての生類、衆生の命を大切にするということの一環として、特に食用、ペット用として売られてある生き物を助けて、野に解き放って、自然へと返してあげるという考えを基に行われるところとなります。

そして、「放生」により積んだ功徳を、一切衆生の悟りへと向けて回向したり、自分のご先祖さまや供養をしたい者への追善供養としたり、あるいは、自分の後生のための功徳とするなどして、各々の仏道の成就へと向けた資糧とするものであります。

また、生きていく上において、やむなく奪ってしまう命(食べる命)や悪意、故意や過失なく殺してしまった命等、私たちは、たくさんの犠牲の元で生存させて頂いていることへの懺悔、慚愧ということから、「放生」による功徳で滅罪を図る、悪業浄化を図るというために行うということもあります。

この思想における仏典の典拠としては、主には金光明経や梵網経に由来するところになります。

しかし、この放生会は、やがて中国、日本においても衰退していくことになり、その代わりとして施餓鬼会(施食会・水陸会)の方がより中心的に営まれていくことになります。

この要因としては、やがて仏教における目的の一つとなる先祖供養が主なものとなっていく中で、その役割を果たすことが鮮明化される施餓鬼会(施食会・水陸会)の方が、在家においての需要が高まることになっていったからであると推測されます。

もちろん、施餓鬼会(施食会・水陸会)も一切衆生の悟りへと向けた功徳を主目的として儀軌が調えられるものとなりますが、その趣旨は、餓鬼への施しを通じた先祖供養のための功徳という点が強調されるところになり、寺院行事の中心的なものとなっていくことになりました。

施餓鬼供養で読むお経「開甘露門」(かいかんろもん)についての解説は下記を参照下さい。

開甘露門(施餓鬼のお経について)
http://blog.livedoor.jp/oujyouin_blog/archives/85151234.html

しかし、拙考においては、「放生会」(不殺生行)による功徳と「施食会」(布施行)による功徳では、その差はかなり大きなものがあり、功徳の差を考えるならば、「放生」の方がより推奨されるべきではないだろうかと考えるところであります。

いや、むしろ、「放生会」と「施餓鬼会(施食会・水陸会)」は両方を一緒に行うことで、よりその功徳の意義を高めることができるものとなるのではないだろうかと考えています。

「水陸放生施食会」として、儀軌を調えて行うことを提案したいところとなります。

ただ、近年、実際の放生で問題となっているのが、環境、生態系へ悪影響を及ぼしてしまう場合や、放生としての動物を売買する商用化、または、魚介類を放生した下流では転売目的で漁師が待ち構えて放生した魚を捕らえてしまうなどの反道徳・反倫理的な行為へと逆に繫がってしまうなどの懸念もあり、せっかくの善行、功徳を台無しにしてしまうことも多々見受けられるところとなっています。

そこで、大量の魚や鳥を放つ、それもわざわざ放生用としての動物を買い取って放つなど、そのように仰々しいことをしなくても、身近な生き物を大事にすることで、その功徳を積むことは十分にできるものとなります。

例えば、放生会の日(あるいはその前後、彼岸期間であれば一週間)は、できる限り肉、魚を食べることを控える、歩く際には、地面にできる限り注意を払って小さな虫を踏まないようにする、または、他人に踏まれそうな虫がいれば、草陰へと持っていってやる、水瓶等の水たまりで溺れている虫がいれば助けてあげる、家の中に出た虫を殺さずに外へと逃してあげる、蚊取り線香やゴキブリホイホイ、アリの巣コロリ等の殺虫剤の使用を控えるなど、実際に身近でできることはたくさんあります。

そのように放生の功徳を実践した上で、寺院・僧侶による放生会の法要に参加して、積んだ功徳を回向することが大切なことになります。

では、その法要の儀軌はどのようなものが望まれるのかということですが、主には施餓鬼会(施食会・水陸会)に準拠するものとして、回向において「放生の功徳を一切衆生へと回向する」ことを文言として整理して加えると良いでしょう。

「水陸放生施食会」法要の儀軌の例としては、観音菩薩の関連するお経を中心としての読誦、回向として、

開経偈・般若心経・大悲心陀羅尼(大悲呪)・開甘露門・観音経世尊偈・放生会回向並び施食会回向・四弘誓願として調えると良いのではないだろうかと思われます。

また、儀軌への補足としての称名念仏、真言や陀羅尼としては、開甘露門の七如来や五如来の称名や十仏名の称名、あるいはそれら如来の各真言、陀羅尼としては、光明真言や宝楼閣真言、宝篋印陀羅尼、阿弥陀如来根本陀羅尼、仏頂尊勝陀羅尼などを加えると尚良いのではないだろうかと存じます。

更には、放生としての不殺生の実践と共に、施食としての布施の実践としては、実際の餓鬼や地獄の衆生たちへと向けた食べ物等をお供えすること(実際は寺院へと納める供養料としての金品に代わってしまいますが、本来は、米等が望まれるでしょう)も必要なことになります。(※米が望まれるのは、米を万倍の乳粥へと陀羅尼により変化させて餓鬼へと提供し、その空腹を満たしてもらうため。米を少し動物たちへと施す「生飯」(さば)の由来も施餓鬼であります)

上記のように、これからの主な寺院行事の一つとして、「放生会」と「施餓鬼会(施食会・水陸会)」を一緒に行うようにしていくことをお勧めする次第でございます。

令和4年5月 合掌

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2021年02月15日

施餓鬼供養の本質について

丁度、施餓鬼供養の本質について回答する機会がありましたので参考に。

問い「地獄で苦しんでる御先祖様の供養」
https://hasunoha.jp/questions/51066

施餓鬼供養

ぼんさま


有縁無縁拘わらず、悪趣に陥ってあるものに対しての供養として洗練されたのが、施餓鬼供養になります。

この施餓鬼供養の本質は、当然に皆(一切衆生)が清らかな悟りへの道を歩めるようにとして行うものとなります。

その内容は、布施の功徳を行うことで、その功徳の力を回向するものとなります。

まずは、余裕の無い衆生(地獄や餓鬼の衆生)に余裕を持たせることで、その余裕のあるところに、間髪入れずに仏教へと誘うということになります。

基本的には施食(せじき)と言いまして、特に食べ物、飲み物に喘いでしまっている餓鬼たちに供物を供え、それをお経の力で万倍、億倍にして届け、それで当面の苦しみを取り除き、余裕を持たせたところに更にお経(特には陀羅尼)の力で、仏教へと帰依させしめて菩提心を起こさせて仏道を歩められるようにとして調えるのであります。

施餓鬼をすること自体も功徳となり、自分の功徳となることはもちろん、ご先祖さまへと回向すること、一切衆生へと回向することで、功徳を共有できるという面もあります。功徳の力は悟りへと向けて欠かせない資糧の一つとなります。もう一つは智慧であります。

施餓鬼が先祖供養になるのはなぜかというのは、特に餓鬼などの苦しみある衆生を苦境から救い、仏の道へと誘ったという「功徳」を回向して、皆と共有するからであります。

施餓鬼によりご先祖様に功徳を届けることで、悟りへの力として頂くということができるのであります。もちろん、もしも残念ながらご先祖様が餓鬼道や地獄道にあるならば、その施餓鬼そのものの供養の効果を直接に向けることも可能になるのであります。

宜しければ施餓鬼供養をなさられるのも。

合掌

春季彼岸と夏お盆での施餓鬼供養の流れについて(往生院六萬寺)
http://blog.livedoor.jp/oujyouin_blog/archives/85154095.html

施餓鬼供養・塔婆について(春彼岸・夏お盆の年2回法会開催)

http://blog.livedoor.jp/oujyouin_blog/archives/85052585.html

3/17-3/23・春彼岸「おせがき」供養・3/20・彼岸中日「日想観」法要のご案内
http://blog.livedoor.jp/oujyouin_blog/archives/85003156.html



oujyouin_blog at 05:54|Permalink

2019年07月03日

お盆・おせがき法要と地蔵盆法要のご案内

大切なご先祖さまのご供養

お盆・施餓鬼法要のご案内

8月11日~15日(5日間)午前8時~午後4時(※最終日は午後3時まで)

お盆施餓鬼ご先祖さま供養は、苦しみある衆生(餓鬼や地獄の者たちなど)を救うために行った供養による「功徳」を、ご先祖さまの仏道を進める糧として頂くために及ぼすと共に、その供養による「功徳」と「仏縁」により、私たちの「現世の安穏」と「後生の安楽」のためにも繋げて参りたいものとなります。

また、ご先祖さまを想うと共に、今ある自分を見つめ直すための機会にもしたいものでございます。

お塔婆をご用意いたしますので、ご供養なさられる方は、お早めにご返信をお願い申し上げます。

御本堂にて・当日・受付順

塔婆ご用意の都合上、必ず事前に寺務所までお申し込みください。

毎年お勤めのお方へは往復ハガキにてご案内いたしますので、ご返信ください。

本年度の「法話」も、皆さまからのご質問にお答えをさせて頂く形式といたしますので、お気軽にご質問くださいませ。

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地蔵盆法要

日 程 8月24日(土)

時 間 午後6時~

場 所 水子地蔵尊前にて
(雨天の場合は本堂になります)

お布施 二千円・随意お供物品

往生院六萬寺
http://oujyouin.com/

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2018年06月12日

お盆・施餓鬼法要のご案内

大切なご先祖さまのご供養

お盆・施餓鬼法要のご案内 

お盆供養は、苦しみある衆生(餓鬼や地獄の者たちなど)を救うために行った供養による「功徳」を、ご先祖さまの仏道を進める糧として頂くために及ぼすと共に、その供養による「功徳」と「仏縁」により、私たちの「現世の安穏」と「後生の安楽」のためにも繋げて参りたいものとなります。

また、ご先祖さまを想うと共に、今ある自分を見つめ直すための機会にもしたいものでございます。

お塔婆をご用意いたしますので、ご供養なさられる方は、お早めにご返信をお願い申し上げます。

8月11日~15日(5日間)午前8時~午後4時(※最終日は午後3時まで)

御本堂にて

塔婆ご用意の都合上、必ず事前に寺務所までお申し込みください。

毎年お勤めのお方へは往復ハガキにてご案内いたしますので、ご返信ください。

本年度の「法話」は、皆さまからのご質問にお答えをさせて頂く形式といたしますので、お気軽にご質問くださいませ。

往生院六萬寺
http://oujyouin.com/

oujyouin_blog at 15:31|Permalink