2010年08月

2010年08月29日

『リストラなう!』

“たぬきち”(綿貫智人)氏による『リストラなう!』を読んだ。ブログ(たぬきちの「リストラなう」日記)についてはかねがね噂は耳にしていたものの、これまできちんと目を通したことがなく、今回新潮社から単行本化されたのを期に初めて通読してみた次第。

 で、感想をまず一言でいえば、予想を裏切って「凄く面白かった!」。

 というのは、実のところ読む前から、
“タブーである巨大出版社の内幕を勇気ある一社員が告発!”
“大企業における過酷なリストラの実態を赤裸々に綴った衝撃の書!”
“あの「暴露ブログ」がついに書籍化! ウェブ時代が産んだ一冊!”
 ――といった、いかにも近視眼的な骨董「反権力」連中が喜びそうな内容の本だったら嫌だなあと思っていたのだ。しかし実際には、そんなつまらない位相に留まることもない、優れた「ノンフィクション」作品として結実してくれたのに安心した。

 もとより、本書を「暴露本」とか「マスコミ批判」といった文脈のみで評価することも、それはそれでありだろう。ただ、それだけでは勿体無い気がするのだ。なぜなら、確かに舞台は大手出版社というマスコミ企業ではあるのだけど、ここに描かれた世界には、2010年というまさに今現在の“普通の”日本社会の宿阿というか病理が投影されているように思えたからだ。

 ここで個人的な体験から言うと、この“たぬきち”氏が勤めてきた大手出版社の内情を、私は10年ほど前まで何年間か雑誌で継続的にレポートしてきたことがある。だから“たぬきち”氏が書いていた「給与水準が高い」「風通しが悪い」「バブルの頃に広告依存型の雑誌を作りすぎた」といったエピソードについても「ああ、今だにそうやっているんだなあ」と思うくらいだった。

 というか、私が取材していた2000年前後のこの出版社では極めてしょーもない次元のトラブルが続出していて、それを書いてる私のほうが正直「何で他人様の会社のことをこうまで書かねばならんのか」とウンザリさせられるような体たらくだった。背景には大昔の泥沼的労働争議やら何やらで社全体が機能不全になっていたこともあるらしい。ただ、当時から「このままではヤバイ」と言われながらも、過去にためこんだ「三ケタじゃきかない」と言われる資産を切り崩しながら何とか経営的にやりくりしているとの話もあり、バブル崩壊後もしばらくは持ちこたえていたようだ。
(もうひとつ、本書に出てくる「大殿様」にも何度かインタビューしたことがあった。こっちの質問の1〜2手先を読んで返答してくる、なかなかクレバーな人物だったという印象を抱いていたが、彼をもってしても会社再建は手に余ったらしい。あるいは「編集と経営の才覚は別」とうことか)

 が、それもここにきて“たぬきち”氏ら40代以上の社員を早期退職で切り捨てなければならないところにまで追い込まれたわけだ。「氷山の上のお地蔵さん」もとうとう背筋に冷や汗が走るようになったということか。

 ちなみに、現在45歳の”たぬきち”氏は私と同年代だ。もとより、フリーライターである私とは全く異なる境遇にある人なわけだが、そうした視座から描写される出版業界の内情、そこで働く者の真情については「身につまされる」ものも抱いた。

 加えて、同氏が従事してきた「書店営業」という立場から切り込んだ出版流通の問題点や、巷間にぎやかな「電子書籍」時代を見つめながらの本音発言には「なるほどな」と頷かされる箇所も多々あった。

 というか、そもそも出版流通などの業界“純ドメスティック”な話題っていうのは、それこそ今回の版元である新潮社のような大手出版社が出す一般向け書籍でやったら、大半の一般読者がついてこれない(だから本も売れない)し、あくまで専門書の領域にとどまるしかないものだったのだ。そういった“業界人しかわからない”ような話題を「リストラ」「早期退職」といったトピックに結びつけながら、多くの人に読みやすいノンフィクション作品へと昇華させている。

 そのあたりを“たぬきち”氏本人がどこまで自覚的にやってきたのかはわからない。ただ、読む限り御本人は「アホな会社に対して、俺ってこんなにアタマいいんだぜー」という意識ではなかったようだ。むしろ「俺ってこんなに馬鹿だ!」というあたりを、あけすけに貫徹しているように見えて、そこに好感が持てる。

 といったら“たぬきち”氏に失礼なように思われるかもしれないが、むしろ個人的にこれは褒め言葉のつもりで書いている。即ち、これからの混沌としたメディア状況下においては、「自分はいかにお利口か」という観点で視聴率だの部数を競ってきた従来型マスメディアとは逆に「自分はいかに馬鹿をやれるか」というところで勝負する人々のほうが強いんではないかという気がするからだ。

 以上、まとまりのない感想になったが、とりあえずこのへんで。

(「岩本太郎ブログ」と同時掲載)

ourplanet_iwamoto at 00:28|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 出版界 

2010年08月28日

エフエムおおた!

 高円寺の一室におけるあまりに濃すぎる夜から一転、昨日は夕方から大田区の大森駅に近い(徒歩7〜8分)ダイシン百貨店駐車場で行われていた夏祭り「山王祭」にて、ミニFMやインターネットでのライブ中継を実施していた「エフエムおおた」に顔を出す。

 市民メディア仲間の池田佳代さんや松浦弘智さんらが参加し、大田区を拠点に地元の情報をミニFMやインターネットやフリーペーパーなどを通じて発信しながら地域活性化を図ろうという「コミュニティ放送を地域社会に役立てる会」が、26〜27日の2日間に渡って開催される地元の祭りで、場内のステージ進行などもかねながらのメディア発信に乗り出したのだ。これを機に今後は区内を拠点にしたさまざまなメディア発信活動を手がけていきたいという。

 野次馬でやってきた私もドサクサ紛れにマイクの前に立ってしゃべる。それにしても良い盛り上がりだな〜この祭り。平日の夕方だったんだけど、場内はあふれんばかりの人出で、しかも子供たちがそこらじゅうで元気にはしゃぎまわっている。大田区のこの辺って、子供がこんなに大勢いたんだと感心させられるほどである。正面のステージ上では11歳と9歳の姉妹デュオ「葵と楓」がライブを展開。何でも最近メジャーデビューしてそれなりに話題になってる2人らしい。

 ともあれ、そんな感じで場内の出店やステージに登壇した芸人さん、さらにはダイシン百貨店(この近隣では古くからあるデパートらしい)や商店会のお店の人たちも入れ替わりラジオのブースにやってきて出演する。何しろこの残暑、しかも午後からは西日がモロにあたるというハードな環境でもあったが、池田さんも弘智さんも真っ黒に日焼けしながらテンションのりのりでがんばっていた。どうやら見たところ、この界隈には昔ながらの都下のコミュニティがまだ濃厚に残っているようだし、そのあたりと上手くマッチングしながらやっていくと、今後は面白い方向へと展開していくかもしれない。おーし、がんばれ「エフエムおおた」! とエールを送りつつ帰途に着いた次第。

(「岩本太郎ブログ」と同時掲載)

ourplanet_iwamoto at 14:35|PermalinkComments(1)TrackBack(0) ラジオ | アワプラ話

2010年08月27日

オルター!「日本のメディアアクティビズム」!!

 昨夜は高円寺・素人の乱12号店で行われた「検証・日本のメディアアクティビズム」(主催・メディアアクティビスト懇談会)第1回「自主メディアの夜明け」に参加(動画はこちら)。

 見るからに狭っ苦しい空間(これでも部屋の一番後ろ奥から撮っている)に20人ほどが集まってギューヅメ状態。しかもこのクソ残暑の夜にエアコンが壊れてて扇風機が一台回るのみ。なおかつ、語るテーマはといえば60〜70年代の小川紳介による三里塚シリーズをはじめとする16mmモノクロフィルム時代のドキュメンタリー映画や、ビデオ黎明期のTVF(東京ビデオフェスティバル)に出品された自主制作映像であったりする。う〜む、濃いっ!(汗)。

 ゲストは元小川プロダクションのプロデューサー・伏屋博雄さんとTVF審査委員の佐藤博昭さん。司会の本田孝義さんの進行で、映像(『日本解放戦線・三里塚の夏』と『走れ!江ノ電』)の一部上映もまじえながらの、こめかみからジワ〜っと流れ出る汗も忘れながらの約2時間半。

 故・小川紳介が率いてきた小川プロダクションの凄絶な足跡(小川死去後の1994年、計16本の作品と、約1億円の借金を遺して解散)については、私も山形ドキュメンタリー映画祭に通ったりしているクチだから聞き及んでいる。しかし、こうして当時を小川と共に歩んできた(それもプロデューサーとして金策に走り回ったという)伏屋さんの口から訥々と、かつ迸るように語られる回顧談には改めての迫力を感じた。各地の大学やセクト関係者にあたって作品上映してもらいながら、その上映料を前借りしたりカンパを募ったりすることで次回作品の制作費に充てていたという日常。もっとも、その各地での上映会はどこも大入り満杯で、大島渚などの著名な映画人たちもこぞって応援してくれた時代。小川自身は毎回撮影した作品を被写体である農村の人たちと車座的に見て語らいながら56歳の若さで世を去る。けれども、彼の薫陶を受けた上映関係者らが、後に全国各地での「ミニシアター」設立ムーブメントを担い、それが今日のドキュメンタリストたちにとっても貴重な作品発表の場として活きていること、等々――。

 そんな小川紳介とTVFとのカップリングは、奇妙に見えて、実は互いに通底するものがあったのだなと聴きながら知らされた。確かに、1992年に世を去るまで16mmフィルムでの作品制作を一貫してきた小川と、1978年発足のTVFには直接的な接点はいという。けれども伏屋さんは言う。
「もし小川がもう少し生きながらえていたなら、ビデオにも目を向けたのではないか。そうした新しい機材には偏見のない人物だったし、何より自分が撮影した三里塚や山形の農民たちと一緒の席で上映しては、みんなで語らうのが好きな人だった」

 今で言う「市民メディア」や「市民ビデオ」の源流に小川がいたという指摘は、確かに今日の貧困問題や差別問題をビデオで追う映像作家たちの仕事を思うと頷けるものがある。また、後にTVFに応募してきた作家たちに小川紳介にインスパイアされた人たちが多いらしい。

 ともあれ、そんな具合にこの「検証・日本のアクティビズム」、今後は毎月1回ぺーすで来年1月まで同じ場所でイベントを継続していくという。まあ、次回(9月30日開催の「ペーパータイガーと日本のメディア運動」)以降はもう見ながら汗だくということはないだろうし(笑)、関心のあるかたはこことかをマメにチェックのうえお越しください。ではでは。

(「岩本太郎ブログ」と同時掲載)

ourplanet_iwamoto at 23:29|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 雑記 

2010年08月25日

現在・過去・未来♪(メディフェスがあったから)

 前にも書いた通り、来たる9月3〜5日に開催される「武蔵野・三鷹メディフェス」では、不肖・岩本が司会を務めるシンポジウム「市民メディアの過去・現在・未来」が最終日に行われます。

 パネリストとして白石さん(アワプラ)、松原明さん(レイバーネット日本など)、小川明子さん(愛知淑徳大学准教授)のほか、あの津田大介さん(『Twitter社会論』などでおなじみ)も出席してくださるという“豪華版”。シンポジウムのみのチケットは販売していませんが、メディフェスの1日参加券(1000円)から参加できますので、どうかこぞってご参加ください!

 っていうか、その「メディフェス」自体のPRをやんなきゃいけないんですよ(笑)。実は今日も昼間に、そのシンポジウムの準備レジュメを書いてたら、実行委員長の河戸さんから電話で原稿督促と同時に「宣伝告知を宜しくお願いします」と言われまして。

 昨年の「メディフェス」には私も実行委員、というか事務局スタッフとして関わっていて、今年も前回に続いて東京都内で行なわれるのだが、主催元はまったく違うということもあり、当初は一参加者としてチケットを購入して見に行くだけのつもりでいた。ところが、それがあれやこれやの末にというか、いったいどうしてそうなったんだか今となってはよく思い出せない経緯を経て、気がつけばシンポジウムの司会などという役回りを仰せつかることになっていた(汗)。

 それにしても「ミイラ取りがミイラ」とでもいうんだろうか。この「メディフェス」(正式名称は「市民メディア全国交流集会)」には今から6年前、2004年の1月に名古屋で第1回目が開かれた時から私は毎回足を運んでいるのだが、当初はあくまで「取材する」立場だったのだ。それがどういうわけか、いつしか毎回の主催元との間で「取材するんならついでにこっちのサイトにも記事を書いてくんない?」「あいよー」「ついでにスタッフもやってくんない」「あいよー」……みたいな感じで、今ではこういうことになっている。

 とはいえ、そうやってお声をかけていただくのは私自身としても光栄なことであり、何とか役目を粗相のないように務められればと身の引き締まる思いをしている次第だ。ただ、今回のシンポジウムのテーマ「市民メディアの過去・現在・未来」については、私なりに思うところを込めてつけさせていただいた。

 思い返せば、この「市民メディア」の集会が初めて開かれた6年前と今とでは「市民メディア」はもとより「メディア」そのものの内実が大きく変容してしまっているではないか。だって2004年初頭の私たちはYouTubeやUストリームはおろか、ブログやSNSですらも満足に手にしていなかったのだ。10年前の2000年、私が「市民メディア」などと呼ばれる分野に首を突っ込み始めた時点でも、まだ「ブロードバンド」が「これから」のメディアとして語られていたのである。まさに十年一昔、いや、五昔くらいか。

 そんな時代から「一般市民が不特定多数に向けて情報発信できる可能性」を議論してきた「市民メディア」界であるが、少なくとも日本国内にいてインターネット接続環境に置かれた人々にとって、今やとっくに「そんなものはごく当たり前」の環境が整ってしまいつつある。ならばそうした時代に敢えて「市民メディア」みたいなことを標ぼうしながら発信する意味って何だろう? そもそも「市民メディア」とか御大層に(?)に構えて発信すること自体が、もはやズレてんじゃないの?……と、まあ乱暴に言えばそういう問いかけから始まるシンポジウムがあってもいいんじゃないかと考えたのだ。

 もとより、私自身はそういう時代「でも」というか「だからこそ」、いわゆる「市民メディア」の役割は重要だと思っているのだが、そこでまた捻くれたことを言うなら、私はもともと「市民メディア」とか「市民」という言葉が好きではない。ただ便宜上として使っているの過ぎないのである――という話をやりだすと、また長くなりそうなので、とにかく、まずは9月3〜5日はよろしくね♪ ということで、ではでは。

(「岩本太郎ブログ」と同時掲載)

ourplanet_iwamoto at 23:19|PermalinkComments(0)TrackBack(0) お知らせ | アワプラ話

2010年08月24日

検証・日本のメディアアクティビズム

 明後日(26日)から月に1回のペースで開催の予定。
 以下は公式案内からの転載ですが、文章から染み渡ってくる硬派な姿勢が何とも心地良いですね。関心のある方はぜひ足を運んでみてください。
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検証・日本のメディアアクティビズム
 6回シリーズの懇談会【検証・日本のメディアアクティビズム】は、大きな時代区分をもって、それぞれの時代情況や各トピックにおける特徴的な運動を取り上げ、運動が獲得した成果や意義、また浮き彫りになった課題などを整理してみようという試みである。きっと日本にもメディアアクティビズムは存在している。けれど、「メディアアクティビズム」がさす概念や運動への共通理解は未だはっきりしていないし、はっきりできるものなのかどうかもわからない。一側面への視座であることは否めないが、懇談会では、まず、存在するだろう日本のメディアアクティビズムの歴史や全体像を共有したいと考えている。曖昧なメディアアクティビズムのフレーム(枠組み)を整理し拡張する試みは、メディアアクティビスト同士の共通理解を広げ、交流を促進していくうえでの助力となるはずだ。そしてそこから、メディアアクティビズムが日本社会に対してどのようなアプローチを展開するのか、戦略や自らの活動を捉え返していくところまで話を発展させることができればと考えている。

◆第1回 【自主メディアの夜明け
 かつて映画は大資本の映画会社が作るものだった。社会運動が盛り上がった1960年代〜70年代、運動と並走するように自主製作・自主上映によって数多くのドキュメンタリ ー映画が生まれた。小川プロダクションが製作した三理塚シリーズはその代表的な作品である。一方、ビデオはテレビ局が使う高価なものだったが、1960年代末頃からポータブルビデオカメラの開発が進み、個人によるビデオ制作が始まった。
 1978年、日本ビクター主催により東京ビデオフェスティバル(TVF)が産声を上げる。同フェスティバルはいち早く「市民ビデオ」という概念を掲げた。

[ゲスト]:伏屋博雄(元小川プロプロデューサー)
      佐藤博昭(NPO法人市民がつくるTVF理事)
[司会]:本田孝義(映像作家、VIDEO ACT!スタッフ)

▲日時:8月26日(木)19時〜21時半頃
▲場所:素人の乱・12号店
 杉並区高円寺北3丁目8-12 フデノビル2F(奥の部屋)
 JR中央線高円寺駅下車徒歩7分
 北中通り沿い素人の乱シランプリ向かい
 アヤマ接骨院脇の階段を昇って奥
 地図→http://trio4.nobody.jp/keita/shop/12/map.html
 当日問合せTEL:090-8647-5030(土屋)
▲参加費:500円
▲主催:メディアアクティビスト懇談会
 e-mail:maroundtable@gmail.com
 TEL:03-3296-2720(OurPlanet-TV内)
インターネット動画配信を行います。
 http://martable.blogspot.com/p/videos.html
 http://www.ustream.tv/channel/maroundtable

★以下、2回目以降の開催日と懇談会のタイトルです。
 開催場所は、1回目と同じで【素人の乱・12号店】になります。

◆第2回 【ペーパータイガーTVと日本のメディア運動
 9月30日(木)19時〜21時半頃

◆第3回 【市民メディアの勃興、挫折、現在
 10月27日(水)19時〜21時半頃

◆第4回 【ネットアクティビズムとは何か
 11月25日(木)19時〜21時半頃

◆第5回 【身体的メディアの実践
 12月16日(木)19時〜21時半頃

◆第6回 【ネットでの動画配信の発展と課題
 1月26日(水)19時〜21時半頃

★詳細は、下記ページをご覧下さい。
 http://medir.jp/blog/19
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(以上、転載ここまで)

ourplanet_iwamoto at 14:14|PermalinkComments(0)TrackBack(0) お知らせ