今回は”炎のランナー”だ! FMわぃわぃ『恋するNPO/東京ラブレター』今夜放送!『編集者 齋藤十一』

2007年02月24日

“23日、わかった”月刊『少年ジャンプ』休刊!

 ――なんだそうです。私も初めて知りました。ただ、なんかこれも、ここにニュースは出てるけれども「23日、分かった」って書き方がねえ(苦笑)。

 もしかして、これ自体はコミック雑誌関係者の間ではずっと前から周知の事実だったのを、なんかの弾みで知った大手メディア関係者が慌てて、自分がそれを知った日付でもって「23日、わかった」とか書いてるんじゃないかと邪推したくなる私です(笑)。

 というのは、以前に光文社の月刊誌『宝石』が休刊になった際、業界紙などでは数ヶ月前に報じられていたその話題をもとに私が関係者たちに取材し、8日発売の某月刊誌にその話題を記事として書いたところ、翌9日付の朝日新聞朝刊にベタ記事で「『宝石』が休刊になると、8日までにわかった」とかいう記事が出たのを覚えてるからだ(笑)。

 まあ新聞ってやつは「自分がその事実を認識するまでは、そういう事実はこの世になかったのと同じだ」って発想なのかも知れんけど(もっとも欧米の新聞はこういう時にも「『××』によれば――」と記事が出た媒体の名前をライバル紙であろうが素直に書くそうだが)、それにしてもこの「23日、わかった」とかいう「どうして自分がその情報に行き当たったのかを伏せることが当たり前だろう」的な記事の書き方は、そろそろやめにしたほうがいいような気がする。別に「取材源の秘匿」だ何たらに関係ない話だろうしさ。

 それはともかく、本題の『月刊少年ジャンプ』休刊の件だ。今なお42万部も売れている雑誌(上記報道による)がどうして休刊しなきゃならんのかと思う向きもあるだろうが、コミック誌の場合、一般の活字系雑誌とはまるで異なるビジネススキームで成立していることを、まずは前提として押さえておく必要がある。

 というのは、集英社にとって看板媒体で、最盛期には600万部もの部数を誇った『週刊少年ジャンプ』でさえ、雑誌それ自体が生み出す利益は版元にとってさほどのものではないからである。というか、むしろそれを維持するためのコストが半端じゃなかったと思われるのだ。

 御承知の通り、コミック誌の定価は200〜300円と安い。若年層の読者から気軽に手にとってもらうためには値段は上げられないからだ。しかしその一方で、掲載される作品の質や数が落ちればたちまち読者からそっぽを向かれる。だから経費を浮かそうと思えば、雑誌制作に掛かる費用を切り詰めるしかない。だからこの御時世にあって、商業媒体が使うものとしては普通ありえないような質の悪い紙を各誌とも今だに使っている。

 また、他のジャンルの雑誌であればここで必然的に「売れないのは仕方なくても、広告収入で稼げれば」という発想が出てくる。ところが――実のところコミック雑誌という奴は、部数は活字系雑誌よりも出ている一方で「広告媒体」としてはまるで使えないのだ。これは業界紙記者時代に私も各出版社の広告担当者への取材の席で「コミック誌は売るのが難しくて……」といった話を聞かされていたからよくわかる。

 では、そうした「雑誌単体としてはいくら売れても儲けにならない」コミック誌を、なんで大手出版社が出し続けてきたのか。

 ひとつには――これは古今どのメディアについても言えることだが、ようするに掲載作品を「パッケージ化」して売っていくための先行投資だ。つまり、連載作品をコミックの単行本にして売っていくことによる収益、あるいはアニメ化やキャラクターグッズ化のロイヤリティで稼げるのであれば、雑誌での薄利や赤字には目をつぶろうという発想である。一昔前の文芸誌と作家との関係性と、ある意味では似ている。つまり、文芸誌自体は儲けにならない(「発行した部数が完売して広告スペースが全部埋まっても赤字です」と、大昔に文藝春秋の広告局長さんから聞かされたことがある)が、そこに執筆する作家の生活費用に原稿料を振り込むことができるし、ゆくゆくは掲載作品が単行本化されてベストセラーになるのであれば報われますよという割り切り方だ。

 もうひとつは「書店対策」だろう。出版社にとっては儲けが薄いコミック誌であっても、街の書店にとっては、それこそ毎週『少年ジャンプ』連載作品の続きが気になる子供たちを惹きつけるアイテムとして書店営業上重要だし、売れれば売れるだけマージンも手に入る。また、ここで部数を稼いどけば、版元の集英社が発行する他の媒体(女性誌など)やコミックの単行本を仕入れて売って行くうえでプラスのメリットが生まれるかもしれない。

 実際、集英社の書店対策なんてのは我々部外者の想像を超えるものがあった。

 あれは確か私が業界紙記者になって数年目のことだが、会社から言われて集英社の「書店様感謝パーティ」なんてやつに出席したことがある。ちょうどバブル真っ盛りのことだ。

 全国各地の「優良」書店の社長婦人と女性社員(お手伝いさん?)を東京に招き、帝国ホテルの一番でっかい大広間で集英社の若菜社長(当時)ら経営陣が自ら席をまわって表彰状を渡するという代物だった。私も来賓の業界関係者(?)みたいな形でスポットライトを浴びせられ、おずおずとお辞儀しながら満場の拍手を浴びた(苦笑)。セレモニーが終わった後は同じフロアで染之助染太郎とかメジャーな芸人たちの余興があり、帝国ホテルに一泊した書店の奥さんや女性店員さんたちは東京見物ツアーを楽しんだらしい。

 後日、会社の上司に「行ってきました」と報告すると、彼は「集英社って親会社の小学館より儲かってるけど、社員の給料は親会社より押さえなきゃいけないし、だから金が余ってんだよ(笑)」と言われたものだ。

 以来十数年、そんな集英社ですら、あの「ジャンプ」ブランドに傷がつくことを織り込んだうえで『月刊少年ジャンプ』の休刊(実質廃刊)に踏み切った。今でも40万部以上売れているとはいえ、集英社社員の給料が小学館社員のそれより低いかもしれないとはいえ(笑)、大手出版社の人件費をベースにした高コスト体質では、もはや存続不可能ということになったのであろう。かつて『ジャンプ』をささえてくれた子供たちの数も少子化で減少し、彼らが通っていた街中の“パパママショップ”――集英社に呼ばれて年に一回帝国ホテルにきていた人たち――も、もはや街角から姿を消しつつある。

 さて、この次には何が起こるんだろうか。楽しみだな。

ourplanet_iwamoto at 02:59│Comments(0)TrackBack(0) 出版界 

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