2010年03月

2010年03月25日

虹の下5

8月5日 槍ケ岳(3180m)から双六キャンプ場へ 歩行13.5時間
 昨日よりきつい1日が始まる。涼しいうちに出発し、梓川の上流にそって木陰の道を歩く。落差のある渓相に変わり、イワナがいそうだ。
 雪渓が現れ、太陽の光をさえぎるものはなくなる。荷が重い。雪渓がなくなる辺りで休憩する。
 暑い。気を取り直し、高山植物の咲くガレ道を、数歩進んでは休みながら、ついに水場に着く。雪渓の水が地中を通って湧きだし、小さな滝のようになっている。広口のペットボトルに水を受ける。冷たい。一気に1リットルを飲む。体が冷やされる。荷をおろし、携帯食糧を食べると元気がでてくる。
 11時半に槍の小屋に着く。ザックを置き、槍の穂先を登りに行く。鉄梯子が急だ。山頂にでると、10人くらいいる。北鎌尾根をのぞく。
 高い所は向いていない。早く降りよう。中高年の女性グループが先にいて下降が遅い。中の1人が、体を固くして鎖にしがみついている。足をどこに置いてよいのかわからないようだ。リーダらしい先頭の女性が気づき、ようやく下降路を譲ってくれる。12時半に小屋に戻る。
 ガスがでてくる。槍を後にし、西鎌尾根に向かって急ぐ。明るいうちに双六のキャンプ場に着こう。西鎌尾根の入口まで一気に下り、そのまま進む。ガスがかかり、暑くはないので歩きやすい。
 西鎌尾根になってから誰にも会わない。高山植物が咲いている。振り返ると槍や北鎌尾根が見える。
 5センチくらいの白っぽい鳥の羽根が落ちている。少し進んでから拾いに戻る。薄茶色や白い羽根がある。毛鉤に使えそうだ。
 1メートル離れた所に、1羽のライチョウがいる。目の上に赤い線がある。花を食べていて、逃げようとしない。写生する。
 双六が遠い。硫黄岳を登る途中、ピンク色のナデシコを見かける。花びらは糸のようだ。花は疲れを忘れさせる。
 あの山を越えると双六だ。ようやく登ると、まだ先に山がある。山頂に人影が見える。樅沢岳(もみさわだけ)の山頂で、数人がシャッターチャンスを待っている。振り返ると雲海に浮かぶ槍が美しい。
 「お疲れさま。槍からでは大変だったでしょう」というので、「横尾からです」と答えると、「え、横尾からからですか 横尾からですか」と驚く。
 6時半に双六小屋に着く。ビールを買い、一気に飲んでしまう。日が落ちる7時より前にテントを張り終える。明日は、笠ケ岳だ。




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2010年03月18日

虹の下4

8月4日 奥穂高岳(3190m) 横尾から往復 歩行10時間
 3時半に目が覚める。このまま寝ていたいが起きる。借りたコッフェルで温かい食事をとる。必要最低限の荷物を準備する。水1リットル、携帯食料2個、飴4個、防湿雨具の上着、自作の折りたたみアルミ杖(川で拾ったテントの支柱で、握りをひもで巻いたもの)、簡易アイゼン、ウェストバッグを持つ。
 5時過ぎにテント場を出発し、奥穂高岳に向かう。山の上のほうは雲がかかっている。川に沿って歩く。雪渓を登っていると、小学生の男の子3人がふざけながら下りてくる。1人がころび、頭を打つ。「真剣におりろ」と引率者に怒られる。
 雪渓を登ると、涸沢キャンプ場に着く。大勢の人がいる。ここは観光地だ。山小屋にはビールの自動販売機もある。冷たい水を補給し、先を急ぐ。
 12時過ぎに上の小屋につく。ガスがかかり寒い。すぐさま登りにかかる。鉄梯子を2つ越え、しばらく行くと山頂だ。ガスが一瞬晴れ、ラクダの背のような岩が、見える。ジャンダルム、と誰かがいう。そして、またガスにつつまれてしまう。
 岩場を快適に下っていると、高齢の女性2人が道をあけてくれる。「速いはねぇ。ベテランは長靴をはくのよ。雪渓も滑らなくていいのよ」と後ろのほうから聞こえてくる。

 長靴の登山者3人を思い出す。
 北海道で11月に、雪の手稲山(1023m)を登っていると、長靴をはいた高齢の男の人に会った。中敷を2枚入れているという。同じことをしているので「山は長靴に限る」と意気投合した。(今は、足型にあった厚手の中敷を1枚使っている)
 新潟県の新発田に住む知人は、長靴で山を歩く。中敷を2枚入れ、足の裏が痛くなるのを防いでいる。緩衝材にもなっている。
 冬、防雪長靴をはいて丹沢の水無川を登りに行ったときのことだ。長靴の折り返しを立て、ジャージの裾をかぶせると水が入らない。渓流足袋よりも、高巻き時に滑落しにくい。そんな身支度で雪のついた沢を登っていると、ヘルメットにロープ、台所用ゴム手袋に長靴の高齢者に追いつく。ゴム手袋に感心する。感触、摩擦、防水の点で優れている。長靴をはいた老人は滝の左横を確実に登って行く。

 そんなことを考えていると、川に出る。もうすぐ横尾キャンプ場だ。足を冷やす。石の色が異常だ。水から上の部分は白いが、水中の部分は青みをおびた黄色だ。渓流とは違った臭いがする。石を何個かひっくり返してみるが川虫がまったくいない。涸沢キャンプ場の排水が原因しているのだろうか。
 強い日差しの中を、ようやくキャンプ場に戻る。




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2010年03月09日

虹の下3

8月3日 霞沢岳(2645m) 往復のあと横尾へ 歩行11.5時間
 4時に起きる。まだ薄暗い。ビール缶で湯を沸かすのはめんどうだ。レトルトのパックごはんにフリカケをかけ、水を飲みながらそのまま食べる。
 テントを撤収し、余った水1リットルを歯磨きと洗顔に使う。いつもなら夜は水団で、朝は雑炊のはずだ。
 霞沢岳への分岐にザックを置く。大型のポリ袋をかぶせ、さらにザックカバーをつける。サルへの用心と雨対策だ。
 若い男が歩いている。追い越したり追い越されたりする。関西のパーティを抜く。朝は涼しくて気持ちがよい。鞍部で、その男がカメラを取り出し、ファインダーをのぞいている。向こうに見える山の名を聞くと、乗鞍岳と木曽御岳だという。どちらも登っていない山だ。地図を持っていないというので、いっしょに地図を見ながら、場所と所要時間を確認する。
 日差しが強まり急登がきつい。ようやくK1ピークに出る。冷たい風が心地よい。穂高連峰が扇を広げたように眼前にある。梓川や建物もよく見える。ここは特等席だ。しばらく休憩する。
 K2ピークを越え、ようやく霞沢岳の山頂につく。暑い。眺めはK1のほうがだんぜんよい。それにしても、上高地とは思えない静けさだ。人がいない。
 道連れになった人と、山の話をしながら戻る。栃木県の人で、北アルプスによく来るという。夏休みで、紀伊半島の大峰山に行ったところ、猛暑のため登らずに帰ってきたそうだ。せっかくなので、徳本小屋泊まりで霞沢岳を登りに来たとのこと。
 西穂からジャンダルムを通り、奥穂、槍までの縦走の話を聞く。今回、奥穂から槍に縦走するか、奥穂を下から登るかまだ決めていない。荷が重いと縦走はたいへんらしい。安全のため、横尾から奥穂を往復し、槍に向かう経路にする。                                  
 彼は今日帰るので、コッフェルを貸してくれるという。ありがたい。ビール缶で食事を作らなくてすむ。
 しっかり食べていないので力が出ない。ふらふらしながら、ようやく霞沢岳への分岐に戻る。彼が座っていて、コッフェルを渡してくれる。「10分くらい待っていて」といい、徳本小屋に行く。ビールを買い、揺らさないように戻る。フランスパンをつまみに、ビールをいっしょに飲む。30分くらい座っていると回復する。
 さあ下山だ。最初の沢まで一気に下る。ザックを置き、チタン製マグカップに水を汲んで渡す。湧水が冷たい。ここで別れることにする。体を洗い、横尾のキャンプ場に向かう。6時過ぎに、ようやく横尾に着く。明日は穂高だ。




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2010年03月06日

虹の下2

8月2日 上高地から徳本峠(2135m) 歩行5時間
 新宿発の夜行急行アルプス85号の座席は窮屈で眠れない。あとから座った人がリュックを足元に置いたので、足が伸ばせなくなる。
 早朝、バスは大正池の横を通り、上高地の終点に着く。ひんやりとしている。ティーシャツの上にウインドブレーカーを着込む。おにぎりを2つ食べ、1個を残す。さあ出発だ。
 途中に店があり、その横に長椅子がある。眠たいので、仰向けになって寝る。目が覚めると1時間たっている。涼しいうちに歩こう。
 明神(みょうじん)から右に曲がり、徳本峠(とくごうとうげ)に向かう。伏流水が、川となって流れだす。イワナがいそうだ。軽量化のため、毛バリの道具を持ってきていない。残念だ。
 道が沢を横切る。おいしそうなフキがたくさん生えている。国立公園なので、採取はやめておこう。沢の湧き水を飲み、汗ばんだ体をふく。さっぱりして、すがすがしい。
 川沿いの道を歩いていると、対岸を2頭のカモシカが音を立てて駆け降りていく。灰色のような毛並みだ。動物に会えるとは幸先がよい。
 日差しが強く、荷が重い。2つ目と3つ目の沢で喉を潤す。沢の水に長靴を浸けこむと冷たくて気持ちよい。おにぎりを食べようと捜すが見つからない。しまい忘れたらしい。五目御飯の特大おにぎりだった。
 地図を見ると、テント場のある徳本峠に水の印が付いている。重いので水を持たずに、ジグザグの道を上がる。霞沢岳(かすみさわだけ)への分岐を左に曲がり、徳本峠に出る。穂高岳が間近に見える。

 山荘があり、1リットル100円で水を売っている。テントを張り、時間があるので、登ってきた道を800メートル下って水汲みに行く。藪から音がする。2匹のサルだ。テント場から5分も下っていない。
 ペットボトル2本と魔法瓶1本に、3.5リットルの水を入れテントに戻る。夕食にしようと、ガスストーブを組み立て、コッフェル(アルミの鍋)を捜すが見つからない。確かに入れたはずだが、おかしい。持ち物はチェックリストで確認している。先週、志賀高原の岩菅山(いわすげやま)に行く際のパッキングのイメージを、今回のパッキングと重ねてしまい、実物を確認していなかった。   
 水はたくさんあるので鍋の代用品を考える。紙で容器を作れるだろうか。でも適した大きさの物がない。アルミ箔は、軽量化のため置いてきた。マブロのフレークの缶詰めでは、容器が小さすぎる。
 そうだ、缶ビールだ。さっそく買ってくる。350ミリリットルで500円だ。今日は飲まないつもりでいたが、しかたがない。飲んでからアルミ缶に水を入れる。そのままガスストーブにのせると倒れそうだ。飲み口を開ける指穴に竹の箸を通す。箸の両端を持つと、缶をぶらさげることもできる。缶の底のへこみは、ガスストーブのバーナーの形とも合う。ガスに火をつけると、思ったよりも早く、缶の穴から湯気が出る。コッフェルよりも効率的だ。
 湯は沸かせるが調理はできない。酒の容器の蓋が枡の形をしている。即席味噌汁の具とだしの素を、その中に入れ湯を注ぐ。携帯食糧を食べる。食料が軽くならない。明日は、もう1缶ビールを買い、缶切りで上蓋を開けて鍋にしよう。




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2010年03月05日

虹の下1

 上高地を歩いたことがない。1996年8月、1日1山を目指し上高地周辺の山を登った。
 ニュージーランドから帰ってきて以来、登山から遠ざかっている。毎朝のジョギングや昼休みの階段登りもしていない。週末だけは丹沢にヤマメ釣りに行っている。
 はたして、今回の山行はうまくいくだろうか。『太平洋ひとりぼっち』で有名な堀江謙一さんは冒険航海を振り返り、初めは船酔いをするが、すぐに体が適応すると述べている。
 そんなことを思いながら計画を立てる。徳本(とくごう)峠、霞沢岳、穂高岳、槍ヶ岳、笠ヶ岳、焼岳、乗鞍岳を予備を含め8日間で登る予定だ。

上高地周辺 山行概念図




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