2010年04月

2010年04月15日

虹の下8

8月8日 乗鞍岳(3026m) 歩行2時間
 新穂高温泉をあとに、バスで平湯温泉に向かう。乗鞍行きのバスを待つ間、温泉に入ろう。ところが乗り継ぎがよく、またしても温泉は遠のく。
 乗鞍の手前でバスが止まり、運転手が「ハエマツは2500mくらいから見られます」と説明する。高度計を見るとなるほど2500mだ。山肌が削られ痛々しい。コマクサの群生が遠くに見える。
 乗鞍岳の山頂には神社があり、鈴を売っている。石に腰掛け、火山湖や外輪山をぼーっと眺める。「今日は平成8年8月8日で、末広がりの八が3つも重なる」と年配の女性が話している。
 「鈴を買うと、日付を入れてくれるんだって」が気にかかる。登りなおして記念に大鈴を買ってしまう。北海道の山を登る時にクマよけにも使えそうだ。
 バスターミナルにやっと戻る。ふわーっとして倒れそうになる。長椅子に腰をおろす。明日の夜行で帰宅しようと思っていたが、今日中に帰れる。予定が1日半早まった。徳本峠も含め、霞沢、奥穂、槍、笠、焼、乗鞍を1日1山で登ることができた。

 夜8時に帰宅する。ザックの中から土産を取り出しテーブルに並べる。奥飛騨で買ったリス・アマゴの絵柄の手拭い、とろろ蕎麦、ホウ葉味噌、ハスの実、黒豆。乗鞍で買った山ゴボウと縁起のよい金銀の鈴。いつになくたくさんの土産を買ってしまったものだ。




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2010年04月07日

虹の下7

8月7日 焼岳 (2455m) 新穂高野営場から往復 歩行12時間
 中尾温泉への道路標識にしたがって歩く。迂回路のため温泉まで2時間かかる。5時に出発したが大失敗だ。
 中尾温泉から焼岳に向かう途中、道の脇にいくつも温泉が湧いている。期待していた共同露天風呂は、草が茂っている。入浴してから登ろうと思っていたので残念だ。その先で、10メートル四方の土穴から、湯が音を立てて湧き出している。帰りにここで体を洗おう。(帰りに、鉄の排湯管に乗ると長靴が焼けそうになった。湯の温度は見た目にはわからない。危なかった)
 小沢を渡り、登山道に入る。ミズナラやブナの涼しい原生林を歩いていると、茂みの中で動物が動く音がする。こういう所にはクマやカモシカがいる。
 ビートルズの曲を歌いながら登る。丹沢のクマに至近距離で遭遇してから、クマよけの定番はヘイジュードだ。「ダーダーダ ダダダッダー…」が谷間に響き渡る。続いてオーダーリンを歌う。
 道端で、おじいさんや両親や子供たちの大家族が食事をしている。帽子を深くかぶり、顔を見られないように挨拶をしながら通る。ああ恥ずかしい。
 小さな神社を過ぎる。峠の手前で、コケモモの実を見つける。リンゴの味がしてうまい。ビタミンを補給する。
 火山特有の崩壊した斜面を、上からの落石に注意しながら登る。暑いので休み休み登る。北峰の横を下り、火口湖の左横を南峰に向かう。
 「立ち入り禁止」の看板がある。落石が理由だ。そのまま岩に取りつく。岩穴をくぐる時、押しつぶされたらと、一瞬ためらうが、穴から上の岩に上がる。踏み跡をたどり、外輪山の狭い岩の上を歩き、南峰に着く。少し休んで、飴を口に入れ、引き返す。下りで滑らないように、岩を確認しながら降りる。                     
 北峰は狭く、大勢休んでいる。暑いので下ることにする。途中の社で、新聞紙を敷いて立ち木を背もたれにして昼寝する。木陰でしかも岩陰なので涼しい。
 1時間眠ってしまう。新穂高温泉は夕方4時まで無料だが、間に合わない。のんびり歩く。そのうち元気が回復し、駆けるように下り、登山口に出る。
 本流で水浴びをしようと、川に行くと濁っているのでやめる。林道を下り、ヒル谷という支流に出会う。小堰堤から滝のように水が落ちている。そうだ、ここでシャワーを浴びよう。ヒルがいないか周辺を確認する。水は澄み、冷たいが、体は熱い。全身水をかぶり、手拭いで体をこする。着ている物も洗う。
 なんと気持ちのよいことか。夏は温泉よりも渓流だ。ポリエステルの長袖、ポリプロピレンの下着、フリースのズボン、混毛の靴下はすぐ乾くので助かる。
 アスファルトの道を歩いていると、風がいっそう体を涼しくしてくれる。とうとう焼岳も登った。




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2010年04月02日

虹の下6

8月6日 笠ケ岳(2897m) 登頂後、笠新道から下山 歩行13時間
 笠ヶ岳への道は花が多い。ニリンソウの花は二輪のはずだが、三輪から八輪まで見つかる。
 蘭の花は受粉すると枯れるという。ニリンソウも同じだとすると、短い夏の間に、ハチなどの昆虫に受粉を手伝ってもらうため、たくさん花をつけるのだろうか。
 今日は疲れがたまっている。ハクサンイチゲやシナノキンバイの咲く斜面を登る。「苦しみを喜びにかえる」――アトランタ・オリンピックのマラソンで銅メダルに輝いた有森裕子さんの言葉だ。景色や花はきれいだが、喜びは湧いてこない。
 途中、雪渓の水場で1杯また1杯と水を飲む。急な雪渓を登り、抜戸岳へのジグザグの道で、カエルそっくりの岩を見つける。槍ヶ岳を背景に、カエルは左向きに坐っている。
 今日の予定は、笠ケ岳直下のキャンプ場までだが、予定を変更する。笠新道への分岐にザックを置き、湯を入れた0.5リットルの魔法瓶と携帯食糧を持ち、笠ヶ岳に向かう。
 炎天下の稜線を行く。右側を緑のハエマツのじゅうたんが覆い、左側の斜面に残雪がところどころある。見上げると、青い空に刷毛でかいたような白い雲が連なる。その上に、不思議な光景が広がっている。逆さまの虹だ。半円形の帯が字に開いている。もともと虹は円形で、見る位置によって上部が見えたり、下部が見えたりするのだろうか。3000mに近いからだろうか。
 下山後調べると、逆さの虹は「環天頂アーク」という現象であることがわかる(写真左:文献1)。雲の中の氷の粒に太陽の光が当たって現れるという(文献2)。『世界最悪の旅』(チェリー・ガラード著、加納一郎訳、河出書房)という極地探検の本には、月の周りにできた光りの環の絵が載っている(写真右)。

天頂環    月の暈
環天頂アーク 月の暈

 稜線の登り降りを繰り返し、笠ヶ岳キャンプ場に着く。小屋下の最後の雪渓で、ポリ袋に雪をつめる。小屋で「名古屋ビール」を550円で買う。高いと思うが、アルコール度数6パーセントの表示を見つけ納得する。ビール缶のまわりを雪でしっかり覆う。それを持って、ガレキの山頂に向かう。熱くなった体に雪を入れた袋を押し当てる。
 ようやく山頂に着く。石が積み上げられている。山頂に数人見えたのは、ケルンとわかる。昨年モンゴルの山を登ったときにケルンがあった。弔いと関係があると本に書かれている。ケルンは人の存在を暗示するかのようだ。
 石に座ってゆっくり缶の蓋をあける。「うまーい」、思わず大きな声が出る。冷たいビールを片手に、双六から歩いてきた稜線や、緑とガレと雪渓の氷河地形を目でたどる。

 分岐から、崖のような急な斜面を下る。アルミの杖を片手に、雪渓を滑り降りる。笠新道は、浮き石や木の根があり、下りは遅々として進まない。高度計で20m下がると休んでしまう。明るいうちに降りられるのだろうか。
 桃色のシモツケソウがたくさん咲いている。なんときれいなのだろう。笠の山頂から高度差1500mの下降はいつまでも続く。
 6時50分、新穂高野営場に到着する。7分でテントを張り終え、7時の日没に間に合う。

参考文献
1.環天頂アーク:フリー百科事典『ウィキペディア』 (2010年4月1日現在)
2.空の輝き (2010年4月1日現在)




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