2006年05月05日

ダム湖のサクラマス― 最源流にて

 2001年にダム湖が誕生してから5年たつ。ダムができる前にヤマメを求めて1度だけ遡行した沢、本流を渡り崖を登ってヤマメを釣った沢―これらの沢がダム湖の出現によってどのようになったのかを2週にわたり確かめに行った。

 その記録を3回に分けて掲載する。
  最源流にて
  消えた沢を探す
  サクラマス現る

最源流にて
 
 ダム湖がなかった10年前、5万分の1の地図で全長1.5kmほどの小沢を見つけた。本流を渡渉し、対岸の小沢に入った。道は見つからず、沢を自然の道とした。スギ類の倒木が行く手をさえぎり、何度も倒木をくぐったり、またいだりしながら進んだ。

 幅3mほどの沢は、膝下くらいの深さでゆるやかに流れていた。毛バリを流すがいっこうに魚がでない。走る姿も見えない。腰をかがめながら倒木と藪をくぐり、沢をつめると、村落があった。沢には堰堤もないし、本流とつながっているのでヤマメがいてもよいはずだ。しかし1匹の魚にも会えず、探索は徒労に終わった。

                *

 サクラの咲く4月中旬、霧雨に煙るダム湖に来ている。ヤマメを求めて歩いた沢は湖底に沈み、最源流部だけが細々と流れている。まだ辿っていない残された流域―そこには何がいるのだろうか。ゴアの雨具を着込み、念のため鈴を腰につけて沢の中を歩きだす。

 沢はざら瀬で落差がない。深さは膝下で、大石が埋まった小砂利の底だ。流れが速く、魚が待機する場所がほとんどない。そう思いながら進むと、右側に石が沈んでいて、1mほどの深みをつくっている。毛バリを水面に乗せると、バシャっと魚が飛びついた。一瞬、合わせがきき、かかった。ヤマメかと思ったが、毛バリに食いついたのはニジマスだった。

 そのニジマスは18cmほどで、下腹が橙色をしていた。下腹が橙色や赤色の渓魚は、水深が浅い場所をあまり移動しない居つきのイワナなどに見られる。

 その後魚影がなくさらに進むと、山腹から水が吹き出ていた。吹き出す水源―10年以上前にヤマメを求めて遡行した沢は放水路だったのだ。あっけない幕切れとともに、流れに沿ってもどると、霧の中にサクラ色がかすんで見えた。

ダム湖のサクラ




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