時間の無駄と言わないで

あれよあれよで10年目 古い記事でもコメント・TBお気軽に

や行・ら行・わ行の作家

『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』詠坂雄二

遠海事件: 佐藤誠はなぜ首を切断したのか? (光文社文庫)
小説の体裁とか、設定は面白いんだけど、なんか出オチ感が漂う。
大きな風呂敷だったけど、それに包まれてたモノは意外と小さかった。

そこそこ面白い。
最後まで飽きない。
でも読み終わったらあっという間に忘れちゃう。

『戯史三國志 我が土は何を育む』吉川永青

戯史三國志 我が土は何を育む (講談社文庫)
シリーズ3作目は蜀編。
といっても、主人公は過去2作にも顔を出してる廖淳だし、晩年の彼の回想形式の構成だしで、シリーズ最終作らしく全体の総括的な面もありますです。

シリーズ通して読んでると、みんな色々あったんだよなぁと思い返しながら読めるけど、単品としてはダイジェスト感がバリバリで感動が薄め。
熱いドラマはありませなんだ。

まだまだマイナー武将は沢山いるんだから、もっと書いて欲しいシリーズだなぁ・・・。

『リロ・グラ・シスタ』詠坂雄二

リロ・グラ・シスタ: the little glass sister (光文社文庫)
高校を舞台にした学園モノ。
でも文体や台詞回しはハードボイルド。
要するにとてもイタイ。
読みながら「ンな奴おるかい!?」という突込みばかりが頭を占めてしまう。

色んなトリックの合わせ技。
その中には上手いっちゃあ上手いトリックもあるんだけど、コレだけ作り物めいた世界でそれをやられても何かモヤモヤするだけなんだよなぁ・・・。

つまらなくはないけれど、「ハードボイルド学園モノ」って設定に乗れるかどうかが全てかと。
直前に読んだ本が面白過ぎたってもあるかもなぁ。

『戯史三國志 我が槍は覇道の翼』吉永永青

戯史三國志 我が槍は覇道の翼 (講談社文庫)
シリーズ2作目。
呉のお話。

程普が主人公。
「程普」って一発変換出来るんだね。

前作は主役が陳宮だから三国志としては半端なところで終わるけど、今回は赤壁まである。
大河ドラマ感が増してます。
3代に仕えるし、周りは武闘派が多いしで、前作とはまた別の熱さがあります。
年を取るコトの哀しさもあるけど。

前作と被るイベントが呉サイドの視点で描かれるのも楽しい。

『戯史三國志 我が糸は誰を操る』吉永永青

戯史三國志 我が糸は誰を操る (講談社文庫)
三国志モノだけど、主人公が陳宮っていう渋過ぎるチョイス。
董卓・呂布・曹操がすったもんだしている辺りを陳宮視点で描いてます。
三国鼎立の前の話だけど、劉備とか孫堅とかの有名どころもちゃんと出てきます。

「戯史」ってだけあって、結構今までにない人物描写が多くて面白い。
基本的な三国志を知っていれば、随所で「お〜、そうくるかぁ」みたいな驚きがあります。

そもそも軍師が主人公の歴史モノとしても熱いストーリーなので、一見さんでも十分楽しめるクオリティ。
陳宮の生き様が熱いのよ。
曹操は曹操でコレまた熱いのよ。

三国志を知ってても知らなくても楽しめます。
とても面白い。

まぁ呂布とか結構ファンタジックにチューニングされてるから、生まれて初めて触れる三国志がコレってのはどうかなぁとも思いますけども。

『折れた竜骨』米澤穂信

折れた竜骨 上 (創元推理文庫)折れた竜骨 下 (創元推理文庫)
剣と魔法のファンタジー世界での殺人事件を巡るミステリー。
魔法だからって何でもありなのではなくて、この世界なりのルールの中での推理が行われるワケで。
まぁかつての西澤保彦みたいなもんですわ。

で、序盤は延々と世界観の説明とか登場人物紹介なんかが続いて正直ダレまくり。
でもコレを耐えないとゲームのルールが解らないから痛し痒し。

そこを乗り越えると面白くなる。
伏線の回収も美しい。
ルール説明部分も面白ければなお良かったんだけどなぁ・・・。

『パラダイス・ロスト』柳広司

パラダイス・ロスト (角川文庫)
シリーズ3作目。
構成はやっぱり短編集だけど、うち1つは前後編。

ただせっかく中編にしたけど、意外としょっぱい話で残念。
倍の分量にして密度が薄まっちゃったた感じ。
過去作の短編の切れ味が好きです、はい。

結城中佐に出番が無さ過ぎなのも寂しい。

パワーダウンはしているけれど、単品で見れば十分面白い。
抜群の安定感です。

『箱の中の天国と地獄』矢野龍王

箱の中の天国と地獄 (講談社文庫)
25階の建物の各階に2つずつ箱があって、どちらかを開けないと上の階への扉が開かず、箱の中身は罠もあるよ。
っていう、ありふれたジャンルのお話。

で、ありふれているだけあって名作も沢山あり、コレはその中で埋もれるどころかかなりの駄作ではないかと。
厳密に定められた上手いルール設定とか、頭脳戦とか心理戦とか、そういうの皆無。
全てが場当たり的。
人死にも安い安い。

あと恐ろしく文章が下手っぴ。
デビュー作も読んだけど、ここまで酷かったかなぁ?

ただ、バカミス全開なオチだけは好き。

『ふたりの距離の概算』米澤穂信

ふたりの距離の概算 (角川文庫)
古典部シリーズ5作目。
主人公たちが高校2年生に。

マラソン大会の1日を舞台にした長編。
ミステリーとしては今一つ。

青春小説としてもビミョーな感じ。
せっかくシリーズを重ねる毎に苦くて歪んだ青春の側面とかを描いてきたのに、何かコレは違うんだよなぁ・・・。

シリーズキャラの出てくる小説としては今までの積み重ねもあるし面白い。
でも、今まで上り調子で来た勢いが少し殺がれた感はあるかも。

『ダブル・ジョーカー』柳広司

ダブル・ジョーカー (角川文庫)
『ジョーカー・ゲーム』の続編。
今回も短編形式のスパイ小説。
中身は前作よりも大分凝っててイイ感じ。

ほとんどスパイが出て来ないもん。
それでも面白いスパイ小説。
凝ったプロットですわ。

結城中佐がより格好イイ。
滅多に出て来ないぶん、出てくるときはビシッと締めます。

単行本未収録の短編が1つ収録されてるけど、別に収録されてなくても良かったなぁ。
ビミョーな出来。
他が良く出来てるぶん、何とも締りの無いラストになっちゃったなぁ・・・。

『遠まわりする雛』米澤穂信

遠まわりする雛 (角川文庫)
古典部シリーズの短編集。
高校一年生の一年間のお話。
時系列的には「氷菓」の途中から始まり、「クドリャフカの順番」の先まで。
というか、「クドリャフカ〜」が文化祭の話なので、丸々一年分を扱う本作の最後の話はかなり先までいってるコトになるわな。
好きなシリーズなので、あと何作か一年目の話を出してくれても良かったなぁ。

日常の謎系なのはシリーズ恒例だけど、今回は登場人物のメンタルにスポットを当ててるので、いつにも増して謎はゆるい作り。
謎に期待すると肩透かしを食うけど、レギュラー4人の人物描写はイイ感じ。
前作でもそうだったけど、今回もやっぱり里志だなぁ。

主人公が奉太郎だからこのタイトルだろうけど、「手作りチョコレート事件」が青春モノとしては今作中のベストかと。
里志がフィーチャーされてるだけでなく、他の3人の描き方もなかなか。

本の出し方としても、心理描写としても、作品内時間としても一区切りといったところ。
どうやらまだ続いてゆくようなので、とても楽しみ。
人物描写はそのままに、謎と解決をもっと魅力的にしてくれると嬉しい限り。

『クドリャフカの順番』米澤穂信

クドリャフカの順番 (角川文庫)
400頁弱の長編。
今までは奉太郎が単独で視点人物だったけど、今作はレギュラー4人全員が視点人物に。
謎は相変わらずの日常の謎系。

4人の視点で描かれる文化祭。
ミステリーとしてはこの形式じゃなくても全く問題ない作りなんだけど、苦くて青い青春小説としてはとても効果的。
奉太郎以外の面子も色々思うところがあるというのが判ってとてもイイ。
特に里志パートがイイ。

謎はいつも通り。
いつも通りの謎で400頁引っ張るのはかなり厳しいのか、コトが起きるまで結構かかります。
多視点は4人の人物像が深く描けていてとてもイイ試みだったと思う。
シリーズ第1作から続く流れの総決算というか集大成というか、そんな感じの1冊。

『愚者のエンドロール』米澤穂信

愚者のエンドロール (角川文庫)
古典部シリーズ2作目。
今度は長編。
とはいうものの250頁程度ですが。

前作と比べるとかなり「ミステリー小説」な感じの作りに。
解決シーンの無い映画を観て、謎解きを議論する話。
色んな人が各々推理を披露し、それを評し、ちゃんとどんでんも返る。
青臭い青春要素も相変わらずふんだんに入っているので、全体的な完成度は着実に上がっていると思う。
善哉善哉。

『氷菓』米澤穂信

氷菓 (角川文庫)
デビュー作だそうで。
アニメ化されるそうで。
なのでカバーデザイン(正しくは特大帯)がライトノベルみたいになっちゃってます。
まぁ中身はライトノベルみたいなものなんですが・・・。

こういうメディアミックス展開絡みのカバーデザイン(正しくは・・・)変更ってのは嫌いなんだよねぇ。

閑話休題

日常の謎系連作短編集。
学園モノだし、テンプレ気味の登場人物だし、甘くて苦い青春モノだしと、ラノベ要素満載。
でも謎解きは地味ながら丁寧に作られててイイ感じ。

序盤の細かい日常の謎が地味過ぎるかな。
この作品のメインの謎の伏線も兼ねてるし、人物紹介も兼ねてるけれど、もうちょっと上手くやれなかったものかとは思う。

こういう青臭い青春モノは好きなので、次回作からはミステリーとしてもガツンと来る作りになってると嬉しいところ。

『蒼志馬博士の不思議な犯罪』山口芳宏

蒼志馬博士の不可思議な犯罪 (創元推理文庫)
連作短編集。
時系列的にはシリーズ3作目だけど、刊行順では2作目なので読んでみました。
で、3作目を読んでいる人向けの描写がチラホラと。
やっぱり時系列順に刊行すべきだったんじゃないかなぁ・・・。

前作同様、古風な探偵小説の雰囲気はそのまま。
探偵小説要素を増やして、バカミス要素を減らした感じ。
個人的にはバカミスっぽさは残して欲しかったなぁ・・・。

「洗脳兵器の謎」の仕掛けはもう少し上手にやって欲しかったかと。
解りやすいのが逆に何かの罠なんじゃないかと思うくらいあからさまだったけど、最後までどんでんは返らず。
残念。

ただこの雰囲気はなかなかイイ感じなので、今後はもっとバカミス要素が増えていけばなぁと思います。

『キング&クイーン』柳広司

キング&クイーン (講談社文庫)
帯の惹句でトリックの方向性が判ってしまう。
編集者ってのは読書の楽しみを奪うのが仕事なのだろうか?

なんかしょっぱい話だなぁ。
スケールもみみっちい。
チェスにこんなにページ数を割く必然性も薄い。

最後まで飽きずに楽しめるけど、読み終わってみると「そりゃないよ」と思ってしまう。

『雲上都市の大冒険』山口芳宏

雲上都市の大冒険 (創元推理文庫)
探偵小説というか冒険小説というか。
江戸川乱歩とかの頃のミステリーの現代版っての?
探偵も登場するし不思議な事件も起きるけど、ガチガチの理詰めトリックとかは出て来ないタイプ。
まぁタイトルにも「冒険」ってついてるしね。
カバーイラストもそんな感じだし。

で、そんな感じの本だと思って読んだんだけど、その割にはちゃんと謎解きがなされました。
ちょっと驚いた。
ついでに、凄まじいトリックだったので尚驚いた。
強烈な力技。
もはやバカミスの域です。
このネタで鮎川賞って新しいなぁ。

ちょっとダレますが、まぁデビュー作ですし。
冒険小説一辺倒にならず、かといって本格一辺倒にもならず、この調子のバカミス路線を追求していってくれるとイイなぁ。

『ジョーカー・ゲーム』柳広司

ジョーカー・ゲーム (角川文庫)
スパイモノの短編集。
スパイといっても、「007」とか「メタルギア」とか、そういうのじゃないです。
もっと地に足の着いた、リアルで地味なスパイのお話。

第二次大戦に向かう日本が舞台だけど、古臭くもなければ読みづらくもない。
派手なドンパチも秘密潜入道具も出てこないけど、諜報戦が面白いのよ。
サスペンスであり、ミステリーであり、ハードボイルドであり。
色んな趣向があり、どんでん返しがあり。
良く出来てるのよ。

結城中佐の作ったD機関が暗躍する短編集。
中佐格好イイ。

視点人物が機関の人だったり、抵抗勢力だったり、第三者だったり。
色んな視点で描かれる機関がイイ感じ。

とても面白い。
おすすめです。

『メタルギア ソリッド2 サンズ オブ リバティー』レイモンド・ベンソン

メタルギア ソリッド2   サンズ オブ リバティ   (角川文庫)
原作はPS2用ゲーム
著者も訳者も前作と一緒。
だから欠点も一緒。

前作よりは忠実に原作再現してます。
スコット司令の演説中ストレッチとか、電波な大佐のメタメッセージとかも登場。
スネークが脇役なのもそのまま。

ノベライズとしては前作より質が向上してると思うけど、そもそもこの話はゲームだからこそ(雷電=プレイヤーだからこそ)効果的な演出の話だから、意外とサラッと読み終わります。
ノベライズの際にメインテーマ部分が結構オミットされてるからってのもあるかもね。
ゲーム中の小ネタを入れるくらいなら、主題を大事にしようぜ。

『インシテミル』米澤穂信

インシテミル (文春文庫)
クローズドサークル。
高額報酬と命を賭けてのクローズドサークルモノって最近多いよね。
コレもご他聞に漏れず設定とルールの遵守が全てって感じの小説。

主人公の性格故か、緊張感とかが皆無。
パズル小説にするならそれに徹してくれればイイのに、変に登場人物の背景を描いてみたり、挙句それを半端に放り出してみたり。

それなりに面白いのだけれど、この頁数でコレかいな、という気もする。

『女子大生会計士の事件簿 DX.6』山田真哉

女子大生会計士の事件簿  DX.6 ラストダンスは私に (角川文庫)
シリーズ完結。
まぁシリーズっつったって、一連のストーリーなんざ有って無きが如しですが。
完結といっても、一応続編がもう出てるし。

短編を通り越してショートショートみたいになってる話もあるけど、「巧いなぁ」とも「短いなぁ」とも何とも思わない。
基本的にこのシリーズは読んでも「何とも思わない」のが常。
学習ありきですから。

第一作を最後まで読めた人ならシリーズに最後まで付き合えるはず。
大した向上もなければ、劣化もしない。
安定感は抜群です。

『夏への扉』ロバート・A・ハインライン

夏への扉 (ハヤカワ文庫SF)
1950年代に発表されたSF小説。
舞台が1970年代で、小説内での「未来」が2000年代。
ややこしい。

今読むと、1970年代をつい「過去」として読んじゃうけど、この作品ではそこさえも「未来」なんだよね。
2000年代がこうなってないコトも判っちゃってるのは仕方ないけどちょっと残念。

でもその辺を差っ引いても十分面白い。
きっと作者の意図以上にほのぼのしちゃってるけど、そもそも小説として面白い。
SFネタのベタさ加減は問題じゃないです。
何よりタイトルのセンスが抜群ですわ。

夢と浪漫と猫に溢れた小説。
「SF」が苦手な人にもお勧め。
異星人も多元世界も出てこないもん。
「ドラえもん」くらいのSF感です。

『フラン学園会計探偵クラブ Report.1』山田真哉

フラン学園会計探偵クラブ Report.1 (角川文庫)
「女子大生会計士の事件簿」シリーズが完結してない(文庫版では)のに、時系列的には後になる新シリーズが始動。
「女子大生〜」はあと一冊で完結する予定だそうだから、あと一冊くらい待てなかったのかねぇ?
まぁ前シリーズを読んでいたからってどうこうなるような仕掛けはゼロです。
いっそ清々しいくらいにゼロです。

今シリーズは確定申告がテーマ。
「学習まんが」ならぬ、「学習小説」といった趣。
小説としては相当ヌルめです。

一応連作短編集の体裁だけど、話の構成上不可欠だからそういう形式になっているというよりも、確定申告の1ネタにつき1話って感じ。
だから1つ1つの短編はビミョーに締まりが悪い。

確定申告の説明に関しては相変わらず解りやすい。
小説としてはまぁアレですわ。
小説仕立ての参考書として割り切って読むと楽しめます。

『春期限定いちごタルト事件』米澤穂信

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)
なんともまぁラブリーなカバーデザインでして。
人死無しの日常の謎系です。
北村薫的な。

連作短編集。
青春小説としても結構いけるけど、色々とぼかして書かれてまして。
メインキャラのバックボーンは続編で少しずつ明らかにされていくのかな?
ってか明かされていかないと成立しないよなぁ・・・。

まぁ悪くない、って感じ。
今回は人物設定とか世界観の設定とか諸々の下地を作った感じだから、次からどうなるかに期待。

『神狩り』山田正紀

神狩り (ハヤカワ文庫 JA (88))
タイトル通り、神を狩るお話。
面倒くさいテーマだけどサクサク読めます。
30年以上前の作品だけど古臭さはあんまり感じない。
まぁ学生運動みたいな時事ネタ(?)は仕方がないけれど。

面白いっちゃあ面白い。
でも凄まじいまでの投げっ放しなラストはどうなんだろうねぇ?
打切り漫画みたいだもん。
「オレたちの戦いはこれからだ!!」みたいな感じ。

最初はリアリティー十分に展開していくのに、途中からオカルティックな感じで煙にまかれ始めて、ラストはうやむやに。
ラストはこうするしかなかったのかもしれないけれど、せめてリアル路線は貫いて欲しかったなぁ。
「幻魔大戦」じゃないんだから。

『女子大生会計士の事件簿 DX.5』山田真哉

女子大生会計士の事件簿  DX.5 とびっきり推理なバースデー (角川文庫 や 37-5)
そういえば、この著者のブログから何度かトラックバックして頂いたっけかなぁ。
彼の著書に対する感想文が目に触れていないコトを祈るばかりです。

さて、シリーズも5作目。
番外編を入れれば6作目。
相変わらずの短編(掌編かな?)集だけど、今回は連作形式になり、参考書らしさは幾分薄れたような。

でも、脚注が結構あって、章末でまとめて説明がなされているんだけど、小説なんだからそういうコトは本文中で片付けて欲しいものです。
翻訳モノでも古典文学でもないのにコレだけ脚注がある小説はそうそう無いよ。

猛烈に読みやすく、あっという間に読み終わる。
面白いんだけど、費用対効果に疑問を感じないコトもない。
昔「ズッコケ三人組」を読んでいたときに似たような感想を持ったなぁ・・・。

『極限推理コロシアム』矢野龍王

極限推理コロシアム (講談社文庫 や 62-1)
「極限」のわりに緊張感ゼロ。
「推理」っていうほど知的じゃない。

強引な導入、凄まじくご都合主義な展開、投げっ放しの終盤。
回りくどい文章に、雑な人物造形。
使い古された手垢まみれのトリック。
もう負の連鎖が止まりません。

強引な導入も目新しさの無いトリックも、作家の力量次第でどうにでも出来るはず。
コレと似たようなトリックを上手に料理してる作品だって沢山あるのにね。

着想は面白いんだけどね。
無駄の多い文章だけど、読みやすくはあるのよ。
ただ、緊張感の無さがあまりに致命的で・・・。

なんか山田悠介に似た感じがすると思った。

『贋作「坊っちゃん」殺人事件』柳広司

贋作『坊っちゃん』殺人事件 (集英社文庫)
赤シャツの自殺の謎を坊っちゃんが追うっつう話。
その過程で夏目漱石の「坊っちゃん」の新解釈も披露されるので、鯨統一郎っぽい面もある小説。

「坊っちゃん」を読んだコトがなくてもある程度の内容を知っていれば、筋を追うのは可能かと。
でも、「坊っちゃん」読んでおかないと大して面白くないと思う。
自殺の謎の出来は別に可も無く不可も無くといった感じだもん。

じゃあこの作品の魅力はないんじゃらほい、ってワケです。
まずは文体。
よくぞここまでというほど夏目漱石の文体に似せてるのよ。
まぁ終盤、話を纏める段となってからは突然文体が変わっちゃって残念だけど、それでもよくやったと思う。

今まで何度も読んできた「坊っちゃん」が、少し視点を変えるだけで全然違う解釈が出来ちゃうってのも面白い。
ってかコレがメイン。
ミステリーの魅力ってのは個人的には既成事実(?)の崩壊にあると思うのよ。
「某の死は自殺だと思っていたのに、実は他殺だった」とか、「絶対に不可能に思える犯罪が、ちょっとした工夫で可能だった」とかいう感じ。
それが今回は「あの『坊っちゃん』が実はこんな話だった」ってところがそれにあたるワケで。
「坊っちゃん」を既成の事実として認識しておくためには、やっぱり原典をちゃんと読んでおかなきゃならないと思うのよね。

「坊っちゃん」既読者なら楽しめるのではないかと。
「坊っちゃん」未読者にはどうなんでしょうねぇ?

『さよならダイノサウルス』ロバート・J・ソウヤー

さよならダイノサウルス (ハヤカワ文庫SF)
タイトル通り、恐竜絶滅の謎を追うSF小説。
扱うテーマは全然違うけど、ホーガンの「星を継ぐもの」に近い感じ。
恐竜絶滅以外にも様々な世界の謎が解かれます。

現代は「END OF AN ERA」
コレと比べて全然意味の違う邦題ってワケじゃないけど、なんかチープな感じがしない?

大して古い小説じゃないし、訳者も若い人なのに如何にも「翻訳モノ」って感じの文章です。
ハヤカワ文庫の匂い(解る?)も相俟って、非常に懐かしい感じになります。
僕は読書にハマり始めた頃はハヤカワばっかり読んでたのよ。

閑話休題。

予備知識ゼロでも楽しめると思うけど、恐竜に詳しいとより楽しめるはず。
「パキケファロサウルス」とか、「パラサウロロフス」とか聞くだけで姿形を思い浮かべられる人は作品世界に入り込みやすいんじゃないかと。

終盤が急ぎ足なのが些か残念。
もう少しゆっくりと丁寧に風呂敷をたたんでも良かったんじゃない?
そうすれば強引さも少し和らいだんじゃない?

とはいえ「星を継ぐもの」の纏め方が美しすぎただけであって、コレ単品で見れば充分すぎる出来だと思う。
謎の提示と解明は魅力的だし、小説の構成も面白い。
ドキュメントタッチの前者と違ってエンタメ要素も濃いし。

読んでも損は無いかと。
その際はあらすじに関する予備知識(裏表紙のあらすじとか、解説文とか)は入れないコトをお勧めします。

『「陰陽師」 花の下に立つ女』夢枕獏

DS文学全集
配信用の書下ろし掌編。
タイトルの通り陰陽師モノ。
モチーフは坂口安吾の「桜の森の満開の下」

短いけれど清明も博雅もちゃんと出て来ます。
でもストーリーは単純を通り越して、結末が読めちゃう感じ。
もうかなり使い古されてる昔からのネタです。

「桜の森〜」要素は薄め。
桜が出てくる程度です。
そしてその桜もあまり禍々しくない。
「桜の森〜」が桜のダークサイドで、コレはライトサイドって感じ。
ただ表裏一体といえるほどの力は無いなぁ。
まぁこの頁数じゃ無理もないけれど。

逆に言えば元ネタを未読でも十分楽しめるんじゃないかと。
元ネタを読んでいてもワケワカメな田口ランディとは対極な感じ。

シリーズファンなら清明と博雅が登場するだけで嬉しいコトでしょう。
人物描写に割く文字数が殆どなくても問題ないのはシリーズ作品の強みかな?

『メタルギア ソリッド』レイモンド・ベンソン

メタルギア ソリッド (角川文庫 ン 70-1)
元々はプレステ用ゲーム
小島秀夫の作ったお話を、レイモンド・ベンソンが小説化して、それを富永和子が日本語訳したものがコレ。
原作を何十周とプレイした身としては、バイアスかかり過ぎなワケで。
台詞の切れ味が悪いのなんのってもう。
訳者の選択を間違ったんじゃないの?
小島秀夫の台詞は格好イイ。
小説版も英語では格好イイ感じなのだろうと察せられる。
でも富永訳で台無し。

理解に苦しむアメリカンなジョークが入るのは仕方無いとしても、台詞回しが格好悪いのは致命的。
声優の熱演がどうのとかそういうレベルではないのよ。
そもそも原作と比べるまでもなく、登場人物の言葉遣いが一貫してなかったりするのは小説として駄目だろうて。

作家の方は結構頑張ったんじゃない?
かなり原作に忠実だし、ゲームの嘘を如何に小説世界に落とし込むかにも腐心してるし。
まぁ何度もこれ見よがしに「得意のパンチ・パンチ・キック」とか書くのはどうかと思うけど。
忍者の終盤の演出が改悪されてるのも残念だったけど。

原作に思い入れがあればあるほど訳に納得がいかないし、原作未プレイだと付いていきづらい。
誰がターゲットなんだ?

全ては翻訳者のせいだと思うなぁ。
漢字が少なくて日本語として読みづらいし。
他の人が訳してれば傑作とまではいかずとも、名作足り得たかもしれないのに惜しいねぇ・・・。

以下ネタバレあり。
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『女子大生会計士、はじめました』山田真哉

ブログネタ
今日の一冊 に参加中!
女子大生会計士、はじめました―藤原萌実と謎のプレジデント (角川文庫 や 37-7)
「〜DX.5」ってタイトルでも問題ないような気もするけど、まぁ一応番外編なんでしょうねぇ。
著者と編集者との対談がちょびっと載ってたり、今までとは多少毛色の違うお話が収録されてたり。
会計の要素はかなり薄めで残念。

1話目から3話目までのそれぞれで、視点人物であるカッキーのキャリアが3年目、1年目、2年目とグチャグチャ。
時系列を入れ替えるコトに何か意図があるとも思えず、ただ読者が混乱するだけだと思う。

登場人物の名前が漏れなく歴史上の登場人物。
ついでに企業名なんかもその手の名前。
たまにやるくらいなやイイんだけど、全部コレだと(その上あまりにそのままの名前だと)あまりに非リアルで、文章の印象が「小説」というよりはどうしても「参考書」って感じに。

会計要素が減っちゃうと、小説としての粗ばっかり目立っちゃうのよね。
会計要素が薄く、人物描写も薄く、娯楽性も頁も薄い。
でも、殺人事件を絡めた話は斬新だし、今までと比べて随分エンタメ度合いが増してて面白いので、今後に光明が見えなくもない感じ。
番外編が今後に活かされるとイイなぁ・・・。

『少女地獄』夢野久作

少女地獄 (角川文庫)DS文学全集
タイトルを見る限りは「オジサンが少女にはまってしまい、身を滅ぼす話」だと思ったけど、実際はその逆。
女の人がズブズブと地獄にはまっていくオムニバス小説だったわ。
「業」っての?
そういうお話。

擬音語、擬態語の使い方面白いね。
徹頭徹尾書簡形式というのも凝っている。

3話あるんだけど、1話が一番面白くその後右肩下がりに。
まぁ3話目も悪くはないんだけどさ、徐々に盛り下がっていく構成ってのはどうなんだろう?

『船上にて』若竹七海

ブログネタ
ミステリ小説 に参加中!
船上にて (光文社文庫 わ 10-8)
短編集。
若竹七海お得意の悪意に溢れたお話ばかり。
そして僕はその手のお話があんまり好きじゃないのです。

1つ1つのは結構面白い。
頁数も少なくて読みやすい。
でもこういうのばっかり続くと個人的にはツライのよね。

こういうのが続いても大丈夫って人には割りとオススメです。

『食い逃げされてもバイトは雇うな』山田真哉

食い逃げされてもバイトは雇うな 禁じられた数字 〈上〉
副題が「禁じられた数字<上>」だけど、別にコレ一冊で完結してるんで問題無しです。

例によって例のごとく「事実の再確認」です。
どうして新書ってのは「事実の再確認」か「サラリーマンの居酒屋談義」みたいなのしかないんでしょうねぇ?

ただコレは新書では群を抜いて読みやすいです。
ホントに伝える気があるのか疑いたくなるような本もざらにあるんで嬉しいところ。

でも高い。
ある程度売れるコトが判りきってる本なんだからもっと安くして欲しいなぁ。
この内容&分量で700円は取り過ぎ。

下巻を書くのに大忙しみたいだけど、こんなのよりも「女子大生会計士シリーズ」を書いて欲しいなぁ・・・。

『空想科学読本5』柳田理科雄

ブログネタ
最近読んだ本 に参加中!
空想科学読本5 (空想科学研究所の本)
アニメや漫画の世界の出来事を科学的に考える本。シリーズは今年でもう10年だそうな。僕が「空想科学読本」を読んでからもう10年かぁ・・・。
10年前は凄まじい衝撃を受けましたよ。未だに僕の愛読書、バイブルです。

今回は普通な感じ。まぁ面白かったです。
でも一つ一つのネタが小ぶりな感じ。
あと空想科学世界の事象が「実現可能か否か」を追求してるのは個人的にはあんまり好きじゃないです。「空想科学読本」のときのように「実現するとどうなるのか」を書いて欲しかったなぁ・・・。
なんて言うか、深夜枠では面白かった番組がゴールデンに映ってから失速する感じ。

悪くはないけど1200円の価値があるかはビミョー。シリーズに思い入れのある人じゃない限りは文庫化を待ちましょう。

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか』山田真哉

ブログネタ
最近読んだ本 に参加中!
さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)
100万部を超える大ヒットを記録したのも記憶に新しいですね。新書です。
著者は山田真哉。なんだかんだ言っても僕はこの人の本が好きみたいですねぇ。

「女子大生会計士」シリーズは会計を紹介するための小説。
「さおだけ屋」は会計への入り口を示すようなエッセイ。
会計について知りたい場合には「さおだけ屋」の方が焦点は絞れています。

相変わらずの読み易さ。面白い(interestingの方ね)ですよ。
でも新書にありがちなコトですが、事実の再確認ばかりをしている気もしなくはないですけどね・・・。

『女子大生会計士の事件簿 DX.4』山田真哉

女子大生会計士の事件簿〈DX.4〉企業買収ラプソディー (角川文庫)
前作を読んでからもう半年強も経ったんですねぇ。早いですねぇ・・・。

会計のお話の短編集。一話が20ページそこそこなんで最早ショートショートか?
シリーズを重ねる毎にキャラクターが増えてますが、途中から読み始めた人へのフォローは一切無し。全作読んでる僕でもよく判んなくなってます。

今回も小難しいお金の話が解り易く書いてありますが、小説としては読後に何も残りません。
前後編に分かれていたのが一番面白かったんで、次があるなら一話にもう少しガッツリと枚数を使って欲しいなぁ・・・。

『心のなかの冷たい何か』若竹七海

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心のなかの冷たい何か (創元推理文庫)
手記モノ(?)ミステリー。
暗い方の若竹七海です。ドロドロ。
コージーミステリーな若竹七海を期待するとヘコみます。

まぁ作者の狙い通りに騙されたんですが、なんか不満が残ります。どうもスッキリしないのです。地味なのは構わないんですけどねぇ、「そんなの如何様にもできるだろ」って感じなのよね。
なおかつそれ以外にオドロキは皆無。ただ重たいだけ。
ストーリーにも魅力を感じられずいまひとつ。

『女子大生会計士の事件簿 DX.3』山田真哉

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女子大生会計士の事件簿 Dx.3 神様のゲームセンター (角川文庫)
「3」とあるからには勿論シリーズモノです。
会計士の世界のお話。粉飾決算とか貸借対照表とかバカスカ出て来ます。
会計の世界が少しでも身近になればという願いのもとに書かれてる本です。

会計学に限らず、経済や簿記なんかをほんの少しでも齧ったコトがあれば結構楽しめます。ただそうじゃない人には少々ツイいかも知れません。
登場人物はあくまでも記号に過ぎないんで、ストーリーだけを追ってもそんなに面白くはありません。斬新な筋でもないし、キャラクターを深く掘り下げるワケでもありません。まぁまずは会計ネタ有りきだからねぇ・・・。その分読み易いっちゃあ読み易いんですが。
会計ネタとストーリーを足してようやく一人前。そんな感じ。

学習漫画を楽しめた人にはイイんじゃないでしょうか。
かうんたぁ
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