朝からカリグラフィーの教室へ。その後は名古屋から到着した
Nさんと新宿で待ち合わせ。いつくか用事をこなした後、劇場へ!
 

蜉蝣峠いのうえ歌舞伎・壊(PUNK)「蜉蝣峠」
赤坂ACTシアター2列目 18:00〜21:05
作:宮藤官九郎  演出:いのうえひでのり
出演:古田新太、堤真一、高岡早紀、勝地涼、木村了、梶原 善、粟根まこと、高田聖子、橋本じゅん 、右近健一、逆木圭一郎、河野まさと、村木よし子、インディ高橋、山本カナコ、礒野慎吾、吉田メタル、中谷さとみ、保坂エマ、村木仁、少路勇介、 川原正嗣、前田悟 他

【あらすじ】 
荒涼とした街道、ここは蜉蝣峠。この峠で闇太郎(古田新太)はたまたま通りかかった元役者の銀之助(勝地涼)と出会い、2人は連れ立って、街へとおりていく。そこは、ならず者が集まる無法地帯・ろまん街。飯屋の亭主・がめ吉(梶原善)によるとこの街は立派(橋本じゅん)率いる立派組と、天晴(堤真一)率いる天晴組による縄張り争いが激しいと言う。そこへお泪(高岡早紀)という女が現われる。お泪は闇太郎と知り合いだと言うが、闇太郎には過去の記憶が無い。そんな闇太郎に、がめ吉は、この街で起きたある事件の話を始める。闇太郎の過去には一体何が・・。そんな中、立派の息子・サルキジ(木村了)が江戸から帰ってきて・・


大好きな新感線の中でも一番好きな“いのうえ歌舞伎”。
しかも主演が古田新太に客演が堤真一となればもう「何回行く?」
の世界です(笑)。

ただ私は“大人計画”が苦手。ひいてはクドカンの脚本も苦手。
なので、かなり不安を持って劇場に向かったのでした。
そうは言っても、Judas Priestと新幹線の発車音を聞けば
ワクワクするのは無条件反射ですね(笑)。
 

今、フライヤーの画像をアップしてて気づいたのですが、この絵
“ドクロ”になってるんですね(笑)。そして下駄を持つ男・・・。
うーん。深い。←観た人だけが分かる感じ?
あと3回〜4回は観ると思うので、とりあえず全体の感想を・・
(長いよ。あと、未見の人には予備知識なく行く事を薦めます)




 

あちこちで「オープニングがコントみたい」と書かれてますが、
“コントみたい”じゃなくて、コントそのものです。
あれだけだったら、ネタモノですわ。

今回は前方席(前2列潰れてるので2列目センター)だった為
役者さんは良く見えるんですよ。でもまさか、ネイティブ関西弁
を話す、あの“軍鶏”の中身が堤さんだったとは!
あんなギャグ連発しちゃうとは!!!
ただ軍鶏そのものが、一箇所に集めると死ぬまでケンカし続ける、
という気性の荒さをもつ鳥なので、“らしい”といえば、堤さんの
今回の役に合ってるのかもしれませんけどね。


なんだかネタモノっぽく始まったのですが、1幕前半はやっぱり
危惧していた“大人計画”テイスト満載な感じです。

蜉蝣峠でアホのフリをして25年間。“誰か”に蜉蝣峠に行くように
言われたものの、記憶をなくしていた闇太郎(古田新太)。
記憶が無い、空っぽの状態だから故、あまり自分の意思らしい
意思は持たない。周りから「お前は闇太郎だ」と言われても、
自分の事としては感じられない様子が良く現われてました。
最後の殺陣で「思い出した!」と叫んだ後とは表情が違います。
天晴と初めて会った時、刀をゲタで払う時の俊敏な動きは
天晴だけではく、こちらもハッとさせられます。
「昔の記憶が無いから、お泪との思い出しかない」
と全てが判明してからお泪にすがる姿は切ないですね。
あと、古田さん、歌が上手すぎ(笑)。髪型は五右衛門風(笑)。


常に酒に酔い、人を斬る事で自分が生きている事を実感する
気性が荒くて破滅願望があるヤクザの跡取り息子。
昔は仕官しようとしていた事もある、冷たい男の天晴は堤真一
もう、どうしましょう、どうしましょう、と言うぐらいにステキ
簪を挿した髪型もステキ、大きめの柄物の着物も色っぽい。
醒めた目で、常に皮肉をこめた目をしているのですが、その目も
堪らなくカッコイイのです。目は堤さんに釘付けです。
特にラストシーンの古田さんとの殺陣はめっちゃ早くて迫力満点。
死装束を連想させる白い着物に血しぶきが映えるのです。
確かに悪人なんだけど、色っぽさは絶品でしたねー。
お泪は「あの人は冷たい」と言いながら、惹かれるところもあった
んじゃないのかしら。
仕官しようとしているフシもあったけど、結局は闇太郎とやり合う
ということの“ワクワク感”を選んだ刹那的な人。
闇太郎もアウトローなら、この天晴もアウトローです。
ああでもラストシーン、姉を殺されて逆上するシーンを見て、少し
人間らしさを感じて親近感を覚えたかな。


天晴と対立する組の親分なんだけど、気の小ささは天下一品。
人を斬った事もなく、本当はヤクザなんか向いてないでしょ?
というのが立派(橋本じゅん)。二言目には「腹から声出せ」(笑)。
じゅんさん、喉、気をつけてください。
五右衛門ロックのバラバ将軍と少しキャラが被ります。
奥さんを大切に思っているところとかね。
開幕して間もない事もあるでしょうが、アドリブは無かったですね。


立派の奥さんにして、天晴のお姉さん、お寸は高田聖子さん。
ダンナと対立する弟側に寝返ってダンナと別れること101回(笑)。
でもまあ、似たもの夫婦って感じです。
聖子さんはメイクや着物がお似合いなのですが、本当に彼女の
ブログ等で垣間見れる、おっとりした性格とは真逆の役です。
最後の「ヤクザの娘に生まれなければ」ってきっとずっと思って
生きてきた女性なんでしょうね、好き勝手にやってそうだけど。
「親の言う事なんか信じるのはバカよ」と言う時の切ない表情が
やるせないです。ヤクザでなかったら言わずに済んだセリフ
だもんね。そういう意味でも立派と似たもの夫婦なんですよね。

闇太郎の幼なじみで、一揆の首謀者として両親を目の前で殺された
お泪は高岡早紀。闇太郎に蜉蝣峠で待つように伝えたのはお泪
だと言う。子供の頃には闇太郎と結婚の約束もしている。
闇太郎と結婚しても嬉しそうじゃないのは、何かを感じていたの?
全てが明らかになっても、闇太郎を受け入れられるんだね・・・。
“理性”と“感情”は必ずしも一致しない、といういい例ですね(笑)
今回の髪型がとても似合って、かわいかったです。


飯屋の亭主、大通り魔に目を潰されたけど、あの事件の生き残り。
お泪を最後まで守ろうとしてあんな行動にでる がめ吉は梶原善
善ちゃんはなにげにストーリーテラー的なポジションでしたね。
でも、大通り魔事件の後で握り飯を渡したのは、あの人だったの!


闇太郎と行動を共にする銀之助は勝地涼、立派とお寸の子供は
サル・キジの木村了くん。勝地君は女性以上に女性らしいわ。
サル・キジはあまり出番はありませんでしたね。そして一番
可哀想な役かもしれません。
ただこの2人のエピソードは少し物足りない感は残りました。

えーっと、全部書いたらキリがないので(笑)、劇団員については
4月の観劇時のレポで書くことにします。


最初の軍鶏のシーンは笑って観てはおりましたが、正直
「このシーンは“いのうえ歌舞伎”に、この芝居に必須ですか?」と
思いました(笑)。あと私が大人計画が苦手な理由のひとつに
“下品”というのがありまして・・・・。エロ系はまだいいんですよ。
でも排泄物系だけは勘弁して欲しかったのですが・・・残念です。
あとあの衣装もねぇ・・・・。2列目だと凄く近いので、目のやり場に
困ると言うか、何というか・・・・。あれは必要ですかね?


と、ちょっとテンション下がりながら観ていたのですが、
2幕から断然面白くなってきました。芝居も急にシリアスに。

“記憶なく生きる”という事は“生きていないこと”なのだろうか。
過去の記憶を捨てた“闇太郎”が死ぬ間際に取り戻した記憶・・。
瀕死の状態で蜉蝣峠にたどり着いても、その姿は“かげろう”だと
思われて、お泪や銀之助に気づいてもらえない。
“闇太郎”は25年前の大通り魔事件の時にもう死んでいたのか。


人は“見たい物・自分が求める物”だけを見る。
街の人たちは、大通り魔事件生き残りは“ヒーロー”で居て欲しい。
銀之助は、走っているサル・キジが見たかった。
お寸は“自分の求める人”とダンナが違うと思う度に、離縁する。
“求める物”がない天晴は生きている実感が持てない・・・

切ないエンディングはかなり私好みでした。
IZOの頃からの映像を使った演出は今回もありますが、あれほど
過多ではないので、あまり気になりません。
ていうか、前すぎて映像は良く見えませんでした(爆)。
高岡早紀の二役は結構見事ですし、同じシーンを視点を変えて
再度演じる演出なども、私は好きでしたね。

個人的には2幕だけを肉厚にして、1本の芝居にして欲しい(爆)。
まだ幕が開いて間もなかったので、次に観る時にどうなっているか
(次は東京の前楽)楽しみです。次は2階席なので映像も観れるし。

ちなみに、パンフに寄稿した市川亀治郎さん。
「新感線に出たい、出たいといのうえさんに言っている」そうですが
早くそれが実現しますように。