「ジキル&ハイド」という作品があることや、すごく大雑把な内容は
知っていたけど、ちゃんと最後まで観たり読んだりしたと言う事が
ない作品でした。そんな時に先行予約の案内。
キャストに興味があったので、行ってみる事にしました!

ジキル&ハイド「ジキル&ハイド」愛知県芸術劇場大ホール
1列目 13:00開演、16:10終演
演出:山田和也 上演台本・詞:高平哲郎 
出演:石丸幹二、濱田めぐみ、笹本玲奈、吉野圭吾、畠中 洋、花王おさむ、中嶋しゅう 他 
【あらすじ】
1888年秋、ロンドン。医者のヘンリー・ジキルは、長年研究を続けてきた、「人間の善と悪を分離する薬」の人体実験の許可を得ようとしていた。精神を病んだ父のため、ひいては人類の幸せと科学の発展のため。しかし上流階級の面々が集う理事会で、ジキルの要求はほとんど一方的に却下された。
ジキルはエマとの婚約披露パーティーを逃れ、アターソンに誘われるまま、娼館も兼ねるパブを訪れる。そこには蠱惑的な娼婦ルーシーがいた。とまどっているジキルにルーシーは「私で試してみたら?」と甘くささやく。その言葉に、ジキルは自ら開発した薬を“自分で試す”という解決法を見出す。自宅に戻ったジキルは薬を服用、体に異変が起こる。頭痛、恍惚感、痛みが全身を貫き、呼吸困難に・・・。ジキルの心と体は、エドワード・ハイドに変わった。「自由だ!」−ハイドは叫び、ロンドンの夜の闇の中へ出てゆく。 


まず目に留まったのは濱田めぐみさん。
四季を観ない私でも、歌のお上手な女優さんである事は知ってました。
石丸さんも以前拝見した舞台での歌が素敵だったし、これは
全体をみても、歌唱力の素晴らしい方が揃っていそうです。
・・・というのが、チケットを取った理由ですね。

幕間には「ああ、やっぱりダメだわ」とか「鹿賀さんの時は・・・」という
会話が近くから聞こえてきたりしましたが、私ゃ鹿賀さんのジキルは
観ちゃいませんので、純粋に楽しめましたよ。
大楽だったからか(知らなかったけど)、遠征で観に来ている人も
居たようです。

それにしても、愛知県芸術劇場大ホールで舞台を観るのはほぼ初。
開館直後に取材をさせて頂きまして、舞台にも上げていただいた
思い出深いホールなのですが、ハンパなくデカイです。
客席は5階まであって、客席数2500。(帝劇は2000程度のはず)
元々はオペラ用に作ったホールだと思うのですが、客席はもう少し
小さく作っても良かったんじゃないのかなあ、地方都市なんだからさ。


そんなデカイホールの最前列センター。観づらい・・と思ったけど
思った以上にステージの高さが低め。むしろ名鉄ホールよりも最前列
なら観やすいぐらいです。司教が殺される時、階段の手摺に火がつき
駆け上がる司教を炎が追いかけるシーンがありましたが、あの時は
私まで「熱っ」と熱風が来ましたからねー。
上から吊っている荷物が落ちてくるシーンも迫力があって、最初は
「最前列、見づらい・・」とテンションが低かったのですが、結構
楽しんで観る事ができました。

有能な科学者。ある意味“研究バカ”って感じでもあるけど、
自分の信じる所に向かって猪突猛進なヘンリー・ジキルは石丸さん。
婚約披露パーティーでの笹本さんとの歌は素敵でしたねぇ。
ちょっと憂いのあるような、優しい表情は、ルーシーを落とすのには
十分だったんでしょうね(笑)。石丸さんのお歌も素敵でした。
でもさ、あの薬は「人格を分離する」だったら、「いい人」「悪い人」が
両方出現する筈でしょ?「ハイド」は「hide(隠れる)」の意味とか。
とすれば「良いか悪いかは別として、隠れている人格が出現」という
事になるのかしら。ジキル氏は基本的には“善”の人だしね。

娼婦としての自分を受け入れ、夢など持った事がない。人の優しさに
触れた事もなかった娼婦のルーシーは、今回、一番興味があった
濱田めぐみさん。「歌がうまい」と言われるだけのことはありますね。
骨太というか、厚みのある声で素晴らしいです。
最後の少女のような、夢見るような表情が可愛らしくて印象的。
ジキルに優しくされただけでうっとりしてしまう、素直というか幼い所と
リンクしますね。(ここで隣の人は号泣状態でした)
ジキルとハイドの“2人”とちゃんと(?)接していたのはルーシーだけ。
最後には同一人物って気づいていたのかな、という感じですね。

研究に没頭するジキルを愛し、支えていこうとする婚約者のエマは
笹本さん。彼女はこういうお品のある役はピッタリ。
先日のRHSよりも、やっぱり今回のようなミュージカルナンバーの方が
彼女の歌い方が活きる気がします。
具体的には知らなくても、ジキルに何かが起きているということは
分かっていて、その上で支えていこうとしていたんでしょうね。
最後の表情が、悲しむのではなく慈愛満ちていました。
こんなに理解してくれる婚約者が居たのに、自分を大切にしなかった
ジキルは本当にアンポンタンですわ。

ジキルの友人で、顧問弁護士でもあるアターソンは吉野圭吾さん。
ちゃんとしたミュージカルで、生で拝見するのは初めてかと。
今回は吉野さんが私的にヒットでした♪
何だかんだ言っても、ジキルとアターソンの友情が物語って感じです。
本当に気が効いて、ジキルを理解したうえでサポートしているのが
素敵でした。最後「撃てない」と言うアターソンに向かっていくジキルと
そのジキルを撃ってしまうアターソン。
撃つ勇気が出ない友人にキッカケを与える為に向かっていった
ジキルと、殺す事がジキルを解放する事になり、ジキルもそれを
望んでいると理解したアターソンって感じよね。でなければあんなに
何発も撃ち込まないでしょ。

ごく1名「歌わせるなよ、気の毒だし」っていう俳優さんも居ましたが
概ね皆さん想像通り歌唱力が素晴らしく、歌の迫力は満点。
オープニングのアンサンブルの方なんて目ヂカラがすごくって、
あの表情で見つめられて(1列目なので)、思わず目を逸らして
しまったほどです。
セットも迫力があるし、ライティングも衣装もキレイ。
歌も素敵なものが多かったし、相対的に満足度の高い舞台でした。
観に行ってよかった〜。

で、今日が大楽だったそうです。カテコは4回とか5回とか。
みんなで「自由だー!」とこぶしを上げてみたり、石丸さんが前を
歩く濱田さんのドレスの裾を踏んでしまったり・・と、なかなか楽しい
時間でした。5階までお客が入っていましたので、舞台からの眺めも
壮観だった事でしょうね。


しかし、今回の両隣の方はミュージカルが(四季が?)大好きな方
のようで、1曲が終わるごとに椅子が揺れるほどの拍手。
スタオベになってからも前に出る出る(笑)。
両隣が前に出ると、私のスペースがなくて、逆に後ろに引いて
ちんまり拍手しておりました。曲の後の“拍手せねばならない”という
雰囲気とかも含めて、やっぱりアウェイ感が強いです、ミュージカル・・。