2012年02月02日

J・エドガー 【B+】

JEdgar 1924年にFBIが設けられてからその長官となり,1972年に死去するまで長官でありつづけたジョン・エドガー・フーバー(レオナルド・ディカプリオ)は,晩年,回顧録を口述筆記させていた。司法省で働いていたフーバーは,米国が共産主義の脅威にさらされていることを危惧し,また,犯罪捜査を近代化しなければならないと考えていた。それが受け入れられ,新しい組織の長となる。秘書のヘレン・ギャンディ(ナオミ・ワッツ)に求婚するが断られる。しかし,彼女は,最後までフーバーに忠実だった。また,最初の採用試験で終生の友人となるクライド・トルソン(アーミー・ハマー)に会った。

 フーバーは,在職中から多くの人々に恐れられていた人物であり,わざわざ取り上げるのは,クリント・イーストウッド監督独特の感覚からなのだろう。確かに,フーバーにとっては絶対に触れられたくなかった,十分にフーバーを恐喝できるような材料が提供される。熱演のレオナルド・ディカプリオがアカデミー賞にノミネートされないのは,フーバー長官が今でも嫌われていることも原因なのかもしれない。ただ,嘘に塗り固められた回想録を映像化したものを見せられたのかと思うとがっかりする。また,フーバー長官が,資料の組織化や科学的手法を取り入れたこともよくわかるようになっている。組織化には議会図書館の目録カードが参考となったらしい。誰もいない議会図書館の閲覧室でナオミ・ワッツに目録カードを使って本を探すのを実演する場面があるが,なんだかいい加減な中途半端な感じが漂っていた。

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2012年01月24日

ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬 【B+】

johnny-english-reborn題名:ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬
評価:B+
原題:Johnny English Reborn
制作年:2011年
監督:オリヴァー・パーカー
制作:Universal Pictures,Relativity Media,Studio Canal,Working Title Films
場所:ネパール,香港,ロンドン,スイス
時代:現代
新作

 英国秘密情報部MI-7のエージェントであるジョニー・イングリッシュ(ローワン・アトキンソン)は5年前にモザンビークの大統領警護で大失敗し,クビになり,今は,チベットの山中の僧院で心身を鍛錬する毎日だった。ある日,MI-7からの呼び出しがあり,英国に戻った。中国首相暗殺計画を阻止するのが新しい仕事だった。新人のタッカー(ダニエル・カルーヤ)を連れて調査のため香港へと向かった。香港で接触してきた連中から,暗殺は,三人の男が中心のヴォルテックスという組織が仕組んでいることがわかる。ロンドンに戻る途中で手がかりの鍵を盗まれてしまった。

 ダニエル・クレイグ『007』シリーズは真面目なだけのアクション映画になってしまったが,『ジョニー・イングリッシュ』は前作同様,様々に笑わせてくれる。ローワン・アトキンソンは,クルーゾー警部のスティーブ。マーチン同様,子供のように余計なことにちょっと手を出し,それがどんどんエスカレートしていって大ごとになっていって,最後は,観客を含めて気まずい雰囲気になるが,その繰り返しである。また,MI-7は東芝に民間委託されている一方,最近の英国首相にはオーラのないこともさりげなく示される。さらに,アクション映画として,陸海空の乗物での追いかけごっこがある。ただ,高性能ロールスロイスはいいとして,高速車椅子はあまりぱっとしない。映画として優れているのは伏線が活きているところである。チベットの僧院での修業は無駄ではなかったことが実証される。『ロシアから愛をこめて』のような暗殺者の老婆が何度も出てくるなと思っていたら,最後には大変なことになるんだぞとあらかじめ教えてくれていたのだった。


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2012年01月11日

灼熱の魂 【B】

Incendies題名:灼熱の魂
評価:
原題:Incendies
制作年:2010年
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
制作:micro_scope,TS Productions,Phi Group
場所:レバノン,カナダ
時代:1970年代,現代
新作
 カナダの公証人の秘書をしていた中東出身の女性ナワル・マルワン(ルブナ・アザバル)が亡くなった。公証人は,双子の姉弟ジャンヌ(メリッサ・デゾルモー=プーラン)とシモン(マキシム・ゴーデット)に預かった遺言を伝えた。その内容は,二人の父と兄を捜して手紙を渡すこと,それが終わるまで墓に名を入れるなというものだった。シモンは遺言を真面目に受け取らなかったが,ジャンヌは,母親の祖国に向かう。母のナワル・マルワンは中東のある国の山岳地帯の小さな村に住んでいた。恋人を殺され,身ごもっていたが,生まれた赤ん坊は取り上げられてしまい,自分は遠くの大学に行かされた。しかし,宗教対立から内戦が始まって大学は閉鎖される。ナワルは,子供を捜しに故郷に向かう。

 明らかにレバノンなのであるが,具体的な地名は出てこない。ジャンヌが細い手がかりを頼って30年以上前の母の足跡を辿っていくミステリ仕立てで,過去と現在が交錯しながら進む。殺人やテロの場面が何度も出てくるが,この作品で残酷なのは,その点ではない。結局,よくわからない点が多々あるのは中東の人々の考え方に馴染んでいないからだろう。例えば,母親は三人の子供達になぜ過酷な現実を教えなければならないと考えたのだろう。また,この母親は紛れもないテロリストである。印象に残るのはバスの場面である。母親は,この時の怒りと,自分自身の態度が許せなかったので次の行動に出たし,屈しなかったということなのだろう。それより,普通に走っているバスと普通の乗客があのような目に遭うという国や事態に最もショックを受けた。

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2012年01月07日

ミラノ、愛に生きる 【B】

iosono題名:ミラノ、愛に生きる
評価:
原題:Io sono l'amore
制作年:2009年
監督:ルカ・グァダニーノ
制作:First Sun,Mikado Film,Rai Cinema,Dolce Vita Productions, Pixeldna,Ministero per i Beni e le Attivita` Culturali
場所:ミラノ,サンレモ,ロンドン
時代:現代
新作

 ムッソリーニの時代から紡績業を営むレッキ家では,当主の誕生日を家族で祝っていた。当主は引退を宣言し,50歳代の息子タンクレディと20歳代の孫のエドアルドを後継者として指名した。タンクレディの妻でエドアルドの母であるエンマ(ティルダ・スウィントン)には,何ひとつとして不足はないはずだった。エドアルドは,ボートレースで負けたシェフのアントニオ(エドアルド・ガブリエリーニ)を母に紹介した。アントニオはサンレモ郊外の山の上に持つ土地でレストランを開きたいと思っている。娘に会うためにニースに向かうエンマは,車をとめたサンレモの街中でアントニオに出会った。

 ストーリーよりも映像が優った作品である。サンレモの明るい太陽の下では,あからさますぎていま一つであるが,ミラノの豪邸の暗い雪や雨の日の描写は観る価値があった。カメラの位置が常に工夫されている。説明がないので半分を過ぎるまでは,この映画は何が中心であるのか少しもわからなかった。子供達に悩む母親の話かと思ったほどで,見逃しや台詞の聞き逃しがあったかと心配になった。スコットランド生まれのティルダ・スウィントンをロシア人としたのは,イタリア語の発音の問題を解決するためなのかもしれないが,孤独さを印象づけたかったのだろう。ただ,ティルダ・スウィントンは無口であるし感情を出さない上流階級婦人然としたままであり何を考えているのかがわからない。本屋できちんと買ったのかどうか不明の本の扱い方(なぜ息子はこの本と母親を結びついてけることができたのか),メイドは何も言われないのに,わかっているかのように荷造りを始めるのかなど謎の残るままである。

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2011年12月31日

宇宙人ポール 【B+】

Paul題名:宇宙人ポール
評価:B+
原題:Paul
制作年:2011年
監督:グレッグ・モットーラ
制作:Universal Pictures,Relativity Media,Working Title Films,Big Talk Productions
場所:サンジェゴ,ワイオミング
時代:1947年,2010年
新作

 イギリス人のSF作家のクライブ(ニック・フロスト)とイラストレーターのグレアム(サイモン・ペッグ)は,念願がかない,はるばるアメリカのサンディエゴで開催されたSFコンベンションに参加した。そして,二人はRV車を借りてアメリカのUFO名所を訪ねる旅に出た。そして,ネバダ州の「エリア51」の附近で,宇宙人ポールと出会った。ポールは,60年前に地球に不時着し,極秘のうちに軍に捕らえられていたが,脱走してきた。自分の星に戻る手配がしてあるので,会合場所に連れて行けという。やがて,父親から逃げ出したルース(クリステン・ウィグ)が加わり,なにやかに追われながらの旅が始まる。

 邦題はツイッターなどで公募されたとのことであるが,平凡だが適切で結構なことである。SFというより,変わった組み合わせのメンバーによるロードムービーである。超能力はあるが,おじさんくさい本物の宇宙人の過去と帰還,アメリカではエイリアンのSFギークの二人組の込み入った心情,それに創造論や『E.T.』,『未知との遭遇』,『スターウォーズ』などのSF名作への言及が入り混じっている。主役の二人が脚本を書いているが,宇宙人ポールの複雑な性格付けが素晴らしい。CGには,かなりの費用が必要だったようで,「宇宙人を呼んできたほうが安かった」。日本でこれほどヒットする映画とは,配給会社は思わなかったらしい。ただ,何かあっさりすぎた感じはある。


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2011年12月23日

私だけのハッピー・エンディング 【B−】

LittleBitHeaven題名:私だけのハッピー・エンディング
評価:B−
原題:A Little Bit of Heaven
制作年:2011年
監督:ニコール・カッセル
制作:Davis Entertainment,The Film Department
場所:ニューオーリンズ
時代:現代
新作

 ニューオーリンズの広告代理店で働く30歳代のマーリー・コーベット(ケイト・ハドソン)は,仕事は充実しており,夜遅くまで,仲間と遊びまわる毎日を送っていた。結婚する気はあまりなく,男女関係は割り切っていた。ところが,体調が悪いので,病院で検査をしたところ,悪性腫瘍であると告げられた。化学療法を試み,新しい治療法を試してみたが,なかなかうまくいかない。しかし,主治医のユダヤ系メキシコ人のジュリアン・ゴールドスタイ(ガエル・ガルシア・ベルナル)との関係が深まっていく。

 邦題はよくできている。『50/50 フィフティ・フィフティ』の女性版であるが,同じ頃に同じ題材の映画が続くのは不思議である。『50/50 フィフティ・フィフティ』とは,恋愛コメディ仕立てであること,母親がやってきて世話をやくこと,医療制度のためであろうが,闘病生活は自宅が中心で,ほとんど入院しないことなどの類似点がある。一方,ケイト・ハドソンは,もともと健康でありすぎるのか,演技力に問題があるのか少しも重病人であるようにみえない。また,きめ細かく容態や感情の変化を見せようともしていないので,感情移入するのは難しい。リアルであれば悲惨な話になり,コメディにすれば,本筋から外れるというジレンマがある。そう考えると『50/50 フィフティ・フィフティ』のの結末が理解できる。時々,恋愛コメディではないことをみせようと周囲とのわだかまりを解く場面がいくつかあるのだが,何も問題がない場合には無理矢理仲違いさせて和解したりするので,うまく行っていない。

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2011年12月21日

ロンドン・ブルバード -LAST BODYGUARD- 【B−】

LondonBoulevardロンドン・ブルバード -LAST BODYGUARD- 【B−】
題名:ロンドン・ブルバード -LAST BODYGUARD-
評価:B−
原題:London Boulevard
原作:ケン・ブルーエン『ロンドン・ブルバード -LAST BODYGUARD-』
制作年:2010年
監督:ウィリアム・モナハン
制作:GK Films,Henceforth,Projection Pictures,London Boulevard
場所:ロンドン
時代:現代
新作
 ミッチェル(コリン・ファレル)は,刑期を終えて出所した。裏社会からは足を洗おうとしたが,迎えにきたギャングの手先に仲間扱いされてしまう。一方では,堅気の仕事も手に入れた。それは,若くして引退し,邸宅の回りをパパラッチに取り囲まれている女優シャーロット(キーラ・ナイトレイ)の警護役だった。ところがギャングのボスがミッチェルを気に入り,引き込もうとする。

 途中までコリン・ファレルは,これまでになくよいなと思っていたが,終わってみれば,今までと同じ役柄だった。暴力場面を極力省いている犯罪映画という点ではスタイリシュであるが,ビリー・ワイルダー『サンセット大通り』を下敷きにしてる原作小説からはかけ離れたギャングの抗争の映画になってしまった。これでは,無理をしてキーラ・ナイトレイを出している意味がない。ギャングのボスもあまりに乱暴な行為が多く(これは原作通り),これではこの歳まで生きてくるのは難しかろう。邦題の「LAST BODYGUARD」は,映画の中味を理解しないでつけていることは明らか。

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2011年12月17日

リアル・スティール 【B+】

realsteel題名:リアル・スティール
評価:B+
原題:Real Steel
原作:リチャード・マシスン『リアル・スティール』(早川書房刊)
制作年:2011年
監督:ショーン・レヴィ
制作:Touchstone Pictures,DreamWorks SKG,21 Laps Entertainment,Angry Films,ImageMovers,Reliance Entertainment
場所:ニューヨークなど
時代:2020年代
新作

 近い未来,元ボクサーのチャーリー・ケントン(ヒュー・ジャックマン)は,ロボットを操作してロボットボクシング興行で償金を稼いでいる。しかし,負けがこんで,借金を重ねる一方である。さらに,別れた妻が死んで,赤ん坊の時以来会っていなかった11歳の息子マックス(ダコタ・ゴヨ)を預かることになった。マックスは,負け犬で少しも先のことを考えないチャーリーになつかないが,ロボットのボクシングには夢中になった。手持ちのロボットが壊され,部品を漁りに行った廃品回収場で,マックスは,埋められていた古いロボットを見付けた。アトムというそのロボットをマックスは鍛えはじめる。

 予告篇から予想できるそのままの展開で,新趣向はあるとはいえ,中味はありきたりのボクサー作品である。けれども,素直に観てよかったと思わせる。ハリウッドの巧さ,力を感じた。リチャード・マシスンの原作は,短篇であるが,その設定だけを借りて,『チャンプ』のような父と子の関係を付け加えている。しかし,何と言ってもこの映画で素晴らしいのは,マックスを演じるダコタ・ゴヨである。アトムとトレーニングしたり,踊ったりする姿がとてもよい。アトムは,少しも意識があるように見えないが(少しだけ疑わせる場面があるが),ダコタ・ゴヨとアトムの間には,男女の恋愛関係や,親子関係とは違った感情があるかのように感じさせている。

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2011年12月11日

50/50 フィフティ・フィフティ  【B】

5050題名:50/50 フィフティ・フィフティ
評価:
原題:50/50
制作年:2011年
監督:ジョナサン・レヴィン
制作:IWC Productions,Mandate Pictures,Point Gray
場所:シアトル
時代:現代
新作

 シアトルのラジオ局に勤めるアダム(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)25歳には,画家のレイチェル(ブライス・ダラス・ハワード)と同棲し,同僚カイル(セス・ローゲン)と遊ぶ平穏な日を送っていた。ある日,病院で検査を受けたところ癌を宣告され,自分で調べたところ5年後の生存率が50%であることが判明した。心の整理のつかないまま,化学療法を受け,見習セラピストのキャサリン(アナ・ケンドリック)26歳に会うことになった。
 
 癌を宣告された若い男の日常生活をコメディとして淡々と描くという趣向である。いかにも善人で人畜無害な感じのジョセフ・ゴードン=レヴィットは,自分でも整理の着かない不安感を抱きつつ,普段は連絡もしない母との絆は深まり,同じ化学療法を受けている老人患者たちとの交流が続いていくのであるが,どちらかと言えば,簡単には入院させない米国の医療の仕組みのほうが興味深かった。この映画の評価が高いのは,リアリティだろうし,同じ年代で身近に癌患者がいればおそらく身につまされただろう。アナ・ケンドリックの役柄は,やや中途半端だった。

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2011年12月03日

ラブ・アゲイン  【B+】

crazystupidlove題名:ラブ・アゲイン
評価:B+
原題:Crazy, Stupid, Love.
制作年:2011年
監督:グレン・フィカーラ
制作:Carousel Productions
場所:ロサンジェルス
時代:現代
新作

 高校時代から愛し合い,25年間連れ添ってきたキャル・ウィーバー(スティーブ・カレル)と妻のエミリー(ジュリアン・ムーア)であるが,ある晩,エミリーが男ができたので離婚してくれと言いだした。エミリーは子供二人と家に残り,キャルは,家を出てアパートを借りた。自由な身になったが,44歳まで真面目な夫だったキャルは遊ぶことが出来ない。ある晩,バーにいると,遊び人ジェイコブ・パーマー(ライアン・ゴズリング)と知り合った。ジェイコブズの指南を受けたキャルは,今風なファッションに身を包んだもてる中年に返信する。しかし,妻を忘れきれない。一方,弁護士を目指すハナ(エマ・ストーン)は,弁護士にはなったが失恋する。

 鮮やかである。ジュリアン・ムーア出演作なので観たのであるが,時々,笑わせられる場面があるもののありきたりな話が続いていって平板だった。ベビーシッターをはさんだ片思いや,台所のエミリーとの電話の場面やジェイコブズの家の場面も面白いとは思う。しかし,なんだかぎくしゃくと進行していくだけなので,なぜこの映画が評判がよいのかわからなくなりはじめた。けれども,終盤で,思わず声をあげたくなるような種明かしがあって驚かされる。脚本に才気が感じられる。ここで終わってしまったらもっとよかったかもしれない。スパイダーマンの新しいヒロインに抜擢されたエマ・ストーンは溌剌としていて,ケヴィン・ベーコンとマリサ・トメイがそれらしい脇役で登場する。良作なのに小規模公開で終わるのは今の時勢では仕方がない。小さいスクリーンでも映画館で観ることができてよかった。

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2011年11月18日

マネーボール  【B】

moneyball題名:マネーボール
評価:
原題:Money Ball
原作:マイケル・ルイス『マネー・ボール』(ランダムハウス講談社)
制作年:2011年
監督:ベネット・ミラー
制作:Film Rites,Michael De Luca Productions,Scott Rudin Productions,Specialty Films (II)
場所:オークランド,シカゴ
時代:現代
新作

 米国大リーグの名門オークランド・アスレチックスは,9.11のあった2001年にヤンキースに最後の試合で負けてシーズンを終えた。しかし,シーズンオフには,ジェイソン・ジアンビ選手がヤンキースに移籍するなど,主要三選手を失ってしまった。年間予算がヤンキースの数分の1である貧乏球団アスレチックスのGMであるビリー・ビーン(ブラッド・ピット)45歳は,これまでとは違った形で補強をしたいと考えていた。インディアンズに出かけてスタッフと選手のトレードの交渉をしていたとき,一人の若い男が頼りにされていた。その男ピーター・ブランド(ジョナ・ヒル)は,イェール大を出たばかりの25歳であるが,選手のデータを独自に分析し,必勝のチームを作る方法を編みだしていた。ビーンは,ブランドをスカウトしてきて,チーム作りにその考え方を取り入れた。それは,野球ではより多くの得点を上げることが必要で,それには打撃や守備よりも出塁率の高い選手を集めればよいというものだった。引き抜かれた選手に代わり,出塁率は同じだが欠陥があって給料の安い選手を集めて2002年のシーズンを迎えた。

 あまりすっきりしない,印象に残りにくい作品である。原作の『マネー・ボール』は,小説ではなくビジネス書であり,この映画は,ビリー・ビーンすなわちブラッド・ピットの苦悩と決断を中心とした映画である。一方では,実話であることが強調されていて,実際の試合の場面が組み込まれているし,現役選手も登場する。いかにもギークというのかおたくらしいジョナ・ヒルがアスレチックスに来ることにより,ブラッド・ピットは,新しい指標をもとに選手を選ぶことにし,これを徹底する。GMがオーナー,監督,選手,他の球団のGMとどう接するか,そして,選手が物のように交換売買される状況がよくわかる。しかし,ブラッド・ピットの過去と離れて暮らす娘との交情を強調してはいるものの,実話であるのでどこで終えるかに迷った感じを受ける。

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2011年11月09日

ラビット・ホール  【B+】

rabbithole題名:ラビット・ホール
評価:B+
原題:Rabbit Hole
制作年:2010年
監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル
制作:Olympus Pictures,Blossom Films,Odd Lot Entertainment
場所:ニューヨーク近郊
時代:現代
新作

 ニューヨーク近郊の高級住宅地の豪邸に住む30歳代後半のベッカ(ニコール・キッドマン)は,夫のハウイーアーロン・エッカートと二人暮らしである。8か月前に,息子が犬を追って玄関から道路に飛び出し,車にはねられて死んでしまった。それ以来,ベッカは,夫との仲は冷え,親友との交際は絶ったままである。同じように子を亡くした夫婦が集まり心情を吐露し合う会でも他の人々を戸惑わせるような発言をして退会する。ある日,高校のスクールバスである高校生を見付けた。図書館でその子の借りていた本を借りる。やがて,公園で二人で話すようになる。

 他の人々と同じように悲しみを表現することができない,あるいはそうしたことを拒否しているインテリの中年女性をニコール・キッドマンが自然に演じる。冒頭の,隣人が無神経に花を踏んだあとの場面から主人公に感情移入することができる。台詞は少なく,ひとときも死んだ息子を忘れようとしないかたくなさをもっぱら行動と表情で表わす。『めぐりあう時間たち』のヴァージニア・ウルフよりも良いのではないか。今回は脚本の選び方がよかった。神よりも物理学が救いになるということか。この映画では,否定的だからよいが,同じ不幸を味会う人々が集まって語り合う会というのは,不健全な感じがする

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2011年11月05日

フェア・ゲーム  【B+】

fairgame題名:フェア・ゲーム
評価:B+
原題:Fair Game
原作:ジョセフ・ウィルソン;ヴァレリー・プレイム・ウィルソン
制作年:2010年
監督:ダグ・リーマン
制作:
場所:ワシントン
時代:現代
新作
 CIAのエージェントであるヴァレリー・プレイム(ナオミ・ワッツ)には,元ガボン大使で今は貿易会社を営む夫ジョー・ウィルソン(ショーン・ペン)と二人の子がいた。9.11後,イラクが核開発を行っているという疑惑が高まり,CIAでは,大量のアルミ菅購入とニジェールからのウラン購入について調査していた。ジョー・ウィルソンはニジェールの高官を知っているので,CIAは,ニジェールでの調査を依頼した。しかし,どうみてもイラクが核開発を進めているようには見えない。ところが,副大統領側近が強引に調査結果をねじ曲げようとする。やがて,大統領は,大量殺戮兵器開発を隠しているとしてイラクと開戦する。ジョー・ウィルソンは,イラクで核開発は行われていないことを新聞に投書する。ホワイトハウスからの反撃は,妻のヴァレリー・プレイムがCIAの職員であることを暴露することだった。


 ぼんやりとか覚えていないCIAの女性エージェントの身元を暴露した「情報源秘匿問題」といわれる事件に基づく良心的な作品である。沈黙を守るしかないナオミ・ワッツの立場と,家族を守り,消されないためにはマスメディアに露出し続けるショーン・ペンの態度もよく理解できるように作られている。最後にヴァレリー・プレイム本人の証言する場面がある。金髪長身の女性で,最初にニコール・キッドマン(相手役はラッセル・クロウ)にオファーがあり,同タイプのナオミ・ワッツになったらしい。しかし,この映画のナオミ・ワッツは,世界中を飛び回りながら複数の複雑で難しい任務を果たしつつ,二児の母でもあり,責任感が強く真面目でくじけることのない白いスーツを着こなす主人公を見事に演じている。エンドロールで人名の一部が塗りつぶされているのが目をひく。間違った情報を元に戦争を起こす政府を支持する一方,こうした,かなり直截な告発映画も作るアメリカ社会である。ただ,アメリカ人にとっては,イラク戦争の大量殺戮兵器もこの「情報源秘匿問題」も触れてほしく話題だろう。また,映画の中には平気で随分とひどいことをする女性記者が描かれているが,この事件では,新聞記者の問題もからんでいる。

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2011年11月03日

ミッション:8ミニッツ  【B+】

source_code アフガニスタンでヘリコプターパイロットを務めるコルター・スティーヴンス大尉(ジェイク・ギレンホール)は,気付くと電車の座席に座り,見知らぬ若い女性(ミシェル・モナハン)と話をしていた。車掌が検札にきても切符がどこにあるのか知らなかった。電車は駅に着き,ホームに降りて進行方向を見ると大都市があった。訊くとシカゴだという。この列車はシカゴに向かう通勤列車だった。しかし,間もなく,電車で大爆発が起き,コルターは死んでしまう。再び目が覚めると,基地のような場所だった。担当のグッドウィン大尉(ヴェラ・ファーミガ)から特別なプロジェクトの被験者となっていることを知らされ,並行世界に入ることになる。爆発までの8分間の並行世界に入り,テロリストを見つけ出すのが任務である。

 中味のわかりにくい邦題だが,現代の『ソースコード』に該当する日本語もない。新発明のソフトがあり,その実用化の実験が行われるという設定であるが,それはともかく,実際は,『恋はデジャ・ブ』(1993,ハロルド・ライミス監督)や『タイムアクセル12:01』(1993,ジャック・ショルダー監督),『リバース』(1997,ルイス・モーノウ監督),そして『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1884,押井守監督)と同じ同一時間帯を何度も繰り返すというアイディアに基づいている。主人公だけが繰り返しに気付いている。この映画では8分間が繰り返えされる。だが,ジェイク・ギレンホールは,可哀想な状況に置かれている。先の予想が出来にくいので,最後まで興味の続く映画であるが,無理矢理に父と子の物語を挟んでいるのが残念なところである。ジェイク・ギレンホールは,湾岸戦争からアフガン戦争までに3回も兵士を演じているがどれも戦争の英雄ではない。

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2011年09月30日

モテキ  【B+】

moteki題名:モテキ
評価:B+
制作年:2011年
監督:大根仁
場所:東京
時代:現代
新作
 派遣をやめて,小さなインターネットニュース会社に就職した独身で31歳の藤本幸世(森山未來)は,ある日,ツイッターで趣味のよく合う相手を見つけ,一緒に飲むことになった。アバターでむさ苦しい男だろうと思っていたら,やってきたのは,まぶしいほどの若い女,雑誌編集者の松尾みゆき(長澤まさみ)だった。屈託なく相手をしてくれるみゆきであるが,どうやら彼氏がいるらしい。簡単にはあきらめきれないと思っていたら,みゆきの友達で,33歳の桝元るみ子(麻生久美子)とも仲良くなった。

 原作のコミックなど全く知らないけれど観に行ったのは,仲里依紗が出演しているからである。けれど,その出演部分は,せいぜい10分ほどのまとまった時間帯のみだった。バーにつとめ主人公の話をきいてやるシングルマザー仲里依紗,赤ん坊を抱いて朝の街を二人で話ながら歩く場面で,「藤本さんみたいな男性って需要ありますよ」という重要な台詞を言う。長澤まさみも最初の屈託のなさそうな雰囲気から後半の暗い感じまでうまく演じていた。十代の男の子が年上女性に憧れるが,恋人がいてというよくある恋愛物語の変型である。30歳を過ぎても幼いままの男の純情物語である。「一緒にいても成長できない」と言われても仕方がない。ミュージカルのように突然街中で群舞が始まるのも目新しかったし,飲み会やカラオケ,食べ物,コンサート場面,音楽などの細部が誇張や省略があるものの良くできていた。外から見れば好みの違いなどは僅かでしかないようにみえるが,本人たちにとっては重大であることがよくわかった。就職面接や社内で主人公のツイートをみなで笑いものにする場面があった。

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2011年09月25日

あしたのパスタはアルデンテ  【B−】

Minevaganti題名:あしたのパスタはアルデンテ
評価:B−
原題:Mine vaganti
制作年:2010年
監督:フェルザン・オズペテク
制作:Fandango,Rai Cinema,Apulia Film Commission,Provincia di Lecce
場所:
時代:現代
新作

 南イタリアのレッチェの町で,カントーネ家は50年前からパスタ製造業を営んでいた。当主のヴィンチェンツォ(エンニオ・ファンタスティキーニ)とその妻,妹,長女夫妻,長男,次男,それに母親がいる。ローマに行っていた次男トンマーゾ(リッカルド・スカマルチョ)が帰郷した。トンマーゾは,経営を学ぶためにローマの大学に入ったはずであるが,実は文学部で作家を志望していた。パスタ工場の共同経営者とその娘アルバ(ニコール・グリマウド)のいる家族揃った晩餐会の席上で,トンマーゾは,家の事業を継ぐ気はないこと,作家になろうとしていること,それにゲイであることを告白しようとした。ところが,そこで予想外のことが起こり,トンマージはアルバと事業を手伝う羽目になってしまう。

 イタリアの小都市が舞台であるし,邦題もまあまあなので観に行ったら,客が多かった。リッカルド・スカマルチョは狂言回しで,主役とは言い難く,群像劇といったほうがよい。またコメディである。全体を進めていこうとする力が弱く,最初と最後の結婚式のエピソードは説明が不足している。また,登場人物の内面を描くのが上手くなく,ニコール・グリマウドは,凶暴な印象だけがいつまでも残ってしまう。さらに問題なのは,監督が同性愛者に偏見のあることである。ローマから遊びに来たニコール・グリマウドの友達の扱い方はあまりよろしくない。中村俊輔選手がいたレッチェなのであるが,それほど魅力のある街とは思えなかったのも期待はずれの一因である。

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2011年09月19日

ペーパーバード 幸せは翼にのって 【B+】

pajaros-de-papel題名:ペーパーバード 幸せは翼にのって
評価:B+
原題:Pajaros de papel
制作年:2010年
監督:エミリオ・アラゴン
制作:Antena 3 Films,Canal+ Espana,Globo Media S.A.,Institut Catala de les Industries Culturals,Instituto de la Cinematografia y de las Artes Audiovisuales (ICAA),Versatil Cinema
場所:マドリッド
時代:第二次大戦中
新作

 スペインの内戦中のマドリッドでホルヘ(イマノール・アリアス)は軽演劇の一座の喜劇役者として,妻と息子と共に平和に暮らしていた。マドリッドは,ファシスト派の空襲を受けていたが,ある日,家に戻ると爆撃で妻と子は死んでいた。ホルヘは姿を消し,内戦が集結した一年後,フランコが制圧しているマドリッドに戻ってきて一座に復帰する。相方のエンリケ(ルイス・オマール)は,両親を内戦で亡くした少年ミゲル(ロジェール・プリンセプ)を世話していたのでホルヘも自分の子と同じくらいのミゲルと共に住むことになる。一座は苦労を重ねながらも興行を続けていたが,フランコ政権の監視下に置かれていた。

 スペインの内戦から第二次大戦のフランコ独裁にいたる時代を背景とした状況に左右される話であるが,この間の歴史の知識を持ったスペイン人を対象に作られているので,わかりにくいところがある。しかし,時代の圧迫感と一座の自由な雰囲気の対比や,貧しい中での生活のリアルさ,そこから生じるユーモアなど味わい深い。ホルヘとミゲルの交情がこの映画の中心なのだろうが,どちらかといえばエピソードの一つという扱いである。

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2011年09月11日

ミケランジェロの暗号 【B】

MEINBESTERFEIND題名:ミケランジェロの暗号
評価:
原題:Mein bester Feind
制作年:2010年
監督:ヴォルフガング・ムルンベルガー
制作:Josef Aichholzer Filmproduktion,Samsa Film,Osterreichisches Filminstitut,Filmfonds Wien,Osterreichischer Rundfunk,Land Niederosterreich,Programme MEDIA de la Communaute Europeenne
場所:ウィーン,ポーランド,スイス
時代:1938年〜1945年
新作

 1938年,ヒトラーがオーストリアを併合する前のウィーンでヴィクトル・カウフマン(モーリッツ・ブライブトロイ)は画廊を経営する父を手伝っていた。ユダヤ人であるため,一家でスイスへ脱出しようとしていた。カウフマン画廊は,ミケランジェロが書いたモーゼ像を持っていると言われていた。ある日,ヴィクトルと兄弟同然に育った,使用人の息子ルディ(ゲオルク・フリードリヒ)がドイツから戻ってきて再会を喜び,ヴィクトルは,その絵の隠し場所をルディに教えてしまう。しかし,ルディは,ナチの親衛隊の一員となっており,上司に報告する。そのため,カウフマン一家は逮捕され,絵は没収される。ナチは,ベルリンを訪問するムッソリーニにこのミケランジェロの絵を贈ることにする。
 オーストリアで作られたかなり評判のよい映画で,映画館は満員である。前半は緊迫感がある。しかし,途中から,ご都合主義のかなり荒っぽい展開となる。カタルシスを求める観客は満足するのかもしれないが,荒唐無稽であまり笑えない。敵役は判断力のない卑小な人間であることも腹立たしい。第二次大戦直後のウィーンで,ナチの元親衛隊将校が画廊を開くことができたというのに驚いた。

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2011年09月03日

ゴーストライター 【B+】

ghost_writer題名:ゴーストライター
評価:B+
原題:The Ghost Writer
原題:ロバート・ハリス『ゴーストライター』((講談社文庫)
制作年:2010年
監督:ロマン・ポランスキー
制作:R.P. Productions,France 2 Cinema,Elfte Babelsberg Film,Runteam
場所:ロンドン,マーサズ・ヴィンヤード島
時代:現代
新作

 自伝の傑出したゴーストライターとして知られる「ゴースト」(ユアン・マクレガー)はエージェントを通して,前英国首相アダム・ラング(ピアース・ブロスナン)の自伝をまとめるよう出版社から依頼を受けた。前のライターが,フェリーから落ちて溺死してしまったのである。そこで,はるばるとアダム・ラングのいるマサチューセッツ州マーサズ・ヴィンヤード島に向かう。前首相夫妻は,広い警備を厳重にした敷地内に家を建て,秘書らのスタッフと住んでいる。すでに700枚近い原稿ができている。そのうちにアダム・ラング前首相は,任期中の捕虜虐待の件で告発され渦中の人となり,屋敷の回りが騒がしくなる。そのうちに,前任者の死に不審なところがあることがわかってくる。

 二か月ぶりに映画館で映画を観た。上映館は少ないが評価が高いので,台風が来ているにもかかわらず,満席である。ポリティカル・スリラーであり,ダイイングメッセージの解読やどんでん返しの終わり方など小説に基づいたことがよくわかる趣向であるが,最初から最後まで緊張感のある画面がいかにもポランスキー監督の映画であると感じさせる。特に,原稿の保存キャビネットの仕組み,車のナビゲータの再現,ホテルの受付,前首相の屋敷のメイドなど細部や脇役が面白い。何だか不安だが,それほどのことでもない,でもやはり大きな陰謀があるという構成になっているところはヒチコック的かもしれない。夏にジェームズ・ボンドシリーズを何作か観たせいか,ピアース・ブロスナンはジェームズ・ボンドが首相になった感じがした。いずれにしてもしたたかさ,大物らしさがないのは困る。


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2011年07月01日

ジュリエットからの手紙 【B+】

letters_to_juliet題名:ジュリエットからの手紙
評価:B+
原題:Letters to Juliet
制作年:2010年
監督:ゲイリー・ウィニック
制作:Summit Entertainment,Applehead Pictures
場所:トスカーナ,ヴェローナ,ニューヨーク
時代:現代
新作

 『ザ・ニューヨーカー』誌で調査員の仕事をしているソフィ(アマンダ・セイフライド)は,同誌に記事を書くことが望みだった。婚約者はレストランの開業準備中であるが,二人でイタリアで休暇を過ごすことになった。しかし,ヴェローナに来たら,婚約者は,仕入れ先の業者との折衝に余念がなく,ソフィはほっておかれていた。『ロミオとジュリエット』の名所に行ったところ,大勢の女性観光客がジュリエットへの手紙を書いて壁に貼っていた。ところが,これをはがして篭に入れて持っていく女性がいるので後を付け,手紙に返事を書く市の団体「ジュリエットの秘書たち」に出会う。ソフィが手伝っていると壁の穴から50年前に英国のクレアという女性が書いた手紙があった。ソフィはこの手紙に返事を書かせてもらう。すると数日後,チャーリー(クリストファー・イーガン)という若い男が祖母のクレア(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)を連れてやってくる。クレアは,50年前にシエナに住んでいたロレンツォという男を探すという。ソフィは,二人に同行してトスカーナを車で探し回る。

 おとぎ話ではあるもののイタリアを舞台としたアメリカ映画として,よくできている。あまり名所を撮ろうなどということはせずに,起伏のある美しい丘の続くトスカーナ地方や,ヴェローナ,シエナの街を自然に話の中に取り込んでいる。出演者に無理に英語を使わせる場面も少ない。そして,意外な展開でもあった。アマンダ・セイフライドの演技力のせいか幼くみえるせいなのか,前半,問題を抱えているようには少しも感じられないので,後半は少し唐突である。婚約者に対しての態度もこれでいいのかと思うところがある。別の若手女優はいなかったのかと思ってしまう。ヴァネッサ・レッドグレーヴの前に今は実際の夫となったフランコ・ネロが馬に乗って登場する。クリストファー・イーガンはヒース・レジャーを彷彿とさせる。

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