2024年04月12日

ブルックリンでオペラを 【A−】

shecametome題名:ブルックリンでオペラを
評価:A−
原題:She Came to Me
国:米国
制作年:2023年
監督:レベッカ・ミラー
制作:AI-Film,Killer Films,Round Films,Somewhere Pictures
場所:ニューヨーク,デラウェア
時代:現在
新作
 ニューヨークブルックリンに住む作曲家のスティーヴン(ピーター・ディンクレイジ)は新作オペラを書かなければならないがアイディアがなく行き詰まっていた。スティーヴンは,精神科医パトリシア(アン・ハサウェイ)の夫である。パトリシアが医学生だった時に前の夫との間に生まれたジュリアンは大学生になっている。ある日,ジュリアンの恋人テレザの母は,パトリシアの家の家政婦だということがわかる。一方,スティーヴンは,スランプの解消のため犬を連れて,波止場に散歩に出かけた。カフェで会ったタグボートの船長カトリーナ(マリサ・トメイ)に誘惑され大きなベッドのある寝室に連れ込まれた。スティーヴンは,この出来事から思いついたオペラで大成功を収める。しかし,問題が起きた。

 最近観た映画の中では,最も大きな満足を得られた。観客も意外に多かった。序盤は,どのように進んでいくのかわからないままだったが,全体としては,荒唐無稽な話と言える。しかしそこが良い。最後のタグボートの中の場面にはのんびりした多幸感が感じられた。ここにはアン・ハサウェイはいないのであるが,アン・ハサウェイは考えていることやしていることが奇矯で,修道女に憧れる一方,極端な掃除好きという役割である。マリサ・トメイも不思議な存在で,姉御肌の恋愛依存症でもある。二人に挟まれたピーター・ディンクレイジがおそらく主役である。本当に女性船長やオペラ作曲家がいるのならニューヨークは素晴らしい。

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2024年04月05日

オッペンハイマー 【B+】

oppenheimer題名:オッペンハイマー
評価:B+
原題:Oppenheimer
国:米国
原作:カイ・バード, マーティン・J・シャーウィン『オッペンハイマー』(早川書房)
制作年:2023年
監督:クリストファー・ノーラン
制作:Universal Pictures
場所:米国,英国,オランダ
時代:20世紀前半
新作

 オッペンハイマー(キリアン・マーフィ)は,ケンブリッジ大学で実験物理学を専攻したあとドイツで理論物理学を専攻し,やがて天才物理学者として知られるようになる。やがて学者で共産主義者であるキャサリン(エミリー・ブラント)と結婚する。米国が第二次世界大戦に参戦した1942年に陸軍のグローヴス(マット・デイモン)から原子爆弾開発計画への参加を求められる。オッペンハイマーは,計画のリーダーとなりニューメキシコ州のロス・アラモスに研究者や作業員を集め,家族も呼ばせて,秘密裏に原爆開発を始めた。当初のライバルは,ドイツであったが,ドイツは降伏し,日本への投下とソ連との競争と開発の目的は変わっていく。1945年7月に原爆実験に成功し,日本が降伏すると,オッペンハイマーは,「原爆の父」と呼ばれるようになる。しかし,赤狩りが始まり,オッペンハイマーも嫌疑を掛けられ査問の対象となってしまう。

 そう難しくはないが,3時間,登場人物が多い,時間軸を操作している,主人公にあまり感情移入できない,ディスカッションが多い,クライマックスが途中にあるなどなど,観客を疲れさせる作品である。特に,この場合,時間は,一直線で流れてもよいのだろうに,なぜかごちゃごちゃに入れ替えている。また,クライマックスの実験の部分がかなり長い。とはいえ,いくつかの討論や聴聞の部分が最も興味深い。核分裂はもしかすると際限ない連鎖を引き起こし,この世界全体を爆発,消滅させるかもしれないという発言があっても開発を続ける。オッペンハイマーの伝記であるが,その指導力ばかりではなく,矛盾のある部分も容赦なく暴いている。オッペンハイマーがいなくても米国は原爆を開発できただろうが,多分,遅くなり,その時には日本は戦争をやめていて,実戦使用はなかったかもしれない。原爆使用が日本の降伏を早めたというのは,今では一つの説にすぎない。どれほどの被害が出るかを知っていながら広島,長崎への投下を容認した人物であることは確かである。

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2024年03月30日

パリ・ブレスト 〜夢をかなえたスイーツ〜 【C】

Paris Brest題名:パリ・ブレスト 〜夢をかなえたスイーツ〜
評価:
原題:A la belle etoile
国:フランス
制作年:2023年
監督:セバスティアン・テュラール
制作:Canal+他
場所:エペルネ,パリ,コート・ダジュール
時代:原題
新作

 ヤジッド(リアド・ベライシュ)は,フランスの・エベルネに住むモロッコ生まれの両親を離れ,里親の元で暮らしている。やがて養護施設に入るが,パティシエになりたいと思い始める。一方,全く生活能力がなくて,ヤジッドを手放さざるを得なかった実の母がしきりと絡んでくる。パティシエの見習いをしたのち,毎日,エベルネから180キロもあるパリまで通って,高級レストランでパティシエとなり,さらに19歳でコート・ダジュールの店のスー・シェフとなった。
 
 2023年1月に行われたパティシエの世界選手権大会「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー2023」では日本チームが優勝した。この作品に出てくるのは,二年毎に開催されるこの大会のことだろう。ここでは,日本はヤジッドのフランスチームのライバルとして登場する。フランスの天才パティシエの自伝の映画化である。母親との葛藤があり,不幸な少年時代を過ごしたらしいことはわかった。ただ,過去と現在を混ぜ合わせる演出のために,因果関係はぼんやりしたまま進んでいく。また,自覚的にそのようにしているのだろうが,感動とはほど遠い。邦題の「パリ・ブレスト」は,フランスで人気というタイヤ状の菓子の名であるが,本作の中ではほとんど姿を見せず,頻繁に出てくるのは,リンゴのチョコレートかけである。菓子作りの詳しい説明や,食欲をそそるような映像はわずかしかなかった。最も驚いたのは,大会における主人公の役割であった。これもパティシエとしての評価に繋がるのかと不思議だった。

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2024年03月12日

落下の解剖学 【B+】

rakkano題名:落下の解剖学
評価:B+
原題:Anatomie d'une chute
国:フランス
制作年:2023年
監督:ジュスティーヌ・トリエ
制作:Les Films Pelleas,Les Films de Pierre他
場所:フランス,グルノーブル近郊
時代:現代
新作

 40歳代のドイツ生まれの作家サンドラ(ザンドラ・ヒュラー)は,何冊か本を出し,実力を認められている。ロンドンで出会った夫ヴァンサン(スワン・アルロー)と11歳の息子ダニエル(ミロ・マシャド・グラネール)と共にグルノーブルの近くの山荘で暮らしている。学校教師をしているヴァンサンも小説を書こうとしているが,書けないため,フランスに戻った。山荘の部屋を貸して収入を得ようとしているが,うまくいっていない。ダニエルは,交通事故に遭ってほとんど視力がなく,盲導犬とともに雪の中を散歩に出かけた。家に帰ると雪の中に父親が倒れていて息がなかった。家にはヴァンサンとサンドラの他には誰もおらず,雪の中に足跡はなかった。サンドラは,ヴァンサンを殺した容疑をかけられ,裁判となる。

 原題直訳の邦題がよかった。法廷ミステリーのようだが,最後に真犯人や意外な事実が明らかになるわけではない。三つほど興味深い点があった。一つは言葉で,フランスの法廷で,フランス語が堪能ではないサンドラは,一人だけ英語で証言をするが,そうしたストレスは考慮されないらしい。第二は,法廷事情で,フランスではみなそうなのかもしれないが,検事は傲慢で断定的でひとりよがりである。また,裁判中であるにもかかわらず指名されなくとも自由に発言できるらしい。そして三つ目は,ヴァンサンは,サンドラと自分の口論を録音していて,それが法廷で公開される。両者が暗黙のうちに諒解している背景の中で自己正当化と相手の非難ばかりしている本音半分の夫婦喧嘩を証拠として取り上げようとしていた。


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2024年02月19日

テルマ&ルイーズ 【B+】

Thelma & Louise題名:テルマ&ルイーズ
評価:B+
原題:Thelma & Louise
国:米国,英国,フランス
制作年:1991年
監督:リドリー・スコット
制作:Pathe Entertainment,Percy Main,Star Partners III Ltd.
場所:米国,アーカンソー州,テキサス州
時代:1990年頃
新作

 米国アーカンソー州のダイナーでウエイトレスをしている中年の独身女性ルイーズ(スーザン・サランドン)は,専業主婦のテルマ(ジーナ・デイヴィス)とともに週末にドライブ旅行に出かけた。山の中で泊まって釣などをしてみようと思っていた。ところが,途中で入ったバーで,テルマが泥酔して危ない目に遭い,ルイーズが救ったものの,取り返しのつかない事態となり,二人は車で逃げ出す。予定を変えて,メキシコへ向かおうとするが金がない。そして,さらに面倒に巻き込まれてしまう。自分たちにはツキがあると思っているが,警察に追われるのっぴきならない状況になっていく。

 公開当時から,高く評価され,数々の賞を得ている。観たつもりでいたが,どうやら記憶違いで,女性二人のドライブ旅行道中記で観たのは『ロミーとミッシェルの場合』だった。リドリー・スコット監督は,一つのテーマを追ったりせず,映画作りが好きで職人的と思っていたが,この映画は,テーマがはっきりしている。中年女性が能天気に暴れ回る映画ではなく,女性を物のように扱う男達への実力行使による反撃である。この時期に日本で再上映されるのにも理由があるのだろう。前半で,テルマのだらしなさで引き起こされる事件が続き,ルイーズとの間に何度か亀裂が入りかけるが,その度に修復され,絆が深まっていく。この作品はブラッド・ピットの出世作といわれているが,何ともひどい役を与えられたものだ。


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2024年02月02日

哀れなるものたち 【A−】

題名:哀れなるものたち
評価:A−
原題:Poor things
国:英国
原作:アラスター・グレイ『哀れなるものたち』(早川書房)
制作年:2023年
poorthings監督:ヨルゴス・ランティモス
制作:Element Pictures,Film4,Fruit Tree,Searchlight Pictures
場所:ロンドン,リスボン,アレキサンドリア,パリ
時代:1880年代
新作
 ヴィクトリア朝のロンドンで,外科医ゴドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)は,自殺した妊婦の遺体から胎児の脳を取り出し,母親に移植し蘇生させた。そのベラ(エマ・ストーン)は,外見は成人女性であるが,中味は幼児であり,運動機能,知能,社会的能力を取り戻しつつある。医学生のマックス(ラミー・ユセフ)は,ゴドウィンの助手になって,ベラの成長を記録する。やがて,マックスは,ベラに結婚を申し込み,ベラは承諾する。ゴドウィンの許可を得て,結婚式が行われるが,ベラは,そこに現れた放蕩ものの弁護士のダンカン(マーク・ラファロ)と一緒に教会から逃げ出した。ベラとダンカンは,ポルトガルのリスボンから「グランドツアー」を始める。

 多少,敬遠する気分もあったが,『小悪魔はなぜモテる?!』からエマ・ストーンの出演作を観てきたこともあり観ることにした。グロテスクな場面が多い。ゴシック小説風であり,寓話,ファンタジーでもあるが,種々の見所がある。中心は,感情のままだったベラが多彩な経験から次第に成長し自立していき,読書をするようになり,社会主義にも出会うといったところであり,女性解放的要素が大きい。一方,全てセットで作られた,ロンドン,リスボン,アレキサンドリア,パリや,クルーズ船の外観やゴンドラなどはファンタスティックである。やや長いが,どのような結末を迎えるかという関心は続いた。とはいえ,結局は,最初のぎこちない動作から,大胆に振る舞うまで,他に類のない一種の怪物を創造したエマ・ストーンの映画だった。

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2023年12月15日

きっと、それは愛じゃない 【B+】

whatslovegot題名:きっと、それは愛じゃない
評価:B+
原題:What's Love Got to Do with It?
国:英国
制作年:2022年
監督:シェカール・カプール
制作:Instinct Productions;StudioCanal;Working Title Films
場所:ロンドン,ラホール
時代:現代
新作
 ロンドンで母キャス(エマ・トンプソン)と二人暮らしのゾーイ(リリー・ジェームズ)は,新進のドキュメンタリー作家である。「見合い結婚」(arranged marriage,assisted marriage)についてのドキュメンタリーを企画し,隣のパキスタン一家の幼いときから親しくしているカズ(シャザド・ラティフ)の結婚を題材とすることにした。カズは,英国で学び医師となっているが,カズの一家は,彼にパキスタンの見合い結婚をさせようとする。カズもその気になり,両親の目にかなった,一度も直接に会ったことのないラホール在住の女性と結婚することになった。ゾーイはカメラを抱え,招かれた母とともにパキスタンに向かう。三日間の結婚行事が始まる。

 典型的な恋愛コメディであるが,予想していたより中味があった。ゾーイは,恋愛や結婚についてさほど真剣には考えていない。カズには,クズばかりと付き合っていてどうするつもりかと言われているし,母親の勧める真面目な男も振ってしまう女である。リリー・ジェームズは,『ダウントン・アビー』に出はじめて10年,30歳代半ばで,どちらかと言えば文芸路線だったが,こうしたコメディでもこなしている。ただ,途中から,カズの結婚とパキスタンの家族の問題が絡んで中心になってしまうので,とってつけたような結末になっている。インドとは違うラホールの街,歌や踊りという観光的要素もあった。


p-5762508 at 20:32映画 

2023年11月07日

私がやりました 【B+】

moncrime題名:私がやりました
評価:B+
原題:Mon Crime
国:フランス
原作:ジョルジュ・ベル,ルイ・ヴェルヌイユ
制作年:2023年
監督:フランソワ・オゾン
制作:Mandarin Films, FOZ, Gaumont他
場所:パリ
時代:1935年
新作
 
 1935年,パリのアパートの一部屋に,売れない若い女優マドレーヌ(ナディア・テレスキウィッツ)と弁護士になったばかりのポーリーヌ(レベッカ・マルデール)が住んでいる。二人とも収入がなく,家賃がたまっている。役をもらうため著名なプロデューサーのところに出かける。やがて,マドレーヌは,このプロデューサーを射殺した容疑で起訴される。ポーリーヌは,彼女の弁護にあたる。マドレーヌには,タイヤ会社を経営する父親をお持つ恋人がいるが,全く働こうとしない。親からは援助が得られないので,金持ち女と結婚し,マドレーヌを愛人にしようとしている。こうした救いのない状況に陥ったマドレーヌは,法廷で,殺したことを認める。ところが,裁判は意外な結末になる。

 元は,フランスの舞台劇らしい。純粋なコメディであるが,マドレーヌとポーリーヌが何を企んでいるかはわからないまま,早い展開についていくしかない。あまりにご都合主義だなと思っていると,ベテラン女優オデット(イザベル・ユペール)が登場して邪魔を始める。その徹底した自己中心ぶりが笑わせられる。男性中心の法廷,いい加減な警察や司法制度などへの風刺があることはあるが,ただ,成り行きを追っていればよい作品だった。

p-5762508 at 20:03映画 

2023年10月07日

ロスト・キング 500年越しの運命 【B】

thelostking題名:ロスト・キング 500年越しの運命
評価:
原題:The Lost King
国:英国
制作年:2022年
監督:スティーヴン・フリアーズ
制作:BBC Films,Baby Cow Productions,Ingenious Media,Magaritz Productions,Pathe
場所:英国エジンバラ,レスター
時代:現代
新作
 エディンバラに住むフィリッパ・ラングレー(サリー・ホーキンス)47歳には,二人の男の子がいて,彼らに会うために前夫が時々訪れる。仕事にも行き詰まっている。あるとき,シェイクスピアの『リチャード三世』を観劇した。シェイクスピアの描く「リチャード三世」は背骨が曲がっていて,醜悪な容貌で,狡猾な策略で王位を簒奪し,2人の幼い甥をロンドン塔に幽閉して殺害したとされる。これが,一般的なイメージとなっている。しかし,フィリッパは「リチャード三世」の汚名を晴らそうと,資料を調べ,「リチャード三世協会」エディンバラ支部に入会する。用事でレスターに行った時,社会福祉事務所の駐車場で,特別に感じることがあった。そこで,文献を調べ,ここに「リチャード三世」の遺骸が埋まっているのではないかと考え,資金を集めて,発掘にこぎ着けた。

 実話をもとにしていることは知っていたが,予想と異なる点が多々あり,さほど感銘を受けなかった。地味な英国映画であるにもかかわらず,観客が多かったことも意外だった。『リチャード三世』の幻影が登場する。進行のためには必要なことは判るが,しゃべってはいけない。レスター大学の敵役の教授が出てきて,主人公がこの人物に対しかなりストレスを感じることになっている。しかし,少し一方的であるし,大学との関係もわかりにくい。特に最後の祝賀会の場面が曖昧だった。

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バーナデット ママは行方不明 【B】

Bernadette題名:バーナデット ママは行方不明
評価:
原題:Where'd You Go, Bernadette
国:米国
原作:マリア・センプル『バーナデットをさがせ!』(彩流社, 2022)
制作年:2019年
監督:リチャード・リンクレイター
制作:Annapurna Pictures,Color Force,Detour Filmproduction
場所:シアトル,南極
時代:現代
新作

 シアトルで暮らす,バーナデット(ケイト・ブランシェット)にはマイクロソフトでAIソフトを開発する夫と中学を出たばかりの娘がいる。彼女は20年以上にわたって,家事と子の世話をしてきた。また,人付き合いが極端に悪く,隣人とのトラブルを抱えている。そして旅行の手配などはリモートの秘書を使っていた。娘が卒業の記念に両親と南極に行きたいと言い出した。父親は賛成したが,他人の中にいるのがいやなバーナデットは気が乗らない。そのうち,使っていたリモート秘書に問題があることがわかり,捜査対象となり,さらに,精神分析医がやってきた。バーナデットは,旅行の支度をし,一人で南極に向かった。夫と娘は後を追いかける。

 前半は,バーナデットの不穏な雰囲気の他には,たいした出来事はなく退屈。バーナデットは,若い頃,天才的な建築家として高い評価を受けていたが,自分の作品が心ない仕打ちを受けたので,人嫌いになって,家に籠もっていた。しかし,次第に,創造意欲が高まっていく。ただ,それは何がきっかけなのか,南極に行くのは何故なのかは,どうやら原作を読まないとわからないらしい。

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2023年09月03日

アステロイド・シティ 【B】

asteroidcity題名:アステロイド・シティ
評価:
原題:Asteroid City
国:米国
制作年:2023年
監督:ウェス・アンダーソン
制作:Focus Features,Indian Paintbrush,American Empirical Pictures
場所:米国
時代:1955年
新作

 劇作家(エドワード・ノートン)の執筆の様子から始まる。この劇の舞台は,1955年の米国南西部の砂漠の中にあるアステロイド・シティである。町といっても鉄道は通っているものの食堂とガソリンスタンド,それに10棟ほどのコテージがあるだけだが,軍が活動している。写真家のオーギーは,息子ウッドローと三人の幼い娘とともにやってきた。車が故障でここにとどまるしかない。また,娘を連れたシングルマザーの映画俳優ミッジ(スカーレット・ヨハンスン)もいる。他にもオーギーの亡くなった]妻の父親(トム・ハンクス)や支配人(スティーブ・カレル)らもいる。彼らの目の前で,予想外のことが起こり,町は封鎖されてしまう。

 『ニューズウィーク日本版』(2023-09-05)には「AIには作れない鬼才監督の最新作」という見出しの映画評(デーナ・スティーブンズ)が載っていて,筆者はヴェス・アンダーソンは,「その映像世界に魅了される人と不快感を抱く人に,はっきり二分される」と言っている。どちらかと言えば今度はどんな映像を見せて貰えるのかと思って,作品を観ているが,魅了されているわけではない。人工的な空間の中で,まとまりのない話が続いていくだけでよい。しかし,この作品では,多分,ある事件が中心であるが,1955年らしい妄想であるという点ではつじつまが合っている。

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2023年07月06日

ザ・フラッシュ 【B】

The Flash題名:ザ・フラッシュ
評価:
原題:The Flash
国:米国,カナダ,オーストラリア,ニュージーランド
公開年:2023年
監督:アンディ・ムスキエティ
制作:DC Comics,DC Entertainment,New Zealand Film Commission
場所:セントラルシティ
時代:現代
新作

 バリー・アレン(エズラ・ミラー)は子供の頃,母に頼まれて父と一緒にスーパーにトマト缶を買いにいき,帰ると台所で母が殺されていた。父が犯人とされ刑務所に送られた。成長したバリーは科学捜査官となった。たまたま研究室で雷で電撃を受け,棚の化学薬品を浴びて,超高速で走る,物質透過などの超能力を得た。赤いスーツを身につけ,地上最速の男フラッシュとして,ビルに駆け上ったり,海を駆け抜けたりして,事件を解決する。冤罪の父を救おうとし,母とまた会いたいと思っている。一方,スーパーマンの生まれたクリプトンから地球を滅ぼしに来たゾッド将軍に対しバットマン,スーパーガールらと共に闘う。

 あまり関心のないDCコミック映画だが,評価が高いので,観たくなった。冒頭に高いビルが崩壊し,高い階にあった産院から何人かの赤ん坊が空中に放り出され,フラッシュが飛び回って救うという奇想天外な場面があった。CGを使った派手なアクションばかりのDCコミック映画であることに間違いないが,どこか違うところがある。以前のスーパーマン映画であったように,光速で移動して時間を遡って過去に干渉するが,その結果,手に負えないマルチバースが出現してしまう。さらに,もう一人の自分も出現,もう一人のバットマン,スーパーガールらに出会う。バットマンをベン・アフレックとマイケル・キートンそれにジョージ・クルーニーが演じ,さらには,アーカイブ映像を使ってクリストファー・リーヴのスーパーマンも登場するといったところが好まれる一因かもしれない。


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2023年05月26日

TAR ター 【B+】

tar題名:TAR/ター
評価:B+
原題:Tar
国:米国
制作年:2022年
監督:トッド・フィールド
制作:Focus Features,Standard Film Company,EMJAG Productions他
場所:ベルリン,ニューヨーク
時代:現代
新作
 最初にスタッフのリストが提示され,本編の最初はリディア・ター(ケイト・ブランシェット)へのインタビューで,ここでこれまでの経歴が披露される。有力オーケストラで指揮者として豊富な経験があり,数々の音楽賞を得て,現在は,ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団における女性初の首席指揮者である。作曲家でもあり,まもなく著者が刊行される。マーラーの交響曲全曲の録音が進行中で,現在は,残る第5番のリハーサル中である。私生活は,パートナーのシャロン(ニーナ・ホス)と子供が一人いるが,同性愛者であることは周知されている。しかし,リディアは,不眠に悩まされている。また,住んでいるアパートの隣人からの干渉もある。やがて,若手音楽家の自殺,副指揮者の解雇などリディアのハラスメントが告発され,疎まれるようになる。

 2時間40分という長さなので,寝てしまわないかと心配だったが,前半はともかく後半は,集中力が持続した。しかし,作品の側の説明不足もあるが,自殺した女性に対するハラスメント,アシスタントのフランチェスカ(ノエミ・メルラン)の離脱の事情,オルガの正体,そして最後の場面など良く理解できないままに終わった。ケイト・ブランシェットはこの映画のためにドイツ語を学び,ピアノの再訓練をうけたとのこと。伝記ではなく,かといって,教訓などは引き出しにくく,落ち着かない気分のまま,ここでは終わらないだろうなと思った箇所で終わった。

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2023年04月13日

パリタクシー 【B】

BelleCourse題名:パリタクシー
評価:
原題:Une Belle Course
国:フランス,ベルギー
制作年:2022年
監督:クリスチャン・カリオン
制作:Pathe他
場所:パリ
時代:2020年代
新作

 パリのタクシー運転手シャルル(ダニー・ブーン)は,わずかな違反をすれば免停になる上,金銭的な問題を抱えていて憂鬱だった。郊外まで行って客を拾い,施設まで送り届けるよう指令を受けた。小さなトランクを持って乗ってきた老女(リーヌ・ルノー)はマドレーヌと名乗り92歳と告げる。マドレーヌは,あちこち寄り道をさせ,車内では,前半生の1950年代について話した。シャルルは,その不幸な出来事に,そして,淡々と語る声に,さらに最後となるであろう外出を楽しもうとする姿に次第に同情し,徐々に打ち解けていく。

 ハートフルであることは確かであるが,期待していたような内容ではなかった。フランスの1950年代の司法を告発しているように見える。そして,こうした結末なら,彼女が後半生に何をしてきたのか知りたいと思ってしまう。今のパリの市街を解説なしで見せてくれるところはよいのだが。


p-5762508 at 09:59映画 

2023年04月10日

IR/エア 【B】

air
題名:AIR/エア
評価:
原題:AIR
国:米国
制作年:2023年
監督:ベン・アフレック
制作:Amazon
場所:オレゴン州ビーバートン
時代:1984年
新作

 ナイキの本社は,秀麗なフッド山の見えるオレゴン州の小都市にあった。1984年に,ナイキは,バスケットシューズの業界では,コンバース、アディダスに水をあけられ,危機的な状況だった。CEOのフィル(ベン・アフレック)は,費用を出し渋っていることもあって,有力な選手との契約が難しい状況にだった。バスケットの世界で名を知られているソニー(マット・デイモン)は,ビデオを観ていて,まだ,プロバスケット界にデビュー前のマイケル・ジョーダンが他の選手とは異なる次元の傑出した選手であることに気づき,契約を結ぼうとするが,数々の障害があった。それを克服し,新しいシューズを産み出した。

 サクセス・ストーリーであるが,マイケル・ジョーダン自身が主役というわけではなく,ナイキの側の話である。マイケル・ジョーダン役はいるものの極めて影が薄い。また,エアの開発過程も出てはくるが,シューズ開発よりも,契約の話が中心となっている。マイケル・ジョーダンの母親がタフネゴシエーターであること,弁護士が極めて下品な台詞を長々としゃべることなどが印象に残った。ベン・アフレックとマット・デイモンは,25年以上のコンビで,今も仲が良さそう。ただ,この役のために中年太りしたのだろうか。マット・デイモンはいつもと印象が違う。ソニーがマイケル・ジョーダンに賭けようとしたのは,そのプレーにだけ感心したのではなく,チームの他の選手たちが,ただ立って待っているだけのマイケル・ジョーダンの得点力を完全に信頼していて,最後のパスを彼に出しているのが判ったからだった。カリスマだった。



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2023年03月17日

コンペティション 【A−】

CompetenciaOficial題名:コンペティション
評価:A−
原題:Competencia Oficial
国:スペイン,アルゼンチン
制作年:2021年
監督:ガストン・ドゥプラット,マリアノ・コーン
制作:Orange他
場所:マドリッド
時代:現代
新作
 スペインの80歳になる億万長者の実業家が,社会的名声を求めて,私費を投じて名の残る事業を企てる。自分の名の付いた橋の建設とともに思いついたのが,偉大な映画を残すことだった。早速,ノーベル賞作家の小説の映画化権を高額で買い取り,最高の人材を雇って制作を開始する。監督として受賞歴があって,天才監督と言われているローラ・クエバス(ペネロペ・クルス)が起用された。そして,ハリウッドスターのフェリックス・リベロ(アントニオ・バンデラス)と老齢の舞台俳優のイバン・トーレス(オスカル・マルティネス)が出演することになり,本読みが始まった。最初は,エキセントリックで,次々に奇抜なアイデアを繰り出すローラに二人の俳優は翻弄されるが,やがて,それぞれのエゴ,自己顕示欲が露わになる。

 ペネロペ・クルス主演というだけで観たのだが,期待以上だった。中心は女一人,男二人なのだけれど,恋愛感情は全くなく,サスペンスでもなく,支配欲や名誉など心理的な側面がクローズアップされる。そのため,皮肉とユーモアに満ちた,質の高いコメディとなっている。ペネロペ・クルスの服装は常に奇妙で,アイデアは豊富,俳優二人は彼女になかなか付いていけない。とはいえ,それぞれ経験豊富であるので,やがて,他の二人を騙すようにもなっていく。撮影現場ではなく本読みの段階であるが,その会場と趣向は常に変わり,そこで繰り広げられる騒動に観客も巻き込まれてしまう。しかし,わかりやすく,伏線も用意されている。ペネロペ・クルスは,世の中の出来事と違い,映画には必ず終わりがあると言うが,どこで終わっても,また終わらなくてもよい映画だった。

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2023年03月03日

丘の上の本屋さん 【B】

Ildirittollafelicità題名:丘の上の本屋さん
評価:
原題:Il diritto alla felicita
国:イタリア
制作年:2021年
監督:クラウディオ・ロッシ・マッシミ
制作:Imago Film
場所:イタリア
時代:現代
新作

 イタリアに多くみられる丘の上に作られた町の広場に面して古本屋がある。この広場からは丘陵地帯と眼下に広がる森や林,農地を眺めることができる。高齢の書店主はリベロ(レモ・ジローネ)と呼ばれている。隣のバールのウェイターのリベロ(コッラード・フォルトゥーナ)が,助けてくれる。『わが闘争』の初版本が欲しいというファシストの男,自分が昔出した本を探す大学教授,雇い主の女性がフォトコミックを求めているので見付けて欲しいというメイドなどがやってくる。ある時,リベロは店の外から本を眺めている移民の少年に気付いた。その子エシエン(ディディー・ローレンツ・チュンブ)は,まだ本を読んだことがないらしいので,まずコミックを貸し,返しに来ると次第に難しい本を貸すようになった。

 原題は『幸福への権利』であり,移民の少年と古書店主との間の本を仲立ちとした交流により読書を振興しようとする映画である。時代は,アマゾンが存在しているので,現代と思われるが,古書店にはパソコンもないし,スマートフォンを使っている登場人物もいない。店は,書架が立ち並んでいるわけではなく,店の狭い入口から両方の壁にある書棚に千冊ほどの本が並んでいるだけである。哲学書や発禁本のコーナーがある。イタリアの普通の古書店や,その客のことがわかってよかった。エシエンに渡す本は,国際色豊かで徐々に高度になっていくのだが,最後の本については,映画の主張が強く出過ぎて鼻白んだ。

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2023年03月02日

ベネデッタ 【B+】

Benedetta題名:ベネデッタ
評価:B+
原題:Benedetta
国:フランス,オランダ
原作:Judith C. Brown『ルネサンス修道女物語』
制作年:2021年
監督:ポール・ヴァーホーヴェン
制作:SBS Productions,Pathe,France 2 Cinema
場所:イタリア,トスカーナ地方
時代:17世紀
新作
 17世紀のイタリアのフィレンツェに近い村の裕福な家に生まれた8歳のベネデッタは,信心深く,不思議な現象を引き起こすこともある。持参金付きでペシアのテアティン修道院修に入り修道女となる。それから18年が経って,修道女として過ごすベネデッタ(ヴィルジニー・エフィラ)の前に,貧しく教育はなく,DV被害者のバルトロメア(ダフネ・パタキア)が逃げ込んできたので救った。ベネデッタは,キリストを幻視するようになり,信仰には痛みを引き受けることが必要だと言われる。やがてベネデッタの身体に十字架にかかったキリストと同様の傷が現れる。修道院長(シャーロット・ランプリング)は,疑いを持って居るが,教区長とともに,修道院と町の名を高めるために,聖痕とみなすようになっていく。

 ベネデッタは聖女なのか魔女なのか,それとも嘘つきなのか,精神を病んでいるのかよくわからないままに進行していく。ハラスメント,同性愛,ペスト,カトリックの信仰や教会など何層にもわたる背景が示されるが,それぞれを正面から取り上げているわけではない。またカトリックの世俗的な側面を揶揄してもいない。最後に謎解きをしないのがよい。17世紀のイタリアの修道院の生活が大部分であり,残酷である反面,快適そうでもあった。

p-5762508 at 20:52映画 

2023年02月24日

アラビアンナイト 三千年の願い 【A−】

TTYL題名:アラビアンナイト 三千年の願い
評価:A−
原題:Three Thousand Years of Longing
国:オーストラリア,米国
原作:A.S.バイアット"The Djinn in the Nightingale's Eye"
制作年:2022年
監督:ジョージ・ミラー
制作:Kennedy Miller MitchellKennedy Miller Productions
場所:トルコ,ロンドン
時代:三千年
新作
 物語の構造や機能を研究対象とするナラトロジー(物語論)の研究者である初老のアリシア・ビニー博士(ティルダ・スウィントン)は,トルコのイスタンブールで開かれている国際学会に出席するためトルコに来ていた。市内に買い物に出かけ,ある店で古いガラスの壺を見付けて買い,ホテルで蓋をあけると魔神(ジン)(イドリス・エルバ)が出てきた。ジンは,主人に三つの願いを言わせて,かなえると自分は自由になると言う。しかしながら,人生に満足していて,しかも「三つの願い」の持つ問題や罠を十分に理解していて,願いを言い出さない。そこで,ジンは,これまで三千年の間,何度も封じ込められ,愛したシバの女王から,後宮にいたが高度な科学的知識,哲学を身につけるに至った若い女性のことまでをアリシアに語りはじめる。

 アラビアンナイト風に奇怪でグロテスク,また驚異的な物語をCGを駆使しながらみせるファンタジーの短篇集であり,とても楽しめることのできる映画だった。観た映画館では座席は少ないもののほぼ満員で驚いた。そう頭を使わなくてただ観ていればよいのだけれど,突然,深い人生や人間に対する認識を披瀝しているようにみえる場面もある。三人の男が海で溺れていた,それぞれに一つだけ願いがかなえようと言ってやると,一人目と二人目は,家族のもとに返してほしいと望んで家に帰った。三番目の男は,その二人を海に戻して欲しいと願った。ジンが気に入っていたゼフィールの願いは「知識を得ること」だった。ただ,あまりよい結末が思い浮かばなかったのかとは思う。

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2023年01月07日

離ればなれになっても 【B】

Gliannipiubelli題名:離ればなれになっても
評価:
原題:Gli anni piu belli
国:イタリア
制作年:2020年
監督:ガブリエレ・ムッチーノ
制作:Lotus Production,Rai Cinema,3 Marys Entertainment
場所:ローマ,ナポリ
時代:1980年代〜2010年代
新作

 1982年のローマで,ティンエイジャーのパオロ(キム・ロッシ・スチュアート),ジュリオ(ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ),リカルド(クラウディオ・サンタマリア)は,青春を謳歌していた。16歳の少女ジェンマ(ミカエラ・ラマッツォッティ)はパオロを好きになる。が,やがて母親が死に,伯母の住むナポリに引き取られて,パオロと離ればなれになる。その後,三人の男は社会に出るが,まだ安定した暮らしにはほど遠かった。高校の教師を目指していたパオロは,臨時教員という不安定な職しかなかった。映画ジャーナリストを目指すリカルドもなかなか世に出られなかった。弁護士のジュリオは,弱者の支援活動をしていたが,不正な活動をしている裕福な男に気に入られて,その娘と結婚する。やがて,パオロはジェンマと再会するが,別人のようになっていた。

 原題を直訳すると「最も美しい年月」となるが,邦題は観たままであって何の工夫もない。結末からみればパオロとジェンマの純愛物語,ジェンマが16歳のころとは一変しているのでその印象は薄い。簡単に言えば,40年の間に,それぞれにとって,いろいろあったということになる。別離や再会,結婚と離婚,浮き沈みといったある意味で平凡な繰り返しをうまく組み合わせている。イタリアでは大ヒットとのことだが,きっと登場人物の誰かと自分を重ねることができたのだろう。

p-5762508 at 21:38映画 
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