大分毒気に当てられてダメージくらい中ですが、まだ書くよー(笑)
自分の中で整理して消化していかないと、余計に怖いというか、気分が落ち込んでくるのもあるのです。
前回に続き今回も重いです。
ココロが弱ってる人や、犯罪に走りそうな人は読まない方がいいかもです。


 

その時、殺しの手が動く―引き寄せた災、必然の9事件 (新潮文庫)

前回のと同じシリーズですね。…しかしやっぱこのタイトルと副題は…ちょっと…(苦笑)
気になった事件をピックアップして書きます。


 

「日野不倫放火殺人事件」
これは当時もかなりショックを受けたのを覚えています。不倫相手のOLが、男の家に火をつけ、幼い子供二人が焼死した…という事件です。
当時の報道を見聞きしていた印象では、「男が優柔不断すぎる」「不倫相手の女に二度も中絶させている」「悪いのは夫」「妻も不倫相手のOLに対して酷い言葉を投げつけていた」
など、犯人の女性を擁護するような風潮があったと思います。
そしてまた、この事件のあと、夫婦が離婚しなかったこともかなり印象に残っていました。
しかし、詳細な経緯を知ると…どうも最初の印象とは違うのではないか…という気がしてきました。
まず、当初は「逃げ遅れた子供が巻き添えになったのか」と思っていましたが、実際は妻が夫を駅まで送るために、夫婦が車で出かけた隙を狙ってるんですよね。
精神的におかしくなっていたと考えても、してしまったことの重大さには変わりがない。

とにかく、この夫が最悪なんですよ…。優柔不断も女好きもたいがいにしろ!と。
「妻とは別れる」は、不倫する男の常套句かもしれないけど、妻に叱られれば泣いて謝り、「不倫相手とは別れるから」と言う。だけどズルズルと別れずに、不倫相手にも甘い言葉を囁いて肉体関係を重ねる。
妻が二番目の子供を流産した時期に、不倫相手との関係をスタートさせてるのも最低。「妻と違って肉体的にも豊乳で…」とか裁判で言ってるんだから…なんでこんな男にそこまで惚れちゃうんだよっ!!と言いたくなる。
「それが恋なのよ」…といわれれば、そうなンですか…と言うしかないけどさ(苦笑)
妻と子供の留守中に、家に引っ張り込んだりもしている。…そのせいで不倫相手のOLが灯油をまいて放火する時に、間取りが頭に入っていたわけで…。

これでは「悪いのは旦那」「OLも被害者」という風潮になるのも判るけど、決定的だったのは、このOLが、妻に「勝ち誇るように『子供を抱いた時のあの気持ちは…』『あなたは生きている子供を平気でおなかから掻き出すような人なのよ』といわれた」という報道で、OLに対する同情論が決定的になった模様。
私もこれ聞いたけど、「酷いこと言うなあ…」と思ったもんな。

だけど、ずっと沈黙を守っていた妻が言うには、これは事実ではない…と。
実はこの妻とOL、何度も電話などで話し合っているのですよね…。
妻は、「自分も流産の経験があるので、子供を失った悲しみは解る…」というようなことは言ったらしい。でも、この時に「流産した時に医者に目の前で『おなかの子供を引っ掻き出す』と言われてショックだった」とも言っていて(中絶の傷の癒えない相手にこれはデリカシーがないとは思う)
OLは、この発言を、憎い妻に同情されて余計に憎悪がつのった上での曲解と妄想で、上記のようなことを「妻に言われた」…としているのかもしれない。
これはお互いに言った言わないことなので、埒が明かないけれど、このOLの言動を追ってみる限り、妻の言い分の方に理があるような気がする。
こんな状況ではなくても、相手の発言を曲解して、自分の中ですり替えて「こんなふうに言われた」ということって、よくあると思うんだよね。
実際に「言われたこと」ではなくて、「自分の受けた印象」を自分の中で勝手に言葉にして「こんなふうに言われた」と思い込んでしまう…というのはね。

どうやらこのOL、自分に自信があり、プライドが高く、思い通りにならないことはあまり経験してこなかった人のようで、反省が出来ない、謝れないタイプの人のよう。
自分に自信があるから、男が「妻より君の方が魅力的だ。妻と別れて君と一緒になりたい」と言えば信じるし、妻に勝てると思っていたんじゃないかなあ。
だからいつまでたっても妻と別れない男に、妻から奪い取れない自分に、思い通りにならない状況に、自分自身で追い詰められていったのではないかと…。
冷静に考えれば、妻子がありながら浮気をする男なんて信用できないし、さっさと別れて他のいい男捕まえた方がいい…と思いそうなものだけど、「それが恋なのよ」ってことなんですかね…うーむ…。
この人の供述は全て「自分は受身だった」としていて、周りの人が「深入りするな」と諌めても聞かないほど積極的だった自分のことは、無かったことにされている。
「自分は悪くない」「可哀相な私」…という意識が、見え隠れしている。
なんと言うのかな…女には割とよくいるタイプと言うか、思い込みが強く、自己主張が激しく、視野が狭く、自己愛が強い。論点をずらしたまま正当化して、他人を非難できるタイプじゃないかな。

それを知って、妻は「何を言ってもこの人には通じない」と、沈黙することにしたらしいけど、賢明と言っていいの…かな。
夫と別れず、新たに子供を二人もうけた…という話はちょっと吃驚したけれど、なんとなく気持ちは解ります。
「別れてしまったら、何もかもが無駄になってしまう」という感覚。「子供を失くした痛みを共有する相手を失ってしまう」という感覚。
全てを許せるわけではないけれど、二人でこの先の人生を生きていこう…と思う気持ちはね…。私ももしかしたら別れない人かもしれない。
勿論許せずに離婚する人もいるだろうけど。
…ある意味では共犯者意識と言ってもいいのかもしれない。そして罪の意識も、一人で背負うより、二人の方が耐えられる…そう思うのも自然な気がするんです。

加害者のOLの父親が、私財を全て投げ出して、亡くなった子供への贖罪に残りの人生を捧げている姿も書かれていて、胸が痛みます。
このOLも、幸せになりたかっただけなのかもしれないけど…。結果的に多くの人を不幸に追いやってしまっただけなんですよね…。


「三島女子大生焼殺事件」
こんな理不尽なことがあっていいのかと、普通の日常の中に、こんな悲惨なことが起きていいのかと思ってしまう事件です。
通り魔による殺傷事件全般がそうなんだけど、なぜ、その日その場所に、その時間に居合わせなければならなかったのか…と、ほんの少し何かがズレていたら、遭遇せずにいられたのに…と思ってしまう事件。
こんなことが実際に起きるなら、どれだけ警戒してもし足りない…と思ってしまいます。
殺害された女子大生は、居酒屋のバイトの帰りに、たまたま通りがかった犯人に車で拉致され、車内で強姦された後、縛られて生きたまま灯油をかけられて焼き殺されたのです…。
その日のバイト先の居酒屋は暇だから早めにあがろうと思えばあがれたのに、真面目な彼女はトイレの掃除などをして、定時まで働いていた。そして犯人に遭遇してしまった…。
多少男性恐怖症の傾向がある女の子だったようで、強姦された後、恐怖のあまり萎縮して逃げ出すことも考えられなかったのかもしれない…。
犯人は覚せい剤を使用していて、前科もある。どうしてそんな奴が野放しになっているのか…。
そして、殆ど罪の意識も感じていないように見受けられ、生きたまま人を焼き殺すことをなんとも思っていないようで…怖いです。
こんな男にも妻子がある…それも怖くて、やるせないです。


この本は、隣人や家族内での殺人事件の話も多く収録されていて、これまたやるせない気分になります。
隣人とのトラブルが殺人事件に…というケースってたまにあるけど…どうしてそこまで…と思うけど、生活の場所からは逃げられないから、追い詰められていってしまうんだろうなあ…。
それもあって、私は家やマンションを買いたくないなあ…と思ったり…。だって逃げ場がなくなってしまうじゃないですか…。普通逃げる前提で考えないとは思うけど。
場所でも物でも、執着してしまう不自由さが怖いんですよね…変かもしれないけど。


「実娘拷問殺害事件」も辛い事件です。
サンリオの可愛いノートの、左ページに娘の虐待を、右ページに息子への愛情を綴った日記。
どうしてそんなことに…と思わずにはいられない。例え事故のような経緯で身ごもった子供でも、この母親には確実に母性があるように見えるのに。

放埓な母親に育児放棄され、祖父母を実の父母と信じて育ち、真実を知りショックを受けた彼女に「母親のようになっては絶対にダメだ」と繰り返し言う祖母。…それは呪いの言葉になってしまったのか…。

虐待死した女の子は、彼女がピンサロで働いていた時に、「うっかり入れられてしまった名も知らない中年男」の子供。
その後知り合った男との間に出来た男の子が、ノート右側に愛情溢れる育児日記を書かれた子供。
妊娠の経緯から、女の子を憎んでいたのか、「母親のようになってはいけない」という強迫観念が、厳しい躾をエスカレートさせて、拷問のようになっていったのか…。
この二人目の子供の父親がまたロクデナシで…(苦笑)どうしてこう連鎖してしまうんだろうね。
のちの心理鑑定では、この男「小学校3年生程度の知能」だったそうです…ああ…(涙)
常識も、思いやりも、仕事能力も…その程度だったんだろうね。虫を殺して楽しむような年齢の知能だもの…ね。
たった2歳で、親に虐待(というよりは本当に拷問)され続けて命を落とした女の子。いったい何のために生まれてきたのか…。
「人は誰しも生きる意味を持って生まれてくる」と言う人に、訊いてみたい。
「この幼女は、実の母に拷問されて殺されるために生まれてきたのですか?」と。