スジエビの不思議

私の知っているスジエビの紹介を終えました。第2部「生き物雑記帳,時々脱線」を始めました。

 妻が同じ木彫教室に通っている藤田さんの家へ遊びに行き,ベンジャミンの小枝を2~3本もらってきたのは,日記の記録によると,1992年5月29日のことでした。水を入れたコップに挿しておいたら発根しました。その後,鉢植えにして可愛がっているうちに次第に生長し,鉢も何度か大きいものに替えました。
ベンジャミンの若木

 図:ベンジャミンの若木。1998年10月11日撮影。

 この観葉植物は寒さに弱く,12月下旬に義母の葬儀でしばらく家を留守にしたら(当然,ストーブを消して出かけた),6~7割の葉を落としてしまったことがあります。冬場になると元気がなくなるので,毎年,秋に枝を大きく刈り込み,与える水も少なくして冬越しさせていました。それでも次第に大きくなり,背丈が私を追い越し,居間の液晶テレビ(高さ108cm)の後ろからヌッと頭を出して,毎日私達を見つめていました。
生長したベンジャミン

 図:大きく生長したベンジャミン。写真の下側が液晶テレビ。2015年11月29日撮影。

 これ以上大きくならないようにと,肥料は極力控え,鉢の土も何年間も交換していませんでした。が,2016年に,思い付きで鉢の根元にコーヒーの出がらし粉を撒きました。部屋の脱臭をかねて,ほのかなコーヒーの香りを楽しもうと思ったのです。毎日粉を継ぎ足して播き,鉢から溢れるくらいの量になりました。そして,翌2017年の4月初旬に,枝先に小さな果実がなっているのを見つけました。コーヒーの粉が肥料分となり,さらに,前年秋の剪定をサボったことも幸いして結実したのではないかと思われます。しかし,果実は小さいまま1ヶ月も経たないうちに落果してしまいました。そして今年(2018年)の2月には,思いの外たくさんの果実がつきました。果実は昨年より大きく育ちましたが,やはり熟す前に落果してしまいました。北海道の,しかも室内の鉢では熟すのが難しいようです。落ちた果実を半分に切ってみると,未熟なミカンのようでした。でも本当は,果実の中味は未熟な雄花と雌花なのです。ベンジャミンはイチジクの仲間で,果実(正しくは花軸の肥大した「花嚢」)の中に花を咲かせるのです(詳しいことは次にお話しします)。そんな歴史をもちながら,ベンジャミンは我が家に来てから26年目を迎え,今では我が家の主(ぬし)的鉢植えです。
ベンジャミンの青い果実
ベンジャミン果実の断面

 上図:ベンジャミンの青い果実。下図:青い果実の断面。

 ベンジャミンは被子植物門・双子葉植物綱・イラクサ目・クワ科・イチジク属に分類される。学名はFicus benjamina,和名はシダレガジュマル(ガジュマルも同じイチジク属の仲間)。別名はベンジャミンゴムノキで,英名はBenjamin tree。属名の「Ficus」はイチジク(fig)の意味。種名の「benjamina」は,この木の仲間の樹木から得られるbenzoin(ベンゾイン)に由来していると思われる。ベンゾイン(安息香)はガム・ベンジャミンと呼ばれている。ガムとは植物の樹皮から分泌される乳状液のことで,確かにベンジャミンの小枝を切ると白い乳液がにじみ出る。ベンジャミンは人名ではなく,「ジャワから来た香」を意味するアラビア語が変化した(訛った)ものといわれる。
 原産地はインド~東南アジア。常緑の小~高木で,葉は小さく,緑色で光沢がある。大きく成長すると20mの高さ,幹直径50cmに達し,枝から気根を垂らす。また,イチジク形の小さな実(0.8~1.2cm)を付ける。実は黄色から赤色に熟すが,この実は花軸が肥大化したもので,内面に無数の花を付けている(花嚢という)。このような花の付き方を隠頭花序といい,内部には雌花と雄花がある(すなわち,雌雄異花)。我々が目にするイチジクも隠頭花序で,イチジクを「無花果」と書くのはこのことに由来する。
 ベンジャミンは日本でも観葉植物として普通に栽培され,斑入りの品種もある。育てる環境が変わると葉を落とす性質がある。なるべく暖かい場所に置き,水を適度に与える。挿し木や取り木で簡単に増やすことができる。花言葉は「融通のきく仲間」。
ベンジャミンの熟した果実

 図:ベンジャミンの熟した果実(引用:https://hananeko.exblog.jp/6557191/)。


 ベンジャミンやイチジクのように,花嚢の中に花があって表面に現れない場合,いったい受粉はどうなるのでしょうか?この点を調べてみました。
 受粉の役割を果たしているのがガジュマルコバチの1種(学名:Eupristina cyclostigma)です。このコバチの雌(花粉を付けている)はベンジャミンの実(花嚢)の頂上部に開いている小さな穴から内部へ入り込み,雌花のめしべに産卵する時に授粉させます。
 もう少し詳しく説明します。雌しべの頂上部を柱頭といい,ここに花粉が付きます。柱頭の下は細くて長く伸びていて(花柱という),この中を花粉から発芽した花粉管が伸びて行きます。その先は大きく膨らんでおり(子房という),その中に胚珠があります。胚珠の中にある卵細胞と花粉管細胞が合体して(受精して)種ができます。
 コバチは柱頭から産卵管を差し込んで胚珠に産卵するのですが,雌しべには花柱の長いものと短いものがあり,花柱が短い場合には胚珠への産卵がうまく行きます。この場合には孵化した幼虫が虫こぶをつくり,子房組織を食べながら成長します。
 一方,花柱が長い場合には産卵管が胚珠へ到達せず,コバチは産卵を諦めて別のめしべを探すことになります。この場合には,コバチの運んできた花粉が柱頭に付着し,しかも,コバチ幼虫の食害を受けないので,無事に種子ができることになります。1つの熟した雌花には卵円形の小さな種子(1~2mm)が1個できます。
 孵化したコバチ幼虫は約1ヶ月で蛹をへて成虫へと羽化し,雄と交尾します。雄は翅をもたず,雌と交尾後も花嚢の中に留まり,短い一生を終えます。交尾を終えた雌は,ちょうどその頃に成熟した雄花から花粉を受け取り,雄が花嚢に開けてくれた通路を通って外界へと飛び立ち,また別の花嚢を見つけて中へ潜り込み,産卵を行います。
 ベンジャミンはコバチによって実の食害を受けますが,一方で受粉を助けてもらうというということで,お互いに利益を受け合っています。したがって,ベンジャミンコバチは「寄生バチ」(宿主に害を与えるのみ)とは区別され,「共生バチ」と呼ばれています。
イチジクコバチの1種

 図:ベンジャミンコバチの仲間であるイチジクコバチの1種(引用:https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20120406/304846/)。

 ベンジャミンが雌雄異花なのに対し,イチジクやイヌビワは雌雄異株(雌花のみが咲く木と雄花のみが咲く木に別れている)ですが,受粉に共生バチの助けを借りる点では共通しています。因みに,日本で栽培されているイチジクは雌株のみで雄株はありません。単為結実性の品種で,種子はできませんが,果実は熟します。その果実は,ねっとりしたなかにプチプチした触感があり,程よい甘みで,私の大好物なのですが,旭川のスーパーではほとんど見かけることがありません。この物流時代に,何故でしょうか。残念です。
イチジクの実(断面)

 図:イチジクの実(断面)。

 生物学教室のM教授がイタリアの国際会議に出席した際に(1990年10月),ローマ国立博物館の中庭に生えていたイトスギから松かさ(=松ぼっくり,正式には球果または毬果)を1個取り,記念に日本へ持ち帰りました。中から出てきた種子を苗床に播いたらたくさん発芽し,その中の1本を私に分けてくれました。1991年のことでした。
ローマ国立博物館中庭

 図:ローマ国立博物館の中庭(引用:https://nitari-movies.com/rome-archeo1)。

 由緒あるイトスギなので大事に育てていましたが,だんだん大きくなり,頂上部をカットして背丈が伸びすぎないようにしました。発芽後8年目の早春(1998年3月27日),初めて小さく細長い雄花をたくさん着けました。木を軽く揺すったら,白い花粉を霧のように飛ばしました。しかし,松かさになる雌花はまだ着けていませんでした。その後も順調に育ち,秋・春に家の内外に出し入れするのにも一苦労するほどの大きさになりました。
雌花


松かさと雄花
 上図:イトスギの雌花(引用:https://blog.goo.ne.jp/koimo24/e/074f520399a10b2070d191f0a318bb96)。下図:イトスギの枯れた雄花(白い矢印)と松かさ(鱗片はまだ固く閉じたまま)。

 発芽後17年目に当たる2008年の早春,雄花と雌花がたくさんついているのに気付きました。自家受粉させてみたら,意外にうまく結実して松かさが何個も出来ました(7月18日に写真撮影)。翌2009年にも花が咲き,自家受粉させたら次の松かさが育ちました。前の年に出来た松かさは1年たったのにまだ青いままでした。2011年,3年目にして最初の松かさは薄茶色に変化しましたが,その鱗片はまだぴったり閉じたままでした。いったい何時になったら松かさが開いて実が落ちるのでしょうか。
小さな松かさ
樹上の松かさ

 上図:樹上部付近に着いた小さな松かさ。下図:1年目の松かさ(左)と3年目の松かさ(右)。

 松かさから種を取るのを楽しみにしていましたが,いろいろ訳があって,結局,この年の6月6日に鉢植えを廃棄処分にする決心をしました。
 (1) 春先に妻の空咳がなかなか抜けず,もしかしたら鉢植えの土のカビが原因のアレルギーかも知れない(鉢に給水するとカビの臭いがする)。(2) 昨年11月,母が黄泉の国へ旅立つのを見送り,身軽になったので少しあちこち旅行しようかと思っている。が,長期の旅行となれば,鉢植えの水やりの心配をしなければならない。また,冬期の旅行で暖房が止まれば,鉢植えの多くはすぐに傷んでしまう。(3) 幸福の木,イトスギ,アロエがどれも大きく育ち過ぎて,春と秋に鉢を室内外に出し入れするのがもう重くて限界である。(4) 人生の仕舞い支度の一環で,身辺整理を少しずつはじめようと思う。というのが理由です。
 処分した鉢植えはイトスギ,ドラセナ・コンシンナ,ドラセナ・フラグランス(幸福の木),セイロンベンケイソウ,サクララン(ホヤ),ガジュマルの6鉢です。今まで長年楽しませてもらったことに感謝しつつ,鉈をふるって植物を小さく切り刻み,庭の土へと帰しました。作業にけっこう時間がかかり,終了が夕方になってしまいました。
 イトスギを処分した時に,まだ鱗片を閉じたままだった球果を切り取り,庭の物置の上で乾燥させておいたら,松かさが開いて種(自家受粉した種)がたくさんこぼれ落ちていました。来年になったら播種してみようと思い,大切に保管しました。しかし,1年後にはそのことをすっかり忘れ,このフォトエッセイを書き始めてから慌てて種を探してみましたが,何処へ片付けたのか,見つかりません。イトスギの苗をくれたM名誉教授も3年前に逝去され,もう残っているのは思い出の写真だけです。
乾燥した松かさ

 図:乾燥した松かさ。

 余談ですが,「イトスギ」と言って私がまず思い浮かべるのはファン・ゴッホの絵画に登場するイトスギです。高校の頃からゴッホの絵が大好きで,大学時代に買った彼の画集を今も大切に持っています。彼の絵の中で,燃え上がる炎のように大空へ巻き上がりそそり立つイトスギの姿は,ゴッホのエネルギーを吸い取ったかのように生命感に溢れており,特に私の好きなモチーフです。イトスギはゴッホ自身も執着していた題材で,彼の手紙の中に「イトスギのことがいつも僕の心を占めている」との文章があります。精神を病み,南仏のサン=レミ精神病院に入院していた頃,特にイトスギの描写を好み,「イトスギと星の見える道」,「星月夜」,「イトスギのある小麦畑」,「二本のイトスギ」,「二人の女のいるイトスギ」,「ガッシェ博士の庭」,「イトスギの間の花盛りの果樹園」など多数のイトスギ作品を残しました。そして間もなく,37歳で彼は自殺してしまいました。
 イトスギは死や絶望の象徴とされています。晩年のゴッホが愛したイトスギ,それはゴッホが死に取り憑かれていた証ではないでしょうか。
ゴッホ絵「イトスギと星の見える道」

 図:ゴッホの絵「イトスギと星の見える道」(引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B3%B8%E6%9D%89%E3%81%A8%E6%98%9F%E3%81%AE%E8%A6%8B%E3%81%88%E3%82%8B%E9%81%93)。

 ホソイトスギ(イタリアイトスギ):ローマ国立博物館の中庭に生えていたイトスギの子孫なので,我が家のイトスギはおそらくホソイトスギだと思われる。維管束植物・球果植物門(かっては裸子植物と呼ばれていた)・マツ綱・マツ目・ヒノキ科・イトスギ属に分類され,学名はCupressus sempervirens。種小名の「sempervirens」はラテン語で「evergreen」(常緑・不朽の意味)に由来している。英名をcypressという。
 球果をつける常緑針葉樹で,高さ35mにも達する。千年以上の寿命をもつ長寿樹である。まさしくevergreenだ。球果は最初緑で,約2年で茶色に成熟する。雌雄同株で雌雄異花。雄花は細長く(3~5mm),冬期の終わり頃に花粉を飛ばす。雌花も白く,小さい。街路樹や公園樹として植栽される。木材は腐敗しにくいので,建築材,彫刻,棺桶などの材料として幅広く利用されている。
 この植物は古代エジプトや古代ローマでは神聖な樹として崇拝されていた。地中海(トルコ南部)に浮かぶ「キプロス島」の名前はイトスギの英名cypressに由来するという。一方で,この植物は「死」の象徴とされ,墓地によく植えられる。イエス・キリストが磔(はりつけ)にされた十字架はこの木で作られていたとの伝説がある。
 花言葉は死,哀悼,絶望。その由来はギリシャ神話にある。アポローンの寵愛を受けた美少年キュパリッソス(Cyparissus)が住むケオース島には,金色に輝く角をもった雄鹿がおり,人々に大切にされていた。キュッパリッソスはこの雄鹿と仲がよかったが,ある時,誤って投槍で鹿を殺してしまった。彼は深く悲しみ,神々へ永遠に嘆き悲しむことを願い出た。神々はその願いをくみ取って,彼をイトスギ(悲しみの象徴)に変身させたという。イトスギの属名「Cupressus」は彼の名に因んでいる。


 この鉢植えもシマサンゴアナナスと同様に,何時何処で手に入れたものかまったく記憶にありません。たぶん,近所か街の園芸店で買い求めた鉢だったろうと思います。何年か育てているうちに花が咲き,「サンセベリアが開花するとは珍しい」と写真を撮りました。その写真ネガの前のコマは,娘が緑が丘中学校に入学したときに玄関前で撮った写真でしたから,開花したのは1988年4月ということになります。そして,この鉢が何時我が家からいなくなったかもとんと不明です。
 私が記憶している我が家の鉢植えで,写真も日記の記述にも残っていないものには,ハナキリン,ポトス,アイビー,ゴムノキ,オリヅルラン,アボカド,シェフレラ(カポック),パイナップルなどがあります。いずれの植物も,どこから購入してどのくらいの間我が家にあったのか不明です。ハナキリンとポトスは家族写真の背景としてわずかに顔を覗かせているだけです。アボカドは,実を食べた後の種を鉢の土に埋めておいたら芽を出し,かなりの大きさまで育ったことを憶えています。パイナップルも実の上の葉を切り落として鉢に埋めておいたら,発根してかなりの大きさまで育ちましたが,開花・結実までは至りませんでした。
 サンセベリアよ!そんな訳なので,開花の写真を残してあげたということだけで勘弁しておくれ。
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 図:開花したサンセベリア(左)と花の拡大写真(右)。

 サンセベリアは被子植物門・単子葉植物綱・キジカクシ目・キジカクシ科・スズラン亜科・チトセラン属に分類され,学名はSansevieria trifasciataという。属名の「Sansevieria」は,イタリアのナポリ郊外にあるサンセベロ(San Severo)に由来し,この地に生まれた王子を記念して名付けられたものだという。また,種小名の「trifasciata」は,3つ(tri-)の縞模様(-fasciata)をもつという意味のラテン語である。確かに,サンセベリアの葉の外側は黄緑色,内側は淡緑色で,濃緑色の横縞があり,3つの縞模様になっている。
 この植物の属名「Sansevieria」から分かるように,カタカナ表記は「サンセベリア」としなければならないのだが,「サンスベリア」と誤用され,こちらの名前の方が一般的になってしまった。和名は「アツバチトセラン(厚葉千歳蘭)」というのだが,その名前の由来はよく分からない。葉に横縞模様があることから「虎の尾蘭」とも呼ばれる。英名はいろいろある。「snake plant」(蛇草)は,葉が長くて横縞模様があるので,横に倒れていると蛇を連想させることから付いた名前だ。「mother-in-law's tongue」(姑の舌)は,葉が剣のようで,先が尖っていることから,口うるさい尖った小言を言う姑に例えたもの。「Saint George's sword」(聖ジョージの剣)も,葉が剣のように見えることから付いた名前だ。聖ジョージはキリスト教の聖人で,ドラゴン退治の伝説で有名なゲオルギオスのこと。この名を英語読みするとジョージとなる。
 原産地は西アフリカのナイジェリアやコンゴ民主共和国の乾燥地帯で,タンザニアやエチオピアなどにも分布する。常緑の多年草で,茎は地下を横に這い,葉だけを地上に出す。葉は直立して剣状となる。葉の間から花茎が出て,目立たない小さな花を咲かせる。花の色は白~黄白色。花被(注)も雄しべも6個。花期は8~10月頃。花をつける細い茎の基部には蜜腺があり,透明で小さな蜜玉を分泌する。
 日本には明治末期に渡来した。斑入りなどの園芸品種が多い。乾燥に強く,日照不足にも耐えるが,低温と過湿には弱く,水をやりすぎると根腐れを起こす。

 (注) 花被とは,花びらと萼(がく)の区別がつかない場合にもちいられる用語。

 我が家の鉢植え植物についてはあれこれ思い出深いものが多いのですが,シマサンゴ(縞珊瑚)アナナスについては,入手についてはっきりした記憶がありません。誰かのプレゼントとか,旅行中に購入したということではなかったと思います。たぶん,その辺の店で何となく気に入って買い求めた鉢植えではなかったでしょうか。
 ネガ写真の記録をみると,1983年2月に開花しており,翌1984年の4月にも開花していました。まだ職場の職員宿舎に住んでいた頃の写真です。
シマサンゴアナナスの鉢

 図:開花したシマサンゴアナナスの鉢植え(1983年2月撮影)。

 一度開花した株は二度と開花せずに枯れてしまうということですし,また,親株の根元から出た子株を分離したものでは,2~3年経てから開花するといいます。したがって,開花した二つ目の鉢は最初の鉢から株分けしたものではないはずです。その辺の事情は憶えていませんが,ピンク色の花(正確には花苞)が美しく,ドライフラワーのように何ヶ月も枯れずに残っていたことだけは鮮明に記憶しています。1985年にマイホームを建築して引っ越しましたが,それ以後の写真にはシマサンゴアナナスが登場しません。もしかしたら引っ越しのときに処分してしまったのかもしれません。

 (注) 苞(ほう)とは,花の基部にあって,蕾だった時にそれを包んでいた葉のことです。苞と同様に花の基部には萼(がく)という構造もありますが,こちらは花弁(花びら)を支えるためのものです。植物の種類によっては花弁,苞,萼の区別が難しいものもあります。シマサンゴアナナスの苞は桃色をしており,あたかも花弁のように見えるので花苞といいます。本当の花は花苞よりもずっと小さく,青い色をしています。
シマサンゴアナナスの花

 図:シマサンゴアナナスの花(引用:https://greensnap.jp/post/2174540)。

 シマサンゴアナナスは,被子植物門・単子葉植物綱・イネ目・パイナップル科・サンゴアナナス属に分類され,学名はAechmea fasciata。種小名の「fasciata」は「縞がある」という意味で,確かに葉には白い横縞模様がある。和名も模様の特徴からシマサンゴアナナスという。その花はサンゴのようには見えないが,同属のサンゴアナナス(学名Aechmea fulgens)では子房,萼片,花柄が真っ赤になって珊瑚玉のように見え,これが属名の由来になっている。
サンゴアナナス

 図:サンゴアナナス(引用:https://kazu9872.ti-da.net/e8916459.html)。

 シマサンゴアナナスの英名はsilver vaseあるいはurn plant。vaseもurnも壺・花瓶という意味で,アナナスを真上から見たとき,中心部に水が溜まっている様子が壺を想像させるところから付いた名前である。
 常緑の多年草で,原産地は南米アマゾン川流域。葉は長さ50~90cm,幅6cmほどで,硬い。葉の縁には鋭い鋸歯(棘)がある。葉に見られる白い横縞模様は表面にある粉状構造で,鱗毛という。葉はロゼット状に集まって葉筒を形成し,中心部に溜まった雨水を体内に吸収する仕組みになっている。葉筒の中心部から花茎を伸ばし,松かさに似た形の豪華な“花”を咲かせる。しかし,上にも述べたように,この“花”は花苞で,本当の花は花苞のあちこちから顔を覗かせている淡青~淡紫色の小さい豆のような部分で,数日の寿命である。一方,桃色の花苞はその美しい形状を数ヶ月にもわたって保つ。花期は主に7~8月であるが,鉢植えにした場合は不定期に開花する。暑さには強いが,寒さに弱い。明るめの日陰を好むので,室内で育てるのに適している。


 我が家には八重咲き(一代目)と一重咲き(二代目)という2種類のハイビスカスの鉢植えがありました。花の色はいずれもオーソドックスな赤桃色でした。
 一代目は,妻が通っていた木彫教室の仲間からもらったものだったと思うのですが,妻に確認したら「憶えていない」ということでした。しかし,1982年に撮った妻の写真の背景に,鉢に挿し木したハイビスカスの小枝が写っていましたので,この年にもらったことは間違いありません。2年後(1984年4月と6月)には大きく育って開花しました。
ハイビスカスと私 (1)

 図:一代目ハイビスカスと私(1984年6月に撮影)。

 その後,毎年たくさんの花を豪華に咲かせてくれました。咲き終えた花の花びらを乾燥させ,ハーブティーとしても活用しました。赤桃色の色合いが美しく,ほのかに蜜の香りがする美味しいティーでした。しかし,何年か後に,子供達がふざけて揉み合ったときにハイビスカスの鉢植え上に倒れ込み,二叉の太い幹が根元まで縦に裂けてしまい,やむを得ず廃棄処分にしました(何年の出来事だったかは日記を見ても不明)。
 注) 通常,ハイビスカス・ティーとして利用されるのは,この記事で紹介しているハイビスカスと同じアオイ科・フヨウ属に分類されるローゼル(Roselle,学名は Hibiscus sabdariffa)です。この植物の肥大した萼と苞を乾燥してお茶に用い,ローズヒップ(バラの果実)とブレンドして飲まれることもあります。
ローゼル

 図:ローゼルの花と紅紫色の萼(引用:http://www.yasashi.info/ro_00007.htm

 二代目のハイビスカスは,同じ職場で隣室のU先生からいただきました。先生の研究室の大部屋にあったハイビスカスの徒長枝を切り落としたものです。自宅へ持ち帰って鉢植えにしたらうまく根付き,順調に育って立派な花を咲かせました(1995年3月に写真撮影)。その後,枝を切りつめて私の職場の部屋へ運び込み,開花を楽しんでいました。しかし,職場では鉢の土の交換もままならず,次第に勢いがなくなってきたので,2002年に家へ持ち帰って大きな鉢に植え替えました。これで元気を取り戻し,我が家の居間で再び長い間咲き続けてくれました。
ハイビスカスと私 (2)

 図:二代目ハイビスカスと私(1995年3月に撮影)。

 ハイビスカスは,被子植物門・双子葉植物綱・ビワモドキ亜綱・アオイ目・アオイ科・フヨウ属に分類され,学名をHibiscus rosa-sinensisという。種小名の「rosa-sinensis」は「中国のバラ」という意味。和名はブッソウゲ(仏桑花または仏桑華と書く)で,沖縄では赤花とも呼ばれている。英名をChinese hibiscusまたはChina roseという。インドのある地方ではshoeblack plant(靴磨き植物)と呼ばれ,その葉が靴磨きに使われるという。「ハイビスカス」は,広義にはフヨウ属に含まれる植物の総称だが,狭義にはフヨウ属の中で,熱帯・亜熱帯性の種のいくつかを特別に呼ぶ。その代表的な種がブッソウゲで,南国というイメージが強い。変種が多く,8,000種以上の園芸品種が知られている。
 原産地については中国南部という説やインド洋諸島という説があるが,詳細は不明。日本へは琉球経由で慶長年間(1610年頃)に渡来し,薩摩藩主の島津家久が徳川家康に献上したという記録がある。マレーシアでは通年で開花し,国花に指定されている。
 高さ2~5mの熱帯性常緑低木。日本では南部を除き,戸外で越冬できない。沖縄では雑木のごとく当たり前に見られる。戸外では夏~秋に開花するが,温室では周年花を咲かせる。花びらは5枚で,花の直径は小さいもので5cm,大きいものでは20cmにも及ぶ。花びらはラッパ状あるいは杯状に開き,花柱は花の中央から長く伸びている。その先端には5つに枝分かれしたアンテナ状の雌しべがある。その下方には筒状に合体した,たくさんの雄しべがあり,それらの先には小さなマメ状の葯(花粉袋)がついている。花は下向き,横向き,上向きと種によって色々で,花の色も白,桃色,紅色,黄色,橙色など多様である。普通,不稔性で結実しないため,繁殖は挿し木などで行う。
 花は食べることができ,太平洋諸島ではサラダに入れるという。花びらを乾燥させてお茶にもできる(これは私も試した)。中国では花のエキスを化粧品に入れたりするという(皮膚を紫外線から守る作用があるらしい)。
ハイビスカスの花

 図:ハイビスカスの花(北大植物園にて)。

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