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Masterpiece Review

1 Mar

THE JOSHUA TREE

josyuatree『THE JOSHUA TREE』
U2

9.8 / 9.6

圧倒的なメロディの美しさと豊かなボーカリゼーション。
シンプルさと複雑さを併せ持ち、神性を帯びたサウンド。
鼻血が吹き出るほどの珠玉の大名盤。

ということで、最近、高校時代の私的名盤を聴きなおすのがブームです。
これまた久しぶりに聴いてみた大傑作。

ほんと素晴らしいよね、この頃のU2って。
最近じゃもっぱら政治活動家色の強いボノ様ですが、ボーカルとしてのその実力も折紙付き。
それを証明し、80年代において最も偉大なカリスマ性を示すと共に、現在の彼の地位を担保する作品となったのがコレ。
ちなみにプロデュースはブライアン・イーノ

圧倒的にエモーショナルな歌声は、古今東西比類ない孤高の輝きと力強さを湛え、振れ幅の大きい美麗なメロディを紡いでいく。
ディレイやリバーブを多用した複数本のギターサウンドが生み出す美しい響きは本作を強く印象付けると共に、圧倒的な神秘性を醸し出している。
太く力強いベースラインと、トライバルなリズムも組み込んだドラムによるリズム隊がまたスゲー良い仕事してますね。
このメロディとサウンドの調和がまた絶妙すぎて鼻血出そうです。

冒頭三曲はU2を代表するような楽曲続き。
パイプオルガンの神聖な響きで幕を開け、ディレイのかかったギターサウンドがフェイドインしてくるM-1“Where the Streets Have No Name”。シンプルながら力強いベースやパーカッション風のドラムが加わり、至上のアンサンブルを生み出す名曲!!で、実はBUMP PF CHICKENの元ネタにもなってる、ってことに今気付いたり。
余裕のあるリズムと雄大な世界を広げるようなメロディが印象的なM-2“I Still Haven't Found What I'm Looking For”
M-3“With or Without You”なんてもうとにかくタマラン!!!!神か!!
ちなみに、僕がU2を知ったきっかけもこの曲。何かのドラマの主題歌に使われてて。

その後も、重厚なベースを軸に不穏な圧力を感じさせるM-4“Bullet the Blue Sky”や、ブルージーなスライドギターから幕を開け、ゆったりと穏やかなラインが沁みるM-5“Running to Stand Still”、ブルースハープの響きと三拍子のリズムが心地良くポップなM-8“Trip Through Your Wires”などがあり。
M-7“In God's Country”では、構造自体は恐ろしくシンプルなのに、妙にかっこいいサウンドを響かせる!!
柔らかなストリングスや、パーカッションのような音色を奏でるミュートしたリズムギターが印象的なM-9“One Tree Hill”
どこか鬼気迫るような逼迫感を感じさせるM-10“Exit”も圧巻。
音量絞り目ながら密度の濃いサウンドを響かせるM-11“Mothers of the Disappeared”

と、徹頭徹尾、最高の楽曲が詰め込まれた奇跡のような一枚。

これリアルタイムで聴いてたら、U2に人生捧げてただろうな・・・、と改めて思いました。
11 Feb

CURTIS

curtis『CURTIS』
Curtis Mayfield

9.5 / 9.3

僕はMarvin GayeよりCurtis Mayfieldの方が好きです。
本作はTHE IMPRESSIONS脱退後の1970年にリリースされた、カーティスの記念すべき1stアルバム。
ほんでもって傑作。

僕個人のことですが、浪人〜大学二回生の前半くらいまでの時期に、ソウル、ファンク、ブルースあたりをよく聴いてて、中でもOTIS REDDINGとカーティスが特に好きでした。

この作品は久しぶりに聴いたんだけど、相変わらずスゲー良いアルバムたなぁ、と感銘。
カーティスの高目の歌声や、ブラスやストリングスなどなどの色鮮やかな楽隊が描くポップサウンドがとても素晴らしいです。
マーヴィン・ゲイのようなセクシーさには欠けるけれど、アップリフティングで情感溢れる豊かな音像は他のソウルシンガーにはない心地良さを感じさせてくれます。
最高にかっこいいっすね。

で、まぁやっぱり本作のハイライトと言えば、M-5“MOVE ON UP”に他ならないわけで。
この曲は多分、誰もが一度は聴いたことのある名曲なんですが。
幕開け一撃響くブラスサウンドに引き込まれ、高速で刻まれるパーカッションのリズムがまた最高にクールでテンション上がります。
超名曲!!

↓この曲ね↓


で、この曲を筆頭に、他の楽曲もとてもレベルが高くて最高にファンキーなソウルミュージックを聞かせてくれる作品です。
Junior SeniorSonny Jが越えられない壁がここにある、と言っても過言ではないかも。
10 Jan

52ND STREET

billyjoel『ニューヨーク52番街』
BILLY JOEL

10.0 / 9.6

SHM-CDに対抗してソニーミュージックが独自に開発した新素材CD「Blu-spec CD」
その第一弾として昨年末、60タイトルが一斉リリースされたのは周知のとおり。
ということで、その中の一枚、『ニューヨーク52番街』を買ってみました。

とりあえず、予想以上に音が良いです。
音がクリアで丸い!!
SHM-CDより良いかも。

で、まぁ「Blu-spec CD」の話はさて置き。


『ニューヨーク52番街』!!

これ、僕が音楽にドップリ浸かる契機にとなった作品なのです。
高校一年生のとき、友達が聴いてたMDの中に“HONESTY”が入ってて、それを聴いた瞬間、全身に衝撃が走ったのを今だ鮮明に覚えてます。
ほんで、その日の学校の帰りしに近所のツタヤでこの作品をレンタルし、そのまま音楽の世界に没入していきましたとさ。

そういうわけで、歴史的に非常に素晴らしい作品であると同時に、僕にとっては非常に重要な作品でもあるのです。
もう30年も前の作品になるんすね。

相変わらず素晴らしい作品です。
Blu-spec化バンザイ。
29 Nov

LET IT BLEED

letitbleed『LET IT BLEED』
THE ROLLING STONES

9.9 / 10.0

ローリングストーンズの最高傑作とも呼び声高い1969年の作品。
個人的にもストーンズの中で一番好きな作品で、初めて聴いた時にはかなりの衝撃を受けました。

彼らの根幹であるブルース、R&Bを軸に、決して古臭くない真正ロックンロールを鳴らした作品であり、決して聴き手を選ばない普遍的な魅力を湛える最高品質の音楽が詰まった名盤。
余談ですが、くるりの岸田さんも絶賛の逸品です。

全体的にかなりルーズなサウンド。
気張りや気取りは無く、純粋に音楽を楽しんで鳴らしているような自由さを感じさせる。
一方でギターやベースのアレンジは至極有機的であり、そのプレイヤビリティを遺憾無く発揮している。

名曲と誉れ高いM-1“Gimme Shelter”で幕を開ける本作。
夜の荒野で焚き火を囲みながら一日の終わりを告げる侘しさと明日への楽観的な期待が入り混じったように歌うカントリーソングM-2“Love In Vain”
そして朝を迎え、陽気に田舎街を進むようなM-3“Country Honk”へと続く。
M-4“Live With Me”では一転、ピアノやサックスを取り込んだ古き良きポジティブなロックンロールサウンドを鳴らす。
M-5“Let It Bleed”のシンプルなアコースティックギターとウッドベースとピアノとドラムのアンサンブルがまた心地良く、1:58地点のドラムのミスも愛着が湧いて乙。
単調ながら徐々に加速するブルージートラックM-6“Midnight Rambler”もかっこいいし、カントリー調のM-7“You Got The Silver”も柔らかく心地良い響きを醸し出していて素晴らしい。
R&Bをしっかりと踏まえたM-8“Monkey Man”もかっこよし。
そしてラストはゴスペル調のコーラスから始まり、祝祭的な高揚をもたらし、後にPRIMAL SCREAMの名曲“MOVIN'ON UP”の元ネタともなるM-9“You Can't Always Get What You Want”

ブルース、R&B、カントリーやフォークなどのアメリカ音楽をしっかりと消化した上でその質を高めた歴史的名盤。
なおかつ、普段ならそういったアメリカントラッドに退屈さを感じてしまう人でも素直に良いと感じられる作品だと思う。

そしてそのサウンドはリリースから20年を経た後、THE STONE ROSESPRIMAL SCREAMへと継承され、今だその息吹は途絶えることなく脈動し続けている。

最高の一枚。
まだTHE ROLLING STONESの曲を聴いたことが無いって人はここから入ってみてはいかがでしょう。

(M-1,4,5,9)
28 Nov

I SHOULD COCO

supergrass1『I SHOULD COCO』
SUPERGRASS

10.0 / 8.7

1995年リリース、SUPERGRASSのデビュー盤。
全てのロックバンドのベーシストが参照すべき金字塔!!!!

基本的には疾走感溢れるギターロック。
ハイレベルなリズム隊に支えられた、軸のぶれないサウンド。
古き良きイギリスらしい美メロディを持ち、ファンキーでファニーでありながらも、真っ向勝負の潔さが気持ちいい!!

ほんで、とにかくベースが凄い!!
ハイテンポのギターポップ系では得てして埋もれがちになってしまうベースが、本作ではしっかりとその存在感を示しサウンドの中核を担っている。
決して奇を衒うことなく、シンプルでありながら絶妙に気の効いたリフを差し込む、最高のベースライン!!
神です。

もちろん、手数多めの正確かつパワフルなドラミングや、総体としてのアレンジも絶妙。
たまに入る鍵盤やパーカッションも非常に効果的に使われている。

つんのめるようにぶっ飛ばす、ファンキーなロックチューンM-1“I'd Like to Know”からいきなり全開!!
続くM-2“Caught by the Fuzz”、M-3“Mansize Rooster”でもそのアップライドなサウンドにテンション上昇必至。
メロディM-4“Alright”
本作中最も重いサウンド響かせるM-5“Lose It”がまたかっこよく、パーカッションとドライブ感溢れるベースラインが光るM-6“Lenny”もクール!!
ポップ&キャッチー、かつギターソロもまたかっこいいM-7“Strange Ones”
鐘の音と、しっとりとしたピアノサウンドから始まるも一気に加速、アップライドなキラーチューンへと変貌するM-8“Sitting up Straight”や、後にTHE KOOKSへと継承されるようなアコギ主体のシャープなサウンドM-9“She's So Loose”もまた最高!
早回し曲M-10“We're Not Supposed To”を通過した後に紡がれる、THE BEATLESの影響を感じさせるブルージーなロックソングM-11“Time”やM-12“Sofa (Of My Lethargy)”もまた素晴らしい。
そして締めはメロウな弾き語りナンバーM-13“Time To Go”

と、全ての曲が最高にかっこよく、美しく、楽しくて、完璧。
特に前半はアップリフティングで、勢いに飲み込まれるようなサウンドが至福をそそる。
また、後半で響く美しいメロディとアコースティックギター主体のサウンドは、リリースから10年以上を経た現在、THE KOOKSへと引き継がれ、再び僕を興奮の海の中に突き落とした。

絶対に日本では生まれ得ない、独特のグルーヴを持ったアップリフティングサウンド!!
そして、全てのベーシストが聴くべき金字塔。
27 Nov

relationship of command

atdi『relationship of command』
at the drive-in

10.0 / 9.8

2000年リリース作品。
ハイテンション、21世紀最後にして最強のハードコアサウンド!!
最高!!
神盤!!!!!!!!!!

疾走感溢れるソリッドでアグレッシブかつ先鋭的なギターサウンド。
矢継ぎ早に繰り出される言葉の連打。
メリハリのついた構成と、シンプルかつキャッチーなメロディ。
バンドとしての圧倒的な肉体感。

どこを取っても最高の逸品!!
これを聴いてテンション上がらずにいられるわけなし!!

本作リリースの翌2001年1月、彼らは来日公演を行う。
しかし!
当時高校三年生だった僕は見せ掛け上一応の受験生であり、公演日がセンター試験の三日前くらいだったがゆえに彼らのライブを断念せざるを得なかった涙・・・。
そしてATDIはその直後に解散・・・。
後悔先に立たずとはまさにこのこと。

2001年当時、同様に心酔しながら未見であったRAGE AGAINST THE MACHINEと併せて、彼らの雄姿を焼き付けることが出来なかったことは、僕の音楽履歴における最大の後悔となっています。
(RATMは今年観れたけどね。)

そして、解散後にはMARS VOLTASPARTAという二つのグループに別れる。
その攻撃的なサウンドは、リズム隊が中心となって結成されたSPARTAへと継承される。
他方、その先鋭的な感性はフロントマン二人によるMARS VOLTAが引き継ぐこととなった。

20世紀を代表する屈指の名盤。
現在の日本ロックシーンを見渡すと、彼らの影響を強く受けたバンドも多く見受けられる。

リリースから8年経つ現在においてもそのエッジの鋭さは衰えず。
むしろ、この8年間でこれ以上の鋭さを持った作品があったのか、と思い起こしてみても見当たらない。
まさに神盤!!!!

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19 Nov

STEREO TYPE A

stereotypea『STEREO TYPE A』
チボマット

10.0 / 8.6

本田ゆかと羽鳥美保の二人によるユニット、チボマットの2nd。
1999年リリース、日本発世界基準のストレンジポップミュージック!

ポップでラブリーでゆったりと柔らかく、心地好くも変テコで。
ポップもジャズもファンクもロックもヒップホップも取り込んで、多彩なアイデアと女性的な感触でまとめあげた、珠玉のオリジナルミュージック。

メロディは至極美しく流麗。
非ネイティブの英語ボーカルが拙い感じなのだけど、それが声質の美しくも可愛らしい感触と調和し、心地好く響く。
個人的に、羽鳥美保という歌い手こそ日本で最も優れたシンガーだと思ってしまうほど、その歌声は柔らかく心を包み込む。

元々サンプリング主体の楽曲を作っていた二人だが、本作では新たにショーン・レノンとティモ・エリスというパートナーを引き入れ、純オリジナルな楽曲を作り上げている。
サンプラーやシーケンサー、ピアノ、シンセ、オルガンなどの鍵盤機材を多彩に使い分け、生ドラムやパーカッション、ギター、ベースなどを合わせながら自由に音の世界を構築していく。
その音像は、メンバーとして参加しているショーン・レノンの楽曲とも近しい感触を覚えるが、その質の高さは一枚も二枚も上と言える。


全ての楽曲が多彩でユーモアに溢れ、至極心地好い音を鳴らしている。
中でもM-5“MOONCHILD”は海のように深い母性を感じさせ、涙が出そうなほど優しく美しい。
私的オールタイムベストであり、この楽曲以上に心地好い楽曲は無いんじゃないかと思ってます。
また、ホーン、アコースティックギター、パーカッション、ベースその他の楽器を有機的に用い、南国の穏やかな夕暮れ時を想起させるような柔らかな楽曲M-14“STONE”も素晴らしいです。


高校三年生の時にひたすら聴きまり、今だに聴き飽きない珠玉の超名盤。
24 Oct

BANDWAGONESQUE

teenage『BANDWAGONESQUE』
Teenage Fanclub

10.0 / 9.9

BEN FOLDS FIVEの1stと並んで僕の音楽の原点となった一枚。
音楽雑誌を読んでて思い出し、久々に聴いてみました。
伝説のビンテージ、1991年を彩る珠玉の一つ。

これまた12月にSHM-CD化されるようなので買います。

全曲でハートブレイクショット打ち込まれまくり。
これほどまでにキャッチーかつメロウな美メロが紡がれ続ける作品、他に無いでしょう。
メロディだけを評価するならば、かの名盤『PET SOUNDS』やTHE BEATLESのどの作品にも引けをとらない一枚。

陽性のオーバードライブ〜ファズギター×3。
芯太目のメロディと絡み合うようなベースライン。
かすかにルーズさを残しながらも正確なドラミング。
美しくも憂いを湛えたボーカリゼーションの醸す影。
ほんの少しサイケデリアとグラムの香りを入れ、USオルタナとUKシューゲイザー群の間に位置するようなサウンドスケープ。
一聴したところではシンプルさを感じさせるが、よくよく聴けば緻密に構築された音の世界が現れる。

間違いなく生涯通して聴き続ける一枚っす!!


なんと言っても、史上に残る名曲M-1“The Concept”!!
もうね、一曲目でノックアウトっすよ。完璧。
「I didn't want to hurt you, oh yeah.」て、切ない!!
感傷的なギターソロも乙。
柔らかい歌声やコーラス、動きの多いベースライン、優しく弾かれる二本のディストーションギターにストリングスが絡むゆったりとしたメロウナンバーM-3“December”もまた白眉!
後のFountains Of Wayneらへんに引き継がれるサウンドと美麗なメロディ&コーラスが最高なM-4“What You Do To Me”やM-5“I Don't Know”
シューゲイザー〜音響派っぽいのイントロから加速するパワーポップM-6“Star Sign”
ポップなロックンロールトラックと陰性の歌声の掛け算が見事に実を結ぶM-7“Metal Baby”
曲の半分がエモーショナルなギターソロとホーンセクションで構築されるM-8“Pet Rock”
M-10“Alcholiday”がまた名曲!!こんなに切なさを感じさせる曲、他に無いっす!!!!最初の三分間、途切れなく紡がれるメロディ展開は完璧すぎます。
M-11“Guiding Star”も頭から美しすぎでしょう!!
ほんでラストは三分超のインストトラックM-12“Is This Music?”


いやー、何回聴いても凄いっす。
どこを切り取っても素晴らしすぎる作品!!
奇跡の一枚。

数多くの名盤が生まれた1991年ですが、僕はこれが一番好きです。
TEENAGE FANCLUB、好きすぎます。
9 Oct

The Soft Bulletin

softbulletin『The Soft Bulletin』
THE FLAMING LIPS

10.0 / 9.9

言わずと知れた名盤でしょう。
90年代最後の傑作。
サイケデリックロックの象徴。

作中全般にわたって響くシンセサイザーの音色。
膨張したようなバスドラムの音。
ピアノやグロッケンシュピールなど様々な楽器を用い、それらを適切に配置して形成される幻想的空間。
圧倒的なサイケデリアを孕んだ、音で充たされる世界。

The BeatlesThe Beach Boysから連綿と続くメロディとコーラスワークを踏襲し、しっかりと作りこまれた音のレイヤーは至極美しく、優雅さすら感じさせる。
また演奏においても、ゆったりとした間の取り方であるにも関わらず、もたつく感覚も全く無く、しなやかかつ繊細さに舞う肢体すら想起させる。


印象的なシンセサイザーの音色で始まるM-1“Race for the Prize”は、音楽史に残る屈指の名曲。ピアノやアコースティックギター、ハープ、ドラム、ベースらが美しく舞うように混在したサウンドスケープと、流麗なメロディラインの有機的な融合はまさに奇跡。
歌劇の始まりを告げるような爽やかな幕開けを思わせるM-2“A Spoonful Weighs a Ton”
クリーントーンのギターや木琴やストリングス、打ち込み音など様々な音に囲まれた幽玄の森の中に佇む中、ゆったりとホーンセクションが鳴り響き、不安感を煽られるような感覚を覚えながらも安息を感じるような世界が広がり、後半で牧歌的な光景を覗かせるM-3“The Speak That Bled”
ピアノの響きが美しいを軸としながらも多彩な音色が周囲で輝き、陶酔感すら覚えさせるM-4“The Spiderbite Song”
ポップ&コズミックなサウンドと、美しいメロディラインが至福を与えるM-5“Buggin'”
ゆっくりとしたキャッチーなメロディとピアノや鐘の音が穏やかな祝福を感じさせ、後半ではストリングスやホーンセクションが加わることによって、その感傷を強めるM-8“Waitin' for a Superman”
安らかさすら感じさせるポップサウンドが涙腺を刺激するM-9“Suddenly Everything Has Changed”
オーケストラやゴスペル歌唱団のようなスケールの大きさを持ったM-10“The Gash”は本作終盤のクライマックスと言える。
しかしそこで止まるのではなく、プログラミングを用いながらシンプルなアコギのコード弾きを中心として感傷的なメロディが紡がれるM-11“Feeling Yourself Disintegrate”
そして、ピアノとシンセサイザーによるインストトラックM-12“Sleeping on the Roof”と、最後の最後までしっかりと世界を構築している。


サイケデリアの船に乗って美しく幽玄な夢想の世界を旅する至上の一枚。
多くの人を引き込むキャッチーさを携えながらも、その世界は深く緻密で、繊細かつ柔らかい。

リリースから10年近く経とうとしている本作。
多くのアーティストが本作に影響を受け、目標と掲げてきたが、こと日本においてはその完成度に迫るものを創り上げられたバンドはほぼ皆無と言ってもいい。
まぁ、それは致し方無しなのかもしれないが、少々寂しさも覚えるところ・・・。


もしこの素晴らしい一枚をまだ聴いたことがない、という方がいらっしゃったら、是非ともすぐに聴いてください。
ちなみに、僕がこれを初めて聴いたのは2000年の初頭。
未だ全く飽きず。
5 Jul

The Village Green Preservation Society

village『The Village Green Preservation Society』
The Kinks

10.0 / 10.0

『KINKS』『KINDA KINKS』『Kink Kontroversy』『Something Else』『The Village Green Preservation Society』、はたまた『Muswell Hillbillies』などなど。
数あるキンクスの作品において最高傑作は何かと問われれば、往々にしてなの挙がる作品と言えばこのあたりでしょうか。

もし僕が答えるならば、迷わずこの作品『The Village Green-』を選びます。
当然、彼らの作品の中で一番最初に薦めるとしても本作。
(ちなみに本作を初めて聴いたのは多分浪人生の頃。The Libertinesの登場までガッツリThe Kinksにはまってたのです。)


美しいね。
惚れ惚れしてしまうよ、聴き入ってしまうよ。

メロディの美しさは他の作品の追随を許さず、現代においてもそのヴィヴィッドさを失っていない。
と同時に、ポップさやファニーさを携えながらも、意外にシンプルなサウンドメイキングの妙が相互に魅力を阻害することなく見事に調和している。

本作リリースから40年を経、飛躍的な技術的進歩を遂げた現代においても、これほど自然な美しさを生み出せた作品は現れていない。


表題曲M-1“Village Green Preservation Society”の最初の30秒を聴いただけで、この作品がいかに優れた作品か、きっと誰もが理解できるはず。
一つのメロディのみで構築されるがゆえか、パーマネントな魔法がここには宿っている。
続くM-2“Do You Remember Walter?”でもその魔法は解けることなく、一枚丸ごとがその魔法に支配されている、奇跡的な大名盤。

余談ですが、M-3“Picture Book”Green Day“Warnig”の元ネタですね。


ごちゃごちゃ書くのも煩わしいのでもうやめますが。
1960年代の名盤を二枚選べと言われたら、間違いなくこの作品とThe Beach Boys『Pet Sounds』を選びます。

大名盤ですよ。
本作を聴かずして豊かな人生無し。
28 Jun

The Rising Tide

sdre『The Rising Tide』
Sunny Day Real Estate

9.9 / 8.2

高校三年生時、2000年に最も聴いた作品で、私的年間ベスト。
エモコアの名盤として今だ根強いファンが残る傑作です。

一般的に言われる「エモコア」のポップなイメージは無く、むしろ陰鬱さを感じさせる、ポストグランジ的な轟音とドリーミーなサイケデリアが同居するサウンド。
ギター主体のミドルテンポのサウンドの上に、好みが分かれそうなファルセットボイスで歌い上げられるメランコリックかつ美麗なメロディが乗り、互いに絡み合う。
同時に、ヒリヒリするような緊張感も共存していて、その緊張感が激しく心を揺さぶってくる。
Mercury Revあたりにも近い・・・かもしれない。

僕はとにかくこの作品が好きです。
たまらん!!

リバーブやファズを使ったギターサウンド然り。
楽曲によって巧みに組みかえられるベースライン然り。
アメリカ出身のドラマーらしい力強くアクセントのついたドラミング然り。
心を引き裂くかのような切迫感と優しさを携え、ほんの少しエフェクトをかけて二重三重に積み重なったボーカル然り。

そして何よりも夜明け前の海の前に立つようなメランコリックな世界観を拡げながらも、その中に光が差し込んで救いを与えてくれるような気にさせてくれる神秘性を孕んでいる、という点がたまらん!!


リリースから8年が経つ現在においても、本作の輝きは衰えず。
やっぱり依然として超好きな一枚です。

ちなみに彼らは本作を最後に二度目の解散。
後にFire Theftというバンドを立ち上げてアルバムを一枚出したのだけど、現在何をやっているのかは不明です・・・。
27 Jun

BEN FOLDS FIVE

benfoldsfive『BEN FOLDS FIVE』
BEN FOLDS FIVE

10.0 / 9.5

さてさて。
「Music Masterpiece Review」という新しいカテゴリを追加しました。

基本的にこのブログは新譜のレビューを中心に書いてきたわけですが。
それだと、「こいつ、最近の音楽しか知らねーんじゃねーの」とかって思われそうで嫌だなぁ、と思いまして。
ネタも無いし!
そんなわけで、これからはこのカテゴリで昔の名盤などを取り上げていこうと思います。

で、まぁ単純に名盤と呼ばれるもんをピックアップするのはありきたりなので、とにかく自分の琴線を激しく震わした音楽、という基準で選びます。


では一枚目。
BEN FOLDS FIVE!!
日本でも大人気のギターレスピアノトリオ、BEN FOLDS FIVEの1stです。
最高。

1995年作品。
日本では、かの名作ドラマ『ロング・バケーション』でもキーポイントに使われたこともあり。

僕個人としては、本作を始めて聴いたのが高校一年生の時で、本作を聴いた衝撃で一気に音楽に目覚めたという極私的記念碑作品なのです。
本作中に収録された13曲、全部空で歌えます!
超絶好きです。
永遠のマスターピース!!!!


最強でしょう。
余計なもん一切無し。
美麗かつ激情的な、力強く音数の多いピアノ。
思いっきりファズをかけたテクニカルなベース。
タメの効いた力強いドラミング。
シンプルなサウンドなのに、とにかくアクセントのつけ方や展開が巧みゆえに至極刺激的です。

唾飛ばしまくりっぽい歌い方で激キャッチー&ポップなメロディを歌い上げるベン・フォールズ。
ファニーなコーラスラインや、時に感じさせる悲哀感も最高。


自分には哲学があるから歩き続けるんだ、と歌うM-2“Philosophy”は僕の永遠のテーマソングです。
本作中唯一サンプリングが入った疾走ソングM-3“Julianne”
ちょっと間抜けなコーラスラインとは裏腹に切なさを感じさせるメロディラインが印象的なM-4“Where's Summer B?”
僕が本作中真っ先に好きになった、メロウかつ美麗な泣きソングM-5“Alice Childress”
ハイテンポのピアノロックンロールM-7“Sports & Wine”
M-9“Best Imitation of Myself”は後半のハイライトでありBEN FOLDS FIVEの魅力が存分に引き出された名曲。
そしてドラマチックな展開を見せてくれるM-10“Video”

などなど。
とにかく素晴らしい!!

もし万が一本作を聴いたことがない人がいたら、是非ともすぐに聴いていただきたい!!
自信を持って10点をつけられる大傑作。
30 Apr

PAVEMENT

pavement1pavement2pavement31st 『SLANTED & ENCHANTED』
2nd 『CROOKED RAIN』
3rd 『WOWEE ZOWEE』



pavement4pavement5pavement1.54th 『BRIGHTEN THE CORNERS』
5th 『TERROR TWILIGHT』
extra 『Westing』



【PAVEMENT】

「あなたが一番好きなバンドは何ですか?」
と問われれば、真っ先に名前を挙げるのがこのバンド。

90年代に5枚のオリジナルアルバムと1枚の編集盤を残し、後生のバンドに多大な影響を及ぼした伝説的バンド。
あのRADIOHEADもその影響を公言し、直近ではLOS CAMPESINOS!が彼らの音を共通点として集まってできたバンドだというのは有名なお話でしょう。(ちなみに、近年の日本ではmonobrightがフェイバリットバンドとして彼らの名を挙げている。)

ご存知の通り、「ローファイ」と称されるサウンドの代表格としてその名は広く知れ渡っているわけですが。(しかし、「ローファイ=PAVEMENT」という構図を安易に用いる近年の傾向は由々しき事態であり、そういった思考回路を持つライターは早々に退去していただきたい所存。)
実際に彼らの音を聴いたことがある人間は近年減少の一途を辿るばかり。
なので、ここらでガイドライン的なもんを一筆。


グランジ最盛期の92年に1stアルバム『SLANTED & ENCHANTED』でデビューを果たしたカリフォルニア出身バンド。

SONIC YOUTHPIXIESNIRVANADINOSAUR JRといったあたりのバンドにも近い、狂ったような半崩壊気味のディストーションギター。
(くるりの岸田繁なんかよりもよっぽどスティーブ・マルクマスの弾くギターの方がド変態である。)

上手いのか下手なのか、意図的なのか致し方なしなのかよく分からないドラミング。
奇を衒うことはないものの、シンプルながら素直にシンプルとは言えないベースライン。

そして、とにかくお世辞にも上手いとは言えない(IAN BROWNよりはマシだが)、しかし最高に直情的かつ人間味溢れるボーカリゼーション。

それらが合わさった時に奏でるアンサンブルは、アンサンブルと呼ぶのが憚られるほど崩壊的でありながらとてつもなく魅力的に響く。
その崩壊感、不完全性という部分は、ある意味で人間そのものの不完全さを体現したかのようにも感じられ、ゆえに彼らの音は概念的な意味合いでも僕らの心をくすぐるというのが最大の魅力とも言えるだろう。


以下、下記ブログへ移動しました。
Pavement全アルバムレビュー
http://music.pablos.jp/pavement/pavement_artist-review/
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Profile
kagami

出身:京都・桂。
在住:京都→東京。
職業:横文字の仕事。
年齢:28歳。
生態:夜行性、雑食、低テンション。
身長:高め。
体重:少ない。
好き:音楽・映画・本・写真・サッカー。
友達:少数精鋭。
天敵:しそ。
連絡:pablos@livedoor.com

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あと、DJの故KAGAMIさんとは別人なのでご注意を。
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