拙著「いまこそ読みとく太平洋戦争史」の広告が2月5日(日)毎日新聞の読書欄に掲載されました。


最近、アメリカ合衆国大統領、ドナルド・トランプの移民政策に関するニュースが連日、報道されている。
彼が打ち出している移民政策は主に下記2点である。

1.メキシコからの不法移民の入国を阻止するため、メキシコとの国境に壁を建設する。
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2.イスラム教徒の多い、シリア、イラク、イラン、リビア、ソマリア、スーダン、イエメンの7か国の移民の入国を90日間禁止。
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イランを含むイスラム教国7カ国の難民や移民のアメリカ入国を大規模に制限する大統領令に署名したトランプ大統領

実はアメリカが特定の国や地域からの移民を禁止したり、制限したのは今回が初めてではない。1924年(大正13年)には日本からの移民を禁止したいわゆる「
排日移民法」がアメリカ議会で可決、成立している。

日本人のアメリカへの移民は、明治時代初頭から始まった。当初は主な移民先はハワイであったが、その後、アメリカ本土(主に西海岸)への移民も増えていった。

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アメリカに移民した日本人

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20世紀(1900年代)になると、アメリカで主導権を握っていた北ヨーロッパ系(イギリス、ドイツ、及び北欧)の白人たちは、増え続ける南欧、東欧、そしてアジア(日本、中国など)からの移民に脅威を感じるようになった。この頃、「自分たちの仕事や政治、経済面での主導権を奪われるのではないか?」という一種の強迫観念が北ヨーロッパ系の白人の間に広まっていたのである。
また「北ヨーロッパ系の白人こそが、人類文明を築いた”優れた人種”である」という考えが、当時のアメリカで広まっていたことも背景にあった。事実、1920年代には白人至上主義団体のクー・クラックス・クラン(いわゆる”KKK”)による、黒人、イスラム教徒、ユダヤ人などへの迫害(暴行、リンチ、殺人など)がほぼ”公然”と行われていたのである。

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ワシントンを行進するKKK

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KKKによって殺された黒人たち

このような時代背景のもと、1924年(大正13年)に「排日移民法」が成立したのである。この法律制定後、アメリカへの日本人移民は全面的に禁止された。

この排日移民法によって、日本は大きな移民先を失った。明治以降、日本は多産系であり、いわゆるピラミッド型の人口構成であった。その増えすぎた人口の最大の移民先がアメリカだったのである。これ以降、日本は別の移民先を見出さなければならなくなった。そして軍部(陸軍)主導により、日本は満州への進出を進めていったと言われている(ただし、当時から日本の人口、経済問題の解決策として海外に領土を広げるという考え方に異論をとなえた日本人もいた。石橋湛山(いしばし たんざん)はそのような異論を主張した有名な論客である。彼については、別の回で論じたいと思う)。

日系アメリカ人を描いた映画「ヒマラヤ杉に降る雪 」(出演:工藤夕貴ほか)。


そして1931年(昭和6年)に「満州事変」が起こり、日本は満州の事実上の”植民地化”を進めていった。

※満州事変については「第1回 世界恐慌と満州事変」を参照願います。
その後の日中戦争、フランス領インドシナ(ヴェトナム)への日本軍進駐等により、日米関係は急速に悪化し、太平洋戦争開戦にいたったのである。

このように戦前のアメリカの反日移民政策が、太平洋戦争の”原因”であったと見ることもできる。
もちろん太平洋戦争(第二次世界大戦)はアメリカをはじめとする、連合国の勝利に終わり、戦後アメリカは”超大国”の道を歩んでいった。しかしその一方、この太平洋戦争で決して少なくないアメリカ人の命が失われたことも事実である。

現在、多くのアメリカ人が移民によって自分たちの仕事が奪われるのではないかという恐れを抱いていることや、ヨーロッパやカナダなどで起こったイスラム系住民(移民)による”無差別テロ”に脅威を感じるのは、当然の感情とも言えるだろう。
しかし”一時の感情”で、特定の国や民族の移民に制限を加えることは、更なる国家間、民族間の対立を呼び、そしてテロや戦争といったより大きな悲劇を招く危険があることも、この「排日移民法」の事例から読み解くことができるのではないだろうか?

アメリカ合衆国は宗教、価値観などが異なる様々な民族で成り立っている国家である。多種多様な民族を受け入れてきた歴史の中で、アメリカはいろいろな苦難に直面してきた。南北戦争や、1960年代の公民権運動などは、その最たる例であろう。しかし、そのような困難や人種、宗教の違いを克服し、そして”多様性”とあらゆる人種、宗教、価値観を受け入れる”寛容性”によってアメリカは現在の”超大国”の地位と繁栄を築き上げてきたのだと思う。

南北戦争で、アメリカ上初めて編成された黒人部隊(北軍)の実話をもとにした映画「グローリー」(
第62回アカデミー賞および第42回ゴールデングローブ賞受賞、監督エドワード・ズウィック、出演:マシュー・ブロデリック、デンゼル・ワシントン、モーガン・フリーマン他)


歴史上、アメリカは”保守的”になる時代がしばしば存在する。1920年代の白人至上主義(これに禁酒法も加えることもできるかと思う)、そして1950年代の”赤狩り(マッカーシニズム)”などはそのよい例であろう。しかしそのような”保守反動”、または”揺り戻し”といった時代を乗り越えて、アメリカは”自由と民主主義”を旨とする、多様性と寛容性に富んだ国として更なる発展を遂げてきた。
今回もアメリカは、現在の”保守反動”の時代を乗り越え、より成熟した自由と民主主義を重んじる更なる”偉大な国家”へと脱皮していくことを期待したい。

ちなみにブラジルも明治時代以降の日本の主要な移民先であった。
戦後の日系ブラジル移民を描いた映画「汚れた心」(ブラジル映画、出演:伊原剛史、常盤貴子、奥田瑛二)。


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