2006年10月31日

死人に口無し

本日(2006年10月31日)付読売新聞社説が、従軍慰安婦問題でお詫びと反省の意思を表明した'93年の河野談話に関して、「もう少し事実関係を、韓国などとよく研究し合って、その結果どうなのか、客観的に科学的な知識を収集して考えるべきだ」と、25日に都内で講演した下村官房副長官について、

 この発言のどこが問題だと言うのだろうか。

と、下村発言を問題視すること自体を非難しています。
下村官房副長官は、安倍政権として河野談話を踏襲する立場に変わりがない、とも、言っているので、私のようなしもじもの者が、何をバカなことを言っているのだ、と、ブログに書けばそれで終わり、というくらいのことでしたが、読売新聞のこの社説は、日本外交の足を引っ張るような重大な失言だと思いますね。
この読売社説は、せっかく、対中国、対韓国で、予想外の協調的姿勢を示して、小泉外交の失地回復を行ってきた安倍政権に冷や水をかけるようなものです。
韓国・中国が問題視すれば、核兵器開発を中止しない北朝鮮に対する共闘体制にひびが入りかねず、日本の防衛にも赤信号がつきかねません。

 大事なのは事実である。

と、読売新聞は書きます。
しかし、韓国側に、被害を受けたと主張している人が存在していることも紛れのない「事実」です。
安倍首相が、「今に至っても事実を裏付けるものは出ていない」といくら主張しても、韓国側には被害に遭ったと主張している人がいるのです。
そんな事実があったのなら、証明して見せろ、と、日本が韓国に言い返せば、外交は終わりです。

そもそも、強制連行問題にしても、従軍慰安婦問題にしても、あるいは、南京事件にしても、事実関係を事後に証明できるような筋合いの事柄なのでしょうか?

 事実は、わからない、でも、泣いている人がいる、ならば、日本人としての善意を示そう。

くらいの言葉を書くことさえ、読売新聞にはできないのでしょうか?
この読売新聞の論旨では、「日本外交」というものは依拠し得ないだろうと思います。

先日、福島県では元知事が逮捕されるという事態に至りました。
弟が所有する土地を売却する際に、時価を上回る価格で事業者に購入させていて、そのことを元知事も了解していた、と、伝えられています。
どういうような証拠があって逮捕に至ったのか私にはわかりませんが、仮に容疑が事実だったとしても、まさか、元知事が、私が指示して時価を上回る価格で購入させ、選挙資金にした、などと書いた文書を残しているとは思えません。

「あの戦争」において、日本国内で戦況を伝える大本営発表が事実と全く異なっていたことを思えば、日本軍の兵士・将校が、日本軍にとって都合の悪いことを事実を歪めて文書化しているために事実関係が不明になっている、ということもまた、否定できない「事実」です。
「あの戦争」では、中国・韓国から何を言われても言い逃れできない、というのが本来であって、対中、対韓の外交努力によって、戦争責任がチャラになっているに過ぎません。

熊本県水俣市で、化学工場の廃液に含まれていた有機水銀が魚類に蓄積され、それを食べた人が有機水銀の中毒により手足の痙攣を訴え、多数の犠牲者が出ました。
「水俣病」と呼ばれ、原因が究明されるまで、水俣固有の奇病・難病と言われていました。
早い段階から、工場廃液が原因であるという指摘がありましたが、事実関係を証明してみろ、という産業界の圧力の前に、工場側の責任がなかなか問われず、長年にわたり被害が拡大してしまいました。
水俣病の病理学的原因は、私が大学1年のときに「環境問題研究法入門」というゼミでお世話になった、西村肇先生の研究によって解明されています。
しかしながら、水俣病の科学的な原因解明というようなことが、被害者自身の手で行い得ることなのでしょうか?
西村肇先生のような専門家が生涯をかけて水俣病の原因究明に当たったからこそ、やっと、水俣病の原因が解明されたのです。
こうした困難な原因究明・被害の証明を待っていたのでは、手足がしびれると叫びながら命を絶たれた人の怨念を晴らすことはできないでしょう。

 大事なのは事実である。

と、被害を受けたと主張している人に日本が言い返せば、怨念だけが蓄積されていきます。
こうした被害の声を踏みにじることが、日本の将来にプラスに働くとは、とても思えません。

信号が青だから交差点に進入したバイクが信号無視の自動車と衝突し、バイク運転者が死亡に至った、という事故で、被害者が死亡してしまっていることを良いことに、バイクの方が信号無視で突っ込んできたと言い逃れる事例がいくらもあります。
被害に遭ってしまえば、被害を自分で立証するのは困難を極めます。
泣いている遺族に向かって、そちらが信号無視したのではないことを、科学的に証明してみろ、大事なのは事実である、と、言い返すようなことを、日本の大手マスコミがやって許されるとは、私には思えません。


paintbox77 at 20:55│Comments(14)TrackBack(0)メディア 

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この記事へのコメント

2. Posted by ぐるり   2006年10月31日 23:05
それを主張している人がいることは事実だけど、それだけで善意を示すって何?どういうこと?意味が分からんね。

例えばさ、誰かが(誰でもいいよ)
『paintboxさんのお父さんに1,000万円貸したが、返済期日を過ぎても返してもらえていない!証文は無いけど俺は貸した!お父さんの代わりに1,000万円返せ!』
って主張し始めたと仮定しましょう。この仮定のもとでは、『この主張をしている人がいる』事は事実だよね。でも実際に
『paintboxさんのお父さんが1,000万円借りて返していない』
という事が事実かどうかは分からんよね?この場合どうする?ちゃんと調べるよね?調べて借りた事が事実かどうか分からんのにお金を返すような人のところには第2第3の借金取りが現れる事請け合いです:-)
あなたの主張は何も調べずにこの貸したと主張する人にお金を返すのと同じ事じゃないの?どう?
3. Posted by paintbox   2006年11月01日 07:48
ぐるりさん

全然違う事例を持ってきて、反論してるつもりですか?

金の貸し借りなら、証文を取っていない人が悪いと言えるからいいんですよ。
そもそも貸した側の方が力の強い側ですからね。

従軍慰安婦とか強制連行とか南京事件とか言うのは、力の強い側が弱い側を問答無用で有無を言わせずに行ったことだから、怨念を産むのです。
そもそも日本側が圧倒的に強い立場で行った行為について、被害を受けたかどうか証拠を残すようなことが可能だったか、ということを問題にしているのです。
証拠を残すようなことが無理だったのに、証拠を出せ、と、言われたら、言われた側はどう感じるかを考えてみるべきだ、と、言っているのですよ。

交通事故死したバイクの運転者が、加害者側が信号無視していたことを証明せよ、と、言われて、どうやって証明するのか、と、言っているのです。
4. Posted by もっと   2006年11月02日 12:42
従軍慰安婦という事実を誤解されているようなので、もう少し勉強して下さい。
それと、強制連行も、かつてあの国は日本であった事実があり、「徴用」は当然であり、日本人自身にも徴用はあったのです。
また南京事件についても、あやふやな正に証拠とは言えないもので、作られたもので、これがあったか否かが今議論となっているため、あったとの予断は僭越に考慮せねばなりません。
これらの問題は、事実歪曲が非常に多く、戦勝国ならびに第3国が日本叩きのために創作されたものも多くありますので、少し、理解が必要だと思います。
日本は、あの時点でどういう状況であったのか、国際情勢はどうだったのかという、また事実捏造が多くあったため、今日の間違った認識が定着していることを懸念します。 被害者は本当はどこにあったか。 今の価値観で判断することは、これら歴史問題を捉えることの障害となります。
5. Posted by JUNK   2006年11月02日 19:25
paintbox様へ
ぐるり殿のような保守オタク、靖国カルトに反論してもムダです。口汚くののしるのがあいつらにはお似合いなのです。
6. Posted by トンチャモン   2006年11月02日 22:47
>従軍慰安婦とか強制連行とか南京事件とか

これを同列に扱ってしまっては、中国様はお怒りになってしまうと思います。
7. Posted by paintbox   2006年11月02日 23:46
もっとさん

勉強するとか、しないとか、そういう問題ではないと言っているのですよ。

被害に遭ったと泣いている人がいるのだから、日本人としては聞く耳を持つのが「外交」というものでしょ、と言っているのです。
戦時下の状況では、被害に遭ったことを立証するのは無理だと言っているのです。

貴殿のような愛国心のカケラもない亡国論者には、何を言ってもムダだとは思いますけどね。


JUNKさん

厳しいご意見です。

このブログは、私のストレス発散が目的だと、ご了解ください。
8. Posted by 柏餅   2006年11月03日 07:32
まず従軍慰安婦の問題ですが、既に日本と韓国が国交回復した時点で求償権の問題は終了と明記されていますので、国家間では解決済です。
ちなみに当時の条約では朝鮮半島での唯一合法的政府としての大韓民国という記載になっていますので、本来なら北朝鮮との国交正常化交渉は日韓基本条約に反することになります。

ですから、従軍慰安婦にしろ強制徴用の賠償にしろ、韓国・北朝鮮籍の人は韓国政府に賠償を請求するのが筋で、既に国家間の協定で韓国政府に金を支払っている日本政府に請求をするということが間違っていると考えるのですが、この点について見解を聞きたいです。
9. Posted by paintbox   2006年11月03日 08:27
柏餅さん

貴殿のような人たちは、同じことを何度も書き込んできて、ブログ主の時間を無駄に使わせて、ブログを止めさせてしまう、というのが常套手段のようだけれども、私は屈服しません。

何度でも、同じ答えをします。

日本が貴殿のようなことを韓国に主張して、韓国が、拉致問題解決や北朝鮮の核廃棄に快く協力すると思いますか?

北朝鮮が核兵器をミサイルに乗っけて発射する先はどうせ日本だから、と、韓国に言われてしまうようなことは、外交ではない、と、言っているのです。

そこに泣いている人がいて、しかも、あの戦時中の状況では、証拠となるものを持っていろと言っても無理な状況だったのだから、話しを真摯に聞くべきだと言っているのです。

安倍政権が、小泉政権とは違って、今のところ中韓に対しては賢明な路線をとっているので、敢えて、貴殿のような人たちに反論する必要もありませんけどね。
11. Posted by もっと   2006年11月16日 13:29
paintboxさん

被害に遭った人の中には嘘を言って金をせしめてやろうという輩も多いのです。 だから、慎重に行動しなければなりません。 聞くだけですか?その後はどうするのですか?補償になればますます、過去の経緯、立証が必要になります。 聞くだけでは、単なる興味本位に捉えられかねません。 まさか、聞いてそれを全て真実だと鵜呑みにして賠償でもするのでしょうか。
外交というのは国対国が行うものです。北朝鮮の核問題についても元々、中国・韓国・北朝鮮には、日本を蔑視する風土があります。これは中華秩序の圏外であるため、蔑視している日本が経済大国であり、さらに様々な技術・文化を産んでいる現実が気に障るのでしょう。基本的に外交とは、後に武器と戦う気概なりを持っていないと終わりです。 近隣諸国はそれらを既に持っており、その上での外交なのです。 続く
12. Posted by もっと   2006年11月16日 13:29
続き
我が国も米国の武力の傘下であることが威嚇にもなっているのです。 尤も米国依存が強い現在は少し異常ですが。聞く耳を持つのは確かに重要です。それは国内外問わず。しかし、外交として聞く耳を持つということは、その後のアクションも考慮する必要があります。JUNKさんのような書き込みは、まさに偏った、反対側のことには興味と理解を示そうとしない、危険な全体主義的思想でしょうね。 この世界は、大国の論理で動くサバイバルの世界であり、また、中・韓・北は基本的に同列であり、中国の膨張政策は要注意であることくらい世界の常識なのではないでしょうか。これらを理解できる方が愛国心、郷土愛を持つ人間であるでしょう。
亡国論者とおっしゃる前にご自分はいかがですか?
13. Posted by paintbox   2006年11月16日 23:07
もっとさん

朝鮮の言うことを鵜呑みにして賠償せよ、とは、私も言っていないし、日本政府がそんなことをするとも思っていませんよ。
私は、生粋の日本人なんで、朝鮮に媚びを売るというようなことには、もちろん賛成しません。
ですが、あの戦時中の出来事で、被害を科学的に立証できるような証拠を出せ、と、言われても被害者には出すことはできないのだから、証拠がないのなら門前払いだ、と、言ってしまっては外交にならない、と言っているのです。
武器を持って中韓と戦えば、日本も終わりですね、それがあなたの愛国心?亡びの美学?
笑わせてくれますね。
14. Posted by もっと   2006年11月17日 13:02
paintboxさん

では、話を聞いてやって、その後はどうするのですか?
聞くだけですか?
門前払いということは私も言っていませんが、聞いてその後処理をどうするのでしょう。
真摯な姿勢を見せることは大切ですが、聞く耳を持つと偽善ぶるのは、真摯とは言えません。 毅然とし、柔軟に対応することが大切なのです。
<武器を持って中韓と戦えば日本も終わり>というのはどういう意味でしょうか。私の書いている意味をよく理解して下さい。私がいう外交とは、中国、韓国、北には背後に武力を持ち、そしてそれを抑止力として利用しつつ、対話をするということです。  続く
15. Posted by もっと   2006年11月17日 13:03
paintboxさん

続き
この3国は日本を蔑視、或いは潜在的に敵視していることは間違いないでしょう。 それを丸腰でいっても鼻で笑われるだけでしょうな。 尤も一番大切なことは気概です。これがなければ武力があっても対話をしても意味がありません。
誰も戦うとは書いていませんがね。 それに端から戦えば日本も終わりとは・・理解に苦しみます。現実には、戦力に戦意を乗じることで分析するため、簡単に終わりとは思えませんがね。戦う気持ちを持たねば、家族も守れません。いずれにしても、美学云々より、腰砕けでは、外交すら語ることは出来ないでしょうし、現実逃避ということになるでしょうね。
16. Posted by paintbox   2006年11月17日 21:02
もっとさん

被害者の話を聞いてどうするのかを私に聞いてどうするのですか?
私は政府関係者ではありませんよ。
私にはどうにもできませんね。
何の権限もない私が日本政府に主張できることは、誠意のある態度を示すべきだ、くらいのことです。

背後に武力をちらつかせて威嚇して交渉ごとがうまく行くというのですか?
そんなことをしたら米国も日本側に付くとは言えませんよ。
米国には既に小泉の靖国参拝を支持する日本国民への警戒感が出てきているというニュースも聞きます。
イラク、イラン、北朝鮮に続いて、日本まで手に負えなくなってはたまらない、というのが米国の日本観ではないでしょうかね?
戦う気持ちなどを持ったら、家族を捨てるようなものですよ。
それこそ、あの戦争の二の舞、バカなことを考えるのはやめにしましょうね。

忙しくて、バカバカしい話しのお相手をしているヒマはないので、これで終わりね。

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