2005年08月27日

ポールはさぞかし無念であろう

水温が下がり始める。
 
冷たい海に見切りをつけて、日本海を西下。
 
対馬海峡あたりで冬を越そうと考える。
 
どうも初めまして。
 
ボクはスルメイカのポールというものです。

 
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 
 
 
対馬に住んでいる叔父さんから今年もポールが送られてきた。
 
ところが私はこのポールが少々苦手だ。
 
食べることには全く抵抗はない。
 
むしろ大好き。
 
苦手な理由は『ボン!』である。
 
ポールは油に浸かると『ボン!』と弾けて、しばしば私を脅かすのだ。
 
ものの本によると、
やれ皮を剥がせだ
水分をしっかりふき取れだ
ボン!』の対応策が色々と記載されている。
 
ああ、勿論やってみたさ。
 
やってみたけどいつの日もポールは『ボン!』と弾けて私を脅す。
 
しかしポールの胴体のフリッターは格別に美味い。
 
ときに、私の料理のレパートリーは驚くほど少ない。
 
環境庁に「絶滅危惧種に指定する」と言われても
返す言葉が無いほど少ない。
 
レッドデータ・クッキングだ。
 
そんな中にあってポールの胴体のフリッターは更に希少なのだ。
 
自慢になって申し訳ないのだが私の作るポールのフリッターは評判がいいのである。
 
ポールの鮮度と旨みに助けられているという話もあるが
自慢の一品なのである。
 
自慢の一品なのであ〜る。
 
レッドデータ・ミラクルクッキングだ。
 
そのミラクルを作らないわけにはいかないのだ。
 
 
皮を剥き一枚に開き、食べやすい大きさに切る。
 
ボウルに卵白と塩を入れて泡立て器でグリグリ。
 
角が立つのを確認してから小麦粉、片栗粉、水を加えてサックリ混ぜ、サラダ油をちょこっと垂らす。
 
このあたりからポールの心を開きにかかる。
 
「ヘイ、ポール。調子はどうだい?」
 
優しくキッチンペーパーで水気を吸い取りながらご機嫌を伺う。
 
油の温度計が160℃を表示しているのをチラっと確認。
 
ポールに片栗粉を塗して滑らせるように投入。
 
「ヘイ、ポール。お湯加減はいかが?」 
 
『ジジジジジジ・・・』
 
ポールはどうやら上機嫌。
 
まずはひと安心だ。 
 
プチトマトのヘタをむしりながら、努めてナチュラルに話かけてみる。
 
「あなたのおかげでこんな私にでも美味しいフリッターが作れるんだよ」
 
『ジジジジジジ・・・』
 
ポールはますますいい塩梅。
 
よく見るとすでに揚げ色が付き始めてる。
 
「あらあら、とてもいい色になってきたじゃない?」
 
今思えば、いつもの時間より早く色が付き始めていたのだ。
 
キュウリを斜めに切ってる時にポールが一発目のマグナムを撃った。
 
ボン!
 
「ちょ、ちょ、ちょ、何で? 何で『ボン!』なん?」
 
悔しかった。
 
ここまでいい関係を築いていけてたと思っていた自分が情けなくなった。
 
二発目のマグナムが私の二の腕を貫いた。
 


「なんじゃこりゃぁぁぁぁ〜!」 
 


我が家で一番でっかい鍋のフタを楯にして説得を試みた。
 
「無駄な抵抗は止めたまえ、チミは完全に包囲されている」
 
 
 
そういえば昔、イーストウッドが言ってた。
「ヤツのリボルバーには6発の弾が入ってる」と。
 
 
ポールが三発目を撃った。
 
が、鍋ブタで防御に成功した。
 
私は指を折って勘定した。
 
「あと三発か・・・」
 
私は撃たれた左腕を『フゥフゥ』しながら次の作戦にでた。 
 
「おいポール、おふくろさん泣いてるぞ」
 
泣き落とし戦術だ。
 
が、通用しない。
 
立て続けに2発撃ってきやがった。
 
だが鍋ブタでしっかりガードだ。 
 
「残り・・・一発か」
 
イーストウッドがこっちを見ながらニヤリとしている。
 
「ははぁ〜ん、ヤツはおとりになるつもりなのだ」
 
相棒の私にはよく分る。
 
前まわり受身をしながらイーストウッドがドラムカンの陰に飛び込んだ。
 
ポールは まんまと最後の弾を撃った。
 
弾はイーストウッドの頬をかすめ、棚のバーボンを粉砕した。
 
イーストウッドは手の甲でキズを確かめ、そいつをペロっと舐めると私に親指を立ててみせた。
 
私は鍋のフタを置き、ガーターベルトからワルサーを抜いて丸腰になったポールを追い詰めた。
 



ポールは真っ黒コゲになっていた。
 
「し、しまったっ!」
 

 
ヤツは焼身自殺しやがった。
 
 
「これで今夜のディナーはサラダだけだな」 
 
イーストウッドがクシャクシャのマルボロを咥えながらポツリと言った。
 
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 

旦那が皿に乗っかった黒いかたまりをチラチラ見ている。
 
何かの間違いでサクっと食べてはくれないだろうか? 
 
無理だった。 
 
横に添えているプチトマトを箸で摘まみながら、その黒いかたまりの正体を訊いてきた。
 
「なぁ つな。もしよかったらでいいのだが、コレはもともと何だったのか教えてはもらえないか?」
 
私はとりあえず手でつくった三角形を頭の上にかざし
膝の屈伸で上下にビヨンビヨンしてみた。

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Posted by pajama315r at 11:03 │TrackBack(0)
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