うわぁん、トラ久々すぎて。…すごい(笑)

一応、書けたみたいです。
誕生日とは関係ないですけど。夏祭り寅撫です。微えろ?(通常運転)←
【花と獣】


たとえば。

いつもと違う髪型だったり、いつもと違う服装だったり。
そういう諸々の、所謂ギャップに弱い。だけど、それは私だけって、
わけじゃないでしょう?…きっと、夏の所為。何もかもが、新鮮で。
一夜の夢のよう。毎年あるとはいえ、今年の夏はもう二度と来ない。

喧噪すら、耳に心地好い。言い知れぬ高揚感と、夜の匂い。
小学校の時、一緒に出かけて以来の夏祭り。
近所の神社で毎年繰り広げられる、夏祭りは、色とりどりの露店が
立ち並んでいて、不思議とそわそわと落ち着かない気持ちになる。
何年かぶりだろう。浴衣を新調した撫子は、慣れない着付けも、何だ
かんだで面倒見の良い幼馴染に、指南してもらった結果、何とか一人で、
着付けが出来るレベルになった。

九楼撫子。高校二年生。
幼馴染、加納理一郎とは未だに幼馴染のカテゴリからは脱出出来ぬまま、
あろうことか、クラス一、いや学校でも指折りの不良と、付き合い始めた。
よって、かつてのCZメンバーの一人ではあったとはいえ、結果として、
皆の予想を、大きく裏切る形になった。

その名は、西園寺寅之助。とは、言っても、一時期よりは大分落ち着いて、
高校に上がった頃からは、目立った問題も起こすことなく、それどころか
女生徒の人気も博している。ただ、付き合い始めた彼女が彼女なだけに、
双方のファン(?)から、何かとやっかまれることは増えたのだが。
それは、最早一種の有名税みたいなものだと、お互い諦めつつ、今日まで
来たのだった。

撫子の浴衣は、夜空に咲く大輪の花のように華やかな柄で、色は濃紺地なの
が返って、目を惹いた。ただ、浴衣が綺麗というわけで注目を受けている
わけではない。長い艶やかな黒髪を、アップにして髪留めで抑えている所為か、
いつもより大人びた、落ち着いた色香すら放っていて、回りの視線も自然と
撫子に向いたりして。それが、隣を歩く寅之助には、自慢したいようでいて、
見せたくもない、そんな気持ちをない交ぜにしたかのような、感情を呼び醒す
のだった。一方、撫子の方もさっきからまともに、寅之助を見られないでいる。

(男の人で、こんなに浴衣が似合うとか、狡いわ)

寅之助は、控えめな黒地に、ストライプの帯を締めていて、シンプルなのに、
壮絶な色気がある。幼少から、着慣れている所為か、そつなくこなしているし、
何より、射抜くような強い瞳が、長い前髪の間から覗いて、心拍数が上がる。

「撫子」
「なに、トラ」
「…お前、浴衣着れたんだな」
「何よ、これでも理一郎の茶会とか諸々のレセプションで着る機会も
あったんだから…まあ、それは着物だけども。当然でしょ」
「へー。オレは、お前が加納の鬼特訓受けたって、聞いたんだが、な?」
「…っ、何よ。意地悪ね。知ってるんじゃないの……」

思わず、頬がカッと熱を帯びて。左右色違いの瞳と目が合う。逸らしたい。
でも、出来ない。吸い込まれそうな、金と青の。獰猛な、ケモノの瞳。

「オレ、バイト代入ったしな、何でも奢ってやる。久しぶりに、射的とか?
 金魚すくいとか、色々あるしな。それとも、なんか食うか?」
「射的…」

そういえば、と。昔射的で密着したことを唐突に思い出した。
不覚。ますます顔が赤くなる。今や、晴れて恋人同士になったのだし、
キス以上のことだって、しているのに。何だろう。
いつまでも、慣れない。そんな初々しい反応を返す撫子が可愛くもあり、
それでいて、案外ベッドでは積極的でもあるのだから、それこそ、
ギャップが激しくて堪らない。寅之助の口角が、緩やかに上がる。
乾いた唇を、ぺろりと舌で舐めつつ。さりげなく回した腰に、撫子の体が、
びくりと一瞬だけ、震える。

(まあ…夜はこれから、だからな)

***

「お前さー、本当にウサギ好きだよな」
「え、そ、そうね」

今回は、射的は傍らで見ているだけ。昔、寅之助に取って貰ったものよりも、
大きいウサギのぬいぐるみを胸に抱いて。そう、ウサギが私は好きで。
だけど、キッカケはあの子ーーーウサギのレインに他ならない。
私の。今でも、覚えている。友達とも違う。そう、相棒だった。……大切な。

「しっかし、あちーな」
「ええ」
「なあ、足とかそろそろ痛くねぇ?…どっかで、休むか」
「そうね、ちょっと痛いかも…」

人混みの所為か、やけに蒸している。神社の境内の奥へ、奥へ。
ゆっくりと歩いていく。途中で買って貰ったかき氷の器を手に持ちながら。
徐々に、人もまばらになっていく。履き慣れない下駄の所為か、足がじんと
痺れている。石段の途中に座り込む。直に座るのに、躊躇していると寅之助の
懐から手拭いが出てきた。そして、手早く広げるとそのまま撫子に座るよう、
促した。いつになく、優しい。といっても、本当は寅之助は優しいのだが。
よく、弟さん達の面倒や、終夜の面倒を見てあげていた光景が目に浮かぶ。

「ありがとう」
「さて、溶けちまうし、食うとするか。お前はイチゴだよな?」
「ええ」

鮮やかな色がついたそれは、けっして体に良いわけではないけれど、
不思議とお祭りでは食べたくなる。他にも、焼きそばとか焼き鳥とか。
外で食べたりするからか、余計に美味しく感じられて。お嬢様育ちだから、
あんまりこういうの食べたりしないんだろうって、寅之助が笑う。
先がスプーン状になっているストローで、氷の山をさくさく崩して、
まずは一口。あまりの冷たさと甘さに、頭がキンと冷え込むようで。

「んー、つ、つめたい」
「ははっ、そりゃあなー」

寅之助のは、メロン。こちらもイチゴに負けない着色料の塊だけども。
持ち歩いているうちに、半分は溶けてしまったそれを、暫し無言で、
食べていく。喉元を滑り落ち、胃の隅々まで冷たくなって。一気に汗が引いたのが、
わかった。今度、家でもやってみようかしら。かき氷。ホームセンターに、
行けばかき氷を作る機械も売っているかしら、ね。
と、撫子がほとんど空になった器を横に置いた時だった。

「あー…撫子、ちょっと口開けろ。舌、見せてみろって」
「え。こ、こう?」

反射的に突き出した舌。ああ、そうか。恐らく、舌には赤い着色料がついて
しまっているのだろう。濃ピンク、の。派手な色合い。

「やっぱなー。色、つくよなー…」
「…寅之助…?ちょ、んっ…」

……なんて。それは、ただの口実。
灯りがあるとはいえ、ここは割と薄暗い。
確認、できたかどうか。怪しいものだ。

手首ごと、手前に引き寄せられて。突然何かのスイッチが入ったかのように、
唇を塞がれる。見開いた瞳。反面、寅之助は瞳を閉じている。睫毛、長い。
綺麗な、ケモノみたいに。トラになら、食べられてもいいだなんて。
ふと、考えてしまう。冷たい咥内も、徐々に熱くなってきて。息継ぎも、
ままならないくらい、情熱的なキス。もっと、キスしたい。徐々に、思考も
翳っていき、理性を飛ばした、本能的なものへと変わる。

「お前、こんなとこで煽んな…家まで、我慢きかねーだろーが」
「煽って…なんか、舌出すように言ったのは、トラじゃ、ふ、っ」

可愛い抗議の声も、再び塞いでいく。素直に舌を出した撫子が、悪い。
誘われたら、それに応じるまで。撫子が既に抵抗できないことを、知ってか
知らずか、寅之助は何度も貪るように咥内を掻き回す。着付けが本当に、
出来るようになったか、確認してやるよ、と。黒い笑みを浮かべながら。
長い骨張った指先が、手首に痕を残す。捕食される、獲物の気持ちとは、
今まさにこのようなことを差すのではないか、と。恐怖よりも別の感情が、
芽生える。

トラになら、何をされても構わない。乱暴な思考に、支配されて。

断続的に施される刺激に、脳の内側からどろどろと溶解していく。
いったん、こうなったら。もう。止まらない。ーーー止められない。


(部屋に、引っ張り込んだら最後。ーーー朝まで帰さねぇ、からな?)



★☆★ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー★☆★

寅撫でした。夏なので(笑)ちょいえろめでw おめでと、トラ!!


2012.08.22 うれしのなつめ