2023年05月28日
ひとくぎり♪
パミミ「こにちは〜〜♪」
エーゴ「ちわ」
ニャプ「ニャー><」
パミミ「いやはや、ニャプたんが無事に帰ってこれてほんと良かったね〜><」
ニャプ「家の様子を見るとあまり無事じゃなさそうなんだけど・・・何この至るところに張ってある”差し押さえ”って紙は・・・」
エーゴ「それは気にするな」
パミミ「うんうん、模様替えだと思って^^」
ニャプ「ニャプがいない間に何が起きたのニャ・・・」
パミミ「てことで、ニャプたんの幻想日記の最終章が何とか完結しまして・・・」
エーゴ「半年くらいかかったけどな」
ニャプ「筆が遅いにも程があるのニャ」
パミミ「ストーリーの大筋は1年間にできてたんだけどね。ファイル名が220515.txtって名前だしw」
エーゴ「1年前から、異世界に飛ばされる計画があったとはな」
パミミ「流行りのジャンルだし、最後に書いてみたいなぁ〜って思ってたんだ♪」
ニャプ「いい迷惑だニャ・・・って、最後??」
パミミ「うん、最終章って書いたっしょ?」
エーゴ「それさ、数年前にもあったよな」
パミミ「と思って調べてみたら10年前だったのわ、さすがにワラタwww」
ニャプ「続けたもんだね〜」
パミミ「うん、続いたね〜」
エーゴ「月1更新でも続いっといていいのか?」
パミミ「そだね、ちょっとダメだったね^^;」
エーゴ「・・・」
パミミ「てことで、10年前の最終章ではエーゴたんのお話を書きました。そして先月はニャプたんの最終章を書きました♪」
エーゴ「ああ」
ニャプ「うん♪」
パミミ「クルミちゃんが来てくれたり、エルルたんも暗躍してるから、その辺の書きたいこともあるんだけど、これらに比べたらさすがに小粒でして」
「・・・」
パミミ「なので、ひとまずここをひとくぎりにしちゃおうかなと思ってます」
ニャプ「そっか・・・」
エーゴ「・・・」
パミミ「FF11も14も、お友達といっぱい遊んでもらって面白かったなぁ〜」
エーゴ「ああ、恵まれてたな」
パミミ「ストーリーも、NPCとかも凄く面白くて、時間を忘れて遊んだのを今でも思い出せるのわ」
エーゴ「シャントットがスタートだったか」
パミミ「そそ、シャントットちゃんとの話を書きたくてブログを始めたんだっけ」
ニャプ「FF14は?」
パミミ「ちょーど暇な時間ができたから。PS4も一緒に買って始めたんだよね〜。結局PS4でちゃんと遊んだのはFF14だけだった気がする」
エーゴ「裏でSwitchが動いてたけどな」
ニャプ「アマプラもねw」
パミミ「うぐぅw。まぁちょっと忙しくなって、FF14もやめちゃったわけだけど、なぜかブログだけは月一更新という不思議な状態でしたw」
ニャプ「ふふっ」
パミミ「てことで、ここでいったんストップなのです♪
今まで見に来てくれた方、一緒に遊んでくれた方、本当にありがとうございました!」
エーゴ「ああ」
ニャプ「うんうん」
パミミ「またいつか、どこかで会いましょ〜〜♪」
「「「今までありがとうございました」」」
エーゴ「ちわ」
ニャプ「ニャー><」
パミミ「いやはや、ニャプたんが無事に帰ってこれてほんと良かったね〜><」
ニャプ「家の様子を見るとあまり無事じゃなさそうなんだけど・・・何この至るところに張ってある”差し押さえ”って紙は・・・」
エーゴ「それは気にするな」
パミミ「うんうん、模様替えだと思って^^」
ニャプ「ニャプがいない間に何が起きたのニャ・・・」
パミミ「てことで、ニャプたんの幻想日記の最終章が何とか完結しまして・・・」
エーゴ「半年くらいかかったけどな」
ニャプ「筆が遅いにも程があるのニャ」
パミミ「ストーリーの大筋は1年間にできてたんだけどね。ファイル名が220515.txtって名前だしw」
エーゴ「1年前から、異世界に飛ばされる計画があったとはな」
パミミ「流行りのジャンルだし、最後に書いてみたいなぁ〜って思ってたんだ♪」
ニャプ「いい迷惑だニャ・・・って、最後??」
パミミ「うん、最終章って書いたっしょ?」
エーゴ「それさ、数年前にもあったよな」
パミミ「と思って調べてみたら10年前だったのわ、さすがにワラタwww」
ニャプ「続けたもんだね〜」
パミミ「うん、続いたね〜」
エーゴ「月1更新でも続いっといていいのか?」
パミミ「そだね、ちょっとダメだったね^^;」
エーゴ「・・・」
パミミ「てことで、10年前の最終章ではエーゴたんのお話を書きました。そして先月はニャプたんの最終章を書きました♪」
エーゴ「ああ」
ニャプ「うん♪」
パミミ「クルミちゃんが来てくれたり、エルルたんも暗躍してるから、その辺の書きたいこともあるんだけど、これらに比べたらさすがに小粒でして」
「・・・」
パミミ「なので、ひとまずここをひとくぎりにしちゃおうかなと思ってます」
ニャプ「そっか・・・」
エーゴ「・・・」
パミミ「FF11も14も、お友達といっぱい遊んでもらって面白かったなぁ〜」
エーゴ「ああ、恵まれてたな」
パミミ「ストーリーも、NPCとかも凄く面白くて、時間を忘れて遊んだのを今でも思い出せるのわ」
エーゴ「シャントットがスタートだったか」
パミミ「そそ、シャントットちゃんとの話を書きたくてブログを始めたんだっけ」
ニャプ「FF14は?」
パミミ「ちょーど暇な時間ができたから。PS4も一緒に買って始めたんだよね〜。結局PS4でちゃんと遊んだのはFF14だけだった気がする」
エーゴ「裏でSwitchが動いてたけどな」
ニャプ「アマプラもねw」
パミミ「うぐぅw。まぁちょっと忙しくなって、FF14もやめちゃったわけだけど、なぜかブログだけは月一更新という不思議な状態でしたw」
ニャプ「ふふっ」
パミミ「てことで、ここでいったんストップなのです♪
今まで見に来てくれた方、一緒に遊んでくれた方、本当にありがとうございました!」
エーゴ「ああ」
ニャプ「うんうん」
パミミ「またいつか、どこかで会いましょ〜〜♪」
「「「今までありがとうございました」」」
pamimi at 21:20|この記事のURL│Comments(6)
2023年04月02日
ネコと異世界 - 最終話
ネコと異世界(その1)
ネコと異世界(その2)
ネコと異世界(その3)
ネコと異世界(その4)
:
ありがとう
そして・・・
さようなら
:
クルミ「神隠しって、知ってる?」
「・・・え、いきなりどうしたの?」
クルミ「突然、人がいなくなっちゃう現象なんだって」
「ああ、映画や昔話にもたまに出てくるよね」
クルミ「噂があってね・・・突然、音が聞こえなくなることがあるんだって。そうして、次に目を開けたら全く知らないところにいるの」
・・・音がしない?
全く知らないところに飛ばされる??
母親「それがあたしたちの希望なんです」
クルミ「うん・・・コハクはきっと神隠しにあったんだって。
そして、今でもどこかで生きてると思う。・・・ぜったいに」
:
:
パミミ「神隠し??」
エルル「はい、ご存知ないですかぁ?」
パミミ「あれだよね、映画や昔話にたまに出てくるやつ」
エーゴ「人が突然いなくなるって現象だろ」
エルル「はい、お二人とも一般知識としては合格です♪」
パミミ「一般知識?この先があるの?」
エーゴ「こんなもん、非科学的なただのオカルトだろ」
エルル「はい、そうです。正直、だから何ってお話だと思いますね〜」
エーゴ「・・・」
エルル「・・・でも」
パミミ「でも??」
エルル「オカルトとか作り話で片付けちゃうには、あまりに目撃例や体験談が多いんですよねぇ」
パミミ「・・・体験談?」
エルル「ええ、そうなんです。ちょっと目を離した瞬間に人が消えたとか、変な光に包まれたと思ったら見たこともないところに立っていたとか」
パミミ「ほええ・・・」
エーゴ「多いというのは、どのくらいだ?」
コホンと軽く咳払いして、いつもの手帳をパラパラとめくり始める。
しばらくして目当てのページにたどり着いたのか、手を止めてほほ笑みながら口を開いた。
エルル「目撃の方が153件、体験談は25件ですね♪」
パミミ「ほえ!?それってホントに多いジャン!」
エルル「そうなんですけど・・・」
満面の笑みで、彼女は言葉を繋げた。
エルル「そのうち目撃133件、体験17件が勘違いでした」
パミミ「まぁそんなもんかもだね・・・」
エルル「で、さらに目撃16件、体験6件が詐欺でしたぁ♪」
パミミ「ちょwww」
エルル「もう笑うしかないですね♪」
パミミ「はぅ・・・でもエルルたん、スゴイね・・・そんなにいっぱい詐欺団体を潰してくるとか」
エルル「潰す?どうしてですかぁ?」
パミミ「ほえ?だって詐欺って悪いことでしょ」
エルル「一般的にはそうかもですが、別に私が被害にあってないので潰す理由がないですねぇ」
エーゴ「・・・逆に生かしておいた方が得ってことか」
エルル「さすがエーゴ君、わかってますね♪」
パミミ「ほえ?どゆこと??」
エーゴ「詐欺行為を見逃すことで、そいつらには一つ借りができてしまうってことだ。最悪の相手にな」
エルル「はい、また善意の協力者が増えました。わーいです♪」
パミミ「・・・善意って、なんだろうね><」
エーゴ「なぁ、姉貴」
エルル「なんですか、弟くん♪」
エーゴ「・・・数が合ってないな」
エルル「そうですね、目撃4件がどうしても論破できなかったんですよねぇ・・・」
パミミ「ほえ〜〜」
エルル「号泣しながら、それでも主張は一貫してたんです」
エーゴ「号泣させるなよ・・・」
エルル「そうですね、そこは反省です。最後の方はもう何を言ってるのかよく聞き取れなかったですし」
パミミ「反省の方向性が間違ってるのわw」
エルル「いえいえ、間違ってないですよぉ。私のお仕事は情報を得ることなので♪」
エーゴ「残りは?」
エルル「はい?」
エーゴ「ごまかすな。体験談2件が残っているだろ」
エルル「あー、それは体験談って言っても、また聞きのレベルなんですよねぇ」
エーゴ「また聞き?」
エルル「はいっ。体験談として話してたのを聞いたことがあるって」
パミミ「ええっ!?じゃ、じゃあ元ネタの人たちに直接聞きに行こーよ!何か追加で聞けるかもだし><」
エルル「・・・残念ながら、それはムリですねぇ」
パミミ「ほえ?どうして??」
エルル「だって・・・」
彼女は胸の前で手を組み、そっと目を閉じた。
エルル「だって・・・元ネタの方、おふたりとももう亡くなってましたから」
:
:
:
ニャプリルの幻想日記
〜最終章〜
ネコと異世界 - 最終話
:
:
:
亡くなった二人を思い、エルルは胸の前で手を組みそっと目を閉じていた。
だが、彼女を知る人間なら、死者に対する祈りや敬意の念など持ち合わせていないことは誰でも知っている。
つまり、そういう演出であることを知っている。
その証拠に数秒後、彼女は「それは置いといて」と前置きをし、サバサバと続きを語り始めた。
エルル「まぁでも、神隠しなんて情報屋からしたら危ない理論でしかないですからねぇ。暴論と言ってもイイです。そんなのがほんとにあるのであれば、何の情報も痕跡も残さずに移動できちゃうってことですから」
パミミ「でも映画とかにもなってるけど・・・」
エルル「映画と現実を一緒にしないで貰えますかぁ?」
エーゴ「・・・だとすると、この石はなんだ?」
彼女がポシェットから取り出した石をつまみ上げて眺めてみる。
・・・宝石の原石か何かか?
エルル「その7人の共通点の1つだったんで、一応入手してみました。みんなこの原石あるいは宝石を持っていたみたいなんです」
エーゴ「7人?」
エルル「はい♪」
パミミ「ん?目撃4件、体験2件なんだよね?」
エルル「はい、4+2=7です♪」
パミミ「あ、そっか♪」
エーゴ「そっかじゃねーだろ。6だわ」
パミミ「危ない・・・これが情報屋さんの論破力><」
エルル「いえ。からかっただけですぅ」
パミミ「はぅ><」
エルル「うふふ♪」
エーゴ「てことはもう1人・・・」
エルル「・・・」
エーゴ「ニャプもこれを持ってたってことか」
エルル「はい、ご名答♪彼女のコレクションにこれが含まれてるのを知ってます。誰かに売ったって情報もないですし、今も持ってると思いますよぉ」
エーゴ「なるほどな」
エルル「ちなみにこれ、小ぶりの原石ですが200万します♪姫のは加工済みなので1000万くらいですかね」
パミミ「200万!?ってことはさらに追加料金がいるの!?;;」
エルル「いいえ〜、そこは既に頂いた手付金の中で対応しますよぉ。姫を助ける難易度からきちんと計算して見積もらせて頂いておりますので、よっぽど想定外の事態が起きない限り追加料金は頂きません♪」
パミミ「はぅぅ、良かった・・・」
エルル「うふふ、良かったですねぇ^^」
エーゴ「てことは、ニャプは神隠しにあったってことか?」
エルル「・・・」
パミミ「この石を使ってボクらも神隠しに合えば、ニャプたんに会えるってこと!?」
エルル「・・・」
エーゴ「・・・」
エルル「・・・ぷっ、あは」
パミミ「ほえ??」
エルル「あははは。おっかしぃ〜♪・・・そんなわけないじゃないですかぁ♪」
「「は??」」
エルル「最初に言った通りですよぉ。神隠しなんて情報屋からしたら認められないし、納得もできないんです。ありえないって言い切ってもいいくらいですよぉ?」
エーゴ「・・・」
エルル「仮に・・・仮にですよぉ?万が一にも神隠しがあったとして、狙って発動させるなんて話、聞いたことありません。無理ですね〜♪」
パミミ「でも、でも!」
エルル「運よく神隠しに巻き込まれたとしても、飛ぶ先って毎回同じなんですか?
同じだとしてもその飛んだ先でどうやって姫を探すんですかぁ?
彼女、じっとしてるような人じゃないですよぉ?」
パミミ「でも・・・」
エルル「私が情報屋に依頼して、これが結論って伝えられたら怒っちゃいますね^^」
パミミ「・・・で・・・も・・・」
エルル「でもですよね。私も他に考え付かなくて、お手上げなんです。さすが姫の案件ですよぉ。もう泣いちゃいそうなんです♪」
エーゴ「・・・そういう割にはいい笑顔じゃねーか」
エルル「それはあなたたちが笑わせるからですよぉ。パミパミちゃんならまだしも、エーゴ君が何を言ってるんですか?らしくないですね。不測の事態を期待するなって、前に教えましたよね?」
エーゴ「・・・ちっ」
エルル「エーゴ君・・・変わっちゃいましたね。随分弱くなっちゃって、お姉ちゃんはガッカリしました」
エーゴ「は?」
エルル「ん?」
エーゴ「なら、試してみるか?」
エルル「いいですよぉ♪」
パミミ「・・・やめて」
「「は?」」
パミミ「やめてよぉ・・・姉弟ケンカなんてしてる場合じゃないでしょ・・・こんなことしてる間にもニャプたんはお腹を空かせてるよぉ・・・」
「「・・・」」
パミミ「・・・エルルたん、もうこれ以上、情報はないんだよね?」
エルル「はい。ごめんなさい。エルルたんはチカラ不足でした」
パミミ「ううん・・・200人近くに聞き込みしてくれるとかボクらにはできなかったから・・・ありがと・・・」
エルル「・・・」
パミミ「でも・・・でもこれから、どうすればいいの?どうしたらニャプたんを助けられるの??」
エルル「はい、それで今日は依頼主であり、リーダーであるあなたに意見を聞きに来ました」
パミミ「・・・ボク?」
エルル「はい。姫がいなくなって1ヶ月近くです。もうのんびりできる時間もありません。これからどうするかをパミパミちゃんが決めてください。私とエーゴ君はそれに従いますから♪」
:
:
3日目。
今日はクルミと一緒に川下の方へと向かっている。
彼女の妹を探すために。
彼女の妹に関する何かを探すために。
クルミの妹「コハク」がいなくなったのは2年前。
当時、5歳だったらしい。
クルミはそれから2年間、毎日のようにコハクを探し続けているのだという。
そして昨夜、彼女と彼女の母親は「神隠し」に一縷の希望を見出していると言っていた。
・・・神隠し。
いつもだったらくだらない妄想と切り捨てるレベルの、現実味のない話と思う。
でも・・・今のあたしの頭には、可能性の1つとして引っ掛かっていた。
神隠しは、あるのかも知れない。
その理由、それはあたし自身。
記憶はまだはっきりしないが、3日前あたしはここではないところにいた。
そして今、あたしはここにいる。
・・・もしかしたら、あたし自身が神隠しに巻き込まれたんじゃないだろうか。
クルミ「タイヤキちゃん、川下ってこっちだよね?」
「あ、うん。そうだね。川が流れていく先の方だよ」
頭をぶんぶんと振って、仕事モードに切り替える。
色々な想像はできる。でもそれは情報をできる限り集めて体。
神経を研ぎ澄まし、注意深く辺りを探る。
「!?」
クルミ「ん?どうしたのタイヤキちゃん。何か見つけてくれた?」
「ううん、違う・・・1つ聞いてもイイ?」
クルミ「もちろん、いいよ」
「あのさ、昨日お母さんと話してた・・・「キリ」って何?」
クルミ「あ、うん。・・・たまにこの近くで霧が出るときがあるんだ」
「へぇ・・・」
クルミ「でね、その霧に飲み込まれちゃうと、出てこれないって」
・・・キリに・・・ノミコマレル??
クルミ「うん・・・あれはね、魔物なんだって」
「キリの魔物?」
クルミ「大人たちが言ってた。霧の中に魔物が潜んでるんだって。唸り声とかも聞こえるって」
・・・なるほど。それでか。
少し遠くの山の方に変な気配があるのは。
アレはたしかにヤバそう。
たぶん、あたし一人じゃ勝てないくらい。
気配はまだまだ遠い。
今日はエンカウントしないだろうけど、注意は怠らないようにしないといけない。
でも・・・同時に嫌な考えも頭をめぐる。
仮に・・・あたしが飛ばされたのも、コハクが飛ばされたのも両方神隠しだとして。
・・・その2つは果たして同じなのだろうか?
もし、神隠しに2種類あったら?
飛ばされるものと、飛ばされないものがあったとしたら。
クルミ「どうしたの?タイヤキちゃん」
「ううん、なんでもない」
でもその問いは・・・クチには出せなかった。
その後は会話も少なめに、川に沿って2時間ほど探索しながら歩いていた。
収穫は・・・ゼロだった。
2年前だから仕方ないのかも知れない。
無理なのかも知れない。
むしろ、よくイヤリングが残っていたなってレベルだと思う。
隣を歩く女の子は、視線が下がり歩調もかなりゆっくりになってしまっていた。
「休憩しよっか」
クルミ「あ、うん・・・」
「こっちにちょうどいい洞窟がある。ここにしよう」
洞窟というより、ほら穴のようなところであたしたちは腰を落ち着けた。
ポシェットからおやつを取り出して、あたしに手渡してくれる。
今日のおやつは、コハクの分も含めて3人分あった。
収穫がゼロなのは、悲しむべきというより喜んでいいのかも知れない。
2年経って残っている痕跡なんて、きっとロクなもんじゃないから。
でも・・・このままじゃ彼女の捜索は終わらない。
クルミはきっと、明日も明後日も探し続けるだろう。
クルミ「あのね、タイヤキちゃん」
「ん、何?」
彼女はなぜかそのあと、黙り込んでしまった。
聞きたい、でも聞きたくない・・・そんな揺れる感情が明白に見える。
そこまで迷う質問って何だろう?
あたしには想像がつかず、ただ彼女が喋るのを待っていた。
・・・!?
クルミ「あの・・・あの!」
「しっ」
クルミ「え!?」
・・・囲まれた。
強い敵はいないと思ってたから、ちょっと油断したかもしれない。
・・・ガルルル
クルミ「え、え!?」
クルミも気づいたようだ。
オオカミたちの唸り声に。
クルミがあたしに体を寄せてきて、入口へと目をやった。
唸り声と共に、2匹のオオカミが顔をのぞかせる。
後ろにはさらに10匹くらいいるようだ。
「大丈夫」
震える少女に声をかける。
あからさまに戦闘力が劣る仲間を抱えていたから、あえてこの洞窟を休憩に選んだんだ。
敵に囲まれないように、入り口が一つしかないこの場所を。
ショートソードとダガーを鞘から抜き、目の前でクロスして構える。
敵を見据えて、一歩間合いを詰めようとした・・・そのとき。
クルミ「だめぇえええ!」
「え!?」
突然クルミが大きな声を出し、あたしとオオカミの間に割って入ってきた。
「ちょ・・・何してるの、危ないから後ろにいてっ!」
クルミ「ダメ!」
「危ないってば!」
クルミ「ダメ!今度こそ・・・今度こそクルミが守るの!」
彼女は手を左右に大きく広げ、ブンブンと首を振る。
クルミ「もう、後悔したくないからっ!」
「いいから、どいてっ!」
クルミ「クルミは・・・お姉ちゃんなんだからっ!」
???
彼女が何を言おうとしているのかよくわからない。
でもこのままだと彼女はケガをしてしまう。
・・・仕方ない。
ちょっと強引だけど当て身を入れて気絶させるしか・・・。
「連続魔〜〜〜><」
「はにゃ!?!?」
聞き覚えのある声と共に、見たことのある魔法が飛んできた。
風が渦を巻き、数匹のオオカミをなぎ倒す。
新たな敵を感知し、無傷のオオカミたちが詠唱者に向かって駆け出す。
・・・そりゃそうだ。
なんで自分の近くの敵じゃなくて、集団の真ん中に魔法を打ち込むのニャ・・・。
「やーーーん><」
「やれやれ・・・お前を先に行かせると戦況が悪化するな」
「文句言ってないで助けてっ!リーダー命令なんだからっ><」
「・・・このくらい自分でなんとかしろよ」
「いたっ、噛まれた、噛まれたよぉ;;」
「えー、この子、冒険者なんですよねぇ・・・なんでこんなに弱いんですかぁ?」
「オレにも理解できん」
「噛まれてる、噛まれてるってばぁ;;」
「しょうがないですねぇ・・・エーテルパクト」
妖精がふわりと飛び出したかと思うと、オオカミに噛まれている子に向けて光のラインが結ばれ、傷が徐々にふさがっていく。
「ありがと〜;;」
「後衛さんにこの魔法かけたの、初めてなんですけどぉ」
「はぅ、エルルたん、学者さんだったんだね」
「この手帳を見ればわかるでしょお?」
「いや、武器じゃなくて普通の手帳だと思うけど・・・」
「両方兼ねてるんですよぉ。あ、ちなみにこの魔法、想定外なので別料金ですから♪」
「うぐぅ><」
敵を一掃した後、騒々しい連中が洞窟の中に入ってきた。
そしてあたしたちと・・・あたしと目が合う。
「いたーーっ、やっと見つけたっ♪」
「・・・は??ほんとにいたな」
「えええっっっ!?!?!?どーゆーことですかぁ???
ねぇ、何が起きたんです?私は絶対に、絶対に、ぜーーーったいに無理だって言いましたよね?いったい何が起きるとこうなるんですかぁ!?」
頭の中のモヤモヤが弾ける。
そこには3人の、確かに見覚えのある3人のララフェルの姿があった。
エルル「・・・ほら言ってる!私、無理だってちゃんと言ってる!」
エーゴ「ほらってなんだよ。勝手に回想シーンを入れ込もうとするな」
パミミ「でもエルルたんはボクに任せるって言ってくれてるじゃん><」
エルル「そうなんです。任せた結果がこのデタラメさ加減で、エルルたんは頭を抱えてるんです。
あなたに任せた結果が”ボクらも神隠しにあってみよ〜♪”ですよ?
自分から神隠しにあうとかありえないんですけどっ!さんざん言いましたよね!」
パミミ「あえたからいいじゃん♪」
エルル「いいジャンじゃないですよぉ。しかもパミパミちゃん、実際に神隠しに巻き込まれるとき、逃げようとしてましたよねっ!」
パミミ「だって、なんか変な光に飲み込まれそうになって怖かったし・・・><」
エルル「目的を忘れてるじゃないですかぁ!私とエーゴ君が捕まえてなかったらどっか行ってましたよね?あなたが石を持ってたにも関わらず」
パミミ「はぅ;;」
エルル「しかも神隠しにあった後、”ほえ〜、ここって異世界じゃない?だとしたらチートあるはずだお!きっと空飛べちゃうのわ♪”とか言って崖から飛ぼうとしてましたよね?」
パミミ「貰ったチートの種類を間違えただけだもん><」
エルル「貰ってないですから!能力とか何も変わってないですからっ!」
パミミ「いやでも、ほら!ちゃんとニャプたんに会えたし♪」
エルル「結果論です。究極の結果論ですよぉ!ここに向かうときだって”よくわかんないけどコッチに行ってみよっ♪”って言ってましたよね?よくわかんないに付き合わされる私たちのこと、考えたことありますかぁ?こっちの方が”よくわかんない”ですよぉ!」
パミミ「そんな怒らなくてもイイじゃん・・・エーゴたんも何か言ってあげてよ〜;;」
エーゴ「・・・考えても答えはない。あきらめろ」
エルル「そうですね・・・あきらめます」
パミミ「なんでよ、も〜〜〜><」
目の前で展開される漫才に、あたしたちはあっけにとられていた。
回想シーンって何よ、もう。
「パミちゃん・・・エーゴたん・・・情報屋」
「ニャプたん!」「ニャプ」「姫ぇ〜〜!」
パミミ「もう、ほんと探したんだお!1ヶ月も何の連絡もしないでいなくなって、心配したんだからぁ・・・謝んないと許さないからね;;」
「あ、うん、ごめん・・・しかも記憶が飛んでたみたいで・・・やっと今、思い出した」
エーゴ「記憶が飛んでた??」
「うん、ちょっと飛ばされ方が・・・いや、でもみんなどうしてここへ?」
エーゴ「なかなか帰ってこないから、探しに来させられた」
・・・なかなか帰ってこない??
「ねぇ、パミちゃん・・・さっきあたしが1か月近く帰らなかったって言った?」
パミミ「うん、ほんとにほんとに心配したんだお;;」
「そっか・・・ごめん。でも・・・違うんだ」
エーゴ「・・・違う?」
「うん・・・あたし、たぶんその神隠しってのにあってこっちの世界・・・異世界なのかな?・・・に、来たみたいなんだけど」
パミミ「うん?」
「・・・あたしがこっちに来てから、”3日”しかたってないの」
クルミ「 ・・・!? 」
:
3日間・・・。
オレたちと、ニャプの間にある明確なズレ。
あいつが1か月近く意識を失ってたりしたとかは考えづらい。
とすると、本当にあいつの体感した時間はたったの3日なんだろう。
エルル「・・・ところで姫は3日間、ここで何をしてたんですかぁ?」
情報収集を生業とする姉貴が早速聞き込みを行う。
「この子の・・・クルミちゃんって言うんだけど、この子の妹がいなくなったって言うから一緒に探してたんだ」
エーゴ「それはいつだ?」
「だから、こっちに来てからずっと」
エーゴ「いや、違う。いなくなったのはいつだ?」
「2年前だって・・・」
エルル「2年前にいなくなった妹ちゃんを探してるんですか?今頃?」
「うん。で、もしかしたら・・・」
エルル「もしかしたら、その子も2年前に神隠しにあったかもってことです?そして、いつか帰ってくるのを毎日待っていたと?」
「そうみたい」
ちっ。
心の中で舌打ちをする。
情報のズレが、収束し始めた。
その妹がオレたちの世界に飛ばされてたとしたら。
時間の流れが10倍違うとしたら。
そして・・・・。
同じことを考えついたようで、姉貴が両手で顔を覆い小さくつぶやいた。
エルル「大失敗ですよぉ・・・」
何も気づいていないパミミは、エルルの言葉を理解できず首を傾げた後、ゆっくりと笑顔で向こうに歩み寄った。
パミミ「まぁでもニャプたんが見つかってよかった〜。じゃあボクたちもその妹ちゃんを探すのを手伝おっ♪」
クルミ「ダメ・・・」
パミミ「ほえ?」
クルミと呼ばれた少女がニャプとパミミの間に割って入る。
大事なものを守るように両手を広げ、明らかに敵意を持ったまなざしで。
クルミ「2年間・・・ずっとずっと後悔してた」
パミミ「・・・?」
クルミ「次こそ・・・今度こそ絶対守るって思ってた」
パミミ「あの・・・ボクたちは敵じゃなくって・・・ニャプたんの仲間で・・・」
クルミ「だからなに!2年前みたいには絶対にしない・・・。わたしは、クルミはお姉ちゃんなんだから!」
泣きそうな顔で、彼女はオレたちの間に立ちはだかる。
2年間の思いを携えて。
パミミ「でも・・・だって・・・」
クルミ「・・・」
この少女も気づいてしまっている。
いや、ずっと疑問に思っていたことが、「オレたちによって」繋がってしまったんだろう。
パミミ「え・・・あの・・・ボクたちはあの・・・」
パミミは何かをクチにしようとしていたが、言葉になっていなかった。
小さな女の子は手を広げたまま、首を横に振り続ける。
エーゴ「おい、パミミ・・・」
パミミ「うぅ・・・・」
エーゴ「・・・お前も気づいたんだろ?」
パミミ「だって・・・妹って年下ってことでしょ・・・なんで・・・」
エルル「・・・3日が30日なら、2年は20年ですね」
エーゴ「・・・まさか、お前が言ってたことが全部当たってるとはな」
エルル「思い付いたのを言っただけだったんですけどね・・・あと、お前じゃないです」
彼女が帰ってこない理由・・・そうですねぇ・・・今のところ考えられるのは3つくらいですかね・・・
・自分では帰れないところにいる。
・あるいは、記憶をなくしていて帰る場所を見失っている。
あともうひとつ、考えられるとしたら・・・
・”新しい居場所ができた”とかですかね。
・・・探しに来るべきではなかった。
待っていれば、ニャプのことだからなんとかして帰ってきただろう。
だが・・・それもきっと、グッドエンドではなかった。
オレたちの目の前で手を広げている女の子。
震えながら、でも一生懸命こっちを睨みつけてる女の子。
髪は雪のように白くて、ピンと立ったネコ耳。
少し青味がかった目、細いまゆげ、小さめの鼻。
目の前にいる二人のミコッテは何もかもがそっくりで、あたかも歳の離れた姉妹のようだった。
:
:
:
「2人ともどうしたの!?」
家に入るとお母さんが慌てて声をかけてきた。
クルミもタイヤキちゃんも、今にも消えちゃいそうな表情だったってあとで言っていた。
だって仕方ないと思う。
頭の中がぐちゃぐちゃで、どうやって帰ってきたのかも覚えてないくらいだったし。
突然現れた3人の子供(?)たちと一旦別れ、あたしたちは家に戻ってきた。
エーゴと呼ばれた人が、明日帰るとタイヤキちゃんに伝えていた。
彼らも神隠しにあってきたらしいけど、そんなに帰る時間を指定できるのかってタイヤキちゃんが聞いたら、エルルって呼ばれてた子がだいたい法則はわかりましたって言ってた。
自分で体験すると、情報量が違うんだって。
よくわかんないけど。
どうでもいいけど。
あまりの疲れに、あたしたちは部屋でうずくまっていた。
台所から包丁の音が聞こえてくる。
クルミ「ねえ、タイヤキちゃん」
「・・・うん」
クルミ「あたしね・・・コハクが帰ってきたら食べてもらおうって思ってクッキーを作るの練習したんだ」
「・・・うん」
クルミ「それがね、このクッキー。ごはん前だけど良かったら食べてみて」
「・・・うん」
クルミ「どう?おいしい?」
「・・・うん」
クルミ「コハクってね、すごく食いしん坊でね・・・あたしの分もおやつ食べちゃって、よく怒ってたの」
「・・・うん」
クルミ「・・・よかった」
「・・・」
クルミ「ほんとに・・・良かった・・・」
「・・・うん」
クルミ「あのね・・・」
「・・・うん」
クルミ「あのね・・・」
「・・・うん」
クルミ「これからも・・・」
「・・・」
クルミ「ずっといっしょに・・・」
「・・・・・・・・」
答えは聞こえなかった。
疲れのせいで、わたしはいつの間にか眠っていた。
そして、目を覚ました時、この部屋にはわたししかいなかった。
妹が見つかるまで絶対に泣かないって、約束した。
今日までずっとその約束を守ってきた。
だから・・・
だから今日は・・・
クルミ「うぅ・・・・ううううああ」
クルミ「やっと・・・やっと・・・会えたのに・・・・どうして・・・うわーーーん」
思い切り、泣いた。
:
:
母親「クルミ!」
驚いたお母さんが慌てて部屋に駆け込んでくる。
クルミ「あーーーん、うわーーーん」
母親「どうしたの!?」
クルミ「タイヤキちゃんが・・・コハクが・・・またいなくなっちゃう・・・」
母親「・・・そっか・・・気づいちゃったか」
ぎゅっと抱きしめられる。
もうすぐ10歳になるから普段なら恥ずかしいのに・・・あたしは思いっきり抱き付いた。
クルミ「・・・え?お母さん、気づいてたの?」
母親「・・・うん。初めて見たときにそうかなって思って・・・だからちょっと泣いちゃった・・・」
クルミ「・・・ずるい、お母さんずるいよ」
母親「でも、どう考えても理屈が合わなくてね・・・で、さっき話を聞いてようやく納得できた感じ」
クルミ「・・・・うぅ、でも、またいなく・・・」
母親「いるわよ。ね、入ってきて」
母親が振り向くと、タイヤキちゃんが・・・ううん、大人の「コハク」が部屋に入ってきた。
クルミ「タイヤキちゃん・・・コハクなの?」
「わかんない・・・でも、ここで食べた・・・あの・・・クルミちゃんのお母さんの料理は昔食べた気がしてた」
母親「ふふ、コハクが大好きだった料理を作ったのよ。思い出してくれないかなって思って」
「そう・・・なんだ・・・ごめんなさい・・・」
母親「仕方ないわよ・・・だって20年ぶりだったんでしょ?」
「うん・・・そうみたい・・・たぶん」
母親「無事でよかった・・・また会えて・・・ほんとに良かった・・・」
「あの・・・あたしの、お母さん・・・なの?」
不安そうにのぞき込む「コハク」に、お母さんはゆっくりと横に首を振った。
母親「ちがうわ」
「ちがう・・・?」
母親「ええ」
そう言った後、お母さんは優しく微笑んでコハクを優しく抱きしめた。
母親「あなたはまだ小さかったからね・・・あたしのことを”ママ”って呼んでたわ」
「・・・ママ?」
母親「ええ、おかえり、コハク」
コハク「ママ・・・ママ・・・ただいま、ママ・・・」
母親「おかえり・・・」
クルミ「おかえり、コハク」
コハク「ママ、お姉ちゃん・・・あたし、今までずっと・・・うぅ・・・うわーん」
:
ご飯を食べながらいっぱい話した。
今まで起きたこと。
コハクが子供だった頃の話。
2年分?20年分?
いっぱい話して、いっぱい笑って、いっぱい泣いた。
・・・ピンポーン
呼び鈴がなるのを聞いて、母親がいたずらっぽくウインクして見せた。
それにうなづいてクルミとコハクがドアに駆け寄り、ゆっくりと開けた。
「ただいま〜。いやぁなかなか帰れなくて悪かったね。どうだい?何も起きなかったかい?」
クルミ「おかえり〜!お土産は?」
「ああ、いつも通り買ってきたよ。クルミと、コハクの分もね」
コハク「・・・」
「あれ?母さん、髪型を変えたかい?若々しく見えるよ、まるで出会ったころみたいだ・・・。うん、イイと思うよ、似合ってる」
コハク「ありがと、パパ」
父親「え・・・?パパ??」
母親「ふふ、若々しくなくて悪かったわね、あなた」
父親「・・・あれ?どうして母さんが二人いるんだ??」
クルミ「さあて、どうしてでしょうか♪」
父親「え・・・もしかして・・・」
うなづくようにコハクの頬から涙が一筋零れ落ちた。
コハク「ただいま、パパ。・・・お土産、ありがとう」
:
:
:
:
:
:
:
「はああぁ〜」
不機嫌そうなため息が隣から聞こえる。
エルル「私、久々にクエスト失敗したんですけどぉ」
エーゴ「奇遇だな、オレもだ」
エルル「あなたはどうだっていいでしょ。元々タダ働きなんですから。私は2000万ですよぉ・・・ショックで寝込みそうですぅ」
エーゴ「仕方ないだろ、まさかこっちがニャプの本当の居場所だったなんて思ってもみなかったからな」
エルル「思ってくださいよぉ」
エーゴ「お前が調べろよ。情報屋だろ?」
エルル「異世界とか調べられるわけないでしょ?あと、お前じゃないって言ってますよね?あなた、帰ったら潰しますよ?」
エーゴ「なら、置いてくとするか」
エルル「べー!あなただってあの子がいなければ自分で帰れないでしょ!」
むしろこんな異世界に、狙って飛べる方がおかしいわけだが。
パミミのトラブルメーカーの気質が、今回はわけのわからない風にかみ合ってしまったか・・・。
エーゴ「てか、本当に帰れるんだろうな?」
エルル「大丈夫ですよ、仕組みは理解しました。ただ”故意に”条件を満たすのにあのコが必要みたいですけど」
エーゴ「やれやれ、偶然を必然に変えるって相変わらずデタラメすぎるな」
そういや考えてみると、エルルとこうして二人で話すのも久しぶりだった。
エルル「まとめると、姫は元々こっちの出身で、子供の頃に神隠しに巻き込まれたってことみたいですね」
エーゴ「そうなんだろうな」
エルル「道理で・・・あんな奇麗な女性が捨てられるはずがないって思ってましたよぉ」
エーゴ「しかし5歳で一人きりか・・・よく生きてこれたもんだな」
エルル「そうですねぇ・・・こっちもまた奇跡を越えてる気がしますね」
エーゴ「あいつのあの技術はどこで習ったんだ?」
エルル「それには、実は1つ、仮説があるんですよね〜♪2000万でどうです?」
エーゴ「オレ相手に損を取り戻そうとするな」
エルル「うふふ、まぁそれより、これからどうしますか?」
エーゴ「どうとは?」
エルル「もう姫は戻ってこないじゃないですか。家族がいるわけですし」
エーゴ「・・・だろうな」
エルル「だったら、さらいませんかぁ?」
エーゴ「は?」
エルル「前も言いましたけど、あのシロネコと言えども、私とエーゴ君が組めばなんとか捕まえられると思うんですよぉ」
エーゴ「・・・」
エルル「で、そのまま向こうの世界に戻って宝石も取り上げちゃえば、姫はまず一人でこっちに帰ってこれないことになります。そうしたらいずれあきらめもついて、私と2人、幸せに過ごすんです。どうですか?さらうことさえできればなんとかなっちゃうでしょう?」
エーゴ「なんで2人なんだよ」
エルル「適材適所と思いますけどぉ?」
エーゴ「とはいえ、さらうのは無理だろうな」
エルル「どうしてですかぁ?私の情報分析力と、あなたの身体能力が組むんですよ?異世界だろうと追い詰める自信はありますけどぉ?」
エーゴ「そうしたら、あいつがニャプと組むだろ」
エルル「・・・パミパミちゃんですか?」
エーゴ「ああ」
エルル「・・・短い付き合いですが、あのコならそうしそうですね」
エーゴ「そうなったら、あいつの行動を読むのはオレたちじゃ無理だ」
エルル「・・・はぁ、そうですねぇ。あのコって敵に回すと厄介ですよねぇ、味方にすると何も役に立たないのに・・・」
やれやれと言った感じで両手を広げる。
まぁ、エルルも本気でさらうつもりはないだろう。
明日帰るまでの時間つぶしの会話に過ぎない。
エーゴ「今回のは、誰も悪くないし、どっちを選んでも失敗だった。
パミミのやつもそれをわかってるし、たぶんニャプも自分でわかってる」
エルル「で、なんであのコはずっと泣いてるんですかぁ?」
エーゴ「・・・」
エルル「ねぇ?どう思いますかぁ?」
エーゴ「・・・・・・・明日、あいつが来た時に、笑えるようにだろ」
エルル「涙を枯らそうとしてるとかですかぁ?」
エーゴ「知らん」
エルル「バカみたい」
エーゴ「そうだな」
エルル「・・・でも、キライじゃないかなぁ」
異世界で見る空は、オレたちの世界とはあまり違わないように見えた。
星の配置とかが違うんだろうが、そんなところまで興味はない。
ニャプには明日帰るとだけ告げた。
きっと、会いに来てくれるだろう。
・・・最後に、な。
エーゴ「ふん、まぁ後のことはあいつに任せよう。・・・リーダー様に、な」
エルル「わかりましたぁ。でも明日まで暇ですねぇ」
エーゴ「なら、ちょっと遠出してみるか?」
エルル「デートのお誘いですかぁ?エーゴ君は私の好みと180度違うんですけどぉ。主に性別が♪」
エーゴ「あいかわらずだな・・・」
エルル「で、なんです?」
エーゴ「ちょっと面白いやつを見つけてな」
エルル「あ〜、アレですか」
エーゴ「気づいてたか」
エルル「当然ですよぉ」
エーゴ「ふん、じゃあちょっとリーダー様に断りを入れてくる」
エルル「はあい♪」
一人、岩の上に腰掛けて膝を抱えているパミミに近づいた。
肩が小刻みに揺れ、嗚咽が聞こえてくる。
エーゴ「なぁ、パミミ」
パミミ「うぅ・・・ヒック・・・」
エーゴ「エルルとちょっと出かけてくる。夜明けまでには戻る」
パミミ「うぅ・・・わかった・・・;;」
火は絶やすなよ。
あと、飯くらい食っとけ。
そう言い残して去ろうとしたオレの背中に、あいつは話しかけてきた。
パミミ「ねぇ・・・エーゴたん・・・」
エーゴ「なんだ?」
パミミ「なんで・・・なんでなの・・・」
顔を上げ、涙でぐちゃぐちゃになった顔で。
パミミ「なんで・・・
なんでボク・・・・・・・ニャプたんにおめでとうって言ってあげれなかったんだろ・・・
・・・ずっと、ずっと家族に会いたがってたのを知ってたのに・・・」
オレにはかける言葉が見つからなかった。
パミミも答えは求めていなかっただろう。
パミミ「・・・だから明日こそ言うんだ・・・
今までありがとう
そして・・・
さようなら・・・って」
:
:
:
:
〜エピローグ〜
腫れた目は、メイクでごまかした。
ママが手伝ってくれた。
明日帰るって言われたけど、時間は聞いていなかった。
だからこんな朝早くから出かける羽目になった。
あたしの近くを、妖精が飛んでいた。
家を出るところから、ずっとずっと付いて来てた。
さすが情報屋。この家を一晩で調べ上げてたらしい。
時折、ぐふふとか言いながら高度を下げようとしてたから、そのたびに踏みつぶす素振りでけん制した。
妖精も飼い主に似るみたい。変なの。
思ってた通り、彼らは例の、あたしがここに来た時に倒れてた川原にいた。
遠目からも、疲れ切ってる様子が見えた。
お互い様なのかな。
「こにちは」
「ニャ」
今まで何度もかわしてきたはずのあいさつなのに、なぜか遠く感じてしまう。
パミちゃんから10mほど離れて、エーゴたんと情報屋が控えていた。
あたしたちを見守るように。
昨日、3人に会えたことであたしの記憶は全部戻っていた。
少なくとも、彼らと会って以降の記憶は思い出したと思う。
パミちゃんは笑顔であたしを迎えてくれた。
目は腫れてたけど、それでも精一杯の笑顔だった。
「パミちゃんは、記憶、飛ばなかった?」
「ほえ?どゆこと??」
「あ、ううん、いいの」
あたしの記憶が飛んだのは神隠しの影響じゃなくて、どうも落下の影響らしい。
それが無かったら、もうちょっとうまく立ち回れていたはずだった。
でも、うまくってなんだろう?
どの結末が理想だったのかなぁ。
パミちゃんたちが迎えに来てくれなければよかった?
そしたらたぶん、あたしは自力で記憶を取り戻して、向こうの世界に帰っていたと思う。
あたしならきっと、できると思う。
でも、それじゃあ昨日の、彼らの顔を見た時の嬉しさを味わうことはできなかった。
いっそのこと、5歳の時に神隠しに合わなければよかった?
そしたらたぶん、家族とずっとケンカもしながら仲良く暮らしていたと思う。
盗賊なんかにならなくても良かっただろうな。
でも、それじゃあ彼らに会うことすらできなかった。
・・・何が正解か、あたしには最後までわからなかった。
「ねえ、パミちゃん」
「うん?なあに?」
「・・・あのさ、これからのことなんだけど」
「・・・うん」
彼の顔が少し曇る。
それでも頑張って笑顔を保とうとしているのが分かった。
「家族と・・・一緒にいたいと思う」
「・・・そっか」
「でさ・・・」
あたしの言葉を彼は早口で遮る。
「こっちに残るってことだよね、うん、やっと会えた家族だもんね、うんうん、良かった・・・おめでとう。あと、今までありがとう・・・元気でね、ニャプたん」
「・・・あ、ありがと・・・でも」
「ごめんね、こっちに探しにとか来ちゃって。でもそれで謎が解けたのかな。だとしたら頑張ってきたかいがあったかな。最後にニャプたんともお話しできたし・・・」
「最後?」
「うん」
「いいの?」
「うん」
「ほんとに?」
「・・・うん」
「・・・うそつき」
「・・・・・・・うん」
堪えられず、彼の目から涙が零れ落ちた。
「だって!だって仕方ないでしょ!ようやく家族と会えたんだよ?ずっと会いたいって言ってたの知ってるし。だから、だから笑顔でお別れしたかったのに・・・;;」
「ねぇ、パミちゃん」
「・・・うぅ;;」
「あたしね、随分前に、家族に会えてたんだよ?」
「・・・え?」
「パミちゃんとエーゴたんのお陰で、”家族”って言葉を聞いたら、2人のことが真っ先に思い浮かぶんだ。
あたしが路地裏でもう生きてるのが嫌になったときに救ってくれたこと、
あたしに笑顔を思い出させてくれたこと、
みんなで食べるご飯が美味しいんだって気づかせてくれたこと、
名前もなかったあたしに、ニャプリルって名前をくれたこと」
「・・・ニャプたん」
ニャプ「だから、だからあたしはこれからも家族と、パミちゃんとエーゴたんと一緒にいたいって思うんだ。・・・迷惑かな?」
パミミ「ニャプたん、いいの?」
ニャプ「うん、決めたんだ」
パミミ「・・・ニャプたん・・・おかえり、ニャプたん」
ニャプ「・・・ただいま」
エーゴ「ニャプ、いいのかそれで?」
遠くで話を聞いてたエーゴたんが歩いてくる。
ニャプ「うん、パパとママにはちゃんと話したよ。納得してくれた。で、ママからはほら、この服を貰っちゃった」
エルル「白のドレスですね、はぁはぁ」
ニャプ「なんであんた、息が荒いの?」
エルル「なんでもないですよぉ、ぐふふふ」
ニャプ「ママがね、実家を出るときに親から貰った服なんだって。あなたもこれを着ていきなさいって」
エルル「・・・それって」
ニャプ「パパはちょっと渋ってたけど、女の子はいつか家からいなくなるってママに説得されてた」
エーゴ「・・・」
ニャプ「たださ・・・1人だけどうしても納得してくれなくて・・・パミちゃん、エーゴたん、1つだけお願いがあるんだけど」
パミミ「うん、なぁに?」
あたしが後ろを振り向くと、ドレスの陰から女の子がひょこっと顔を出した。
ニャプ「・・・お姉ちゃんも、連れてっちゃダメかな?」
パミミ「ほえ!?」
エーゴ「・・・」
クルミ「だ、だって、こんな子供ばっかのところにコハクを預けるなんて心配だし!」
エルル「子供じゃないんですけどねぇ・・・ララフェルを知らないんですか?」
クルミ「お姉ちゃんなんだから、妹を守るのは当然だし!」
エーゴ「悪いが、妹の方がお前より強いぞ」
クルミ「だって、だって・・・やっと会えたから・・・これからも・・・一緒にいたいから」
ニャプ「お姉ちゃん、そうじゃないでしょ?お願いの仕方、ちゃんと教えたよね?」
クルミ「うぅ・・・恥ずかしいよ・・・コハクも一緒にお願いしてっ」
ニャプ「しょうがないニャア・・・」
そう言ってあたしたちは軽く手を握り、首をかしげながら精一杯の笑顔で言った。
「「お願いしますニャン♪」」
「「「・・・・」」」
エルル「はぁはぁ、い、いくら払えばいいんですかぁ!?」
エーゴ「そういうやつじゃねーよ」
パミミ「あは、あはは・・・、でもいいんじゃない。ボクは構わないお♪」
クルミ「・・・え、いいの?ほんとに!?」
エーゴ「まぁ、しかたないな」
ニャプ「ほら、お姉ちゃん、あたしの言った通りだったでしょ?^^」
クルミ「すごいね・・・コハク、いろんなこと知ってるんだ・・・」
エーゴ「・・・」
エルル「私も、女の子は大歓迎です♪」
エーゴ「いや、お前は関係ないだろ」
エルル「ん?」
エーゴ「は?」
不穏な空気は放置し、あたしはクルミの手を取った。
ニャプ「お姉ちゃん、一緒にいこっ」
クルミ「うん、これからはずっとね」
:
:
さ、時間ですねっ。
情報屋の一言により、向こうから闇が迫ってきた。
はぐれないようにみんなで手をつなぎ、流れに任せる。
振り返ると、遠くの方で2人の大人が手を振っていた。
あたしは彼らに向かいチカラ強くうなづいて見せる。
大丈夫、安心して。
・・・行ってきます、ママ、パパ。
・・・しばらくして光が戻り、目の前に見慣れた風景が戻ってくる。
クルミだけは驚いてキョロキョロしてたけど。
いや、パミちゃんもだ。あんた2回目じゃないの?
エルル「石は私の方で回収しますね。間違って飛んじゃうと大変ですし。てか、パミパミちゃんなら飛んじゃいそうですし」
エーゴ「それなりの価値もあるしな」
エルル「それが何か?私の報酬の一部で買ったものですけどぉ?」
パミミ「もー、なんですぐケンカするのさ・・・はい、じゃあこれ、渡しちゃうね」
エルル「はい、たしかに受け取りました。よかったら姫のカラーストーンも私の方で処分しちゃいますけど?」
ニャプ「カラーストーン?ああ、あれがカギだったの!?」
エルル「はい。実は向こうの世界の川原にもちっちゃい原石が落ちてましたよ。見つけて全部深めに埋めてきましたが」
ニャプ「そっか・・・まずかったかニャ?」
エーゴ「何がだ?」
ニャプ「あのネックレス、ママにあげてきちゃった」
パミミ「まぢで!?」
慌てるあたしたちに、情報屋はゆっくり首を振る。
エルル「まぁ、大丈夫だと思いますよぉ。よっぽど運が悪くないとこんなのに巻き込まれませんし」
ニャプ「ちょっと、3回も巻き込まれた人を前にそういうこと言う?」
パミミ「あはは、ニャプたんってば大変だね〜w」
エルル「いや、あなたの方がヒドイですよ」
パミミ「うぐぅ><」
ニャプ「あ、そういえばお姉ちゃんはみんなのこと知らないから、自己紹介しない?」
パミミ「いいね〜、ボク、パミミ!クルミたん、よろしくねっ♪」
エーゴ「エーゴ・リューゴだ」
エルル「エルル・リューゴですよぉ。御贔屓に♪」
ニャプ「えっ!ちょっと待って!?」
エーゴ「どうした?」
ニャプ「あんたたち・・・結婚したの!?」
「「だれがこんなやつと!!」」
クルミ「あはは、クルミはクルミです、あ、いや、違ってあの・・・わたしはクルミです」
パミミ「いいお、自分のことクルミで。かわいいし^^」
ニャプ「うんうん、おねえちゃん、カワイイにゃ♪」
クルミ「もーっ><」
笑い声が包む中、あたしは3日ぶりに帰ってきた世界を見渡した。
向こうに未練がないわけじゃない。
パパやママとももっと一緒にいたかった。
でも、あたしは決めたんだ。
こっちがイイって。
パミミ「じゃあさ改めて、ニャプたん!」
ニャプ「うん♪」
パミミ「クルミちゃんも!」
クルミ「はいっ」
3人のララフェルが微笑みながらあたしたちを招き入れてくれる。
「「「 ようこそ、異世界へ! 」」」
〜完〜
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ネコと異世界(その2)
ネコと異世界(その3)
ネコと異世界(その4)
:
ありがとう
そして・・・
さようなら
:
クルミ「神隠しって、知ってる?」
「・・・え、いきなりどうしたの?」
クルミ「突然、人がいなくなっちゃう現象なんだって」
「ああ、映画や昔話にもたまに出てくるよね」
クルミ「噂があってね・・・突然、音が聞こえなくなることがあるんだって。そうして、次に目を開けたら全く知らないところにいるの」
・・・音がしない?
全く知らないところに飛ばされる??
母親「それがあたしたちの希望なんです」
クルミ「うん・・・コハクはきっと神隠しにあったんだって。
そして、今でもどこかで生きてると思う。・・・ぜったいに」
:
:
パミミ「神隠し??」
エルル「はい、ご存知ないですかぁ?」
パミミ「あれだよね、映画や昔話にたまに出てくるやつ」
エーゴ「人が突然いなくなるって現象だろ」
エルル「はい、お二人とも一般知識としては合格です♪」
パミミ「一般知識?この先があるの?」
エーゴ「こんなもん、非科学的なただのオカルトだろ」
エルル「はい、そうです。正直、だから何ってお話だと思いますね〜」
エーゴ「・・・」
エルル「・・・でも」
パミミ「でも??」
エルル「オカルトとか作り話で片付けちゃうには、あまりに目撃例や体験談が多いんですよねぇ」
パミミ「・・・体験談?」
エルル「ええ、そうなんです。ちょっと目を離した瞬間に人が消えたとか、変な光に包まれたと思ったら見たこともないところに立っていたとか」
パミミ「ほええ・・・」
エーゴ「多いというのは、どのくらいだ?」
コホンと軽く咳払いして、いつもの手帳をパラパラとめくり始める。
しばらくして目当てのページにたどり着いたのか、手を止めてほほ笑みながら口を開いた。
エルル「目撃の方が153件、体験談は25件ですね♪」
パミミ「ほえ!?それってホントに多いジャン!」
エルル「そうなんですけど・・・」
満面の笑みで、彼女は言葉を繋げた。
エルル「そのうち目撃133件、体験17件が勘違いでした」
パミミ「まぁそんなもんかもだね・・・」
エルル「で、さらに目撃16件、体験6件が詐欺でしたぁ♪」
パミミ「ちょwww」
エルル「もう笑うしかないですね♪」
パミミ「はぅ・・・でもエルルたん、スゴイね・・・そんなにいっぱい詐欺団体を潰してくるとか」
エルル「潰す?どうしてですかぁ?」
パミミ「ほえ?だって詐欺って悪いことでしょ」
エルル「一般的にはそうかもですが、別に私が被害にあってないので潰す理由がないですねぇ」
エーゴ「・・・逆に生かしておいた方が得ってことか」
エルル「さすがエーゴ君、わかってますね♪」
パミミ「ほえ?どゆこと??」
エーゴ「詐欺行為を見逃すことで、そいつらには一つ借りができてしまうってことだ。最悪の相手にな」
エルル「はい、また善意の協力者が増えました。わーいです♪」
パミミ「・・・善意って、なんだろうね><」
エーゴ「なぁ、姉貴」
エルル「なんですか、弟くん♪」
エーゴ「・・・数が合ってないな」
エルル「そうですね、目撃4件がどうしても論破できなかったんですよねぇ・・・」
パミミ「ほえ〜〜」
エルル「号泣しながら、それでも主張は一貫してたんです」
エーゴ「号泣させるなよ・・・」
エルル「そうですね、そこは反省です。最後の方はもう何を言ってるのかよく聞き取れなかったですし」
パミミ「反省の方向性が間違ってるのわw」
エルル「いえいえ、間違ってないですよぉ。私のお仕事は情報を得ることなので♪」
エーゴ「残りは?」
エルル「はい?」
エーゴ「ごまかすな。体験談2件が残っているだろ」
エルル「あー、それは体験談って言っても、また聞きのレベルなんですよねぇ」
エーゴ「また聞き?」
エルル「はいっ。体験談として話してたのを聞いたことがあるって」
パミミ「ええっ!?じゃ、じゃあ元ネタの人たちに直接聞きに行こーよ!何か追加で聞けるかもだし><」
エルル「・・・残念ながら、それはムリですねぇ」
パミミ「ほえ?どうして??」
エルル「だって・・・」
彼女は胸の前で手を組み、そっと目を閉じた。
エルル「だって・・・元ネタの方、おふたりとももう亡くなってましたから」
:
:
:
ニャプリルの幻想日記
〜最終章〜
ネコと異世界 - 最終話
:
:
:
亡くなった二人を思い、エルルは胸の前で手を組みそっと目を閉じていた。
だが、彼女を知る人間なら、死者に対する祈りや敬意の念など持ち合わせていないことは誰でも知っている。
つまり、そういう演出であることを知っている。
その証拠に数秒後、彼女は「それは置いといて」と前置きをし、サバサバと続きを語り始めた。
エルル「まぁでも、神隠しなんて情報屋からしたら危ない理論でしかないですからねぇ。暴論と言ってもイイです。そんなのがほんとにあるのであれば、何の情報も痕跡も残さずに移動できちゃうってことですから」
パミミ「でも映画とかにもなってるけど・・・」
エルル「映画と現実を一緒にしないで貰えますかぁ?」
エーゴ「・・・だとすると、この石はなんだ?」
彼女がポシェットから取り出した石をつまみ上げて眺めてみる。
・・・宝石の原石か何かか?
エルル「その7人の共通点の1つだったんで、一応入手してみました。みんなこの原石あるいは宝石を持っていたみたいなんです」
エーゴ「7人?」
エルル「はい♪」
パミミ「ん?目撃4件、体験2件なんだよね?」
エルル「はい、4+2=7です♪」
パミミ「あ、そっか♪」
エーゴ「そっかじゃねーだろ。6だわ」
パミミ「危ない・・・これが情報屋さんの論破力><」
エルル「いえ。からかっただけですぅ」
パミミ「はぅ><」
エルル「うふふ♪」
エーゴ「てことはもう1人・・・」
エルル「・・・」
エーゴ「ニャプもこれを持ってたってことか」
エルル「はい、ご名答♪彼女のコレクションにこれが含まれてるのを知ってます。誰かに売ったって情報もないですし、今も持ってると思いますよぉ」
エーゴ「なるほどな」
エルル「ちなみにこれ、小ぶりの原石ですが200万します♪姫のは加工済みなので1000万くらいですかね」
パミミ「200万!?ってことはさらに追加料金がいるの!?;;」
エルル「いいえ〜、そこは既に頂いた手付金の中で対応しますよぉ。姫を助ける難易度からきちんと計算して見積もらせて頂いておりますので、よっぽど想定外の事態が起きない限り追加料金は頂きません♪」
パミミ「はぅぅ、良かった・・・」
エルル「うふふ、良かったですねぇ^^」
エーゴ「てことは、ニャプは神隠しにあったってことか?」
エルル「・・・」
パミミ「この石を使ってボクらも神隠しに合えば、ニャプたんに会えるってこと!?」
エルル「・・・」
エーゴ「・・・」
エルル「・・・ぷっ、あは」
パミミ「ほえ??」
エルル「あははは。おっかしぃ〜♪・・・そんなわけないじゃないですかぁ♪」
「「は??」」
エルル「最初に言った通りですよぉ。神隠しなんて情報屋からしたら認められないし、納得もできないんです。ありえないって言い切ってもいいくらいですよぉ?」
エーゴ「・・・」
エルル「仮に・・・仮にですよぉ?万が一にも神隠しがあったとして、狙って発動させるなんて話、聞いたことありません。無理ですね〜♪」
パミミ「でも、でも!」
エルル「運よく神隠しに巻き込まれたとしても、飛ぶ先って毎回同じなんですか?
同じだとしてもその飛んだ先でどうやって姫を探すんですかぁ?
彼女、じっとしてるような人じゃないですよぉ?」
パミミ「でも・・・」
エルル「私が情報屋に依頼して、これが結論って伝えられたら怒っちゃいますね^^」
パミミ「・・・で・・・も・・・」
エルル「でもですよね。私も他に考え付かなくて、お手上げなんです。さすが姫の案件ですよぉ。もう泣いちゃいそうなんです♪」
エーゴ「・・・そういう割にはいい笑顔じゃねーか」
エルル「それはあなたたちが笑わせるからですよぉ。パミパミちゃんならまだしも、エーゴ君が何を言ってるんですか?らしくないですね。不測の事態を期待するなって、前に教えましたよね?」
エーゴ「・・・ちっ」
エルル「エーゴ君・・・変わっちゃいましたね。随分弱くなっちゃって、お姉ちゃんはガッカリしました」
エーゴ「は?」
エルル「ん?」
エーゴ「なら、試してみるか?」
エルル「いいですよぉ♪」
パミミ「・・・やめて」
「「は?」」
パミミ「やめてよぉ・・・姉弟ケンカなんてしてる場合じゃないでしょ・・・こんなことしてる間にもニャプたんはお腹を空かせてるよぉ・・・」
「「・・・」」
パミミ「・・・エルルたん、もうこれ以上、情報はないんだよね?」
エルル「はい。ごめんなさい。エルルたんはチカラ不足でした」
パミミ「ううん・・・200人近くに聞き込みしてくれるとかボクらにはできなかったから・・・ありがと・・・」
エルル「・・・」
パミミ「でも・・・でもこれから、どうすればいいの?どうしたらニャプたんを助けられるの??」
エルル「はい、それで今日は依頼主であり、リーダーであるあなたに意見を聞きに来ました」
パミミ「・・・ボク?」
エルル「はい。姫がいなくなって1ヶ月近くです。もうのんびりできる時間もありません。これからどうするかをパミパミちゃんが決めてください。私とエーゴ君はそれに従いますから♪」
:
:
3日目。
今日はクルミと一緒に川下の方へと向かっている。
彼女の妹を探すために。
彼女の妹に関する何かを探すために。
クルミの妹「コハク」がいなくなったのは2年前。
当時、5歳だったらしい。
クルミはそれから2年間、毎日のようにコハクを探し続けているのだという。
そして昨夜、彼女と彼女の母親は「神隠し」に一縷の希望を見出していると言っていた。
・・・神隠し。
いつもだったらくだらない妄想と切り捨てるレベルの、現実味のない話と思う。
でも・・・今のあたしの頭には、可能性の1つとして引っ掛かっていた。
神隠しは、あるのかも知れない。
その理由、それはあたし自身。
記憶はまだはっきりしないが、3日前あたしはここではないところにいた。
そして今、あたしはここにいる。
・・・もしかしたら、あたし自身が神隠しに巻き込まれたんじゃないだろうか。
クルミ「タイヤキちゃん、川下ってこっちだよね?」
「あ、うん。そうだね。川が流れていく先の方だよ」
頭をぶんぶんと振って、仕事モードに切り替える。
色々な想像はできる。でもそれは情報をできる限り集めて体。
神経を研ぎ澄まし、注意深く辺りを探る。
「!?」
クルミ「ん?どうしたのタイヤキちゃん。何か見つけてくれた?」
「ううん、違う・・・1つ聞いてもイイ?」
クルミ「もちろん、いいよ」
「あのさ、昨日お母さんと話してた・・・「キリ」って何?」
クルミ「あ、うん。・・・たまにこの近くで霧が出るときがあるんだ」
「へぇ・・・」
クルミ「でね、その霧に飲み込まれちゃうと、出てこれないって」
・・・キリに・・・ノミコマレル??
クルミ「うん・・・あれはね、魔物なんだって」
「キリの魔物?」
クルミ「大人たちが言ってた。霧の中に魔物が潜んでるんだって。唸り声とかも聞こえるって」
・・・なるほど。それでか。
少し遠くの山の方に変な気配があるのは。
アレはたしかにヤバそう。
たぶん、あたし一人じゃ勝てないくらい。
気配はまだまだ遠い。
今日はエンカウントしないだろうけど、注意は怠らないようにしないといけない。
でも・・・同時に嫌な考えも頭をめぐる。
仮に・・・あたしが飛ばされたのも、コハクが飛ばされたのも両方神隠しだとして。
・・・その2つは果たして同じなのだろうか?
もし、神隠しに2種類あったら?
飛ばされるものと、飛ばされないものがあったとしたら。
クルミ「どうしたの?タイヤキちゃん」
「ううん、なんでもない」
でもその問いは・・・クチには出せなかった。
その後は会話も少なめに、川に沿って2時間ほど探索しながら歩いていた。
収穫は・・・ゼロだった。
2年前だから仕方ないのかも知れない。
無理なのかも知れない。
むしろ、よくイヤリングが残っていたなってレベルだと思う。
隣を歩く女の子は、視線が下がり歩調もかなりゆっくりになってしまっていた。
「休憩しよっか」
クルミ「あ、うん・・・」
「こっちにちょうどいい洞窟がある。ここにしよう」
洞窟というより、ほら穴のようなところであたしたちは腰を落ち着けた。
ポシェットからおやつを取り出して、あたしに手渡してくれる。
今日のおやつは、コハクの分も含めて3人分あった。
収穫がゼロなのは、悲しむべきというより喜んでいいのかも知れない。
2年経って残っている痕跡なんて、きっとロクなもんじゃないから。
でも・・・このままじゃ彼女の捜索は終わらない。
クルミはきっと、明日も明後日も探し続けるだろう。
クルミ「あのね、タイヤキちゃん」
「ん、何?」
彼女はなぜかそのあと、黙り込んでしまった。
聞きたい、でも聞きたくない・・・そんな揺れる感情が明白に見える。
そこまで迷う質問って何だろう?
あたしには想像がつかず、ただ彼女が喋るのを待っていた。
・・・!?
クルミ「あの・・・あの!」
「しっ」
クルミ「え!?」
・・・囲まれた。
強い敵はいないと思ってたから、ちょっと油断したかもしれない。
・・・ガルルル
クルミ「え、え!?」
クルミも気づいたようだ。
オオカミたちの唸り声に。
クルミがあたしに体を寄せてきて、入口へと目をやった。
唸り声と共に、2匹のオオカミが顔をのぞかせる。
後ろにはさらに10匹くらいいるようだ。
「大丈夫」
震える少女に声をかける。
あからさまに戦闘力が劣る仲間を抱えていたから、あえてこの洞窟を休憩に選んだんだ。
敵に囲まれないように、入り口が一つしかないこの場所を。
ショートソードとダガーを鞘から抜き、目の前でクロスして構える。
敵を見据えて、一歩間合いを詰めようとした・・・そのとき。
クルミ「だめぇえええ!」
「え!?」
突然クルミが大きな声を出し、あたしとオオカミの間に割って入ってきた。
「ちょ・・・何してるの、危ないから後ろにいてっ!」
クルミ「ダメ!」
「危ないってば!」
クルミ「ダメ!今度こそ・・・今度こそクルミが守るの!」
彼女は手を左右に大きく広げ、ブンブンと首を振る。
クルミ「もう、後悔したくないからっ!」
「いいから、どいてっ!」
クルミ「クルミは・・・お姉ちゃんなんだからっ!」
???
彼女が何を言おうとしているのかよくわからない。
でもこのままだと彼女はケガをしてしまう。
・・・仕方ない。
ちょっと強引だけど当て身を入れて気絶させるしか・・・。
「連続魔〜〜〜><」
「はにゃ!?!?」
聞き覚えのある声と共に、見たことのある魔法が飛んできた。
風が渦を巻き、数匹のオオカミをなぎ倒す。
新たな敵を感知し、無傷のオオカミたちが詠唱者に向かって駆け出す。
・・・そりゃそうだ。
なんで自分の近くの敵じゃなくて、集団の真ん中に魔法を打ち込むのニャ・・・。
「やーーーん><」
「やれやれ・・・お前を先に行かせると戦況が悪化するな」
「文句言ってないで助けてっ!リーダー命令なんだからっ><」
「・・・このくらい自分でなんとかしろよ」
「いたっ、噛まれた、噛まれたよぉ;;」
「えー、この子、冒険者なんですよねぇ・・・なんでこんなに弱いんですかぁ?」
「オレにも理解できん」
「噛まれてる、噛まれてるってばぁ;;」
「しょうがないですねぇ・・・エーテルパクト」
妖精がふわりと飛び出したかと思うと、オオカミに噛まれている子に向けて光のラインが結ばれ、傷が徐々にふさがっていく。
「ありがと〜;;」
「後衛さんにこの魔法かけたの、初めてなんですけどぉ」
「はぅ、エルルたん、学者さんだったんだね」
「この手帳を見ればわかるでしょお?」
「いや、武器じゃなくて普通の手帳だと思うけど・・・」
「両方兼ねてるんですよぉ。あ、ちなみにこの魔法、想定外なので別料金ですから♪」
「うぐぅ><」
敵を一掃した後、騒々しい連中が洞窟の中に入ってきた。
そしてあたしたちと・・・あたしと目が合う。
「いたーーっ、やっと見つけたっ♪」
「・・・は??ほんとにいたな」
「えええっっっ!?!?!?どーゆーことですかぁ???
ねぇ、何が起きたんです?私は絶対に、絶対に、ぜーーーったいに無理だって言いましたよね?いったい何が起きるとこうなるんですかぁ!?」
頭の中のモヤモヤが弾ける。
そこには3人の、確かに見覚えのある3人のララフェルの姿があった。
エルル「・・・ほら言ってる!私、無理だってちゃんと言ってる!」
エーゴ「ほらってなんだよ。勝手に回想シーンを入れ込もうとするな」
パミミ「でもエルルたんはボクに任せるって言ってくれてるじゃん><」
エルル「そうなんです。任せた結果がこのデタラメさ加減で、エルルたんは頭を抱えてるんです。
あなたに任せた結果が”ボクらも神隠しにあってみよ〜♪”ですよ?
自分から神隠しにあうとかありえないんですけどっ!さんざん言いましたよね!」
パミミ「あえたからいいじゃん♪」
エルル「いいジャンじゃないですよぉ。しかもパミパミちゃん、実際に神隠しに巻き込まれるとき、逃げようとしてましたよねっ!」
パミミ「だって、なんか変な光に飲み込まれそうになって怖かったし・・・><」
エルル「目的を忘れてるじゃないですかぁ!私とエーゴ君が捕まえてなかったらどっか行ってましたよね?あなたが石を持ってたにも関わらず」
パミミ「はぅ;;」
エルル「しかも神隠しにあった後、”ほえ〜、ここって異世界じゃない?だとしたらチートあるはずだお!きっと空飛べちゃうのわ♪”とか言って崖から飛ぼうとしてましたよね?」
パミミ「貰ったチートの種類を間違えただけだもん><」
エルル「貰ってないですから!能力とか何も変わってないですからっ!」
パミミ「いやでも、ほら!ちゃんとニャプたんに会えたし♪」
エルル「結果論です。究極の結果論ですよぉ!ここに向かうときだって”よくわかんないけどコッチに行ってみよっ♪”って言ってましたよね?よくわかんないに付き合わされる私たちのこと、考えたことありますかぁ?こっちの方が”よくわかんない”ですよぉ!」
パミミ「そんな怒らなくてもイイじゃん・・・エーゴたんも何か言ってあげてよ〜;;」
エーゴ「・・・考えても答えはない。あきらめろ」
エルル「そうですね・・・あきらめます」
パミミ「なんでよ、も〜〜〜><」
目の前で展開される漫才に、あたしたちはあっけにとられていた。
回想シーンって何よ、もう。
「パミちゃん・・・エーゴたん・・・情報屋」
「ニャプたん!」「ニャプ」「姫ぇ〜〜!」
パミミ「もう、ほんと探したんだお!1ヶ月も何の連絡もしないでいなくなって、心配したんだからぁ・・・謝んないと許さないからね;;」
「あ、うん、ごめん・・・しかも記憶が飛んでたみたいで・・・やっと今、思い出した」
エーゴ「記憶が飛んでた??」
「うん、ちょっと飛ばされ方が・・・いや、でもみんなどうしてここへ?」
エーゴ「なかなか帰ってこないから、探しに来させられた」
・・・なかなか帰ってこない??
「ねぇ、パミちゃん・・・さっきあたしが1か月近く帰らなかったって言った?」
パミミ「うん、ほんとにほんとに心配したんだお;;」
「そっか・・・ごめん。でも・・・違うんだ」
エーゴ「・・・違う?」
「うん・・・あたし、たぶんその神隠しってのにあってこっちの世界・・・異世界なのかな?・・・に、来たみたいなんだけど」
パミミ「うん?」
「・・・あたしがこっちに来てから、”3日”しかたってないの」
クルミ「 ・・・!? 」
:
3日間・・・。
オレたちと、ニャプの間にある明確なズレ。
あいつが1か月近く意識を失ってたりしたとかは考えづらい。
とすると、本当にあいつの体感した時間はたったの3日なんだろう。
エルル「・・・ところで姫は3日間、ここで何をしてたんですかぁ?」
情報収集を生業とする姉貴が早速聞き込みを行う。
「この子の・・・クルミちゃんって言うんだけど、この子の妹がいなくなったって言うから一緒に探してたんだ」
エーゴ「それはいつだ?」
「だから、こっちに来てからずっと」
エーゴ「いや、違う。いなくなったのはいつだ?」
「2年前だって・・・」
エルル「2年前にいなくなった妹ちゃんを探してるんですか?今頃?」
「うん。で、もしかしたら・・・」
エルル「もしかしたら、その子も2年前に神隠しにあったかもってことです?そして、いつか帰ってくるのを毎日待っていたと?」
「そうみたい」
ちっ。
心の中で舌打ちをする。
情報のズレが、収束し始めた。
その妹がオレたちの世界に飛ばされてたとしたら。
時間の流れが10倍違うとしたら。
そして・・・・。
同じことを考えついたようで、姉貴が両手で顔を覆い小さくつぶやいた。
エルル「大失敗ですよぉ・・・」
何も気づいていないパミミは、エルルの言葉を理解できず首を傾げた後、ゆっくりと笑顔で向こうに歩み寄った。
パミミ「まぁでもニャプたんが見つかってよかった〜。じゃあボクたちもその妹ちゃんを探すのを手伝おっ♪」
クルミ「ダメ・・・」
パミミ「ほえ?」
クルミと呼ばれた少女がニャプとパミミの間に割って入る。
大事なものを守るように両手を広げ、明らかに敵意を持ったまなざしで。
クルミ「2年間・・・ずっとずっと後悔してた」
パミミ「・・・?」
クルミ「次こそ・・・今度こそ絶対守るって思ってた」
パミミ「あの・・・ボクたちは敵じゃなくって・・・ニャプたんの仲間で・・・」
クルミ「だからなに!2年前みたいには絶対にしない・・・。わたしは、クルミはお姉ちゃんなんだから!」
泣きそうな顔で、彼女はオレたちの間に立ちはだかる。
2年間の思いを携えて。
パミミ「でも・・・だって・・・」
クルミ「・・・」
この少女も気づいてしまっている。
いや、ずっと疑問に思っていたことが、「オレたちによって」繋がってしまったんだろう。
パミミ「え・・・あの・・・ボクたちはあの・・・」
パミミは何かをクチにしようとしていたが、言葉になっていなかった。
小さな女の子は手を広げたまま、首を横に振り続ける。
エーゴ「おい、パミミ・・・」
パミミ「うぅ・・・・」
エーゴ「・・・お前も気づいたんだろ?」
パミミ「だって・・・妹って年下ってことでしょ・・・なんで・・・」
エルル「・・・3日が30日なら、2年は20年ですね」
エーゴ「・・・まさか、お前が言ってたことが全部当たってるとはな」
エルル「思い付いたのを言っただけだったんですけどね・・・あと、お前じゃないです」
彼女が帰ってこない理由・・・そうですねぇ・・・今のところ考えられるのは3つくらいですかね・・・
・自分では帰れないところにいる。
・あるいは、記憶をなくしていて帰る場所を見失っている。
あともうひとつ、考えられるとしたら・・・
・”新しい居場所ができた”とかですかね。
・・・探しに来るべきではなかった。
待っていれば、ニャプのことだからなんとかして帰ってきただろう。
だが・・・それもきっと、グッドエンドではなかった。
オレたちの目の前で手を広げている女の子。
震えながら、でも一生懸命こっちを睨みつけてる女の子。
髪は雪のように白くて、ピンと立ったネコ耳。
少し青味がかった目、細いまゆげ、小さめの鼻。
目の前にいる二人のミコッテは何もかもがそっくりで、あたかも歳の離れた姉妹のようだった。
:
:
:
「2人ともどうしたの!?」
家に入るとお母さんが慌てて声をかけてきた。
クルミもタイヤキちゃんも、今にも消えちゃいそうな表情だったってあとで言っていた。
だって仕方ないと思う。
頭の中がぐちゃぐちゃで、どうやって帰ってきたのかも覚えてないくらいだったし。
突然現れた3人の子供(?)たちと一旦別れ、あたしたちは家に戻ってきた。
エーゴと呼ばれた人が、明日帰るとタイヤキちゃんに伝えていた。
彼らも神隠しにあってきたらしいけど、そんなに帰る時間を指定できるのかってタイヤキちゃんが聞いたら、エルルって呼ばれてた子がだいたい法則はわかりましたって言ってた。
自分で体験すると、情報量が違うんだって。
よくわかんないけど。
どうでもいいけど。
あまりの疲れに、あたしたちは部屋でうずくまっていた。
台所から包丁の音が聞こえてくる。
クルミ「ねえ、タイヤキちゃん」
「・・・うん」
クルミ「あたしね・・・コハクが帰ってきたら食べてもらおうって思ってクッキーを作るの練習したんだ」
「・・・うん」
クルミ「それがね、このクッキー。ごはん前だけど良かったら食べてみて」
「・・・うん」
クルミ「どう?おいしい?」
「・・・うん」
クルミ「コハクってね、すごく食いしん坊でね・・・あたしの分もおやつ食べちゃって、よく怒ってたの」
「・・・うん」
クルミ「・・・よかった」
「・・・」
クルミ「ほんとに・・・良かった・・・」
「・・・うん」
クルミ「あのね・・・」
「・・・うん」
クルミ「あのね・・・」
「・・・うん」
クルミ「これからも・・・」
「・・・」
クルミ「ずっといっしょに・・・」
「・・・・・・・・」
答えは聞こえなかった。
疲れのせいで、わたしはいつの間にか眠っていた。
そして、目を覚ました時、この部屋にはわたししかいなかった。
妹が見つかるまで絶対に泣かないって、約束した。
今日までずっとその約束を守ってきた。
だから・・・
だから今日は・・・
クルミ「うぅ・・・・ううううああ」
クルミ「やっと・・・やっと・・・会えたのに・・・・どうして・・・うわーーーん」
思い切り、泣いた。
:
:
母親「クルミ!」
驚いたお母さんが慌てて部屋に駆け込んでくる。
クルミ「あーーーん、うわーーーん」
母親「どうしたの!?」
クルミ「タイヤキちゃんが・・・コハクが・・・またいなくなっちゃう・・・」
母親「・・・そっか・・・気づいちゃったか」
ぎゅっと抱きしめられる。
もうすぐ10歳になるから普段なら恥ずかしいのに・・・あたしは思いっきり抱き付いた。
クルミ「・・・え?お母さん、気づいてたの?」
母親「・・・うん。初めて見たときにそうかなって思って・・・だからちょっと泣いちゃった・・・」
クルミ「・・・ずるい、お母さんずるいよ」
母親「でも、どう考えても理屈が合わなくてね・・・で、さっき話を聞いてようやく納得できた感じ」
クルミ「・・・・うぅ、でも、またいなく・・・」
母親「いるわよ。ね、入ってきて」
母親が振り向くと、タイヤキちゃんが・・・ううん、大人の「コハク」が部屋に入ってきた。
クルミ「タイヤキちゃん・・・コハクなの?」
「わかんない・・・でも、ここで食べた・・・あの・・・クルミちゃんのお母さんの料理は昔食べた気がしてた」
母親「ふふ、コハクが大好きだった料理を作ったのよ。思い出してくれないかなって思って」
「そう・・・なんだ・・・ごめんなさい・・・」
母親「仕方ないわよ・・・だって20年ぶりだったんでしょ?」
「うん・・・そうみたい・・・たぶん」
母親「無事でよかった・・・また会えて・・・ほんとに良かった・・・」
「あの・・・あたしの、お母さん・・・なの?」
不安そうにのぞき込む「コハク」に、お母さんはゆっくりと横に首を振った。
母親「ちがうわ」
「ちがう・・・?」
母親「ええ」
そう言った後、お母さんは優しく微笑んでコハクを優しく抱きしめた。
母親「あなたはまだ小さかったからね・・・あたしのことを”ママ”って呼んでたわ」
「・・・ママ?」
母親「ええ、おかえり、コハク」
コハク「ママ・・・ママ・・・ただいま、ママ・・・」
母親「おかえり・・・」
クルミ「おかえり、コハク」
コハク「ママ、お姉ちゃん・・・あたし、今までずっと・・・うぅ・・・うわーん」
:
ご飯を食べながらいっぱい話した。
今まで起きたこと。
コハクが子供だった頃の話。
2年分?20年分?
いっぱい話して、いっぱい笑って、いっぱい泣いた。
・・・ピンポーン
呼び鈴がなるのを聞いて、母親がいたずらっぽくウインクして見せた。
それにうなづいてクルミとコハクがドアに駆け寄り、ゆっくりと開けた。
「ただいま〜。いやぁなかなか帰れなくて悪かったね。どうだい?何も起きなかったかい?」
クルミ「おかえり〜!お土産は?」
「ああ、いつも通り買ってきたよ。クルミと、コハクの分もね」
コハク「・・・」
「あれ?母さん、髪型を変えたかい?若々しく見えるよ、まるで出会ったころみたいだ・・・。うん、イイと思うよ、似合ってる」
コハク「ありがと、パパ」
父親「え・・・?パパ??」
母親「ふふ、若々しくなくて悪かったわね、あなた」
父親「・・・あれ?どうして母さんが二人いるんだ??」
クルミ「さあて、どうしてでしょうか♪」
父親「え・・・もしかして・・・」
うなづくようにコハクの頬から涙が一筋零れ落ちた。
コハク「ただいま、パパ。・・・お土産、ありがとう」
:
:
:
:
:
:
:
「はああぁ〜」
不機嫌そうなため息が隣から聞こえる。
エルル「私、久々にクエスト失敗したんですけどぉ」
エーゴ「奇遇だな、オレもだ」
エルル「あなたはどうだっていいでしょ。元々タダ働きなんですから。私は2000万ですよぉ・・・ショックで寝込みそうですぅ」
エーゴ「仕方ないだろ、まさかこっちがニャプの本当の居場所だったなんて思ってもみなかったからな」
エルル「思ってくださいよぉ」
エーゴ「お前が調べろよ。情報屋だろ?」
エルル「異世界とか調べられるわけないでしょ?あと、お前じゃないって言ってますよね?あなた、帰ったら潰しますよ?」
エーゴ「なら、置いてくとするか」
エルル「べー!あなただってあの子がいなければ自分で帰れないでしょ!」
むしろこんな異世界に、狙って飛べる方がおかしいわけだが。
パミミのトラブルメーカーの気質が、今回はわけのわからない風にかみ合ってしまったか・・・。
エーゴ「てか、本当に帰れるんだろうな?」
エルル「大丈夫ですよ、仕組みは理解しました。ただ”故意に”条件を満たすのにあのコが必要みたいですけど」
エーゴ「やれやれ、偶然を必然に変えるって相変わらずデタラメすぎるな」
そういや考えてみると、エルルとこうして二人で話すのも久しぶりだった。
エルル「まとめると、姫は元々こっちの出身で、子供の頃に神隠しに巻き込まれたってことみたいですね」
エーゴ「そうなんだろうな」
エルル「道理で・・・あんな奇麗な女性が捨てられるはずがないって思ってましたよぉ」
エーゴ「しかし5歳で一人きりか・・・よく生きてこれたもんだな」
エルル「そうですねぇ・・・こっちもまた奇跡を越えてる気がしますね」
エーゴ「あいつのあの技術はどこで習ったんだ?」
エルル「それには、実は1つ、仮説があるんですよね〜♪2000万でどうです?」
エーゴ「オレ相手に損を取り戻そうとするな」
エルル「うふふ、まぁそれより、これからどうしますか?」
エーゴ「どうとは?」
エルル「もう姫は戻ってこないじゃないですか。家族がいるわけですし」
エーゴ「・・・だろうな」
エルル「だったら、さらいませんかぁ?」
エーゴ「は?」
エルル「前も言いましたけど、あのシロネコと言えども、私とエーゴ君が組めばなんとか捕まえられると思うんですよぉ」
エーゴ「・・・」
エルル「で、そのまま向こうの世界に戻って宝石も取り上げちゃえば、姫はまず一人でこっちに帰ってこれないことになります。そうしたらいずれあきらめもついて、私と2人、幸せに過ごすんです。どうですか?さらうことさえできればなんとかなっちゃうでしょう?」
エーゴ「なんで2人なんだよ」
エルル「適材適所と思いますけどぉ?」
エーゴ「とはいえ、さらうのは無理だろうな」
エルル「どうしてですかぁ?私の情報分析力と、あなたの身体能力が組むんですよ?異世界だろうと追い詰める自信はありますけどぉ?」
エーゴ「そうしたら、あいつがニャプと組むだろ」
エルル「・・・パミパミちゃんですか?」
エーゴ「ああ」
エルル「・・・短い付き合いですが、あのコならそうしそうですね」
エーゴ「そうなったら、あいつの行動を読むのはオレたちじゃ無理だ」
エルル「・・・はぁ、そうですねぇ。あのコって敵に回すと厄介ですよねぇ、味方にすると何も役に立たないのに・・・」
やれやれと言った感じで両手を広げる。
まぁ、エルルも本気でさらうつもりはないだろう。
明日帰るまでの時間つぶしの会話に過ぎない。
エーゴ「今回のは、誰も悪くないし、どっちを選んでも失敗だった。
パミミのやつもそれをわかってるし、たぶんニャプも自分でわかってる」
エルル「で、なんであのコはずっと泣いてるんですかぁ?」
エーゴ「・・・」
エルル「ねぇ?どう思いますかぁ?」
エーゴ「・・・・・・・明日、あいつが来た時に、笑えるようにだろ」
エルル「涙を枯らそうとしてるとかですかぁ?」
エーゴ「知らん」
エルル「バカみたい」
エーゴ「そうだな」
エルル「・・・でも、キライじゃないかなぁ」
異世界で見る空は、オレたちの世界とはあまり違わないように見えた。
星の配置とかが違うんだろうが、そんなところまで興味はない。
ニャプには明日帰るとだけ告げた。
きっと、会いに来てくれるだろう。
・・・最後に、な。
エーゴ「ふん、まぁ後のことはあいつに任せよう。・・・リーダー様に、な」
エルル「わかりましたぁ。でも明日まで暇ですねぇ」
エーゴ「なら、ちょっと遠出してみるか?」
エルル「デートのお誘いですかぁ?エーゴ君は私の好みと180度違うんですけどぉ。主に性別が♪」
エーゴ「あいかわらずだな・・・」
エルル「で、なんです?」
エーゴ「ちょっと面白いやつを見つけてな」
エルル「あ〜、アレですか」
エーゴ「気づいてたか」
エルル「当然ですよぉ」
エーゴ「ふん、じゃあちょっとリーダー様に断りを入れてくる」
エルル「はあい♪」
一人、岩の上に腰掛けて膝を抱えているパミミに近づいた。
肩が小刻みに揺れ、嗚咽が聞こえてくる。
エーゴ「なぁ、パミミ」
パミミ「うぅ・・・ヒック・・・」
エーゴ「エルルとちょっと出かけてくる。夜明けまでには戻る」
パミミ「うぅ・・・わかった・・・;;」
火は絶やすなよ。
あと、飯くらい食っとけ。
そう言い残して去ろうとしたオレの背中に、あいつは話しかけてきた。
パミミ「ねぇ・・・エーゴたん・・・」
エーゴ「なんだ?」
パミミ「なんで・・・なんでなの・・・」
顔を上げ、涙でぐちゃぐちゃになった顔で。
パミミ「なんで・・・
なんでボク・・・・・・・ニャプたんにおめでとうって言ってあげれなかったんだろ・・・
・・・ずっと、ずっと家族に会いたがってたのを知ってたのに・・・」
オレにはかける言葉が見つからなかった。
パミミも答えは求めていなかっただろう。
パミミ「・・・だから明日こそ言うんだ・・・
今までありがとう
そして・・・
さようなら・・・って」
:
:
:
:
〜エピローグ〜
腫れた目は、メイクでごまかした。
ママが手伝ってくれた。
明日帰るって言われたけど、時間は聞いていなかった。
だからこんな朝早くから出かける羽目になった。
あたしの近くを、妖精が飛んでいた。
家を出るところから、ずっとずっと付いて来てた。
さすが情報屋。この家を一晩で調べ上げてたらしい。
時折、ぐふふとか言いながら高度を下げようとしてたから、そのたびに踏みつぶす素振りでけん制した。
妖精も飼い主に似るみたい。変なの。
思ってた通り、彼らは例の、あたしがここに来た時に倒れてた川原にいた。
遠目からも、疲れ切ってる様子が見えた。
お互い様なのかな。
「こにちは」
「ニャ」
今まで何度もかわしてきたはずのあいさつなのに、なぜか遠く感じてしまう。
パミちゃんから10mほど離れて、エーゴたんと情報屋が控えていた。
あたしたちを見守るように。
昨日、3人に会えたことであたしの記憶は全部戻っていた。
少なくとも、彼らと会って以降の記憶は思い出したと思う。
パミちゃんは笑顔であたしを迎えてくれた。
目は腫れてたけど、それでも精一杯の笑顔だった。
「パミちゃんは、記憶、飛ばなかった?」
「ほえ?どゆこと??」
「あ、ううん、いいの」
あたしの記憶が飛んだのは神隠しの影響じゃなくて、どうも落下の影響らしい。
それが無かったら、もうちょっとうまく立ち回れていたはずだった。
でも、うまくってなんだろう?
どの結末が理想だったのかなぁ。
パミちゃんたちが迎えに来てくれなければよかった?
そしたらたぶん、あたしは自力で記憶を取り戻して、向こうの世界に帰っていたと思う。
あたしならきっと、できると思う。
でも、それじゃあ昨日の、彼らの顔を見た時の嬉しさを味わうことはできなかった。
いっそのこと、5歳の時に神隠しに合わなければよかった?
そしたらたぶん、家族とずっとケンカもしながら仲良く暮らしていたと思う。
盗賊なんかにならなくても良かっただろうな。
でも、それじゃあ彼らに会うことすらできなかった。
・・・何が正解か、あたしには最後までわからなかった。
「ねえ、パミちゃん」
「うん?なあに?」
「・・・あのさ、これからのことなんだけど」
「・・・うん」
彼の顔が少し曇る。
それでも頑張って笑顔を保とうとしているのが分かった。
「家族と・・・一緒にいたいと思う」
「・・・そっか」
「でさ・・・」
あたしの言葉を彼は早口で遮る。
「こっちに残るってことだよね、うん、やっと会えた家族だもんね、うんうん、良かった・・・おめでとう。あと、今までありがとう・・・元気でね、ニャプたん」
「・・・あ、ありがと・・・でも」
「ごめんね、こっちに探しにとか来ちゃって。でもそれで謎が解けたのかな。だとしたら頑張ってきたかいがあったかな。最後にニャプたんともお話しできたし・・・」
「最後?」
「うん」
「いいの?」
「うん」
「ほんとに?」
「・・・うん」
「・・・うそつき」
「・・・・・・・うん」
堪えられず、彼の目から涙が零れ落ちた。
「だって!だって仕方ないでしょ!ようやく家族と会えたんだよ?ずっと会いたいって言ってたの知ってるし。だから、だから笑顔でお別れしたかったのに・・・;;」
「ねぇ、パミちゃん」
「・・・うぅ;;」
「あたしね、随分前に、家族に会えてたんだよ?」
「・・・え?」
「パミちゃんとエーゴたんのお陰で、”家族”って言葉を聞いたら、2人のことが真っ先に思い浮かぶんだ。
あたしが路地裏でもう生きてるのが嫌になったときに救ってくれたこと、
あたしに笑顔を思い出させてくれたこと、
みんなで食べるご飯が美味しいんだって気づかせてくれたこと、
名前もなかったあたしに、ニャプリルって名前をくれたこと」
「・・・ニャプたん」
ニャプ「だから、だからあたしはこれからも家族と、パミちゃんとエーゴたんと一緒にいたいって思うんだ。・・・迷惑かな?」
パミミ「ニャプたん、いいの?」
ニャプ「うん、決めたんだ」
パミミ「・・・ニャプたん・・・おかえり、ニャプたん」
ニャプ「・・・ただいま」
エーゴ「ニャプ、いいのかそれで?」
遠くで話を聞いてたエーゴたんが歩いてくる。
ニャプ「うん、パパとママにはちゃんと話したよ。納得してくれた。で、ママからはほら、この服を貰っちゃった」
エルル「白のドレスですね、はぁはぁ」
ニャプ「なんであんた、息が荒いの?」
エルル「なんでもないですよぉ、ぐふふふ」
ニャプ「ママがね、実家を出るときに親から貰った服なんだって。あなたもこれを着ていきなさいって」
エルル「・・・それって」
ニャプ「パパはちょっと渋ってたけど、女の子はいつか家からいなくなるってママに説得されてた」
エーゴ「・・・」
ニャプ「たださ・・・1人だけどうしても納得してくれなくて・・・パミちゃん、エーゴたん、1つだけお願いがあるんだけど」
パミミ「うん、なぁに?」
あたしが後ろを振り向くと、ドレスの陰から女の子がひょこっと顔を出した。
ニャプ「・・・お姉ちゃんも、連れてっちゃダメかな?」
パミミ「ほえ!?」
エーゴ「・・・」
クルミ「だ、だって、こんな子供ばっかのところにコハクを預けるなんて心配だし!」
エルル「子供じゃないんですけどねぇ・・・ララフェルを知らないんですか?」
クルミ「お姉ちゃんなんだから、妹を守るのは当然だし!」
エーゴ「悪いが、妹の方がお前より強いぞ」
クルミ「だって、だって・・・やっと会えたから・・・これからも・・・一緒にいたいから」
ニャプ「お姉ちゃん、そうじゃないでしょ?お願いの仕方、ちゃんと教えたよね?」
クルミ「うぅ・・・恥ずかしいよ・・・コハクも一緒にお願いしてっ」
ニャプ「しょうがないニャア・・・」
そう言ってあたしたちは軽く手を握り、首をかしげながら精一杯の笑顔で言った。
「「お願いしますニャン♪」」
「「「・・・・」」」
エルル「はぁはぁ、い、いくら払えばいいんですかぁ!?」
エーゴ「そういうやつじゃねーよ」
パミミ「あは、あはは・・・、でもいいんじゃない。ボクは構わないお♪」
クルミ「・・・え、いいの?ほんとに!?」
エーゴ「まぁ、しかたないな」
ニャプ「ほら、お姉ちゃん、あたしの言った通りだったでしょ?^^」
クルミ「すごいね・・・コハク、いろんなこと知ってるんだ・・・」
エーゴ「・・・」
エルル「私も、女の子は大歓迎です♪」
エーゴ「いや、お前は関係ないだろ」
エルル「ん?」
エーゴ「は?」
不穏な空気は放置し、あたしはクルミの手を取った。
ニャプ「お姉ちゃん、一緒にいこっ」
クルミ「うん、これからはずっとね」
:
:
さ、時間ですねっ。
情報屋の一言により、向こうから闇が迫ってきた。
はぐれないようにみんなで手をつなぎ、流れに任せる。
振り返ると、遠くの方で2人の大人が手を振っていた。
あたしは彼らに向かいチカラ強くうなづいて見せる。
大丈夫、安心して。
・・・行ってきます、ママ、パパ。
・・・しばらくして光が戻り、目の前に見慣れた風景が戻ってくる。
クルミだけは驚いてキョロキョロしてたけど。
いや、パミちゃんもだ。あんた2回目じゃないの?
エルル「石は私の方で回収しますね。間違って飛んじゃうと大変ですし。てか、パミパミちゃんなら飛んじゃいそうですし」
エーゴ「それなりの価値もあるしな」
エルル「それが何か?私の報酬の一部で買ったものですけどぉ?」
パミミ「もー、なんですぐケンカするのさ・・・はい、じゃあこれ、渡しちゃうね」
エルル「はい、たしかに受け取りました。よかったら姫のカラーストーンも私の方で処分しちゃいますけど?」
ニャプ「カラーストーン?ああ、あれがカギだったの!?」
エルル「はい。実は向こうの世界の川原にもちっちゃい原石が落ちてましたよ。見つけて全部深めに埋めてきましたが」
ニャプ「そっか・・・まずかったかニャ?」
エーゴ「何がだ?」
ニャプ「あのネックレス、ママにあげてきちゃった」
パミミ「まぢで!?」
慌てるあたしたちに、情報屋はゆっくり首を振る。
エルル「まぁ、大丈夫だと思いますよぉ。よっぽど運が悪くないとこんなのに巻き込まれませんし」
ニャプ「ちょっと、3回も巻き込まれた人を前にそういうこと言う?」
パミミ「あはは、ニャプたんってば大変だね〜w」
エルル「いや、あなたの方がヒドイですよ」
パミミ「うぐぅ><」
ニャプ「あ、そういえばお姉ちゃんはみんなのこと知らないから、自己紹介しない?」
パミミ「いいね〜、ボク、パミミ!クルミたん、よろしくねっ♪」
エーゴ「エーゴ・リューゴだ」
エルル「エルル・リューゴですよぉ。御贔屓に♪」
ニャプ「えっ!ちょっと待って!?」
エーゴ「どうした?」
ニャプ「あんたたち・・・結婚したの!?」
「「だれがこんなやつと!!」」
クルミ「あはは、クルミはクルミです、あ、いや、違ってあの・・・わたしはクルミです」
パミミ「いいお、自分のことクルミで。かわいいし^^」
ニャプ「うんうん、おねえちゃん、カワイイにゃ♪」
クルミ「もーっ><」
笑い声が包む中、あたしは3日ぶりに帰ってきた世界を見渡した。
向こうに未練がないわけじゃない。
パパやママとももっと一緒にいたかった。
でも、あたしは決めたんだ。
こっちがイイって。
パミミ「じゃあさ改めて、ニャプたん!」
ニャプ「うん♪」
パミミ「クルミちゃんも!」
クルミ「はいっ」
3人のララフェルが微笑みながらあたしたちを招き入れてくれる。
「「「 ようこそ、異世界へ! 」」」
〜完〜
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