2019年05月06日

サボテンサラダとネコ

あたしはずっと独りぼっちだった。

親はいない。
友達もいない。
誰もいない。
あたししかいない。

まだ小さかった頃のあたしは、森に住んでいた。
町にあたしのご飯はないけど、森には食べれるものがいっぱいあったから。

毎日いろんな草を取ってきて、洗って、盛り付けて、食べた。
食べられない草は、だんだん分かるようになった。
果物を見つけられた日は、ごちそうだった。
お祭りだった。記念日だった。

雨の日は大きな木の下で雨宿りをした。
いつの間にか、晴れの日もそこでご飯を食べるようになった。
ここは、あたしにとってのレストラン。
草の料理ばっかだったから、草屋って名前を付けた。
サラダが名物料理なんだって、そう決めた。
あたしは料理長。そして看板娘。
いつか誰かがやってきて、一緒にご飯を食べて・・・そんな想像を毎日していた。

でも、お客はいつもあたしだけ。
いつも、いつまでたっても、ずっと独りぼっちだった。

想像に疲れて、夢を見るのに疲れて、自分の声すらも忘れそうになったある日。
二人目のお客さんがやってきた。
あたしの草屋に、あたし以外の初めてのお客さんが。

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ウィンダスの幻想日記 外伝
〜サボテンサラダとネコ〜

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「ニャプたん、ニャプたん」

「・・・」

「ニャプたんってば〜」

「・・・ん?何?パミちゃん」


拗ねるような可愛い声にようやく気付き、あたしは視線を向けた。
そこには小さなララフェルが、心配そうにあたしの顔を覗き込んでいる姿があった。


「どしたの?なんか真面目な顔してたけど?」

「なんで真面目な顔をしてると心配されるのニャ!ニャプはいつでも真面目ニャ!><」

「くすくす♪でも考え事してそうな感じだったから・・・何か悩み事でもあるの〜?」

「ううん、別に。ちょっと昔のこと思い出しちゃって」

「ふーん・・・そっか♪」


パミちゃんはちょっと迷った顔をした後、少し微笑んであたしの手を握ってきた。
それ以上は何も言わない。何も聞かない。
そういう気遣いが単純にうれしかった。

太陽は真南に上り、そろそろ夏の訪れを告げていた。
あたしたちは特に用事もなく、ザナラーンを散歩していた。

そしてそこで、一人の少女に出会った。

 :

「すいません・・・」


危うく聞き漏らすほどの、か細い声だった。
生気がないと言ってもいいくらい。

声がした方を見ると、そこにはやせ細った少女の姿があった。
着ているものも薄汚れていて、ところどころが破けていて、見るからに裕福でなさそうだった。


「ほえ、どしたの〜?」


パミちゃんの人懐っこい笑顔の返事に対し、少女はおびえたようにビクリと体を揺らした。
あまり人と話すのに慣れていないのかも知れない。
なんとなく昔の誰かさんを思い出して、あたしは唇をかんだ。


「あの・・・すいません・・・」

「うん、なあに?」

「ごめんなさい・・・あの・・・」

「いちいち謝んなくても大丈夫だお?」

「あ、はい、ごめんなさい・・・」


肩をすくめる彼女を見て、パミちゃんは困ったような感じで、それでも柔らかい笑顔を向けた。


「うん、どうしたの〜?」

「あの・・・お母さんが倒れちゃって・・・うごけなくて・・・」

「ええ!?」

「あ、今じゃないです、ちょっと前から・・・・」

「でも、それでも大変だお!だいじょうぶなの?」

「ケガとか病気とかじゃないんです。
あたしのために働きすぎちゃったのが原因みたいで、きっと栄養を付ければ元気になるって言われて」

「はうう、でもボク、今何も食べ物を持ってなくて;;」

「できれば・・・あの・・・冒険者さんに・・・お願いが・・・」

「なになに〜?ぷろふぇっしょなるな冒険者のボクにできることがあれば何でも^^」

「・・・サボテンの果肉がほしいんです。お母さんに・・・、おなかいっぱい食べてもらいたいの」

「サボテンの果肉??それって食べれるの?」

「ドラゴンフルーツにゃ」


あたしが代わりに答えた。


「ほえ?あれってサボテンなの」

「そうです・・・ちょうどよい実をつけ始めたので・・・」

「へ〜、それを取ってくればいいの?」

「はい・・・あまり報酬は上げれないんですが・・・ごめんなさい・・・でもお母さんに・・・早く元気に・・・」

「別にいいお〜、どうせ暇だし♪えーっと、この部分かしら?」

「はい、あ、トゲがあるので気を付けてください」

「だいじょぶだいじょぶ、ボク、園芸師のレベルカンストしてるし♪・・・・イタッ><」


カンストした園芸師の割に随分危なっかしい手つきだと思っていたら、案の定、見事にとげが刺さったらしい。
涙目になりながら、それでもパミちゃんは果敢にサボテンの実をはぎ取ろうとしていた。


「なんで素手でやってるのニャ。手袋付ければいいじゃない?」

「実の部分だから痛くないかなって思ったんだけど;;」

「腐ってもサボテンニャ」

「あの・・・できればでいいんですが・・・腐ってないところを・・・」

「大丈夫、腐ってるのはパミちゃんの性根だから」

「ひどっ><」


鎌を片手にパミちゃんはサボテンが群生している中に駆け込んでいく。
転ばなきゃいいけど・・・あ、転んだ。泣いた。いや、涙をこらえて立ち上がった・・・。

こんな姿を見てどう思ったのだろうと、ちらりと少女に視線を向けてみる。
しかし少女はずっとうつむいたままだった。

 :

「ありがとうございます。
サボテンの果肉、たくさん集まりました。
これでお母さんにサラダを作ってあげれます。
冒険者さんが親切にしてくれたこと、きっと忘れません・・・」


かごにいっぱいになったドラゴンフルーツを抱えて、彼女はふらつきながらあたしたちにお礼を言った。
相変わらずうつむいたままで。


「待っててね・・・お母さん」

「あ、ちょっと待って」

「え・・・はい」

振り向き駈け出そうとする彼女をあたしは呼び止める。
おせっかいだと知りながら。
それでも呼び止めずにはいられなかった。


「ごめん、パミちゃん、先に帰ってて。あたしはもうちょっとしたいことがあるから」

「そうなの?じゃあ、遅くなる時は連絡ちょーだいね」

「うん、ごめんね」


パミちゃんはチョコボに乗り、ウルダハ方面へと走っていった。
その姿を見送ったあと、あたしは少女のほうに向きなおり、


「そのかご、ちょっと地面においてくれる」

「え?」

「いいから、置いて」

「・・・は・・い」

彼女は怯えながら、恐る恐るかごを足元に置いて立ち上がった。
うつむいたまま、視線をこちらにむけないまま。

パーーン!

乾いた音がした。
少女は音の発生源である自分の頬を両手で抑え、初めてあたしに視線を向けた。

「な・・・なんで・・・叩くんですか・・・」

「あんたが気に食わないから」

「え・・・私は何もしてないのに・・・」

「そう、何もしてないのが気に食わないっ」

パーーン!
もう片方の頬も赤く染まり、彼女は頭を抱えてうずくまった。

「痛い!どうして!」

「いい加減に目を覚ましなさい!あんたいつまでそうしてるつもりなの!」

「どういうことですか・・・」

「あたしたちがサボテンの果実を取ってた時、あんたは何をしてたっ?」

「あの、かごをずっと・・・持って・・・」

「なぜあんたも取りにいかないのよ!」

「だって・・・モンスターが・・・」

「モンスターがいないところもあったでしょ!もし絡まれたとしてもあたしたちがいるじゃない!」

「でも・・・怖くて・・・」

「だったら死ねっ!」

「!?」

「これからどうするつもりなの?どうやって生きていくの?お母さんが元気なときはお母さんに頼って、病気になったら冒険者に頼って、いつまでそれを繰り返すの!あんたが・・・あんたがやらなきゃ生きていけないじゃない!」

「・・・」

「サボテンの果実?それだけ食べて栄養が付くわけないじゃない!そんなのいくらいっぱいあっても、あんたのお母さんは元気になんかならない!」

「でも・・・でも・・・他にやり方が・・・誰も教えてくれない・・・お父さんももういない・・・」

「あたしが教える!」

「え?」

「あんたが冒険者に頼むのは、果実を取ってもらうことじゃない。本当に必要なのは、生きることを教えてもらうことよ」

「・・・わたしに・・・できるのですか・・・」

「できなきゃ死ぬだけ。死ぬ気でやればできないことなんてない」

「・・・」

「付いてきて。まずこのサボテン、若い奴なら茎も食べれる。軽く焼いてステーキにしてもいい」

「いたっ、トゲが・・・」

「最初にトゲの部分を削いでからその部分を切り落とせばいい」


そう言ってあたしはナイフでサボテンを削り取り、少女にそれを手渡した。

「やってみて」

「は、はい」

「あとこの草、これも食べれる。おなかが痛いときの薬にもなる」

「そうなんですか・・・」

「この枯葉は食べれないけど、燃やすといい香りがするから燻すときに使える」

「でも、燻すものが・・・」

「釣り」

「え?」

「魚を釣ればいい」

「やったことないです・・・」

「関係ない。一緒にやろっ。教えるから」

「・・・はい!ありがとう、ございます!」


勢い良くお辞儀をして歩き始める彼女を見て、あたしは大きく息をついた。


「え?どう・・・したんですか?」

「やっと、顔をあげたなって」

 :

太陽は傾き、空は赤く染まっていた。
あたしは肩を落としながら、ウルダハに向かって歩いている。
慣れないことをしたからか、ぐっと疲れた気がした。

あたしがさっきやったことは、二人目のお客さんだった「あの人」に昔あたしがしてもらったことをそのまま同じようにしただけに過ぎない。
ただ1つだけを除いて。

あの少女には家族がいる。
だから、最後の1つは教えなかった。
きっとあの娘は知らなくていいことだから。


「ニャプたーん♪」


遠くから呼ぶ声に振り替えると、パミちゃんが黒い車のマウント、レガリアに乗ってこちらに近づいてきていた。


「待ってたの?」

「うーん、どうかな〜。忘れちゃった♪」

「ありがと、遅くなってごめん」

「いいおいいお、お疲れ様♪」

「うん」

「じゃ、帰ろっか〜。運転するから車に乗って♪
あ、今、ドアを開けるね^^」

「ありがと、でも大丈夫♪」


あたしは自分でドアを開けて助手席に乗り込む。
そしてゆっくりと目を閉じた。

「あれれ?ドアに鍵かかってなかった?」

「どうかな?わかんない^^」

最後の一つはパミちゃんにも秘密。
それでいいと思う。


きっとあの少女とはもう会うこともないだろう。
そもそも自己紹介すらしていないから、きっと次に会ってももうわからないと思う。
あたしも、あの人のことがもうわからないように。
あの人とも、きっともう会えないように。

あの少女がこれからどうなるか、あたしにはわからない。
知ったことでもない。

でも、彼女が前を向けるようになれたら、
たぶん何かが変わると思う。

あたしみたいに。

 :
 :

「お母さん、遅くなってごめんなさい!」

「ううん、いいのよ・・・ごめんね、負担をかけちゃって」

「いいの。それより見て!今日はごちそうなの!」

「・・・あら。どうしたのこれ」

「冒険者の・・・ネコのお姉さんが教えてくれて、一緒に作ったの」

「・・・そうかい」

「食べてみて!ほら、この草、知ってる?おなかいたいのも治るんだって!あとこのお魚は皮も食べれるの。燻製にしたから薫りもいいの!あとね、あとね・・・」

「・・・」

「どうしたの、お母さん?」

「・・・おいしくてさ・・・これならすぐに元気になるよ・・・ありがとう」

「これからは私も一緒にご飯作るから!」

「・・・ええ」

「だからお母さん」


少女は母親を見つめて、しっかりと顔を挙げてそう言った。


「私にいっぱい教えて!色んなことを」


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pamimi at 20:23│Comments(5)FF14 | プチ小説

この記事へのコメント

1. Posted by しんちゃん   2019年05月06日 21:08
久しぶりのプチ小説ですね^^

ニャプちゃん、厳しい世界を生きてきただけに
他力本願な人には手厳しいですね。
こういうのって現実世界でも通じますね。
でも最後に女の子が成長してよかったと思います。
2. Posted by パミミ   2019年05月06日 23:56
ゴールデンウィークで珍しく時間があったので、ちょいと書いてみました♪
書き始めたときは全く逆方向の展開だったんですが、
ニャプたんが横からクチを出してきてw。

そんな久々だったかなと思いきや、本当に久々だったです><
3. Posted by なお   2019年05月07日 09:58
取り合えずパミさんは腐女子?

プチ小説お疲れ様です

園芸師の装備そこそこしてれば手袋(指抜き型)

を装備してたような気が?

まあ装備を天然で忘れたのですネ!
4. Posted by ぼると   2019年05月07日 21:43
タルタルが転生したXD

ところで。。。。
サボテンはステーキにしたんじゃ?
いつの間にサラダに。。。。

でもパインサラダじゃなくてよかったXD
5. Posted by パミミ   2019年05月07日 22:37
◆なおさん
いあいあ、そういう腐り方じゃなくてww
てか腐ってないし><
ボクの園芸師装備はほぼ素手ですね・・・あれ?

◆ぼるとさん
時代はララフェルですねw
あー、サボテンサラダは、もとになったイベントの名前でした。
たしかにサラダってないですに・・・。
どっかに一文付け足しておきます><
・・・って、ドラゴンフルーツってサラダなのかしら??

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