Era identification
1: Frederick’s era 1863-1910
2: Reuben era 1910-1960
3: first Lane era 1961-1965
4: second Lane era 1965-1976
5: first Dunhill era 1977-1981
6: second Dunhill era 1982-1987
7:Russell era 1988-2002
8:new Dunhill era 2002

 Fabio Ferrara、そしてIvyの記事を参考にまとめさせていただいております。チャラタンのデイティングとしてはFabioが世界一の精度、その彼が参考にしたのがコレクターとして名高いIvyの記事。ただし、Ivyの記事は違和感が拭えない部分等が多数存在し、FabioはIvyを参考として自身で新たにまとめたわけです。
 今回は私の所有するチャラタンと比べながら、不足部分には補てんをしながらの解説をいたします。

A; Shape of the mouthpiece
Frederickから始まり、1960年まではマウスピースはサドルかテーパーしか存在しなかった。1961年に”Double Comfort”という二段ビットのマウスピースを販売。ダブルコンフォートを備えたパイプにはシャンクに”DC”の刻印、しかし、好まない顧客もいるために、”X”がシャンクに刻印されたパイプがあり、こちらはフィッシュテイルのマウスピースを備えている。”DC”も”X”も刻印が無い場合には通常のテーパー、サドルマウスピースである。
 もしも通常のサドルビットのマウスピースを有しながらも”X”の刻印が無い場合には1960年以前のパイプであると判断することができるのだ。もしも刻印があれば間違いなく1960年以降となる。

B:marking on the mouthpiece
 “CP”のロゴには4段階での違いがあるので時代を特定することが可能となっている。
 1960年まではCがPを貫通しており、他の時代と比べて非常に細かいロゴとなっている。
 1961年から1977年まではCがPを貫通するのは変わりないが、前の時代よりもロゴが太くなっている。
 1980年からのロゴはCがPを貫通していない。1988年からのJ.B.Russell時代はダンヒル時代と同じくCがPを貫いていないが、非常に太くて白のインクが非常に濃くなっていて、剥げにくくなっている。

C: engraving on the shank
 1960年以前には”CHARATAN’S MAKE"と” LONDON ENGLAND”の2つの行での刻印とシェイプのナンバーのみとなっており、”DC”と”X”の刻印が無い。
 £は1955年から1980年までに使用された刻印である。
 以下の3行の刻印に切り替わったのは1965年または1966年で使用されたのは1979年の間である。

 MADE BY HAND
 IN
 City of London

 “MADE BY HAND”の部分は筆記体の場合が多いが、楷書の場合は1965年の6か月間のみで使用された物であることから、1965年製であると結論付けることが可能となっている。

D: shapes and position of shank engraving/writing
 刻印は時代に応じてシェイプナンバー共々、変化している。


Identification of a first era pipe (Frederick’s era, 1863-1910)
 創業者のフレデリック時代のパイプに出会う事は非常にまれであり、手にすることはほとんど無いだろう。手がかりはサンプルの99%がサイズが非常に小さいと言う事だ。
1: ダンヒルのグループ1、最大でもグループ2よりも小さい。
2: サドル、またはテーパーマウスピース。
3: ダブルコンフォートが存在しない。
4: CがPに入るように刻印されるが、刻印が無い場合がある。
5: £が存在しない。
6: シャンクにXが無い。
7: ダブルコンフォート以降のシェイプナンバーが存在しない。
8: “MADE BY HAND”の刻印は1958年以降なので存在しない。
9: “CHARATAN’S MAKE”、” LONDON ENGLAND”の2行。
10: CPロゴが次の時代に比べて細い。
11: エボナイトと異なるアンバー等の素材で作られたマウスピース。(リプレイスの可能性もあるので注意)

Identification of a second era pipe (Ruben’s era, 1910-1960)
 この時代のパイプも稀であるが、見かけることもあり得る。特徴はFrederick’s eraと特徴が似ているものの、サイズが大きいのが特徴である。

1: この時期は大きく、ダンヒルのグループ5に達する大きさまである。
2: マウスピースはサドル、またはテーパーである。
3: ダブルコンフォートは存在しない。
4: CがPを貫通している。
5: £は1955年からWally FrankからLaneが権利を取得しUSA代理店となり、刻印された。刻印が無い時期が存在しているので注意。1980年まで使用。
6: シャンクにXが無い。
7: ダブルコンフォート以降のシェイプナンバーが存在しない。
8: “MADE BY HAND”の刻印は1958年以降のパイプに刻印された。
9: “CHARATAN’S MAKE”、” LONDON ENGLAND”の2行。
10: CPロゴが次の時代に比べて細い。
11: “FH”の刻印がある場合は1940年代から1958年までの間である。これはフリーハンドを意味するのだが、問題は全てのパイプに刻印されたわけでは無かったということである。ハイグレードに多く見受けられる刻印だとのこと。

Identification of a third era pipe (First lane era, 1961-1965)
1: ダブルコンフォートが登場し”DC”、フィッシュテイルには”X”の刻印で、通常のテーパー、サドルには刻印無し。
2: CがPを貫通
3: £が刻印。しかし、1955年に代理店となってからも使用していたので重なる時期があることに注意。
4: “DC”はシェイプナンバーの後に刻印されている。または”X”
5: 1958年以降に”MADE BY HAND”の刻印。こちらもLane以前と2年間被る事がある。
6: “CHARATAN’S MAKE"と”LONDON ENGLAND”の2行。
7: 以前の時代よりも”CP”のロゴがハッキリと刻印されている。

Identification of a fourth era pipe (Second Lane era, 1965-76)
 最も一般的な時代となっている。刻印等が変更になる。
1: ダブルコンフォートを備えている場合には"DC"、フィッシュテイルには”X”、通常のサドル、テーパーには刻印無し。刻印はシェイプナンバーの後に付いている。
2: CがPを貫通している。
3: £は1955年から全てに刻印していた。
4: “MADE BY HAND In City of London”の3行の刻印に切り替わる。一行目の”MADE BY HAND”がブロック体の場合は1965年の6か月間のみに使用されていた珍しいケースで、年代特定が可能。それ以降は”Made by Hand”が筆記体へと変更となり、1979まで使用された。
5: CPのロゴは前の時代よりも厚くなる。
 この時期にBen Wadeの機械を取得し、LaneがPreben HolmとWilmerに一部のパイプの製造を委託していた。その結果としてこの時期のパイプには数多くの矛盾点を確認できる。この時期にはダニッシュスタイルのフリーハンドを多く見かける。ほとんどの愛好家はLaneのロゴとCPのロゴに疑いを持たないが、ブリティッシュスタイルのブランドとしては良くない事だった。Ben Wadeは1962年にLaneに買収され、1965年に工場が閉鎖され、それ以降はチャラタンのセカンドとして存在した。1970年の時点でBen Wadeが$20.00の価格で、Dunhill Shell Briarが$22.50〜となっているので、セカンドでありながらも他社ブランドよりも高価であったことが伺える。
 そして、ダンヒルがLaneの混乱期を終わらせた。1976年中頃に買収したのである。

Identification a fifth era pipe (First Dunhill era, 1977-1981)
 1976年にダンヒルがレーンを買収。生産の変更は数か月間の猶予があったので、1977年からfirst Dunhill eraとする。
 買収から数年間は将来的な計画を練っており、その間は今まで通りの工場で今まで通りの生産をしていた時期だった。本当の改革は1982年になる。
 ベルヴェデーレ(Belcedere)シリーズは特別にチッペンデール(Chippendale)ブランドとして販売され、Tinderboxシリーズもこのブランドに含まれていた。このチッペンデールというのは元々はBen Wadeのグレードであった。
 また、CPロゴが赤い9mmフィルターのBelvedereも1979年に発売されており、それまでにはフィルター対応パイプというものを販売していないので要注意。また、9mm対応のBelvedereはCPロゴが赤のステインを使用している。
 ダンヒルはLaneが取得したBen Wadeの機械を使用しないままだったが、ダンヒルはBen Wadeの機械を活用して、低価格低品質のパイプを大量に作らせて販売させた。チッペンデールが代表格である。ダンヒルのBruyereと同じ色と価格であったBelvedereとPerfectionがダンヒルよりも高価という訳にはいかずに、意図的にグレードを落とさせたのだ。


1: ほとんどがダブルコンフォートで”DC”。ダブルコンフォートではない場合にはシェイプナンバーの右に”X”が付く。
2: CがPを貫通する。
3: 1980年までは£がある。
4: 3行の”Made by Hand In City of London"は1979年まで。
5: BelvedereシリーズはChippendaleという別のブランドを用意され、”CP”の代わりに"CD"がマウスピースに刻印された。

Identification of sixth era pipe (Second Dunhill era, 1982-1987)
 グロブナーストリート工場(Grosvenor Street Factory)を閉鎖し、東ロンドンのパーカー・ハードキャッスル工場に生産を移した。
1: ダブルコンフォートには”DC”を刻印、違う場合には”X”。
2: £が存在しない。
3: DC、またはXはシェイプナンバーの後に付く。
4: CがPを貫通していない。
5: 刻印は”London”のみとなる。

 15歳から40年間、チャラタンに籍を置いていたバリー・ジョーンズが1978年にチャラタンのマネージングディレクターの立場にあったが、Colonel Kenneth Barnesに加わって独立している。チャラタンの職人たちには圧倒的な格下であったダンヒルの傘下となることへの不満や抵抗があったのだろうと想像できる。
 元々はDCの意味として”Fit with a Double Comfort bit”であったが、驚くことにダンヒルによる買収後に幹部が”Dunhill’s Charatan”という意味であると発言している。

Identification of a seventh era pipe (Russell era, 1988-2002)
 ダンヒルがJ.B.Russellにチャラタンを売却し、製造がイングランドからフランスへ。
1: マウスピースが全てダブルコンフォート。
2: CがPを貫通していない。濃く太い。

3: £が無い。
4: シェイプナンバーの後にDC。
5: “London”の刻印があったが、すぐに無くなった。
6: 最初は”CHARATAN of LONDON”の刻印だった。
7: 偶にシャンクかマウスピースに"France"の刻印。

 ミドルグレードからハイグレードのパイプが消失。すべてが安物になり、製造元はフランスのサンクロードにあるブッショカン。ブッショカンお得意のインレイロゴが施されたり、Londonの刻印自体が無い、またはロンドンで製造していると錯覚させるような刻印があったりと、消費者から見ると詐欺まがいのパイプだらけであった。マウスピースはダボを削るだけの出来合い物で、しかもバリ取りも手を抜いている、またラッカーで品が無い、チャラタンのシェイプチャートから作ったと思われるのに見た目が全然別物になっているなど、基本的に安物が並ぶブッショカン製と考えても程度が低い有様であった。チャラタンというブランドを闇に葬ったと言えよう。刻印に騙されてロンドン製として出品するセラーも多いのが現状で、品の無いラッカー仕上げという時点でお察しなのだが、CがPを貫通していない物は価値が無い時代の物であるという単純な知識さえ持っていれば騙されることは無いはずだ。

Identification of a eight era pipe (new Dunhill era, 2002)
2002年にダンヒルが再びチャラタンブランドを買い上げた。自社ブランドのパーカー、ハードキャッスルと同じく低グレードのパイプが並ぶが、フリーハンドグレードに関してはColin Frommに委託している。
 Colin Frommは1974年にColin Leesonとブランドを立ち上げた。Colin Frommは自身のブランドとしてCastlefordを所有していた。Invicta PipeはアシュトンブランドのBill Ashton TaylorとファーンダウンブランドのLes Woodと協力していた。2010年にColin Leesonが現役を引退し、Peter EllanがInvicta Pipeを引き続いている。
 アシュトンとファーンダウンという名前が上がるように、委託元がチャラタン出身では無くダンヒルの出身という点に注目。チャラタンという史上最高だったブランドを手放す気は無く、フリーハンドのハイグレードもあるのだが、所詮はダンヒルなのだ。

●こぼれ話
その1)
 近年のダンヒル製のフリーハンドを見せていただいたことがある。滅多に売りに出されることが無いのだが、それもそのはずで、外部委託しているからだ。見た目は良くできているし、チャラタンらしいシェイプ。ただし、所有者曰く、「いっちょん旨くねえんだな、コレ……」ということである。正直に言ってLane期よりも細かく作られているのだが、旋盤で削り出したかのようなシンメトリーなパイプで、ボウルが小さいのに全長が長いという事も相まって煙が口に入るまでに力が必要だとの事だった。販売価格はダンヒル並みの高価格だが、見た目だけで使用者の事を考えていないそうだ。グレインもストレートでは無く、ほとんど木目が出ていない。元々ダンヒル自体がグレインを気にしているメーカーでは無かったことが原因なのかもしれない。

その2)
 ブッショカン製のを所持しているが、あまりにもひどい。KINGSBRIDGEというモデルで現在もダンヒルが販売しているようであるが、シェイプはキャバリアーである。ラッカー仕上げ、ダボを削るだけではめ込むという、いかにもブッショカンらしいパイプであるが、それにしてもひどい有様。型流しで作られるマウスピースだが、合わせた部分にできるバリを取らずに売り捌いているのだ。ブッショカンは安くても最低限度の楽しみを与えてくれるというコストパフォーマンスはなかなか……のブランドのはずだが、ラッセルはコストをケチって作らせたのだろう。

その3)
 1965年から1980年までのP.O.S.が3行の時代のパイプというのは続々とハイグレード連発で、消費者を置き去りにして行った。しかしながら、品質としては非常に安定していて、どれも素晴らしいパイプである。一方の1964年までのパイプにおいては職人ごとのビットの形状が異なっていたようで、テーパーキツ過ぎの場合や、底までフラットの場合がある。全体的なボウルの形成も雑な場合が非常に多いのも特徴である。コレクション価値としては古い物が良いのだろうが、実際に使用することを考えると後期の方が明らかに美味いパイプなのである。この辺りはLaneがオハイオで検品をしっかりと行って程度の悪い場合はサンドブラストでラフとして売り捌いたおかげなのだろう。

その4)
 チャラタン愛好家に出会う事も多いのだが、共通しているのはデカいチャンバーでも詰めるのは半分以下だそうで、ぎっちり詰めて吸うようなパイプじゃないとの事である。そして必ず言われるのがPerfectionは酷い……と。

その5)
 日本の大手のパイプ専門サイトでダンヒルがチャラタンを買収したのが1978年と記載しているが、おそらくPipediaというサイトの情報を訳したのだろうと思われる。しかし、実際には1976年の4月である。チャラタンの今後の計画をダンヒルサイドが練っていたので、実際にダンヒルがコントロールするのは翌年の1977年からと言われる。