一目見た時から彼女は特別だった。

 勿論、それは新入生代表の答辞の席であったから、特別(首席入学)なのは当たり前だったけれど、それ以上に彼女自身が発する“何か”が私を圧倒した。
「在校生、センセ、関係者の皆さん。ウチら新入生の為に、こないな席を設けてもろて……」
 関西弁の柔らかいイントネーションを隠そうともせず答辞を終えた彼女は、最後に切れ長の目を猫の様に細め、ニカリと笑い、
「ほな、よろしく」と付け足した。

 私、西条恵は、彼女ーー『愛沢咲夜』を嫌いになることに決めた。


◆◆◆


 噂はいくらでもあった。
 白皇学院の飛び級試験に受かってたとか、三千院家の親戚だとか、お付きの執事が二人もいるとか、お笑いにうるさいとか……。
 同年代のクラスメイトと比較しても、一回り小柄な彼女だったが、そこにはコンプレックスの欠片もなかった。
「ウチは天才やからな」
 半ば冗談まじりに言い放つ台詞さえ冗談にきこえず、それでいてフランクな性格は同性にも好かれ、彼女の周辺には自然と人が溢れていた。お陰でシャギーの入ったショートボブは、いつもクラスメイトに囲まれていて、私の視界から彼女の姿を遮ってくれていたのは、精神衛生上、大変有り難かったのだが。

 彼女から声を掛けてくるまではーー。



続く。