2009年06月01日

ステーキ屋のランチ限定ハンバーグ?「ぼくの妹」

「北の国から」や「ふぞろいな林檎たち」みたいな
大ヒット作品がないから、
倉本聰氏や山田太一氏ほどの一般的知名度はないけれど、
池端俊策氏といえば、やはり
ビッグネームと言っていいんじゃないでしょうか。
で、renta10さんにもご指摘いただいたとおり、
「ぼくの妹」は、その池端氏の脚本作品なわけです。
このドラマ、やっぱりなんだかんだ言って、
ワタシ的には、今クール、いちばん楽しみなドラマです。
前クールには山田脚本の「ありふれた奇跡」
その前には倉本脚本の「風のガーデン」があって、
どちらも、心にしみるというか、すっごくいいドラマだったけど、
正直言うと、“毎週楽しみにしてた”って感じじゃなかった。
むしろ、観るのにちょっと居住まいを直す、っていうか、
ちょっと覚悟してみる、みたいな。
でも、この「ぼくの妹」はそうじゃなくて、
なんか、観るのがすごく“楽しみ”。
深く、心にしみるドラマでありながら、
なんともいえない“軽み”があるんですね。
話は、幼い頃両親と死に別れた、
盟(オダギリジョーさん)と颯(長澤まさみさん)の
兄妹の繋がりと、同じく、幼い頃に両親と別れている
九鬼(千原ジュニアさん)とのなんとも言えない憎しみとかシンパシーとか、
微妙な関係が軸になっていて、
「大づかみに言うとこういうストーリー」って
なかなか言いにくいんだけど、
そこがまたなんともいい感じなわけです。
なんていうか、
900万円っていう大金が絡む話で、
そこで起こってる事態はけっこうたいへんなことなんだけど、
それでも、やっぱり軽い。
たとえば、九鬼の父親が死にそうだ、って知らせに、
颯が九鬼を探しにいくんだけど、そこでもかき氷とか買ったりして、
ぽわぽわしてる。すべてがそんな感じで、
人間ってこうだよね、っていう軽さのなかに
なんとも言えない深〜い味があるんですね。
たとえば、盟が颯を駅まで送っていって別れるシーン、
ぜんぜん大げさな別れのシーンじゃないんだけど、
なぜか、きゅっと胸にくるものがありました。
ディナーだと平気で2万円はするステーキ屋さんでも、
ランチの20食限定ハンバーグは気軽に食べれて、
ふんわり軽〜い食感の中にも、上質な肉の旨味が・・。

この味わいの秘密は何?っていうと、
このドラマ、シーンのすみずみまで、
セリフのすみずみまで
ものすごく気が配られている。
一言一言が、とても慎重に繊細に選ばれた言葉で
できあがってる気がします。
たとえば野沢尚氏のセリフが格調高く「文学的」、
北川悦吏子氏のセリフがリアリティを重視して「散文的」だとすれば、
このドラマで池端氏が書くセリフは、「詩的」と言っていいぐらい、
研ぎ澄まされたもののように思います。
なんか、やっぱり、いい感じです。

ところで、
池端氏のドラマってなぜか大金、それも
人生をどうこうできるぐらいの“宝くじレベル”の大金が
絡む話が多いですね。
「僕が彼女に、借金をした理由。」にしろ「並木家の人々」にしろ・・。
それについては、またこんど、
考えてみたいです。

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pandawatchingdrama at 13:08│Comments(3)TrackBack(0)

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この記事へのコメント

1. Posted by renta10   2009年06月18日 17:17
5  言い得て妙です。ステーキ屋のランチ限定ハンバーグとは。
 このドラマをストーリーがばらばらだとか、何が言いたいのか分からないだとか言う視聴者が多くいます。私はそれを聞くにつけてしめたと思うんです。
 多くの人に受け入れられないドラマはとんでもなく悪いか、いいドラマの2択になりやすい。このドラマは後者。っていっても、それほど難しい内容でもない。数少ない同意者がいればそれでよい。
 他者はさておき、いいドラマですね〜
 想像以上でした。一人称で書かれている脚本を朗読するオダギリジョーがいいですね。私もこんな脚本を書いてみたくなるほどです。(完全に無理です)
 お書きになったとおり、このドラマはリアリティーに加え、軽快さも売りです。とっても次週が楽しみです。さらに録画した過去のシーンを観ても全く色褪せるどころかますますこの作品が好きになる。
すばらしいというひと言で片付けるのがもったないぐらい。

 にもかかわらず、評判が著しくよろしくない。(結局そこに戻るけど)
どうなっているんだ?多くの人が誤解している?それとも自分の感性がおかしい?

 いや自分が正しいのだ。みんなが間違っているのだ。ただ、視聴率が原因で池端さんがひどい目にあってないかだけとても心配だけど・・・・・
2. Posted by panda   2009年06月18日 19:31
>renta10さんへ
コメントありがとうございます。こういうドラマを、いい!といってくれる同志(?)がいると、うれしいし、心強いです。
視聴率のことは、しかたのないことだし、人の好みにはとやかく言えません。せめて、観て、いい!と思ったら、いい!と言っていくことだけが、一視聴者としてできることなんでしょうね。ビデオリサーチの調査対象世帯じゃないし(笑)
でも、できれば視聴率はそこそこあってほしい。そうすれば、もっとこういうドラマが増えるでしょうから。
3. Posted by renta10   2009年06月28日 23:42
5 九鬼と颯を無理やりくっつけたりしないストーリーにはさすがと言うしかない。
 いちいちファンの期待など気にしていては良い脚本は書けません。
 旅路はまだまだ続く。そんなにゴールなど簡単に指し示すものではありません。恋愛の成就という感動を無理やりねじ込むよりも、ひとつの大きな事件を乗り越えて心の成長を見せてくれれば良いではないか。
 大きな出来事の後、表面上は平穏な生活に戻ってしまったとしても、心の奥にある芯はしっかりしたものになるであろう。
 僕も同じ経験をしたことがあります。ある一連の事件を経過した後大きく心のありようが変わりました。一時は心の感情の赴くままに進みそうになりましたが、リセットを押さねばならない時が来ました。
 その後僕の心は大きく変わりました。穏やかな生活の中でもあの出来事をたまに振り返ることがある。それでも今は将来に向かって一歩一歩進んでいるのだ。

 このドラマは実にリアルだ。不規則な感情の揺れが細かく描写されていて感情移入してしまう。
 最終回はきっと先へ進む兄妹の姿が描写されることでしょう。それがたとえ、多くの人が望むロマンスの成熟でなかったとしても私は大いに評価したい。

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