上へ参ります
介護ベッドというやつをレンタルすることになった
布団を敷いて寝ていたが起き上がるのが大変
特に夜間のトイレのための起床は至難の業
漏らさぬよう膀胱括約筋を締めつづけ
薬の効果の減じはじめた足はふにゃふにゃ
一度床に腹ばいになり
壁を登るように足を折り上げ
なんとかかんとか立ち上がっていた
ベッドは
横に滑り降りれば同時に立ち上がることが出来る。
魅力的だ
業者さんがカタログを見せてくれた
安いのはどれかなぁと選ぼうとすると
「矢尾板さんのはこれです」とお高い方を指差した
決めてかかられてるなぁと一瞥をくれると
「こちらの大きさでないと、ベッドに矢尾板さんが乗りません」
重さじゃなく身の丈が長く、縦に乗らないのだそうだ
若いころ
お化け屋敷のガラス廊下を踏み抜いて以来
おのれの重みが生み出す二次災害に
過剰に意識をするようになった矢尾板は
「このベッドの積載可能重量は?」と
それでもあえて畳みかえした
ひがみ根性丸出しだったな
ダンプをリースするかのようなやり取りの数日後
介護ベッド様は運び込まれた
有料老人ホームのコマーシャルでよくみかけるタイプ
頭上と足元の板は木製でちょっと上品
医療器具独特の無機質感がなく
柵がなければ普通の家具だ
これならばと寝てみると
やはり見事に縦がぴったり
寝ルよりはむしろハマルであった
頭は板に接触、
足首は90度状態で
それはまるで棺桶。
まぁレンタルだからしょうがない
そしてレンタルだから
このベッドでお隠れになった方もおられるはず
「お前は何人見送ったのかい?」とベッドに話しかけたら
業者さんに嫌な顔をされてしまった。
あたりまえか
ただ、パーキンソン病になって
葛藤を超えこの難病を受け入れてからは
こういったことにナーバスにならなくなった
達観だろうか
死という最終手段に耽美な憧憬をいだいていたためか
死という結果そのものには嫌悪を感じなくなってきていた
死よりもその道程に恐怖していたのかもしれない
かりにベッドに何かまつわっているとしても
その地縛霊、
見ようによってはこれも守護霊、
呉越同舟、宝船、
被介護サービス受給の皆々サマ
身の不運をもってこその乗り合いバス
何の口上だかわからなくなったが
とにかく介護ベッド様は部屋に据えられたのであった
(つづく)
矢尾板拓也
パーキンソン病 ヤールⅢ 要介護2
パーキンソン病との葛藤をまとめたホームページ
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