ナンナンなん病・パーキンソンハネムーンを過ぎて

パーキンソン病になり、歌うたいという新しい人生を歩むことになった男の話。(旧ブログ名「ナンナン難病・パーキンソン病になりまして」) 矢尾板拓也 パーキンソン病ヤールⅢ 要介護2 明るいblogです。 そして重いhp です。http://yaotakuryuzyo.web.fc2.com

2015年03月

ウエルカム5

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未知なる経験は幕を開け

矢尾板はお決まりの自己韜晦術で身を守り

焦点の定まらない認知症的な視線

はたまためずらしい動物を見るような好奇な視線に、

パーキンソン病特有の無表情で応え

何とか数年ぶりのエクササイズをこなした

 


運動量的にどうであったか覚えもない

運動前のバイタルチェックで

何故かすでに血圧は振り切れていた

 


 


異次元空間遊泳の困惑と疲労で

ぐったりと押し黙る矢尾板は

いつしか帰りの車の中

 


若い女性スタッフの運転する送迎車には

割とはっきりした物言いをされるがそれがとても愛らしい女性と

ニコリともせず

終始イヤホーンで携帯ラジオを聞かれている男性のお二人。

 


女同士の会話はかみ合わず

ただ押し黙ったきりの男二人

 


とはいえ

春先のぬったりした風のように

車中は妙なハイ状態であった

 


 


一番最初に

家に送っていいただいた矢尾板が

鍵をあけるのも億劫に

ぼんやり車を見送っていると

ゆらゆらと

ひらひらと

動くものがある

 


なんだろうと目をこらすと

スモークガラスの陰で

手をゆっくりと振られるお二人が見えた

ゆらゆらゆらと海藻のように

 


一瞬理解できず

自分の知らない老人特有の発作でも出たのかと思っていると

ストンと何かが胸に落ちた

 


ああ、そうなのか

バイバイしてくれているんだ

 


如才のない矢尾板はすぐさま

ばいばい

 


女性の方はまだしも

件の男性も怒ったような顔のまま

さらにバイバイ

 



 


当惑とともに一閃の光が走る。

 


ああ、受け入れてくれたんだ。

 


今日から仲間だよー

のバイバイ

 


今日から仲間なんだよなー

のばいばい


 


ずんとくる

介護社交界へのデビューであった



ナンナンなん病。


矢尾板拓也 



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ウエルカム4

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久々に山を下り

まとまった人間のいる山里に入り込もうとする

クマになったような感覚。

 


微妙な緊張感で

何もしないうちからすでに疲れを覚え

それでも

杖をつきつき

デイサービスへ伺ってみれば

そこは「よりも」「よりも」の重ね盛り。

 


自分よりも皆様お元気

自分の親よりも皆様ご年配

着ている物も矢尾板よりも今風でこざっぱり

 


病院等で個々のお年寄りは見慣れているとはいえ

意欲的に体を動かそうとしている

合目的的に活動される方々を

さらに高い年齢層でくくられているという

まとまりで見るのははじめて

 


そのMassたるやまさに絶景、隔世の感。

 


「絶景かな、」

「絶景かな、」

 


桜門五三桐の石川五右衛門級の感嘆である

 


 


ただ驚きとは別に

覚悟はしていたとはいえ

齢四十にしてたどり着いた先が

このデイサービスかと思うと

正直涙が出そうになった

 


言葉は悪いが

若くして死んでしまったようなものである

 


目の前の景色に

これまでの景色に

言葉は通じるだろうが

何か強烈な断絶を感じた

 


 


つづく




矢尾板拓也 



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ウエルカム3

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さて

 


三年寝太郎状態の矢尾板が

病状に耽溺する穴倉から這い出ようとしたのは

 


とりあえずすぐ死なないのなら

日々生きていく訳であるから

その活きようを考えねばならない

という

三段逆スライド思考。

 


ご存じの通り

パーキンソン病自体が原因で

すぐさま死に至ることはないのだそうだ

 


なので、昔ハトヤのCMで覚えた

三段逆スライドなる思考の結果

 


1、処方量に限りのあるパーキンソン病薬の効果を

最大限引き出すための体循環のカイゼンと最適化

2、転倒防止のための筋力保持

3、運動による刺激で脳機能の活性化

 


を図る必要を感じた為である

 


なにより「リハビリは裏切らない」という

同じパーキンソン病の永六輔に贈られたミスターの言葉に押されて


 


 


担当のケアマネージャーさんからすすめられたのは

マシーン運動を中心に据えた

リハビリ・ステーション

 


まずは、

ストレッチとみんなの体操、ラジオ体操第一、

そして発声練習を兼ねた口腔体操からなる準備運動があり

 


メインでは、各スタッフの付くマシーン運動を順番にこなし

 


最後には、

坂本龍一のラストエンペラーをBGMに

なんと太極拳でクールダウンする

 


すべて椅子に座って行われる

 


メニューもさることながら

放っておかれる感がないところがよいとのこと

デイサービスによっては

お時間まで「ハイどうぞ」という放置Play的なところもあるという

 


 


つづく

 


 


矢尾板拓也 



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ウエルカム2

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矢尾板の抱く

デイサービスのイメージは

かつての紳士淑女が

円卓を囲み

粛々と折り紙をしたり

黙々とお食事をしたり

淡々とお遊戯をするというものだったので

実際のところはどうなのかと

身近な関係各位に問うた



答えは

やっぱり、

折り紙をしたり

お食事をしたり

お遊戯をする…

というものだった



何々という主観的形容詞がないだけで同んなじ



さらに同じだったのは

…の微妙な間のあと



「矢尾板さんはまだ若いから…」と

必ず付け加えられたことである





「ならば人気者になれたりして(笑)」と

矢尾板が自嘲気味に言うと



これもまたきまったように

「そうですね、矢尾板さんならなれますよ~」と

何故か

半ばさとすような

少し憐れむような

トーンで応えてくれる



本当に人気者になりたいと思われていたりして…



いや、

これはすでに

絶対、否定はしてはならないという

対認知症のかの鉄板話法であろうか



いずれわかるのだが

危惧するくらい矢尾板のような存在は稀ということだ

年齢、疾患、目的ともにである



確かに

時候の挨拶なんぞに終始した

意味がないながらも

人間関係の潤滑油たりうる

如才のない

流麗な立ち回り的Play

おそらく十分可能だろうが

矢尾板の望んでいるのはそこではない



対人関係を改善し社会性を取り戻していく

更生プログラムでもない



パーキンソン病でゆっくり減退していく運動機能を

体を動かしてなんとか保持していくことだ。



実際、

どうにもならない現実に委縮して

引きこもり

だらだらと寝たきりな状態に、



昨日と今日を比較して

悪くなったところを

そこここと探してばかりの日常に、



体の方が飽き

悲鳴を上げはじめたのかもしれない



パーキンソン病治療のトレンドとしても

リハビリとの組み合わせは奨励されつつあった



脳に刺激を与え活性化を図るには

まず基本、体を動かすことだからである



矢尾板を担当してくれている

Nケアマネージャーさんに

運動を中心とした

リハビリメインのデイサービスを探してもらうこととなった

             



つづく




矢尾板拓也 



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天岩戸よろしく

サシコモリマシキ状態を見かねてか

はたまた営業活動の一環か

デイサービスの利用をよくすすめられる


デイサービスとは

お迎えが来て

半日もしくは一日介護事業施設で過ごし

その事業所それぞれのサービスをうけ

家族の介護負担を減らしたりするシステムだ


パーキンソン病は

介護保険の利用が可能で

障害認定を受けていても

40代後半の矢尾板は

介護保険適応の範疇に入るらしい


介護保険料の天引きが始まって

こんなに早く利用する側にまわるとは

正直思ってもみなかった


皆様申し訳ない。


調査員さんの調査を受け

主治医の先生の意見書等と検討され

介護認定審査会で等級が決められる


おかれている自分の状況を客観視するためと称し

可能な限りというか

実のところは

かなりキレ気味ヤケ気味で


該当するほとんどの
公的支援の利用申請を
試みていた


ゆえに
心の底では依然として
病を
受け入れ難かった矢尾板は

調査員さんの質問に

ほとんど「Yes,I can」と答えていた


そんな

あたりまえに出来た事は、

以前のようにスッとは

あたりまえに出来ませんが、

あたりまえに出来たことですもの、

こんな風に無理をして

なんとかすれば

ある程度ならば出来ると思います、

ええ、出来ます!

出来ますとも!!





出来なくなりつつある現実に対して、

そしてそれが

あまりにもあたりまえな

動作に関する質問であることに対して、

半ば憤然、居直り状態。


遠い近いは別として

過去には出来たのだからという

せつない想い


せつない想いは高じて

思えばなんともアホな着想へ


同じ先祖から分れてぇ

鳥になったやつがいるんだから

俺もぜぇったい空が飛べるはずだぜぇ~


的な、、、



結果は要支援1


ならば飛んでみせろ、と。



要支援は1と2。

そして階層が変わって

要介護1、要介護2、要介護3、4、5と支援介護度が増していく。


しかし

よく激突し、よく転倒する姿に

訪問介護ヘルパーさんが見かねて

「ちょっと要支援状態ではないですね」と

認定区分の変更、または更新のための

再調査をすすめてくれた。


裁判の再審請求ではないが

不服申し立て条項が市長名の通達書には確かにあった



結果は3っ等級昇進の要介護2。

利用可能なサービス範囲は格段に広がった


まさに躍進。

叙位されたばかりなのに、

突然越階し公卿の仲間入りを果たした平安貴族のごとく。

弟子入りしたばかりなのに、

前座、二つ目を飛び越え、いきなり真打ちなった落語家のごとく。


あはは、


晴れて要介護2になった矢尾板は

よろこんだかというと

まったくもって

それは真逆で

「ワシはそんなに悪ィんかい」と

人称までジイ様になって

落胆し、

かつ嘆いたのであった


しかも

介護難度も上がる為か

時間単価も昇級したので

自己負担額も若干上がってしまった


いいんだか

悪いんだか



ともあれ

自立生活を円滑にすることが急務とさとり


その果実を享受すべく


今自分には

その必要があるという

現実を甘受すべく


使えるサービスはないかいなぁ~と

あらたに検討をはじめたのであった



つづく




矢尾板拓也 



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