ナンナンなん病・PDを超えて

パーキンソン病になり、歌うたいという新しい人生を歩むことになった男の話。(旧ブログ名「ナンナン難病・パーキンソン病になりまして)「ナンナンなん病・ハネムーンシーズン」) 矢尾板拓也 パーキンソン病ヤール4要介護5 ♿️ 独居。 明るいblogです。 そして重いhp です。http://yaotakuryuzyo.web.fc2.com

2015年05月

愛のDVD

sora




愛のDVD

 


 


只今

BGMは大黒摩季の「夏が来る」。

 


紫外線の増した夏かと思う日差しと

送迎の女性ドライバーの低いハスキーな声に刺激されて

一昔前のこの曲が突然口をついた

 


デイサービスのスタッフでもある彼女は

一滴も飲めないのに見事な酒焼け声。

アタマ同様ノドにも毛の生えてない

ボーイソプラノの矢尾板には

外の日差しほどにまぶしくうらやましい声

 


さっそく

ウェブでライブ版の「夏が来る」を見つけ

リピートしまくっている

 


サンバ調のパーカッションとブラス・アンサンブルがいい

ここで松岡直也の曲を(なつ)かしがるあたり

インストと歌ものを

()ったり来たりしたバンド時代の賜物(たまもの)だろうか

 


信じられないだろうが

バンドなるものをやっていたことがある

今やジュラ紀ほど遠くに感じる高校時代だが

三年の暮れまでやりきったら二浪してしまった

 


楽器はもちろん
ギターであるわけなくキーボード

客席からはミッキー矢尾板って声援をいただいていた

ミッキーとはいえ葛西方面ではなくガンダーラの方である

 


で「夏が来る」を連呼していたら

DVDが届いた。

おん歳80のマスターからのプレゼント

デイサービスで知り合った四点(よんてん)(つえ)()き仲間である

 


パーキンソン病に(おちい)ってイライラし

絶望していた矢尾板に

声をかけてくれたデイ仲間で人生の大先輩

 


ある雨の日

6人乗り合わせの帰りの車で

つぎつぎとデイのメンバーが()

最後の二人になったとき

はじめて病状を聞いてきた

さりげなく

ごくごく普通に

 


二人になるまでそういう話は聞かない

二人になったらそういう話は聞くべき

 


その心配りがなんともうれしくて

苦労人というか

接客業に従事(じゅうじ)していたと(おぼ)しき

自然な()()いの良さに

身にしみるやさしい気配りを感じ

ひそかに「マスター」と敬愛(けいあい)していた

 


とある金曜日の

デイサービス午前の部。

ゆっくりと流れる

マシーン・エクササイズの待ち時間

何の前振(まえふ)りもなく唐突(とうとつ)に「DVD見る?」と

杖に乗せた手に

さらにとがった(あご)()マスターはのたまった

 


ピンとは来たが

病気の為ほとんどそっち方面には

興味も刺激もない生活が続いていたので

「はぁ、まぁ」と(にご)したら

逆に年寄りはしつこい

 


電話一本で送って来るとか

奥さま公認で、オーダーしないと心配されるとか

内容やタイトルには一切触れず

まつわる話のオンパレードだった

 


結局頂戴(ちょうだい)することになり

家人の都合のよいときに車で持っていかせるとのこと

来週中には、と降り際に言われたが

正直、大して期待もせず本気にもしなかった

 


帰りの車で別れて一時間

表で「矢尾板さーん」と呼ぶ声がする

 


本当に来たのである

 


奥さまに運転させ

不自由な体を助手席に詰め込んで

 


全部渡していいの?と振り向き

確認をする奥さまの手には

ズシリと36枚のDVD

 


()れたお方である。

 


着替え中だった矢尾板はTシャツにトランクス姿

期待満々、やる気満々と

とられやしないかと入口の扉に半身を隠し

こんな時こそ発揮(はっき)される口先の如才無(じょさいな)さをフル稼働(かどう)させ

押し(いただ)いたのである

 


 


愛のDVD

 


(そで)()(えん)程度なのに

心配していただいているというか

気にかけていただいているというか

頭が下がる思いである

 


「こんなもんでも時間つぶしにはなる」

一日をほとんど座って過ごすマスターならではのお言葉

 


 


 


夏が来る

きっと夏は来る

真っ白な杖を突いたオジ様が

磨きをかけて

コレクションした

妥協しない

()せしない

病になんて負けてない

 


愛のDVDをひっさげて

夏は来る

 


 


 


マスター

形見分けじゃないッスよね

 


 


 


ナンナンなん病。

微妙(びみょう)に趣味が重なる点が気にかかる

 




矢尾板拓也 



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薬かわりました

nouriasuto

薬かわりました

 


先月効果がないと服薬が中止された薬

ノウリアストが復活処方となった

  (*参照:http://yaotakuryuzyo.web.fc2.com/process-2.html
 


薬効が減退する

正午前、夕方四時過ぎ、そして丑三つ時

体が強張り、寝返りが打てず絶叫する

 


それほど動きが悪くなる旨

主治医様に申告申し上げたら

「うーん、ひょっとしたらうすーく効いていたのかもしれない」

ということで再度服薬することになった

 


軒並み強面 ( こわもて )

ダイレクトな効果や副作用を感じる向精神薬の面々の中で

この薬はまるで屁のツッパリにもならない地味な効果と存在だった

 



別れてみて初めてわかる恋人のありがたさのように

手の動きや足の動きにてき面に出てしまった

メイン治療薬であるドーパミン薬の

効果継続を維持する補完的な役どころの薬だが

効果はあったのである

 


治療の確立していないパーキンソン病では

薬も色々試みられる

フェーズ5あたりだろうか

我々は最終治験の被験者的な存在なのである

 


今、矢尾板はその補完的な薬を三種類服薬している

 


まず

エフピーという薬だが

まだ病を受け入られなかったころ処方され始めたが

これを飲むと後頭部から背筋にかけてぞわぞわし気味が悪かった

飲んだら病を受け入れてしまうようで全身で拒否していたのであろうか

一粒325円という価格にものけぞった

一日千円!立派なランチが食える‼

服薬を拒否ると

風邪でノドをやられ筆談診察をされていた前のドクターは

やおら立ち上がり診察室の裏からパンフレットを持ってこられた

「矢尾板さんはクスリ屋さんだったそうですから、一度これを読んでみてください」と

筆記され

製薬メーカーがドクター向けに制作した

この薬の増量投与による比較治験の文献を渡された

そして「しっかり読んで、しっかり飲む」ようになったのである

 


 


次はミラベックスというお薬

飲みはじめは前頭葉を直に触られている感じがし不快極まりなかった

しかし効果はてきめん。

高下駄をはかされたように視界が変わった

 


最後は前述したノウリアスト

これは飲みつけ慣れるまではヘンな感触だった

1錠だけの服薬だったが何か薬全般の効きが

そっくりそのまま減退しているような感じを受けた

かつては服薬してから数時間で来たピークが霧散してしまい

アタックがない代わり薄く間延びしてしまった感じだった

結果、ロングランということだろうが

ピークの山の高さを持続させるのではなく

切り崩し絶壁をなだらかな坂に変える感じだ

 


これらは

あくまでも矢尾板個人の感想

副作用ではなく服薬の感想文である

 


ただ

読み返してみて

かつて医薬情報担当者(MR)をやっていたとはとても思えない内容

 


ま、

「矢尾はMRというよりプロパーだよな」

と上司に言われていただけはあるな

「手土産」「花束」「接待」「お願い」

領収書にハンコをいただくたびに

リピート・アフター・ボイド(?)されたフレーズである

「お願い」とは数字が足りないときの前倒し発注の依頼

「矢尾なんとかならない?」と言ってくるのもその上司であった

 


加えて、

ドクターからは

「嘘くさいからお前は薬の話はしなくていい」と言われたことも。

今は昔の話である

 


昔話の中からひとつ。

ドクターは目に見えない症状の把握に苦労するという

口のきけない幼児では母親の口から伝えられる他覚的な情報などが重要視されるという

足が動いている、とか

肘がギシギシしないとか

ドクターが直接知りえる情報に

こちらの体感している主訴を載せていかなければ病態の全体像はわからない

 


病気で辛い状態では確かに酷であるが

ここは踏ん張りどころ

「辛い」「大変」をなるべく具体的な情報に置き換えて受診しよう

 


いいドクターほど患者さんは多い

その中で自分に割り当てられる平均受診時間はマックス5

うち挨拶、問診、触診、処方、次回予約の所要時間を差っ引くと

我々の直訴タイムはおそらく30秒から 1分であろう

 


その時間枠で伝えるとなるとこちらも要準備である

何を一番伝えたいか

症状がこうだからこう改善して欲しいとか

新しい薬を飲む前と後ではどう違ったとか
より良い果実を得るために

時間的費用対効果を上げるために

これはやっぱり努めなければ

 


辛くて口に出せなければ同行者に代弁してもらうとか

メモ書きしたものを用意し渡すとか

 


精神疾患は主観的な要素が強い

あなたに見えるものを見えない人に伝える工夫が必要かと

 


何でわかってもらえないんだ!

と切れるのは最後の最後

 


未だに矢尾板も

診察室の扉が開く前に

車で揺られてぐにゃぐにゃになった脳味噌を駆使して

本日の営業トークならぬ

受診話法をセルフ・ロールプレーイングしている

 


ついつい昔の癖で

「先生、いつもありごとうございます。」と言ってしまい

一瞬怪訝な顔をされてしまうこともしばしば

 


三つ子の魂百までも

 


ナンナンなん病。

アドバイスというにはおこがましいが





矢尾板拓也 



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アポなし突撃

gaa

アポなし突撃

 

 

アポなし突撃と言えば

電波少年。

アッパーでかすってる世代だと思うが

あの頃はよくテレビを見て大口を開け笑っていた

 

無軌道無慈悲な企画に涙して笑わせてもらったが

今回のアポなし突撃は介護事業者様の事務所拝見である

 

ここで“お宅拝見”や“宮尾すすむ”あたりを彷彿される方には

より強いシンパシーを感じる矢尾板だが

諸般の事情により新たな訪問看護ステーション様と契約することになり

そのステーションとやらを急に見たくなったのである

 

矢尾板は介護保険において要介護の認定を受けているが

パーキンソン病は特定医療費の指定難病でもあり

こちらの医療保険における訪問看護サービスを利用させていただいている

 

保険加入者の皆様、

納税者の皆様、多謝。

 

以前の業者さんとの契約は

病院の相談員さんが

アレンジしてくれたケアマネさんが

さらにアレンジしてくれた業者さんであったので

何より自分が置かれている状況に茫然自失であったので

紹介されるまま

説明されるまま

契約していた

 

今回は少し業界の事も

システムや置かれている状況も

わかるようになっており

いつも訪問されているという

受け身は受け身として

いったいどんな母体から各サービスが提供されるのか

興味が湧いて来たのである

 

なぜなら事業所ごとに微妙に色合が違うからである。

同一サービスでの比較ではないので一概に言えないが

大手の事業所サマ、

古参の事業所サマ、

医療法人を母体としている事業者サマ、

新興新規の事業所サマ、

家族経営の事業所サマ、

フランチャイズ形態の事業所サマ、

それぞれ運ばれてくる匂いがちがうのである

 

自由の利かない矢尾板は

介護タクシーのサービスをご提供いただいてる事業所サマの手を借りて

新規契約先様を突撃訪問させていただいた

 

契約に来てもらったとき

いずれ伺わせてもらいたい旨

責任者様には伝えておいたので

本当に伺わせてもらった

 

どうやらこういう馬鹿はあまりいないようで

在宅で介護を受けなければならならない状況である利用者は

そもそも動けない動かせないが前提であるので

介護タクシーを別途有償利用し

介助の手を煩わしてのお宅拝見

いや事業所拝見は酔狂の極みであろう

 

実際玄関先で名乗っても


であった

 

本当に来てしまいました~

わぁ~感激です~

とそれはその介護事業に手を上げる人だけあって

嫌な顔ひとつせず迎えてくれた

 

そこは平屋の一軒家

事前に聞いてはいたので別段驚きもしなかったが

中古の住宅の仕切りを払い

ボードやパソコンなどを放り込んだ

なんとも微笑ましいオフィス空間。

嫌な風は感じなかった

 

無理がないのである。

 

背伸びとか虚勢が一切感じられない

冷蔵庫サイズの割と大きめの複写機兼FAX

申し訳なさそうにたたずんでいる

 

そう

民宿を借り切って夏期講習を合宿する

塾の講師室のようで

なんとも初々しく

なんとも前向きなはつらつ観があり

思わず口の両端がゆるんでしまった

 

襖を払った押入れのロッカーや

畳敷きの二間(ふたま)に並んでいるPCデスクが

玄関の備え付けの古い靴箱や三和土(たたき)

そんな連想をさせたのかもしれない

 

私は大事な患者様~

難病というネギをしょった肥え鴨サマ~

いじけた自嘲を笑うかのように

「これからがんばります!」オーラがゆるやかに立ち上って(たちのぼって)いた

 

病気で事業を放り投げた矢尾板には

うらやましくまぶしい前向き感

封印していた「前向き」なる語意を

久々に全身で感じていた

 

お世話になります、事業者サマ

今後ともよろしく!

 

 

ただ残念なことが一つ。

 

ここの責任者様は

ファーストネームがヒ○キさんというのだが

最高に感激されると

「ヒ○キ、感激~」とのたまわれるらしい。

 

矢尾板の突撃訪問では

それはなかった。

 

残念ながらのたまわれなかった現実と

仮にのたまわられてしまった場合の

矢尾板の取るべきリアクションの難度を比較(ひかく)衡量(こうりょう)しつつ

本日の与太話はお終いとします

 


矢尾板拓也 



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だるまさんが

keshi-modoki?


だるまさんが転んだ

 

 

外がすがすがしい天気でも

部屋はまだ冬の残像が転がっていて

鬱々としているのにも飽きて

表にでてみた。

 

雑草だか花なのか

オレンジ色の芥子に似た花が群生していた

 

蚊が出てくると

動かない手で追い払うこともできないので

早めに除草剤を()くことにしている

去年はシルバー人材さんのような

ボランティアさん達にお願いした

 

今年は

薬でパーキンソン病の症状を

コントロールできる時間がわかり始めたので

部屋で気が狂ってしまう前に

家の外の草々に

その数時間を充てることにした

 

除草剤を撒くには先ず雑草を片付けねばならない

除草剤で干瓢(かんぴょう)状態になった景色を見るのは嫌だからだ

 

杖を突いて

丸椅子をやっとこさ運んで

いざ芥子花もどきを抜こうとすると

これが意外に抜けない

 

椅子から降り

しゃがんでよいさっと力を入れたら

青い空がみえた

 

後ろにコロンと転がった

背中にあたった丸椅子がつぶれやしないかと

妙な心配をしつつ

転がるべく転がった

 

七転び矢尾板

 

痛みもケガも無く

あまりにも自然にコロンところんだ

 

気の抜けたビールのような一瞬があり

ついでひとり笑った

 

梅雨をまだ知らない五月の空は

夏の青さとは違い

シルバーの放つ灰色がかった射光をはらんで

淡く軽やかな、まさに空色だった




矢尾板拓也 



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いきましょう

imawo-ikiru


今を生きましょう


ここのところ

夢見がとんでもない


病におびえ
戦々恐々としていたころは

日々
おぼつかなくなる
歩行に怯えてか

ひたすら
街を歩き回っている
夢ばかりを見ていた


ついに初めて付き合った女性の夢を見た

ここまで過去に遡求(そきゅう)していると思わなかったので

これは

明日、死ぬんじゃないだろうか

と思わずつぶやいてしまった


テレビをつければ

かつて関わりのあったタレントが突然画面に現れ

僕はこんなに頑張っていますけど矢尾板さんは?

とあのころと変わらないトーンで絡んで来る


過去から問責されているようで

それが単なる偶然としても

二度三度と立て続けに続くと

さすがの矢尾板も韜晦(とうかい)できなくなり

ここ数週間とんでもなく不安定だった


矢尾板は病を得て逼塞(ひっそく)しています…

矢尾板は難病におちいりました…


伝えれば潮の引くように

返信の無くなった賀状、メールに着信歴


脱世間とうそぶいていたが

お前もういらないよ、

と単に言われているだけであるような

なんとも空しく

またなんとも仕様がなく

動かなくなっている右手に

そおっと左手を添えたりなんぞしている


昨日をいきることも

明日をいきることも

出来ないことは嫌というほどわかっているが

比べようのない現実の真っただ中で

独り自分の置かれた状況を噛みしめるとき

降り積もった今までという経験の束と

なかなか定まらない病気の行く末に

哭くことはできても

泣くことはできない


途方にくれた今にしか

手の届く

想いの及ぶ

時空はない


今をいきましょう


他にできることなどないのだから


過去の事象に押し潰されないで

未来の期待に幻惑されないで

今をいきましょう


自問自答。


しかしその今がキツイ





矢尾板拓也 



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