sora




一考察後台風

 

 

どうやら

台風はそれたらしい

 

千切れ飛ぶ雲を

覚醒しはじめた目で見送りながら

すこし汗ばむ風除室で独り送迎車を待った。

 

 

やはりというか

案の定というか

 

 

いやがらせがはじまった。

 

 

いや、

そうではないと思いたいが

体調目一杯

精神状況目一杯には

この台風プレゼンツの不快指数すら恣意に感じる。

 

 

 

面白くないのもわかる。

向うを張る気概も知恵もないのもわかる。

それをとめる力も義務もないのもわかる。

 

矢尾板が

歌うことで自分が救われたように

カラオケでない皆で声を出し合える企画がしたいと

勝手に提案し

勝手にやっているのだ。

 

ただ

極めつきの加齢臭の中

歌うでもなく聞き入る訳でもなく

しきりにかの時代の

己の思い出を懐かしんでいる

人生の大先輩の姿が面前にある。

是非はどうあれ

彼らの塗炭の青春と

今の我々の現実は繋がっている。

 

歌い懐かしむ人

歌を歌うのが好きな人

なんとなく義理で付き合っている人

この矢尾板の企画に賛同して

参加してくれた面々の1人でもいる限り

これは裏切れないと思った

 

「覚悟の程を問われる」

というまさにその文言につきる一日であった

 

 

老眼の始まった目で

楽譜のおたまじゃくしを追い

パーキンソン病で

引きつる右手でメロディーに弾き表し

 

手前30cm圏内視界不良の

眼鏡ごしになんとか拾うコード記号を

パーキンソン病で

固まる左手で瞬時に伴奏へ化けさせ

 

パーキンソン病で重い右足でペダルを駆使し

 

かすれつぶやかれる不平を聞き逃さず

 

入浴でだるくなっている体調を気使い

 

手製の歌詞カードが行き渡っているか確認し

 

明らかに調子ぱずれな歌唱の褒めるところを探し

 

それを整えるべく唯一あいている口で大きく歌ってみせ

 

かつ

 

目尻でフロアの非参加者の動向と

有事の際に呼べるのスタッフの現在地を確認し

 

なぜか急に上がった

テレビ・ボリュームの原因と対策を瞬時に考え

 

その日突然演歌指導を依頼して来た

行事非参加傾向の強い利用者のふてくされ具合を探り

 

次の練習曲をどれにするかさらに頭の隅で勘案する

 

嗚呼、

 

 

 

 

 

さすがにその後2時間は全く動けなかった。

 

 

件の風除室で

「俺はなんでここにいるんだろう?」

「病んでいるからだよな~」

「らしく扱えってか」

「ならば、それらしくおとなしくしてろ!だよな」

「……。

何してるんだろう?」

 

 

ナンナン難病。

ハムスターの遊具のように

回転式ルームランナー思考はつづく

 

自分に課したown なリハビリ。

 

はいはい、

よおっくッ

わかってます、はい。

 





矢尾板拓也 



パーキンソン病 ヤールⅢ 要介護2

パーキンソン病との葛藤をまとめたホームページ

http://yaotakuryuzyo.web.fc2.com/


*よろしければ、クリックお願いいたします。



詩・ポエム ブログランキングへ


弾き語り ブログランキングへ


群馬県前橋市 ブログランキングへ


パーキンソン病 ブログランキングへ


にほんブログ村


にほんブログ村


にほんブログ村


矢尾板拓也の作品一覧です。是非一度ご覧下さい。

http://yaotakuryuzyo.web.fc2.com/voice.html