左手が持ち替えたもの
どこかに紛れ込んで
処分したものだと思っていたカバンが出てきた。
あの中に何を入れて
歩いていたのだろう。
あの中に何を入れようと
歩いていたのだろう。
今や手前の四点杖のグリップが左手のすべてだが
あのカバンもその中の空洞もしっかり存在している。
もはや持って歩けないとしても
夢を入れようとした箱はまだあるじゃないか。
新旧対峙して
引き継ぎをしているような
この写真を見て
趣味の良さを褒めてくれた
新しい友人は、
今旅の空の下だが
その無事を祈りたい。
歌う俺を励ましてくれたように
まだ大丈夫ですと、
まだ使えますと、
このカバンを修繕してほしいものだ。
元気に帰ってくることを願って
ー詩集、「行灯の明かり」よりー